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44自分の部屋に運ばれるまでの経緯
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九尾と翼君、狼貴君は、私が鬼崎さんの家に行くことに同意し、自分たちも一緒についていくと言い張った。私としても、一人で敵かもしれない彼女の元に向かうのは心細かったので、彼らがついてきてくれると言うのなら、ついてきてもらおうと思っていた。
ただし、鬼崎さんは、九尾たちが人間ではない存在だと気づいている可能性があるため、私の後ろからこっそりとついていく形となった。
彼らはずっと私に気付かれないようにしていたが、私と犬史君が彼女の家に入ると、私たちの様子を外から見えるよう、アパートの窓が見える場所に移動し、姿を現した。
「あの家からは妙なにおいが漏れ出ているな」
「部屋から流れ出る、この甘ったるい匂いはいったい何でしょうか?」
「犬史があそこに入って大丈夫なのか?」
三人は、私が入っていたドアを見つめ、今後どうするかを話し合う。
「においの正体だが、おそらく、幻覚が何かを見せる作用があるお香か何かだろう。においをかぐと幻覚が見えるというものだ。死ぬようなものでもないが、これは早めに部屋に突入した方がいいだろう」
嫌なことを聞いた翼君と狼貴君は、同時に顔をしかめた。
「幻覚が見えると言っても、においをかぐと、幻覚が見えやすくなるという代物だから、人によっては効果がないものもいる。幻覚を見せて、洗脳するのにはうってつけだな」
「洗脳……。犬史は洗脳されているのか?」
「これは、早く助けないとやばいですよね。僕たちが助け出さないと、九尾どうしたらいいですか?」
九尾の付け加えられた言葉に、狼貴君は戸惑うが、翼君は冷静に言葉を受け止め、助けるための指示を仰ぐ。
「では、窓から彼女の家に突入でもするか?弟ばかりに目が行くが、あそこには蒼紗もいるからな。助けなくても大丈夫そうだが、とりあえず迎えに行くとしようか」
「わかった」
「わかりました」
九尾の言葉を合図に、彼らは宙に浮かび、鬼崎さんのアパート二階の窓まで接近した。
「それで、改めて窓から彼女の部屋の様子を見ていたら、お主の危機的状況が目に入ってな。止める間もなく狼貴が部屋に突入して、大変な騒ぎになってしまった。全く困った奴だ」
「でも、それで結果的に蒼紗さんを救出できたのですから、いいでしょう?」
話を終えた九尾がふあとあくびをする。とりあえず、私が自分の部屋にいる理由は理解した。
「助けてくれてありがとうございました」
二人の話を聞き終えた私は、まずは彼らにお礼を言う。もう一人の居候の存在がいないこと、助けたというはずの犬史君の姿も見当たらないことの説明は聞いていない。鬼崎さんはどうなったのかもわからない。まだまだ彼らには説明して欲しいことはたくさんある。
「ああ、狼貴と犬史とかいうガキは、一階のリビングで二人きりで話をしているぞ。家族水入らずで、けじめをつけるのだと。だから、われたちは、お主の様子も見がてら、ここで暇を持て余しているところだ」
「良かった」
私の心の内を読んで、二人の所在を教えてくれた九尾。ようやく彼らは二人きりの時間を作ることができた。彼らが一緒に生きるという未来はないが、せめて二人が後悔しないような結末を願うばかりだ。そんなことを思いつつも、私はほっと息をつく。
二人の所在が明らかになったとわかれば、もう一人、どうなったのか知りたい人物がいる。
「二人が無事でほっとしました。それで、鬼崎さんはどうしたのですか?」
一階に狼貴君たちがいるのなら、彼女はどこにいるのだろうか。彼女の家に置き去りにしてきたのか、それとも、私の家のどこかに監禁しているのか。
「あいつなら、面倒なので、われたちの記憶をすべて消させてもらった。証拠もなく消しても良かったが、それをするのはダメだと翼に言われて、仕方ないから、記憶だけいじることにした」
「かなり強引にですけど。でも、殺すのはどうかと思いましたので、これが僕たちの譲歩です。どうにも、蒼紗さんに迷惑をかける存在なので」
さらりと二人が殺すという言葉を吐いたので、驚いたがすぐに冷静になる。
九尾たちが言うには、突然、窓を割って入ってきた彼らに対して、鬼崎さんはまったく驚いた様子を見せていなかったらしい。それどころか、彼らがやってきたことに興奮さえしていたとのこと。
『素晴らしいです!やはり、駒沢先生の言った通り、朔夜先輩に危害を加えることによって、非日常が私の前に訪れるのですね!』
窓を割り、私と犬史君を外に連れ出した後、鬼崎さんと向き合った彼らが、彼女はまったく九尾たちを恐れていなかった。九尾たちは彼女に何が目的だと問い詰めた。
「お主は一体、何が目的で蒼紗に近づいた?」
『目的ですか?それはただ一つ、この世の非科学的な現象を自ら体験したい、その一言ですよ。私には霊感がない。だからこそ、心霊写真もないし、金縛りも、幽霊に会ったこともない。被害に遭った彼女たちがうらやましかった。この大学に』
「うるさいな。少し黙れ」
鬼崎さんは、九尾たちの前でも、自己語りを始めてしまったらしい。そんな話を聞いていられないと、さっさと九尾は彼女に口封じをする。
「面倒だな、お前らはこいつをどうしたい?蒼紗の周りをうろつかないように、身体をもいでやってもいいが。面倒くさいなら、この場でころ」
「いや、そんなことをしたら、彼女の思うつぼですよ。謎の怪奇現象によって身体が動かなくなった!とか、人外に殺された!とかで、死ぬ間際まで興奮するだけで反省しないと思います」
「それなら、俺たちや蒼紗に関する記憶を消去すればいい。消去した上で大学を退学にして、実家に帰すのが一番、穏便に済む話だ」
私たちを外に連れ出し、戻ってきた狼貴君のアイデアが採用され、彼女は見事、私たちに関する記憶を失い、大学を辞めて、田舎の実家に帰ることになったそうだ。
「だから、今頃、大学に出す書類を書きつつ、引っ越しの準備をしていると思います。来週にはもう、彼女の姿を大学で見ることは亡くなりますよ」
にっこりとほほ笑む翼君は、九尾のあくどい笑みとかぶって見えた。親に似るというは、あながち間違いでもないかもしれない。親ではないが、自分の主に似てきている。
ただし、鬼崎さんは、九尾たちが人間ではない存在だと気づいている可能性があるため、私の後ろからこっそりとついていく形となった。
彼らはずっと私に気付かれないようにしていたが、私と犬史君が彼女の家に入ると、私たちの様子を外から見えるよう、アパートの窓が見える場所に移動し、姿を現した。
「あの家からは妙なにおいが漏れ出ているな」
「部屋から流れ出る、この甘ったるい匂いはいったい何でしょうか?」
「犬史があそこに入って大丈夫なのか?」
三人は、私が入っていたドアを見つめ、今後どうするかを話し合う。
「においの正体だが、おそらく、幻覚が何かを見せる作用があるお香か何かだろう。においをかぐと幻覚が見えるというものだ。死ぬようなものでもないが、これは早めに部屋に突入した方がいいだろう」
嫌なことを聞いた翼君と狼貴君は、同時に顔をしかめた。
「幻覚が見えると言っても、においをかぐと、幻覚が見えやすくなるという代物だから、人によっては効果がないものもいる。幻覚を見せて、洗脳するのにはうってつけだな」
「洗脳……。犬史は洗脳されているのか?」
「これは、早く助けないとやばいですよね。僕たちが助け出さないと、九尾どうしたらいいですか?」
九尾の付け加えられた言葉に、狼貴君は戸惑うが、翼君は冷静に言葉を受け止め、助けるための指示を仰ぐ。
「では、窓から彼女の家に突入でもするか?弟ばかりに目が行くが、あそこには蒼紗もいるからな。助けなくても大丈夫そうだが、とりあえず迎えに行くとしようか」
「わかった」
「わかりました」
九尾の言葉を合図に、彼らは宙に浮かび、鬼崎さんのアパート二階の窓まで接近した。
「それで、改めて窓から彼女の部屋の様子を見ていたら、お主の危機的状況が目に入ってな。止める間もなく狼貴が部屋に突入して、大変な騒ぎになってしまった。全く困った奴だ」
「でも、それで結果的に蒼紗さんを救出できたのですから、いいでしょう?」
話を終えた九尾がふあとあくびをする。とりあえず、私が自分の部屋にいる理由は理解した。
「助けてくれてありがとうございました」
二人の話を聞き終えた私は、まずは彼らにお礼を言う。もう一人の居候の存在がいないこと、助けたというはずの犬史君の姿も見当たらないことの説明は聞いていない。鬼崎さんはどうなったのかもわからない。まだまだ彼らには説明して欲しいことはたくさんある。
「ああ、狼貴と犬史とかいうガキは、一階のリビングで二人きりで話をしているぞ。家族水入らずで、けじめをつけるのだと。だから、われたちは、お主の様子も見がてら、ここで暇を持て余しているところだ」
「良かった」
私の心の内を読んで、二人の所在を教えてくれた九尾。ようやく彼らは二人きりの時間を作ることができた。彼らが一緒に生きるという未来はないが、せめて二人が後悔しないような結末を願うばかりだ。そんなことを思いつつも、私はほっと息をつく。
二人の所在が明らかになったとわかれば、もう一人、どうなったのか知りたい人物がいる。
「二人が無事でほっとしました。それで、鬼崎さんはどうしたのですか?」
一階に狼貴君たちがいるのなら、彼女はどこにいるのだろうか。彼女の家に置き去りにしてきたのか、それとも、私の家のどこかに監禁しているのか。
「あいつなら、面倒なので、われたちの記憶をすべて消させてもらった。証拠もなく消しても良かったが、それをするのはダメだと翼に言われて、仕方ないから、記憶だけいじることにした」
「かなり強引にですけど。でも、殺すのはどうかと思いましたので、これが僕たちの譲歩です。どうにも、蒼紗さんに迷惑をかける存在なので」
さらりと二人が殺すという言葉を吐いたので、驚いたがすぐに冷静になる。
九尾たちが言うには、突然、窓を割って入ってきた彼らに対して、鬼崎さんはまったく驚いた様子を見せていなかったらしい。それどころか、彼らがやってきたことに興奮さえしていたとのこと。
『素晴らしいです!やはり、駒沢先生の言った通り、朔夜先輩に危害を加えることによって、非日常が私の前に訪れるのですね!』
窓を割り、私と犬史君を外に連れ出した後、鬼崎さんと向き合った彼らが、彼女はまったく九尾たちを恐れていなかった。九尾たちは彼女に何が目的だと問い詰めた。
「お主は一体、何が目的で蒼紗に近づいた?」
『目的ですか?それはただ一つ、この世の非科学的な現象を自ら体験したい、その一言ですよ。私には霊感がない。だからこそ、心霊写真もないし、金縛りも、幽霊に会ったこともない。被害に遭った彼女たちがうらやましかった。この大学に』
「うるさいな。少し黙れ」
鬼崎さんは、九尾たちの前でも、自己語りを始めてしまったらしい。そんな話を聞いていられないと、さっさと九尾は彼女に口封じをする。
「面倒だな、お前らはこいつをどうしたい?蒼紗の周りをうろつかないように、身体をもいでやってもいいが。面倒くさいなら、この場でころ」
「いや、そんなことをしたら、彼女の思うつぼですよ。謎の怪奇現象によって身体が動かなくなった!とか、人外に殺された!とかで、死ぬ間際まで興奮するだけで反省しないと思います」
「それなら、俺たちや蒼紗に関する記憶を消去すればいい。消去した上で大学を退学にして、実家に帰すのが一番、穏便に済む話だ」
私たちを外に連れ出し、戻ってきた狼貴君のアイデアが採用され、彼女は見事、私たちに関する記憶を失い、大学を辞めて、田舎の実家に帰ることになったそうだ。
「だから、今頃、大学に出す書類を書きつつ、引っ越しの準備をしていると思います。来週にはもう、彼女の姿を大学で見ることは亡くなりますよ」
にっこりとほほ笑む翼君は、九尾のあくどい笑みとかぶって見えた。親に似るというは、あながち間違いでもないかもしれない。親ではないが、自分の主に似てきている。
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