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番外編【新しい扉を開く】4エイプリルフール
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「先輩、好きです。付き合ってください!」
明るい茶髪を肩まで伸ばした、化粧ばっちりの気の強い系美少女。河合江子。
「紗々先輩、私の方が先輩を幸せにできます。彼女ではなく、私を選んでください!」
黒髪ロングストレートの高身長清楚系美女。大鷹攻南(せな)
「せ、先輩の事なんか、す、好きじゃないですけど、どうしてもって言うのなら、付き合ってあげても構いませんよ」
茶髪のゆるふわパーマのツンデレ系美少女。佐藤梨々花。
そして私、黒髪ショートの黒焦げ女子高生。倉敷紗々。私は高校の時の制服(ブレザー)を身に着けていた。そして、目の前には同じように制服に身を包んだ三人の美女がいて、その三人に私は愛の告白を受けていた。
「あはははは!それで、三人から同時に告白されて、現実逃避よろしくその場から逃げてきたわけだ」
昨日の放課後の出来事を同じクラスの友達、きらりさんに話す。きらりさんは金髪ボブにピアスと恰好はいかついが、面倒見が良い性格で私の話し相手になってくれる。
「だって、さすがにこんな状況、フィクションでしかお目にかかったことがありませんよ。しかも、ハーレム主人公の立場ですよ!私は、そういった物語だとただのその辺にいるモブキャラですから」
「でもさあ、案外、紗々さんってハーレム系の物語の主人公になれる素質あるかもよ。現に、私は紗々さんのこと、結構気に入っているし」
「きらりさんは別ですよ。そもそも、あなたは梨江さん一筋でしょ」
「まあね」
愛の告白を同時に三人から受けてから数日。私は彼女達のどう返事をしていいのか悩み、寝不足気味であった。しかし、悩んでばかりもいられない。高校生の本分は勉強であり、眠いながらも私は懸命に宿題に取り組んでいた。しかし、眠気に勝てずに家で寝てしまい、休み時間にきらりさんから宿題を写させてもらっていた。
「失礼します!紗々先輩はいますか?」
「噂をすれば、最初にしびれを切らしたのは江子ちゃんだったね」
きらりさんは面白いおもちゃを見つけたかのように楽しそうな笑顔を浮かべて、私と河合さんを交互に見やる。クラスメイトは、何事かと騒いでいたが、私の名前と河合さんの顔を見て、すぐに静かになる。
「あのねえ、河合さん。いくら何でも私をそんな大声で呼ばなくても」
「でも、そうでもしないと先輩は私のこと、無視しますよね?」
「エエト……」
彼女のことは、クラスメイトにはすでに知れ渡っていた。河合江子。私より一学年下の高校二年生。たまたま部活が同じだったのだが、私が高校三年生で引退後、毎日のように私の教室にやってくるようになった。初めはクラスメイトも物珍しそうに河合さんを見ていたが、それが毎日となると慣れてしまう。彼女はすっかりクラスの日常となってしまった。
「江子、紗々先輩の迷惑になるようなことをしてはダメだよ。先輩、今日のお昼も一緒に食べましょう!先輩の好きな卵焼き、作ってきたのでぜひ、食べて欲しいです!」
「大鷹さん……」
河合さんの後ろからひょっこりと姿を現したのは、彼女と同じ高校一年生の大鷹攻南(せな)さんだ。彼女も私と同じ部活でマネージャーをしていた。河合さんと同じように私が部活引退後、毎日のように教室にやってくる。
「ちょっと、二人ばかり先輩と話していてひどいですう!紗々先輩、私も大鷹さんみたいに先輩に卵焼き、作ってきました!」
そして、さらにその後ろにいたのは、私より二学年下の佐藤梨々花さんだ。彼女も以下略。
「毎日、ご苦労なことだね。そんなぶっきらぼうな奴なんかじゃなくて、俺の方がよほどいい男だと思うけどね」
『お前には興味ない。引っ込んでろ』
私たちの会話に割り込んできたのは、幼馴染の当間。女子なのに俺という一人称のイタイ奴だ。黒髪を背中でひとくくりにしていて、ひょろっとした私と同じ学年の高校三年生。親の都合で中学は私と別だったのだが、高校で一緒になった。ことあるごとに私に絡んでくるので嫌になる。とはいえ、そう思っているのは私だけではないらしい。彼女たち三人の方がよほど、彼女のことが嫌いのようだ。
「おお、怖い怖い」
「あ、姉貴、またこんなところにいた。まったく、休み時間のたびに紗々さんのところに入り浸るなんて、どんだけ紗々さんのことが好きなの?」
私の高校での休み時間は静かとは程遠い。私に告白してきた三人の知り合いも続々と集まってくる。大鷹さんの妹の亨子(きょうこ)さんがやってきた。姉とは違い、黒髪に赤のインナーカラーを入れていて、目つきがやや悪い。
まったくもって、私の周りは毎日賑やかである。しかし、その賑やかさが嫌になることもある。
「あああ、あそこに私の好きな百合カップルが!」
私は教室の窓の外を指差し、大声で叫ぶ。教室のドアから窓の様子などほとんど見えない。しかし、効果はあった。彼女たちが窓に視線が集中している隙をついて、彼女たちの間をすり抜けて廊下に出る。そして、一目散に廊下を走り抜ける。
「先輩がいない!逃げられた」
「逃げ足は速いよね」
「この私が誘っているのに!」
「まったく、あんたたちは。紗々さんだってこうも毎日、来られると嫌になることもあるでしょ」
『でも……』
「でもじゃないです。今日のところは散った、散った」
私が廊下を走り抜けていたころ、教室ではきらりさんが彼女たちに解散を命じていた。
「そういえば、告白の返事、してないけど……」
目的地に着いた私は周囲に誰もいないことを確認する。そして、誰もいないことがわかると、一目散にベッドにダイブする。
「まあ、みんな気にしていなかったし、冗談だったのかも。とりあえず、頭も痛いから、昼休みまでの間、寝ようっと」
保健室のベッドに横たわると、すぐに睡魔が押し寄せる。そして私は目を閉じた数秒後には眠りの世界に旅立った。
この後、私は眠り姫よろしく、三人の美女の口づけを受けそうになるのをすんでのところでかわすことになるのだった。
ちなみにここは女子校で、私はもちろん、大鷹さんも弟の亨さんも、なぜか女性になっていた。
ジリジリジリジリ。
「いや、どんな夢だよ」
目覚ましの音で目を覚ますと、そこには見慣れた天井があり、私はいつものように自分の部屋のベッドにいた。スマホで日付を確認すると、今日は4月1日。エイプリルフールとも呼ばれる日だ。まさか、そんな日にぴったりの夢を見るとは思わなかった。
とはいえ、のんびりしている場合ではない。今日は火曜日で平日なので仕事がある。私は嫌々ながらもベッドから下りて、パジャマから部屋着に着替えて、リビングに向かった。
明るい茶髪を肩まで伸ばした、化粧ばっちりの気の強い系美少女。河合江子。
「紗々先輩、私の方が先輩を幸せにできます。彼女ではなく、私を選んでください!」
黒髪ロングストレートの高身長清楚系美女。大鷹攻南(せな)
「せ、先輩の事なんか、す、好きじゃないですけど、どうしてもって言うのなら、付き合ってあげても構いませんよ」
茶髪のゆるふわパーマのツンデレ系美少女。佐藤梨々花。
そして私、黒髪ショートの黒焦げ女子高生。倉敷紗々。私は高校の時の制服(ブレザー)を身に着けていた。そして、目の前には同じように制服に身を包んだ三人の美女がいて、その三人に私は愛の告白を受けていた。
「あはははは!それで、三人から同時に告白されて、現実逃避よろしくその場から逃げてきたわけだ」
昨日の放課後の出来事を同じクラスの友達、きらりさんに話す。きらりさんは金髪ボブにピアスと恰好はいかついが、面倒見が良い性格で私の話し相手になってくれる。
「だって、さすがにこんな状況、フィクションでしかお目にかかったことがありませんよ。しかも、ハーレム主人公の立場ですよ!私は、そういった物語だとただのその辺にいるモブキャラですから」
「でもさあ、案外、紗々さんってハーレム系の物語の主人公になれる素質あるかもよ。現に、私は紗々さんのこと、結構気に入っているし」
「きらりさんは別ですよ。そもそも、あなたは梨江さん一筋でしょ」
「まあね」
愛の告白を同時に三人から受けてから数日。私は彼女達のどう返事をしていいのか悩み、寝不足気味であった。しかし、悩んでばかりもいられない。高校生の本分は勉強であり、眠いながらも私は懸命に宿題に取り組んでいた。しかし、眠気に勝てずに家で寝てしまい、休み時間にきらりさんから宿題を写させてもらっていた。
「失礼します!紗々先輩はいますか?」
「噂をすれば、最初にしびれを切らしたのは江子ちゃんだったね」
きらりさんは面白いおもちゃを見つけたかのように楽しそうな笑顔を浮かべて、私と河合さんを交互に見やる。クラスメイトは、何事かと騒いでいたが、私の名前と河合さんの顔を見て、すぐに静かになる。
「あのねえ、河合さん。いくら何でも私をそんな大声で呼ばなくても」
「でも、そうでもしないと先輩は私のこと、無視しますよね?」
「エエト……」
彼女のことは、クラスメイトにはすでに知れ渡っていた。河合江子。私より一学年下の高校二年生。たまたま部活が同じだったのだが、私が高校三年生で引退後、毎日のように私の教室にやってくるようになった。初めはクラスメイトも物珍しそうに河合さんを見ていたが、それが毎日となると慣れてしまう。彼女はすっかりクラスの日常となってしまった。
「江子、紗々先輩の迷惑になるようなことをしてはダメだよ。先輩、今日のお昼も一緒に食べましょう!先輩の好きな卵焼き、作ってきたのでぜひ、食べて欲しいです!」
「大鷹さん……」
河合さんの後ろからひょっこりと姿を現したのは、彼女と同じ高校一年生の大鷹攻南(せな)さんだ。彼女も私と同じ部活でマネージャーをしていた。河合さんと同じように私が部活引退後、毎日のように教室にやってくる。
「ちょっと、二人ばかり先輩と話していてひどいですう!紗々先輩、私も大鷹さんみたいに先輩に卵焼き、作ってきました!」
そして、さらにその後ろにいたのは、私より二学年下の佐藤梨々花さんだ。彼女も以下略。
「毎日、ご苦労なことだね。そんなぶっきらぼうな奴なんかじゃなくて、俺の方がよほどいい男だと思うけどね」
『お前には興味ない。引っ込んでろ』
私たちの会話に割り込んできたのは、幼馴染の当間。女子なのに俺という一人称のイタイ奴だ。黒髪を背中でひとくくりにしていて、ひょろっとした私と同じ学年の高校三年生。親の都合で中学は私と別だったのだが、高校で一緒になった。ことあるごとに私に絡んでくるので嫌になる。とはいえ、そう思っているのは私だけではないらしい。彼女たち三人の方がよほど、彼女のことが嫌いのようだ。
「おお、怖い怖い」
「あ、姉貴、またこんなところにいた。まったく、休み時間のたびに紗々さんのところに入り浸るなんて、どんだけ紗々さんのことが好きなの?」
私の高校での休み時間は静かとは程遠い。私に告白してきた三人の知り合いも続々と集まってくる。大鷹さんの妹の亨子(きょうこ)さんがやってきた。姉とは違い、黒髪に赤のインナーカラーを入れていて、目つきがやや悪い。
まったくもって、私の周りは毎日賑やかである。しかし、その賑やかさが嫌になることもある。
「あああ、あそこに私の好きな百合カップルが!」
私は教室の窓の外を指差し、大声で叫ぶ。教室のドアから窓の様子などほとんど見えない。しかし、効果はあった。彼女たちが窓に視線が集中している隙をついて、彼女たちの間をすり抜けて廊下に出る。そして、一目散に廊下を走り抜ける。
「先輩がいない!逃げられた」
「逃げ足は速いよね」
「この私が誘っているのに!」
「まったく、あんたたちは。紗々さんだってこうも毎日、来られると嫌になることもあるでしょ」
『でも……』
「でもじゃないです。今日のところは散った、散った」
私が廊下を走り抜けていたころ、教室ではきらりさんが彼女たちに解散を命じていた。
「そういえば、告白の返事、してないけど……」
目的地に着いた私は周囲に誰もいないことを確認する。そして、誰もいないことがわかると、一目散にベッドにダイブする。
「まあ、みんな気にしていなかったし、冗談だったのかも。とりあえず、頭も痛いから、昼休みまでの間、寝ようっと」
保健室のベッドに横たわると、すぐに睡魔が押し寄せる。そして私は目を閉じた数秒後には眠りの世界に旅立った。
この後、私は眠り姫よろしく、三人の美女の口づけを受けそうになるのをすんでのところでかわすことになるのだった。
ちなみにここは女子校で、私はもちろん、大鷹さんも弟の亨さんも、なぜか女性になっていた。
ジリジリジリジリ。
「いや、どんな夢だよ」
目覚ましの音で目を覚ますと、そこには見慣れた天井があり、私はいつものように自分の部屋のベッドにいた。スマホで日付を確認すると、今日は4月1日。エイプリルフールとも呼ばれる日だ。まさか、そんな日にぴったりの夢を見るとは思わなかった。
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