見た目と性格が一致しなくてもいいですか?

折原さゆみ

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25お祝い

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「4人で予約した鬼頭です」

「鬼頭様ですね。お席にご案内いたします」

 車で15分程走った場所にアリアさんの予約したお店があった。外観はオレンジの屋根が可愛らしい一軒家風の建物だ。車を駐車場に停めて、私たちは車から出て店に向かう。

 店に入り、アリアさんが予約していたことを伝えると、店員がすぐに席に案内してくれる。私たちは予約された一番奥のテーブルに着く。ルリさん、私、ダイヤ、アリアさんが隣同士に座ることになった。これではまるでダブルデートのようだ。いや、ルリさんと私は恋人同士のフリ、ということになっているので、あながち間違ってはいない。

「これで、お姉さんの意思はハッキリとあのクズ野郎には伝えられました。まさか、向こうも開き直って女連れで来るとは思いませんでしたけど」

「あれには驚きだよな。しかも、連れてきたはいいけど、ルリの登場で、彼そっちのけでルリに秒で乗り換えようとしていたな」

 席に着くとすぐにアリアさんとダイヤが話し出す。確かに、彼が女連れで来るとは予想できなかった。とはいえ、アリアさんの言う通り、別れる意思は伝えられた。あとは彼からの連絡を無視するだけで彼との関係は終わりである。

「では、真珠さんのクズ野郎との別れをお祝いしましょう。好きな物を注文してください。ここはダイヤのおごりですから、遠慮せずにどうぞ」

「なんでアリアが自慢げに言うのかな。姉さん、そういうことだから、好きなだけ注文していいよ。ルリもまあ、姉さんに協力してくれたから、おごってやるよ」

「そ、そんなことしてくれなくていいよ。むしろ、私がダイヤたちに相談をしたんだから、私がおごる立場だよ」

「ダイヤは言いだしたら頑固だからね。いいんじゃないですか?弟におごられるのも。本人がおごりたいみたいですし。僕は王道にこのマルゲリータピザと、ジェノベーゼのパスタにします。真珠さんはどうします?」

「注文したものはみんなで分ければいいからね。私は、生パスタのカルボナーラとペペロンチーノ」

「僕はシーフードピザにナポリタンにする」

「エエト、私は……」

 なんだか、弟達にはお世話になりっ放しだ。しかし、ここで変に意固地になっておごると言っても、彼らは聞いてくれないだろう。そして、彼らの気分を損ねてしまう。ルリさんを初めに皆が思い思い紙のメニュー表を見て、食べたいものを述べていく。慌てて私もメニュー表を見せてもらうが、すぐには決めることができない。

「とりあえず、私たちの分だけ先に注文しようか。ルリ、そこのボタン押して、店員を呼んでくれる?」

「わかった」

 私が決められないのを見かねて、アリアさんが気を利かせてくれた。ルリさんがテーブルに置かれたボタンを押すと、ほどなくして店員がやってきた。

「マルゲリータピザと、シーフードピザ、それから……」

 ルリさんがメニュー表を指差しながら店員に注文していく。店員はルリさんを見て、一瞬頬を赤らめていたが、すぐに表情を戻して注文を手持ちの機械に入力していく。やはり、ルリさんはどこでも人気のようだ。

「ご注文は以上でよろしいでしょうか」

「ああ、あとドリンクバーを4つお願いします」

「かしこまりました」

 アリアさんが飲み物を追加すると、店員はその場から立ち去っていく。

「とりあえず、料理が来る前に乾杯でもしましょう。私とお姉さんが先にドリンク取りに行ってくるね」

「どうぞ、ごゆっくり」

 私とアリアさんが席を立つと、弟に手を振られる。私たちはドリンクコーナーに向かって歩いていく。

「それでルリのこと、どう思いましたか?」

 席から離れ、弟達に私たちの声が聞こえない距離になると、アリアさんが声を潜めて私に質問してきた。いきなりそんなことを言われても、回答に困ってしまう。

「どう思ったかと聞かれても……。ルリさんはとても素敵な人です。恋人のフリをしてもらうのをためらうくらいには」

「素敵とか、そういうのじゃなくて、恋愛対象として見られるかどうか、ですよ」

「れ、恋愛対象!」

 ルリさんの事を聞いてきたかと思ったら、私が考えたくなかったことを直球で聞いてくる。たった2日で私はルリさんの事を好きになってしまった。これは弟に向ける親愛の感情ではない。店員や彼の浮気相手がルリさんに向ける視線に嫉妬するくらい、恋愛感情としてルリさんを好きになっている。

「声が大きいです」

 でも、その反応だと期待できそうですね。

 つい、大きな声が出てしまったが、今はお昼時。店は混雑していて、ドリンクバーにも人がいて、人の声も賑わっていた。私の声はそこまで響くことはなかったので安心だ。アリアさんの最後の言葉は独り言のようで私には聞き取れなかった。

 アリアさんはドリンクバーに置いてあるグラスを持ち、機械の前に立ち、オレンジジュースのボタンを押す。私もそれに倣って、隣のある機械にグラスを置き、烏龍茶のボタンを押すのだった。
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