見た目と性格が一致しなくてもいいですか?

折原さゆみ

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26乾杯

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「おかえり。あれ、姉さん、顔赤くない?」

「ああ、これは、店内のエアコンが効いていて、暑いくらいというか、その……」

「ルリ、真珠さん、脈ありだよ。頑張れ!」

「ちょ、ちょっとアリアさん、何を言って」

 私たちがドリンクバーから戻ると、入れ替わりに弟とルリさんがドリンクバーに向かう。その際、弟は私の顔が赤いことに言及したが、何とかごまかした。いや、アリアさんのせいでそれは台無しとなった。

「そ、そうなんだ。とりあえず、先にドリンクを取ってくるよ」

 ルリさんはアリアさんの言葉にちょっと戸惑っている様子だった。やはり、彼と別れた後も会いたいとは言ってくれたものの、私に恋愛感情を持つことはないのだろうか。

(それはそれで悲しい、かな)

 今後も会ってくれるということに満足するしかない。

 私たちはドリンクをテーブルに置いて席に着く。私の隣にアリアさんが座る。彼らが私たちから見えなくなったところを見計らって、アリアさんが私に近寄り耳元で囁く。

「今度はきっとうまくいくから、ルリを信じてあげて」

「何を根拠にそんなことを言うんですか?」

「ううん。私の直感かな。真珠さんとルリ、付き合ったら絶対にバカップルのお似合いカップルになると思うんですよ」

「バ、バカップル……」

「これは、け、けっして、し、真珠さんのことをバカにしているとかではなくて。いい意味ですよ。ルリは一途なやつで、好きな人に対して誠実で、浮気なんてしないです!真珠さん一筋で愛してくれると思いますよ」

「そ、そんなわけ」

「だって、ルリの顔見ました?真珠さんを見るときの目が恋する乙女みたいでしたよ。あれはもう、真珠さんにベタぼれ間違いな」

「声が大きいよ、アリア。そういう話はもう少し、声を抑えないと」

「ダイヤ!それと、ルリさんも」

「戻ってくるのが早すぎ。普通、気を遣ってもう少しゆっくりとドリンク選びするでしょ」

 話していたら、ダイヤとルリさんが戻ってきた。弟の発言から、私たちの話は聞かれていたようだ。いったい、どこまで話を聞かれてしまったのか。ダイヤはにやにやしていたが、ルリさんは困ったような顔をしていたが、嫌がってはいなかった。

「ま、まあ、僕と真珠さんのことは、今はいったん、置いておこう。ほら、注文した料理が来たみたいだよ」

 ルリさんが話題を変えようと、私たちのテーブルに近付いてきた配ぜんロボットを指差す。ルリさんと弟が席に着いていないため、ロボットの道をふさいでいた。二人が私たちの正面に座ると、配ぜんロボットが動き出し、私たちのテーブルに近付いてくる。

「リョウリヲトリオワリマシタラ、ボタンヲオシテクダサイ。ゴユックリドウゾ」

 頼んだ料理をテーブルに移す。頼んだ料理をすべてテーブルに置いて、ダイヤがボタンを押す。配ぜんロボットは無機質な機会音を発して、そのまま私たちの席を離れていった。

「とりあえず、冷めないうちに食べましょう。真珠さんとルリの今後については、食事後、じっくりと聞かせてもらいます」

「アリア、目がガチすぎて怖いから。二人のことは陰からコッソリ見守るくらいがちょうどいいって、二人の時、話しただろ?」

「でも、それだと、いつまでも関係が進みそうにないかなって」

 何やら、こそこそ弟とアリアさんは二人で話しているが、声が潜められていないので丸聞こえだ。

「アリア、そういうのを余計なお世話って言うんだよ。真珠さんが困っているのがわからない?僕はいいけど、真珠さんを困らせるなよ」

「真珠さんが脈アリだと知って、余裕なのね。まあいいわ」

 アリアさんは弟の言葉にしぶしぶ引き下がる。

「じゃあ、先に今回の姉さんの別れを祝って、乾杯しよう!」

 気分を盛り上げるようと、弟がドリンクの入ったグラスを持ち上げる。すると、アリアさんとルリさんも同じようにグラスを持ち上げる。

「い、祝いって、その、はずかし」

「こういうのはノリでいきましょう!本人が祝わなくてどうするんですか!」

 アリアさんの圧に負けて、私も恐る恐るグラスを持ち上げる。真珠さんが音頭を取って一番高くグラスを持ちあげる。

『真珠さんの未来に乾杯!』
『乾杯!』

 グラス同士が重なり、軽快な音を立てる。私たちはそれぞれ、他の三人とグラスを合わせた。

『いただきます』

 私たちはいったん話を中断して、それぞれが注文した料理を取り分けて食べ始める。

「あの、追加で注文してもいいですか?」

 そういえば、私の食べたいものを注文しようと思っていて忘れていた。すでに料理の取り分けに夢中になっていた三人は黙って頷く。私はタッチパネルから、パイナップルが乗ったハワイアンピザを注文した。

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