170 / 234
番外編【自分の着たいものを着ればいい】1冬の格好はチェックシャツ+カーディガン
しおりを挟む
「ううう、今年も冬がやってきましたね。冬は嫌いです」
「毎年言っていますよね?確かに今年も寒いですね」
12月も終わりに近づいてきた。もうすぐ、クリスマスがあってそれを越えたらすぐに大晦日でお正月になる。今年もあっという間に終わってしまった。
「これで雪まで降ったら、大変なことになっていました。雪がない県に住んでいて本当に良かったです」
「そうですね。僕は雪がある県に住んだことがないので、本当の苦労は知りませんが、それでも想像するだけで大変なのはわかります」
クリスマスを来週に控えた週末、私たちは家でのんびりと過ごしていた。そもそも、私は基本的に用事がなければ家に引きこもりがちなので、いつも通りの週末ともいえる。私に合わせて大鷹さんも家にいる感じだ。
「そういえば、紗々さんって冬はいつもチェックシャツにカーディガンって格好ですよね?何かこだわりとかあるんですか?」
リビングにエアコンを入れて、ダイニングテーブルに座って雑談していたら、大鷹さんに服装の事を突っ込まれた。
「こだわり……」
私もそれは気にしていたことだ。どうしても、冬の外出着となるとチェックシャツにカーディガンのセットになってしまう。私としては、それが一番効率的な服装なのだが、他人から見たらいつも同じ格好の変な人だと思われているのだろうか。
「いえ、話したくないなら別に構いません。紗々さんが好きでその格好をしているなら」
「好きという訳ではないのですが……」
どう説明したらよいだろうか。大鷹さんは私の言葉の続きを黙って待っていた。仕方ないので、私なりの理由を説明することにする。
「冬の格好の定番と言えば、ニットやセーターとかですよね。私、そういうのって苦手で、それを除いた暖かい服装を模索した結果、カーディガンに行きついたわけです」
「なるほど」
「ニットとかセーターって、下着の上に直接着ることが多いじゃないですか?どうしても首元とか直接肌に触れることになって、それが嫌なんですよ。チクチクするし、肌に触れているので、洗わずに何度も着たくないし」
大鷹さんは私の言葉に理解を示すように相槌を打ってくれる。どうやら、このあたりの感覚は普通の人と同じらしい。しかし、反論もあるようだ。
「でも、そうだとしても、最近はチクチクしない素材のものもあるし、洗えるものも多いと思いますが」
「一回着るたびに洗っていたら、すぐにダメになってしまうじゃないですか。それに、ニットとかセーターは普通に洗濯するんじゃなくて、おしゃれ着洗いにする必要があるので、それも面倒ですよね?」
「確かに言われてみればそうですけど……」
「その点、カーディガンならシャツやTシャツの上に羽織ることになるので、肌に直接触れることもない。さらには洗わずに数回着ても気にならない。私が着ている大きな理由です」
大鷹さんは納得しているようで、納得していない、複雑な表情をしていた。つまり、納得できる部分もあるが、そうでない部分もあるということだ。
「理由はわかりましたが、シャツがチェックシャツばかりというのはどうしてですか?カーディガンの中に合わせるなら、Tシャツでもいいし、タートルネックや無地のシャツでも構わないのでは?」
気になる部分はそこらしい。つまり、大鷹さんは。
「チェックシャツを着ている私がオタクに見えるということですか?」
大鷹さんは最初からそれが言いたかったのだ。カーディガンは単なるおまけで、実際に気になったのはチェックシャツのほうだった。
「オタクに見えるなんて、僕は言ってな」
「それは偏見だと思います。チェックシャツだって、うまく着こなせばオシャレに見えますし、そんなことを言ったら、結構な人を敵に回すことになりますよ」
「だからそんなことは言っていませんって。ただ純粋に他の組み合わせをしないのはなぜなのか気になっただけです」
「ふむ……」
しかし、大鷹さんが私の服装に興味を持っていたとは驚きだ。大鷹さんほどのイケメンだと、周りには自然と美人や自分の容姿に自信がある人が寄ってくるだろう。そんな人たちを選ぶことなく、結婚相手に私を選んだ時点で容姿を見て決めたのではないことはわかっている。だからこそ、今まで服装について言及されたことがなかった。
「いや、スカートについては言われたことがあった気がする」
「スカートは今の話に関係ありますか?」
つい、心の声が口から出てしまった。そして、大鷹さんが目ざとく聞いていて突っ込まれる。スカートについては解決しているので、今回はスルーさせてもらう。
「大鷹さんは私が同じ格好をするのは嫌ですか?」
正確にいえば、チェックシャツを着る私は嫌ですか?と聞きたかった。とはいえ、それを聞いて肯定されたら困ってしまう。私の冬に着る服がなくなってしまう。
ちなみにどうしてチェックシャツばかりなのかというと、単純にそれしか選択肢がないからだ。タートルネックはニットなどと同様、首もとがチクチクするし、Tシャツは逆に首元が空いていて冬に着るには寒い。無地のシャツについては、カーディガンが無地なので地味になってしまう。逆にカーディガンの柄物はオシャレ上級度が上がり、私が着るとダサく見えてしまう。
チェックシャツはそれらの欠点がない。オタクのものという謎の偏見を除けば、とても優秀な服である。カーディガンの無地に合わせるとオシャレに見えるし、首元も襟があるので暖かい。素材も柄もたくさんあるので、一概に同じ格好とは言い難い。
「そんな悲しい顔をしないでください。ワカリマシタ。紗々さんがそれでいいのなら、僕もそれで構いません」
大鷹さんから振ってきた話題なのに、なぜか大鷹さん自ら話題を終らせてしまった。いったい、何が言いたかったのか。とりあえず、今の私に言えることはひとつ。
「チェックシャツはオタクのアイテムではありません!」
そこだけは主張させてもらう。私はオタクと呼ばれてもおかしくはない人間だが、それとこれとは話が違う。
「ソウデスネ。そんなことはわかっていますよ」
「そういえば、今日は冬至ですね。昨日、スーパーに行ったら、店内放送で冬至の説明がされていて、野菜コーナーにカボチャと柚子が売っていたので、買ってきました。今日の夕食はカボチャシチューにして、お風呂には柚子を入れましょうね!」
「今日が冬至だとすっかり忘れていました。季節を感じる食事や文化はいいものですね。夜が楽しみです」
大鷹さんは自ら振った話題を蒸し返すことなく、私の唐突な話題転換についてきた。私たちは外の寒さを横目に見ながら、エアコンの効いた暖かい室内でどうでも良い会話を繰り広げていた。
「毎年言っていますよね?確かに今年も寒いですね」
12月も終わりに近づいてきた。もうすぐ、クリスマスがあってそれを越えたらすぐに大晦日でお正月になる。今年もあっという間に終わってしまった。
「これで雪まで降ったら、大変なことになっていました。雪がない県に住んでいて本当に良かったです」
「そうですね。僕は雪がある県に住んだことがないので、本当の苦労は知りませんが、それでも想像するだけで大変なのはわかります」
クリスマスを来週に控えた週末、私たちは家でのんびりと過ごしていた。そもそも、私は基本的に用事がなければ家に引きこもりがちなので、いつも通りの週末ともいえる。私に合わせて大鷹さんも家にいる感じだ。
「そういえば、紗々さんって冬はいつもチェックシャツにカーディガンって格好ですよね?何かこだわりとかあるんですか?」
リビングにエアコンを入れて、ダイニングテーブルに座って雑談していたら、大鷹さんに服装の事を突っ込まれた。
「こだわり……」
私もそれは気にしていたことだ。どうしても、冬の外出着となるとチェックシャツにカーディガンのセットになってしまう。私としては、それが一番効率的な服装なのだが、他人から見たらいつも同じ格好の変な人だと思われているのだろうか。
「いえ、話したくないなら別に構いません。紗々さんが好きでその格好をしているなら」
「好きという訳ではないのですが……」
どう説明したらよいだろうか。大鷹さんは私の言葉の続きを黙って待っていた。仕方ないので、私なりの理由を説明することにする。
「冬の格好の定番と言えば、ニットやセーターとかですよね。私、そういうのって苦手で、それを除いた暖かい服装を模索した結果、カーディガンに行きついたわけです」
「なるほど」
「ニットとかセーターって、下着の上に直接着ることが多いじゃないですか?どうしても首元とか直接肌に触れることになって、それが嫌なんですよ。チクチクするし、肌に触れているので、洗わずに何度も着たくないし」
大鷹さんは私の言葉に理解を示すように相槌を打ってくれる。どうやら、このあたりの感覚は普通の人と同じらしい。しかし、反論もあるようだ。
「でも、そうだとしても、最近はチクチクしない素材のものもあるし、洗えるものも多いと思いますが」
「一回着るたびに洗っていたら、すぐにダメになってしまうじゃないですか。それに、ニットとかセーターは普通に洗濯するんじゃなくて、おしゃれ着洗いにする必要があるので、それも面倒ですよね?」
「確かに言われてみればそうですけど……」
「その点、カーディガンならシャツやTシャツの上に羽織ることになるので、肌に直接触れることもない。さらには洗わずに数回着ても気にならない。私が着ている大きな理由です」
大鷹さんは納得しているようで、納得していない、複雑な表情をしていた。つまり、納得できる部分もあるが、そうでない部分もあるということだ。
「理由はわかりましたが、シャツがチェックシャツばかりというのはどうしてですか?カーディガンの中に合わせるなら、Tシャツでもいいし、タートルネックや無地のシャツでも構わないのでは?」
気になる部分はそこらしい。つまり、大鷹さんは。
「チェックシャツを着ている私がオタクに見えるということですか?」
大鷹さんは最初からそれが言いたかったのだ。カーディガンは単なるおまけで、実際に気になったのはチェックシャツのほうだった。
「オタクに見えるなんて、僕は言ってな」
「それは偏見だと思います。チェックシャツだって、うまく着こなせばオシャレに見えますし、そんなことを言ったら、結構な人を敵に回すことになりますよ」
「だからそんなことは言っていませんって。ただ純粋に他の組み合わせをしないのはなぜなのか気になっただけです」
「ふむ……」
しかし、大鷹さんが私の服装に興味を持っていたとは驚きだ。大鷹さんほどのイケメンだと、周りには自然と美人や自分の容姿に自信がある人が寄ってくるだろう。そんな人たちを選ぶことなく、結婚相手に私を選んだ時点で容姿を見て決めたのではないことはわかっている。だからこそ、今まで服装について言及されたことがなかった。
「いや、スカートについては言われたことがあった気がする」
「スカートは今の話に関係ありますか?」
つい、心の声が口から出てしまった。そして、大鷹さんが目ざとく聞いていて突っ込まれる。スカートについては解決しているので、今回はスルーさせてもらう。
「大鷹さんは私が同じ格好をするのは嫌ですか?」
正確にいえば、チェックシャツを着る私は嫌ですか?と聞きたかった。とはいえ、それを聞いて肯定されたら困ってしまう。私の冬に着る服がなくなってしまう。
ちなみにどうしてチェックシャツばかりなのかというと、単純にそれしか選択肢がないからだ。タートルネックはニットなどと同様、首もとがチクチクするし、Tシャツは逆に首元が空いていて冬に着るには寒い。無地のシャツについては、カーディガンが無地なので地味になってしまう。逆にカーディガンの柄物はオシャレ上級度が上がり、私が着るとダサく見えてしまう。
チェックシャツはそれらの欠点がない。オタクのものという謎の偏見を除けば、とても優秀な服である。カーディガンの無地に合わせるとオシャレに見えるし、首元も襟があるので暖かい。素材も柄もたくさんあるので、一概に同じ格好とは言い難い。
「そんな悲しい顔をしないでください。ワカリマシタ。紗々さんがそれでいいのなら、僕もそれで構いません」
大鷹さんから振ってきた話題なのに、なぜか大鷹さん自ら話題を終らせてしまった。いったい、何が言いたかったのか。とりあえず、今の私に言えることはひとつ。
「チェックシャツはオタクのアイテムではありません!」
そこだけは主張させてもらう。私はオタクと呼ばれてもおかしくはない人間だが、それとこれとは話が違う。
「ソウデスネ。そんなことはわかっていますよ」
「そういえば、今日は冬至ですね。昨日、スーパーに行ったら、店内放送で冬至の説明がされていて、野菜コーナーにカボチャと柚子が売っていたので、買ってきました。今日の夕食はカボチャシチューにして、お風呂には柚子を入れましょうね!」
「今日が冬至だとすっかり忘れていました。季節を感じる食事や文化はいいものですね。夜が楽しみです」
大鷹さんは自ら振った話題を蒸し返すことなく、私の唐突な話題転換についてきた。私たちは外の寒さを横目に見ながら、エアコンの効いた暖かい室内でどうでも良い会話を繰り広げていた。
0
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる