結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【フリマアプリはほどほどに】1値段高騰中

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「紗々さん、その荷物、どうしたんですか?」

 お盆が過ぎて、学生たちの夏休みももうすぐ終わりを迎える。社会人はお盆を終えて、またいつもの日常に戻っている。銀行勤めの私にはお盆など関係ないが、それでもお盆休み中の土日に実家に帰省していた。

「実家の自分の部屋を整理して出て来た、昔のアニメグッズです。ほら、最近、家のアニメグッズをフリマアプリで売っているじゃないですか?実家にもないかと探していて、押入れから見つけたんです!」

「はあ」

 リビングのテーブルの下に置かれた段ボールが大鷹さんは気になったのだろう。箱の中には、実家から持ってきたアニメグッズが大量に入っていた。

 お盆明けの週末、私は朝から熱心にアニメグッズの写真を撮っていた。フリマアプリは嵌まるとなかなか抜け出せない。何年も前の商品が、その当時の定価より高く売れたり、逆に最近のアニメグッズが値段を下げても売れなかったりする。その差が興味深い。

 段ボール箱からアニメグッズを広げて写真を撮っていたら、大鷹さんが不審そうな顔をしていたので、仕方なく説明することにした。

「ほら、一時期、○○モンカードが高騰しているっていうのが話題になったでしょう?それで、その時は家には高値が付くカードがなかったなあとあきらめていたんです。ですが、最近、フリマアプリを始めて、あることに気付いたんです」

 最近では、暇さえあればスマホでフリマアプリをチェックしている。フリマアプリでは、出品した商品が売れると、メールが自動で送られることになっている。つまり、メールがなければ商品は売れていないことになる。だから、そこまで頻繁にサイトを覗く必要はないのだが。

「バトルカード以外にも高値のカードがあることに」

「それって本当ですか?」

 大鷹さんは私の説明を信じていないようだ。詐欺師に騙された人を憐れむような表情だ。まったく、これだからフリマアプリ素人はダメなのだ。私も初めはそんなの嘘だと思っていた。しかし、サイトで他人の出品している商品をよく見ると、紙きれ一枚にしてはあまりにも衝撃的な値段がつけられていたのだ。

「これとか、見てください!私の言っていることが本当だと、自分で確かめてください!」

 やはり、信じてもらうには言葉だけでは難しい。私はスマホのカメラアプリを閉じ、フリマアプリを起動する。閲覧履歴からあるカードの商品説明をタップする。金額と「売り切れ」という文字が映ったスマホの画面を大鷹さんに見せつける。

「一十百千万、十万……。これ、バグってないですか?カード一枚に15万円の値段が設定されていますけど」

「嘘ではないです。それに、この文字を見てください。売り切れってありますよね?つまり、このカードは15万円で買われたってことです」

「信じられない。だって、このカード、かなり前のものですよね。ええと、説明文には25年前って書いてあります」

 私の説明の根拠として、高額で取引されているカードの画面を見せたのに、どうやら逆効果だったみたいだ。あまりの金額の高さに頭を抱えている。

「とはいえ、こんなに高額なカードを私は持っていません。でも、これくらいなら私だって出品できますよ」

 さすがに私の手持ちのカードにそこまで高額で売れるものはない。そもそも、子供のころのものなので、保管方法も良くないし、カードは黒ずみやシミ、欠けががある。さらに最悪なことに。

「まあ、売れるカードはあるんですけど……」

「ああ、これはダメだ」

 まさかのカードをまとめていた輪ゴムが経年劣化で溶けてしまい、あろうことか、カードに張り付いてしまったのだ。それがなければ、結構な金額が付きそうなカードもあったのに。

 大鷹さんに実際に溶けたゴムがへばりついたカードを見せると、同情してくれた。

「今時の○○モンのカード事情は恐ろしいですね。紗々さんがフリマアプリに熱が入るのも多少はわかる気がします」

 ようやく大鷹さんは私がフリマアプリに嵌まっている理由を理解してもらえた。やはり、身内に理解がある方がやりやすい。

 ということで、私もこのブームに乗り、実家から持ってきた○○カードを高額で売ってみることにした。

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