朔夜蒼紗の大学生活④~別れを惜しむ狼は鬼と対峙する~

折原さゆみ

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17新歓コンパに参加することになりました

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 七尾は、「新歓コンパ」という言葉を初めて聞いたのか、首をかしげている。

「しんかんこんぱ?はて、それはどんなものだ」

「新歓コンパを知らないなんて、モテそうな容姿なのに、もったいないですね。新歓コンパとは、春に新入生を歓迎して飲み会を開くことですよ。みんなで集まって飲食して親睦を深めるんです!大学生の定番ですよ!ちょうど、私のサークルで、新歓コンパをしようって話が出ているので、もしよかったら、七尾君も参加してみてはどうでしょう」

「まって、それは危険すぎる気が」

「いいんじゃないかしら。合コンじゃあるまいし。それに、運が良ければ、こいつをお持ち帰りしてもらって、誰かに面倒を見てもらえば、蒼紗に構わなくなるし、こいつも楽しめて、一石二鳥でしょ」

「ふむ、新入生を歓迎しての飲み会か。われも今は、大学一年生ということになって居るし、新入生という立場だった。なかなか面白そうだな。そこの女、それはいつ行われるのだ?」

 七尾は、綾崎さんが提案した新歓コンパに興味を示していた。綾崎さんは、新歓コンパが開催される日時と場所を教えていた。

「今週の金曜日の18時半から、駅前の居酒屋に集合です。私の所属する『妖怪調査サークル』が集まっての新歓コンパです!費用は、一人3000円。ああ、これは新入生以外の値段です。七尾君は親友性だから、無料で参加できますよ!」

「それはお得だな!」

 七尾は自分がただで新歓コンパに参加できると知り、とても嬉しそうだった。




「その新歓コンパには、朔夜先輩たちも参加するのですか?」

 廊下で話し込んでいたら、今度は鬼崎さんが話しかけてきた。結構な音量で話していたのか、鬼崎さんは私たちの会話を聞いていたらしい。

「いえ、私たちは参加しま」

「美瑠も、今日の金曜日の新歓コンパに参加する?私は参加するよ。それに、彼女たちも、参加する予定です!」

 私が参加しないと言い切る前に、綾崎さんが勝手に、私たちが綾崎さんのサークル主催の新歓コンパに参加すると宣言してしまった。私の言葉は無視された。


「ちょっと、ジャスミン、あなたからもなにか言ってく」

「私は参加しても構わないわ。蒼紗もたまには、人間の男と関わってみなさいよ。まあ、蒼紗に手を出す男は私がつぶすから、蒼紗は安心して参加すればいいわ!」

 ジャスミンも私の言葉を遮って、好き勝手に言ってくれた。私の味方はいないのかと、周りを見渡したが、全員、新歓コンパに乗り気なリア充軍団の集まりとなっていた。

「朔夜先輩も参加されるのですね。参加しようかどうか悩んでいたのですが、私もその日は特に予定はないので、参加しようと思います」

「いやいや、私が参加すること前提で話さないでください。そもそも、私にだって予定が」


「予定はないでしょう?蒼紗のバイトは、確か金曜日は入っていないわよね」

「なぜ、私が話す前に予定がないとばらすのですか?」


「では、蒼紗さんも参加ということで。私、授業後にサークルに寄って、先輩たちに人数を報告してきます!」

「私と七尾も行く予定だから、忘れないでよね」

「了解です。三人と、ああ、鬼崎さんは自分で伝えてくださいね」

「わかっています」

 こうして、私たちは金曜日の夜に、綾崎さんの所属するサークル主催の新歓コンパに参加することになってしまった。




「ということだから、金曜日の夜は、帰りが遅くなります」

 強制参加となってしまった新歓コンパのため、金曜日の夜は帰りが遅くなると、九尾たちに伝えた。

「新歓コンパですか。新学期が始まったっていう感じがします。楽しんできてくださいね」

「あんなものの何が楽しいのか」

「七尾も参加するのか。しんかんこんぱ、とやらに興味がわいた。われたちも参加してよいのか?」

 翼君、狼貴君、九尾の三人は、いつの間にか私の家に戻ってきた。帰宅すると、家に明かりが灯っていて、家に誰かいることの大切さを思い知らされた。そんなことを思いながら、新歓コンパについての三人の言葉に耳を傾けていたが、最後の意見だけは拒否することにした。

「ダメですよ。ただでさえ、七尾がぼろを出さないか心配なのに、そこに九尾たちまで加わったら、新歓コンパが地獄絵図になること間違いなしです」

「僕たちも参加……。合コンではないとは言え、蒼紗さんを男から守るためなら……」

「オレは別に九尾が行くのなら、ついていく」

 ここでも、私の味方はいないようだった。このままでは、うちにいる居候の三人も飛び込み参加しそうな雰囲気である。それだけはなんとか阻止しなければ。


「二人まで何を言っているのですか。大体、その身体ではお酒も飲めないし、夜遅くに出歩いたら、補導されますよ!」

 私は、彼らの見た目を理由に断ろうとした。どう考えても、彼らは未成年にしか見えない。そんなケモミミ美少年三人が夜の街をうろついていたら、警察が放っておかないだろう。警察だけでなく、怪しいおじさんやおばさんが近づいてきて、あれやこれやとやられてしまうかもしれない。

「ケモミミ美少年と遊べるならお金を払うなどと言う、野蛮な連中が現れないとも限りません。援助交際に発展するかもしれません!もし私が彼らの立場なら……。お金を払う価値ありと思ってしまいます!」

「一番危ない人がここに居ました。僕、蒼紗さんに襲われないように気をつけます」

「さすがに、家主からそんな目で見られるのはちょっと」

「蒼紗は面白いなあ」




「ぽん」

 突然、白い煙が上がり、私の目の前の視界が悪くなる。いったい何事かと身構えていると、目の前に、新歓コンパに出かけてもおかしくない年齢に見える青年が三人立っていた。当然、ケモミミも尻尾も存在しない。

「これなら、文句はないだろう。そもそも、われたちが変化できるのをお主が知らないわけがなかろう?」

 青年姿の九尾がにやりと笑うが、私の心はときめくことはない。確かにイケメンではあるが、私としては、少年姿のケモミミ姿の方が萌えるのだ。

「この姿なら、補導されることもあるまい。金曜日の夜だな。翼も狼貴もその日は空けておけよ」

「だ、だから、ダメだって言っているで」


「僕たちも参加したいんです。蒼紗さんだけ楽しむのはずるい!」

「オレタチモ新歓コンパにサンカシタイナ」

「お、ね、が、い。蒼紗おねえちゃん!」

 再度白い煙が上がり、目の前には三人のケモミミ少年の姿が現れた。そして、三人は自分たちなりに、おねだりを始めた。三人ものケモミミ美少年におねだりされては、たまったものではない。

「ワカリマシタ。あなたたちのことを、綾崎さんに掛け合ってみましょう」

 三人のかわいいおねだりに負けた私は、翌日、綾崎さんに新歓コンパの参加人数の変更、つまり三人の男性の追加を伝えるのだった。

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