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番外編【新年の目標】1積極的に外に出る
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「もうすっかり、正月も明けましたねえ」
「早いですよね。ついこの前までクリスマスで、年が明けたと思ったら、って感じですね」
「大鷹さんは今年、どんな目標をたてました?」
昨日は1月7日。あっという間に2024年が終わり、2025年も正月が終わって仕事が始まった。昨日は七草がゆを食べて正月が終わったことを実感したところだ。今日の夕食は寒いのでおでん。あつあつのちくわを頬張りながら、大鷹さんに質問する。
「僕、ですか?僕は……」
紗々さんが僕の事をもっと好きになってくれるように努力することです。
大鷹さんは笑顔でトンデモないことを言いきった。そもそも、そんな目標でも何でもないことを堂々と本人の前で言わないで欲しい。言われた方が恥ずかしくなってしまう。
「わ、私はですね……」
次は紗々さんの番ですね、と大鷹さんからの熱い視線に負けて、仕方なく私も今年の目標を語ることにする。絶対に大鷹さんよりもまともな目標である自信がある。
「外に積極的に出ることです!」
「外」
「そうです!ほら、今年の年末にちょっとした旅行に出かけたでしょう?それが思いのほか楽しかったし、面白い経験にもなったので」
今年(去年)は珍しく、年末に日帰り旅行をした。前からはまっている刀剣のゲームのコラボがやっている博物館に行った。キャラとなっている日本刀の実物を見るのだが、刀からそのキャラクターは想像できない。とはいえ、日本刀の実物を見るということが大切なのだ。実物を見て、そこでコラボグッズを買うことに意義がある。
「何度見ても、やはり日本刀の実物を見るのは楽しいです」
実際に見たところで、どれも同じようなものに見えるのだが、そのあたりは波紋や反りが感覚で凄いと訴えてくるのでそれに従うのみだ。実際のところ、違いがあまりよくわからない。
ゲームのコラボがやっている博物館に行くのは今回が初めてではない。大鷹さんと結婚相談所で会った時も、別の場所ではあるが一緒に訪れたことがある。母親と行くこともあった。しかし、毎回コラボする博物館は違うし、刀も異なる。毎回、新たな場所を訪れるのでちょっとした遠出にぴったりである。
「紗々さんと出会わなかったら、日本刀をじっくり見ることなんてなかったと思うので、僕にとっても良い経験です」
それはよいことだ。大鷹さんの言葉にうれしくなる。大鷹さんが私と結婚するメリットはほぼない。ほぼないのだが、こうして私と一緒に過ごすことで、新たな経験をしてくれるのは数少ないメリットと言えるだろう。
「じゃあ、今後も私と一緒に日本刀巡りをしましょう!」
今後も大鷹さんと一緒に居る未来がある。
最近はそれだけで幸せな気持ちになる。とはいえ、いまだに心の片隅には大鷹さんの未来を私が奪ってしまったという罪悪感もある。大鷹さんには、私よりもふさわしい人がいる。だからこそ、早いうちに新たな相手を見つけて離婚すべきだという心の声も聞こえるが無視している。
「日本刀を見るのも楽しかったですけど、私たちだけがはしゃいでいて、他の人が見向きもしないご当地○○モンマンホールも良かったです」
「あれはなかなかシュールでしたね……。僕も紗々さんと一緒じゃなかったら普通に素通りでしたよ」
今回の旅行は日本刀とゲームのコラボの為に県外の博物館に行ったのだが、その地域に○○モンのマンホールが点在していて、そのうちのいくつかを見ることができそうだったので、大鷹さんに頼んで写真に収めた。駅や道の駅などのスポット、その他には博物館や美術館などの商業施設にあることが多い。
「ご当地○○モンのマンホールと騒いでいたのは私たちだけっていうのは、寂しいものがありますね。○○モンのゲームは結構流行っている気がするのに」
「確かにゲームが出るたびに結構な話題にはなりますね。最近だと、睡眠アプリとか、カードゲームアプリとか。そういえば、紗々さんが以前、フリマアプリで売ろうとしていたカードも○○モンのものでしたよね?」
「そうですよ!だから、○○モンの人気は衰えていないはずだと思うんですけど……。それに、マンホールは人気なくても、化石だったり、陶芸だったりとコラボしていて、どこも予約なしでは見に行けないほどの人気ぶりですよ!」
○○モンは私が幼稚園くらいの頃から続いている。ゲームにアニメ、漫画など様々な媒体で親しまれている。昔はゲームやアニメにはまっていたが、今は博物館のコラボやグッズのコラボなどにはまっている。
ご当地○○モンマンホールしかり、お土産しかり、目に付いたらとりあえず買ってしまうくらいにはまだまだ熱中している。
私は○○モンについて力説した。大鷹さんは私の要望にしっかりと耳を傾けてくれる。心が広い素晴らしい夫である。
「僕も昔は結構はまっていました。中学生の頃がピークで、それからずっと○○モンからは遠ざかっていて、紗々さんと結婚してからまたはまりだしたって感じです」
「アニメとかって、ヤッパリ子供の趣味なんですかねえ」
今でこそ、アニメは日本の文化だと言われているが、それでもそれは一部の人間が騒いでいるだけで、大半の大人はアニメを子供が見るもの、オタクのものだと思っているのかもしれない。
「そうだとしても、別に悪いことをしているわけではないので、堂々と好きと言ってもいいと思いますよ」
それに、アニメ好きが高じて良いこともありますし。
「何か言いました?」
大鷹さんの後半の言葉は独り言のようで聞き取れなかった。笑顔の大鷹さんだが、何を言いたかったのか気になるところだ。じいと熱い視線を送ると、大鷹さんはやはり笑顔のまま私を見つめ返す。
「引きこもり気味の紗々さんが外に出たいと言い出す理由が出来て、アニメには感謝していると言いました」
「はあ」
「でも、これは紗々さんに限ったことではないみたいですよ。○○モンのアプリによって、公園やその他いろいろな場所に行くようになったというのをネットで見たことがあります」
どうやら、私が自発的に外に出る宣言したことがよほどうれしいようだ。確かにそのような記事をネットで見たことがあるので、アニメは健康促進の面もあるのかもしれない。
「紗々さんが外に出たいというのなら、今年は海外に行くというのはどうでしょう?僕たち、新婚旅行らしい旅行をしていないので」
「新婚旅行……」
言われてみれば、一泊や二泊くらいの国内旅行はしたことがあるが、大鷹さんと海外には行っていないし、新婚旅行らしい旅行はしていない。
「さっそく、今年の目標が叶いそうです」
「では、一緒にどこに行くか考えましょう」
こうして、私たちは新婚旅行(海外旅行)という大きな目標を掲げることになった。
「早いですよね。ついこの前までクリスマスで、年が明けたと思ったら、って感じですね」
「大鷹さんは今年、どんな目標をたてました?」
昨日は1月7日。あっという間に2024年が終わり、2025年も正月が終わって仕事が始まった。昨日は七草がゆを食べて正月が終わったことを実感したところだ。今日の夕食は寒いのでおでん。あつあつのちくわを頬張りながら、大鷹さんに質問する。
「僕、ですか?僕は……」
紗々さんが僕の事をもっと好きになってくれるように努力することです。
大鷹さんは笑顔でトンデモないことを言いきった。そもそも、そんな目標でも何でもないことを堂々と本人の前で言わないで欲しい。言われた方が恥ずかしくなってしまう。
「わ、私はですね……」
次は紗々さんの番ですね、と大鷹さんからの熱い視線に負けて、仕方なく私も今年の目標を語ることにする。絶対に大鷹さんよりもまともな目標である自信がある。
「外に積極的に出ることです!」
「外」
「そうです!ほら、今年の年末にちょっとした旅行に出かけたでしょう?それが思いのほか楽しかったし、面白い経験にもなったので」
今年(去年)は珍しく、年末に日帰り旅行をした。前からはまっている刀剣のゲームのコラボがやっている博物館に行った。キャラとなっている日本刀の実物を見るのだが、刀からそのキャラクターは想像できない。とはいえ、日本刀の実物を見るということが大切なのだ。実物を見て、そこでコラボグッズを買うことに意義がある。
「何度見ても、やはり日本刀の実物を見るのは楽しいです」
実際に見たところで、どれも同じようなものに見えるのだが、そのあたりは波紋や反りが感覚で凄いと訴えてくるのでそれに従うのみだ。実際のところ、違いがあまりよくわからない。
ゲームのコラボがやっている博物館に行くのは今回が初めてではない。大鷹さんと結婚相談所で会った時も、別の場所ではあるが一緒に訪れたことがある。母親と行くこともあった。しかし、毎回コラボする博物館は違うし、刀も異なる。毎回、新たな場所を訪れるのでちょっとした遠出にぴったりである。
「紗々さんと出会わなかったら、日本刀をじっくり見ることなんてなかったと思うので、僕にとっても良い経験です」
それはよいことだ。大鷹さんの言葉にうれしくなる。大鷹さんが私と結婚するメリットはほぼない。ほぼないのだが、こうして私と一緒に過ごすことで、新たな経験をしてくれるのは数少ないメリットと言えるだろう。
「じゃあ、今後も私と一緒に日本刀巡りをしましょう!」
今後も大鷹さんと一緒に居る未来がある。
最近はそれだけで幸せな気持ちになる。とはいえ、いまだに心の片隅には大鷹さんの未来を私が奪ってしまったという罪悪感もある。大鷹さんには、私よりもふさわしい人がいる。だからこそ、早いうちに新たな相手を見つけて離婚すべきだという心の声も聞こえるが無視している。
「日本刀を見るのも楽しかったですけど、私たちだけがはしゃいでいて、他の人が見向きもしないご当地○○モンマンホールも良かったです」
「あれはなかなかシュールでしたね……。僕も紗々さんと一緒じゃなかったら普通に素通りでしたよ」
今回の旅行は日本刀とゲームのコラボの為に県外の博物館に行ったのだが、その地域に○○モンのマンホールが点在していて、そのうちのいくつかを見ることができそうだったので、大鷹さんに頼んで写真に収めた。駅や道の駅などのスポット、その他には博物館や美術館などの商業施設にあることが多い。
「ご当地○○モンのマンホールと騒いでいたのは私たちだけっていうのは、寂しいものがありますね。○○モンのゲームは結構流行っている気がするのに」
「確かにゲームが出るたびに結構な話題にはなりますね。最近だと、睡眠アプリとか、カードゲームアプリとか。そういえば、紗々さんが以前、フリマアプリで売ろうとしていたカードも○○モンのものでしたよね?」
「そうですよ!だから、○○モンの人気は衰えていないはずだと思うんですけど……。それに、マンホールは人気なくても、化石だったり、陶芸だったりとコラボしていて、どこも予約なしでは見に行けないほどの人気ぶりですよ!」
○○モンは私が幼稚園くらいの頃から続いている。ゲームにアニメ、漫画など様々な媒体で親しまれている。昔はゲームやアニメにはまっていたが、今は博物館のコラボやグッズのコラボなどにはまっている。
ご当地○○モンマンホールしかり、お土産しかり、目に付いたらとりあえず買ってしまうくらいにはまだまだ熱中している。
私は○○モンについて力説した。大鷹さんは私の要望にしっかりと耳を傾けてくれる。心が広い素晴らしい夫である。
「僕も昔は結構はまっていました。中学生の頃がピークで、それからずっと○○モンからは遠ざかっていて、紗々さんと結婚してからまたはまりだしたって感じです」
「アニメとかって、ヤッパリ子供の趣味なんですかねえ」
今でこそ、アニメは日本の文化だと言われているが、それでもそれは一部の人間が騒いでいるだけで、大半の大人はアニメを子供が見るもの、オタクのものだと思っているのかもしれない。
「そうだとしても、別に悪いことをしているわけではないので、堂々と好きと言ってもいいと思いますよ」
それに、アニメ好きが高じて良いこともありますし。
「何か言いました?」
大鷹さんの後半の言葉は独り言のようで聞き取れなかった。笑顔の大鷹さんだが、何を言いたかったのか気になるところだ。じいと熱い視線を送ると、大鷹さんはやはり笑顔のまま私を見つめ返す。
「引きこもり気味の紗々さんが外に出たいと言い出す理由が出来て、アニメには感謝していると言いました」
「はあ」
「でも、これは紗々さんに限ったことではないみたいですよ。○○モンのアプリによって、公園やその他いろいろな場所に行くようになったというのをネットで見たことがあります」
どうやら、私が自発的に外に出る宣言したことがよほどうれしいようだ。確かにそのような記事をネットで見たことがあるので、アニメは健康促進の面もあるのかもしれない。
「紗々さんが外に出たいというのなら、今年は海外に行くというのはどうでしょう?僕たち、新婚旅行らしい旅行をしていないので」
「新婚旅行……」
言われてみれば、一泊や二泊くらいの国内旅行はしたことがあるが、大鷹さんと海外には行っていないし、新婚旅行らしい旅行はしていない。
「さっそく、今年の目標が叶いそうです」
「では、一緒にどこに行くか考えましょう」
こうして、私たちは新婚旅行(海外旅行)という大きな目標を掲げることになった。
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