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6偶然の遭遇か、それとも……①
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大学に行き、更衣室で着替えを行って、授業が行われる教室に向かっていると、いつもとは違う声が私にかけられた。
「おはようございます。朔夜先輩」
「お、おはようございます。鬼崎さん」
声をかけてきたのは、鬼崎さんだった。昨日の今日で会うとは珍しい。彼女は一年生で、二年生である私とは授業が被ることはないと思っていたのだが。
「そこの教室での授業は、全学部共通なんですよ。朔夜先輩も受けるんですか?」
「去年は取れなかったから、今年は取ろうと思いまして」
「では、隣の席で受けてもいいですか?
全学共通の授業だったから、鬼崎さんと授業が被っていたようだ。昨日のジャスミンや九尾の言葉を思い出し、てっきり私のストーカーをしているのかと思ってしまった。
「昨日、私は朔夜先輩に失礼なことを言いませんでしたか?」
「失礼なこと……」
そういえば、昨日は思わず言霊の能力を発動してしまって、九尾たちの不幸発言を忘れろと命じてしまった。そのことだろうか。
「なぜか、部室から朔夜先輩を追いかけたのは覚えているのですが、その後、何を話したのか記憶になくて」
「大丈夫ですよ。私の服装をわざわざ褒めに来てくれました」
「そうですか」
半信半疑で私を見てくる鬼崎さんだが、嘘は言っていない。ただ、それ以外の発言に私は動揺してしまったが、わざわざ忘れさせたので、蒸し返す必要はない。
「おはよう、蒼紗!ああ、今日の服装も素敵な格好ね。ウサギの耳がとってもキュートね。蒼紗はあんまりパステルカラー着ないイメージだったから、新鮮ね」
「おはようございます。蒼紗さん、その服装、とても可愛らしいです。私もスカートを黄色にしたら、おそろいになりましたね」
鬼崎さんには何も言われなかったが、私は今日も、九尾の犠牲となった西園寺桜華の行っていたコスプレを行っていた。
本日の恰好は、4月ということを意識して、イースターバニーをイメージして服装を選んだ。ウサギ耳のカチューシャにピンクのふんわりとしたブラウス、黄色のシフォンのスカートを着用した。手には、編み込みのバックを持ち、中にはイースター限定のチョコをカラフルに数個忍ばせていた。
「イースターをイメージしてみたのですが、いかがでしょうか。かごに入っているのは、イースターエッグで、包装がかわいいので買って持ってきてしまいました」
私は、今日のコンセプトを説明する。イースターは過ぎてしまったが、気分を盛り上げるためにちょうどいいと思ったのだ。
「蒼紗って、イベントごとが苦手かと思っていたけど、案外、イベントごとが好きなのよね」
「イースターですか。そんなイベントがあるの、忘れていました。でも、可愛いので、私、明日は蒼紗さんみたいにウサギ耳つけてきます!」
「いや、明日は別の恰好をしますので、綾崎さんが浮いてしまいますよ」
二人は、私に影響されてなのか、コスプレみたいな恰好で大学に来ることが多くなった。今日の二人の服装は、ジャスミンは、ド派手なショッピングピンクのブラウスに蛍光色の黄色のスカートで目に痛い配色だった。綾崎さんは逆に、薄いピンクのカーディガンに緑のスカートを履いていた。
「私は、春だからピンクと黄色がいいかなと思ったのよ!でも、それが正解だったみたいね。蒼紗と配色が同じだもの」
「佐藤さんは毎回、色の決め方が目に痛いんですよ。ピンクと黄色だっていろいろあるでしょう。蒼紗さんと同じと言わないでください。その点、私の方が蒼紗さんに近いでしょう。お花をイメージしてみました!」
二人が私に各々の今日の服装の説明を始め、なぜか私に近いかどうかの口論を始めてしまった。これはいつものことで、すでに慣れてしまったため、無視することにした。
「ツッコミを入れようとは思っていましたが、やめておきます。では、私は先に講義室に行きますので」
ジャスミンと綾崎さんがやってきて口論を始めてしまったのが気に障ったのか、鬼崎さんは足早に講義室へ向かってしまった。私と隣の席にと言っていたのは冗談だったのだろうか。
「やっぱり、変な子ね」
「あれ、美瑠もいたんだね。蒼紗さんに会えたことがうれしくて、気付きませんでした」
鬼崎さんが立ち去ると、ようやく口論をやめ、彼女がいたことに気付く二人。私のことになると、他が見えなくなるのはどうにかならないものか。
「そろそろ私も急がないと、授業に遅れますよ!」
二人はスマホで時刻を確認し、私たちは慌てて教室に駆け込んだ。何とか授業開始前に教室に入ることができた。席は結構埋まっていたが、空いている席は見つかり、私たちは席に着いたのだった。綾崎さんの姿を探すと、教室の後ろの端に座っているのが見えた。
「昨日ぶりだねえ!蒼紗さん!」
「七尾君!」
「げっ、またきたよ」
昼食時間、食堂で昼食を食べていると、面倒な相手がやってきた。最近見かけなかった七尾が私たちに話しかけてきた。
「蒼紗さん、この大学って面白いね。僕が見たことないがない人種がいるよ!」
「ソレハドウモ。でも、人間に危害を加えたらダメですよ。九尾からも言われていると思いますけど」
「大丈夫だって、人間に危害を加える理由が、今の僕にはないから。それにしても、学食もおいしそうだよね。この前は、購買のパンを食べたんだけど、今日は学食のメニューにチャレンジしよう。ねえ、どうやって買うの?」
私の忠告に軽く返事をして、学食の使い方を聞いてくる七尾にため息が出た。春休みの怖い雰囲気がどこに行ったのか、あっけらかんと話している七尾を見ると、人外の存在には見えない。しかし、この前までの態度との急変は、やはり人間ではないと思わされるのだった。
「おはようございます。朔夜先輩」
「お、おはようございます。鬼崎さん」
声をかけてきたのは、鬼崎さんだった。昨日の今日で会うとは珍しい。彼女は一年生で、二年生である私とは授業が被ることはないと思っていたのだが。
「そこの教室での授業は、全学部共通なんですよ。朔夜先輩も受けるんですか?」
「去年は取れなかったから、今年は取ろうと思いまして」
「では、隣の席で受けてもいいですか?
全学共通の授業だったから、鬼崎さんと授業が被っていたようだ。昨日のジャスミンや九尾の言葉を思い出し、てっきり私のストーカーをしているのかと思ってしまった。
「昨日、私は朔夜先輩に失礼なことを言いませんでしたか?」
「失礼なこと……」
そういえば、昨日は思わず言霊の能力を発動してしまって、九尾たちの不幸発言を忘れろと命じてしまった。そのことだろうか。
「なぜか、部室から朔夜先輩を追いかけたのは覚えているのですが、その後、何を話したのか記憶になくて」
「大丈夫ですよ。私の服装をわざわざ褒めに来てくれました」
「そうですか」
半信半疑で私を見てくる鬼崎さんだが、嘘は言っていない。ただ、それ以外の発言に私は動揺してしまったが、わざわざ忘れさせたので、蒸し返す必要はない。
「おはよう、蒼紗!ああ、今日の服装も素敵な格好ね。ウサギの耳がとってもキュートね。蒼紗はあんまりパステルカラー着ないイメージだったから、新鮮ね」
「おはようございます。蒼紗さん、その服装、とても可愛らしいです。私もスカートを黄色にしたら、おそろいになりましたね」
鬼崎さんには何も言われなかったが、私は今日も、九尾の犠牲となった西園寺桜華の行っていたコスプレを行っていた。
本日の恰好は、4月ということを意識して、イースターバニーをイメージして服装を選んだ。ウサギ耳のカチューシャにピンクのふんわりとしたブラウス、黄色のシフォンのスカートを着用した。手には、編み込みのバックを持ち、中にはイースター限定のチョコをカラフルに数個忍ばせていた。
「イースターをイメージしてみたのですが、いかがでしょうか。かごに入っているのは、イースターエッグで、包装がかわいいので買って持ってきてしまいました」
私は、今日のコンセプトを説明する。イースターは過ぎてしまったが、気分を盛り上げるためにちょうどいいと思ったのだ。
「蒼紗って、イベントごとが苦手かと思っていたけど、案外、イベントごとが好きなのよね」
「イースターですか。そんなイベントがあるの、忘れていました。でも、可愛いので、私、明日は蒼紗さんみたいにウサギ耳つけてきます!」
「いや、明日は別の恰好をしますので、綾崎さんが浮いてしまいますよ」
二人は、私に影響されてなのか、コスプレみたいな恰好で大学に来ることが多くなった。今日の二人の服装は、ジャスミンは、ド派手なショッピングピンクのブラウスに蛍光色の黄色のスカートで目に痛い配色だった。綾崎さんは逆に、薄いピンクのカーディガンに緑のスカートを履いていた。
「私は、春だからピンクと黄色がいいかなと思ったのよ!でも、それが正解だったみたいね。蒼紗と配色が同じだもの」
「佐藤さんは毎回、色の決め方が目に痛いんですよ。ピンクと黄色だっていろいろあるでしょう。蒼紗さんと同じと言わないでください。その点、私の方が蒼紗さんに近いでしょう。お花をイメージしてみました!」
二人が私に各々の今日の服装の説明を始め、なぜか私に近いかどうかの口論を始めてしまった。これはいつものことで、すでに慣れてしまったため、無視することにした。
「ツッコミを入れようとは思っていましたが、やめておきます。では、私は先に講義室に行きますので」
ジャスミンと綾崎さんがやってきて口論を始めてしまったのが気に障ったのか、鬼崎さんは足早に講義室へ向かってしまった。私と隣の席にと言っていたのは冗談だったのだろうか。
「やっぱり、変な子ね」
「あれ、美瑠もいたんだね。蒼紗さんに会えたことがうれしくて、気付きませんでした」
鬼崎さんが立ち去ると、ようやく口論をやめ、彼女がいたことに気付く二人。私のことになると、他が見えなくなるのはどうにかならないものか。
「そろそろ私も急がないと、授業に遅れますよ!」
二人はスマホで時刻を確認し、私たちは慌てて教室に駆け込んだ。何とか授業開始前に教室に入ることができた。席は結構埋まっていたが、空いている席は見つかり、私たちは席に着いたのだった。綾崎さんの姿を探すと、教室の後ろの端に座っているのが見えた。
「昨日ぶりだねえ!蒼紗さん!」
「七尾君!」
「げっ、またきたよ」
昼食時間、食堂で昼食を食べていると、面倒な相手がやってきた。最近見かけなかった七尾が私たちに話しかけてきた。
「蒼紗さん、この大学って面白いね。僕が見たことないがない人種がいるよ!」
「ソレハドウモ。でも、人間に危害を加えたらダメですよ。九尾からも言われていると思いますけど」
「大丈夫だって、人間に危害を加える理由が、今の僕にはないから。それにしても、学食もおいしそうだよね。この前は、購買のパンを食べたんだけど、今日は学食のメニューにチャレンジしよう。ねえ、どうやって買うの?」
私の忠告に軽く返事をして、学食の使い方を聞いてくる七尾にため息が出た。春休みの怖い雰囲気がどこに行ったのか、あっけらかんと話している七尾を見ると、人外の存在には見えない。しかし、この前までの態度との急変は、やはり人間ではないと思わされるのだった。
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