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番外編【友達】2思い出
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「大鷹さんは学生時代、休みはどう過ごしていました?夏休みとか冬休みはどうでした?やっぱり、友達とワイワイ過ごしましたか?」
帰宅後、さっそく私と世間の認識のずれを確認するため、大鷹さんに質問する。最近は人手不足の影響もあり、定時で帰宅できる日が少ない。残業代はもらえるので頑張るが、それでも定時に仕事が終わるくらいの仕事量が望ましい。昼間に河合さんと話した「週休三日制」はいつになったら実現されるのか。
私とは反対に、大鷹さんは定時に帰ってくることが多い。今日もまた、大鷹さんが私より先に帰宅していた。定時上がりの人間と残業アリの給料がどうしてこれほどまでに違うのか。いや、詳細な金額までは見ていないが、大鷹さんはかなりの高給取りだ。まったく、残業するのが馬鹿らしくなってくる。
「学生時代の休みなんて、久しぶりに思い出しますね。今度のネタに使うんですか?」
とりあえず、帰ってきたら帰宅の挨拶が先だと思いますけど。
帰宅後一番の私の質問に大鷹さんは驚いていたが、持ち前の勘の良さを発揮してくれた。しかし、ぼそりとつぶやかれた言葉は手厳しい。確かに「親しき中にも礼儀あり」である。
「た、ただいま戻りました」
「おかえりなさい。紗々さん」
まだ玄関に居たので、改めて帰宅の挨拶をして靴を脱いで家に上がる。大鷹さんはリビングにいて夕食の準備を進めていたようだ。私が帰ってきたことを察して、リビングから玄関に顔を出してくれていた。毎回、出来過ぎた夫だと感心している。今日はしゃぶしゃぶのようだ。
「まずは紗々さんの学生時代の休みから聞いていきましょうか」
「はあ」
夕食の豚肉のしゃぶしゃぶをお腹いっぱいに食べた私は、食後になぜか大鷹さんから取り調べを受けるかのように質問されていた。テーブルを挟んで対面に私と大鷹さんが座っている。心なしか、私を見る目が厳しい気がするのは気のせいか。ただ、学生時代の休みを暴露するだけなのに、どうしてこんなに緊張するのか。
「あれ、そういえばこの話って、前に大鷹さんにしたことありませんでしたか?」
ふと、大鷹さんを見ていたら思い出す。結婚後、一緒に住むという話になり、そこでお互いの条件について話し合った時のことだ。その時に私の休日の過ごし方はあらかた説明したはずだ。
「だとしたら、この話は無しにしましょう。同じ話を何度も聞かせるのも、大鷹さんに悪いですし」
とはいえ、あの時は土日などの通常の休みに限定していた。今、私が考えている新しいネタは学校での長期休暇をメインにしたい。まあ、長期休暇は二次元からこっそりアイデアを拝借すれば問題ないだろう。そもそも、二次元の彼らに授業中の描写などあまり必要ない。必要なのは充実したイベント盛りだくさんな長期休暇だけだ。あとは休み時間と放課後。
二次元とはなんと罪深いことか。だからこそ、治安が悪い話が多いのかもしれない。
「……」
先ほどから、大鷹さんの返事がない。なぜ一方的に私が話しているのか。私を見る大鷹さんの表情に変化はない。今回は特に何かしでかした記憶はない。私は世間話的なノリで学生時代の休みの過ごし方について質問しただけだ。
「休みと聞いて、なんとなく嫌な予感はしていました。ですが、これは僕の思い違いであって欲しいと思っています。なので」
「いや、嫌な予感って何ですか?ていうか、大鷹さんの思い描く休みの過ごし方でおおむね間違いないと思いますけど」
いったい、何に頭を悩ませているかと思えば、大したことはなかった。だって、今更過ぎるのだ。私が学生時代から引きこもり体質だったのはすでに大鷹さんも知っている。それなのに、どうして私の口から聞くのが嫌なのか。
「だって、僕からしたら、あまりにも紗々さんの学生時代は可哀想なものだなって」
「それ、私をバカにしています?」
「別にそういう訳では」
ふむ、大鷹さんの考えが読めてきた。改めて大鷹さんを観察すると、申し訳なさそうな顔が目の前にある。先ほどまでの雰囲気から一転、急に緩い空気に変化していた。
「まったく、大鷹さんは心配しすぎで。私はいじめられていたわけではありません。私は……」
ただ、なんとなく誰とも付き合ってこなかっただけだ。そう、私の意思で誰ともつるんでこなかった。決してコミュ障のせいではない。
学生時代の休み。どちらかというと、小中高、どの時代をさかのぼっても、長期休暇にあまり良い思い出はない。決して辛い思いをしたわけでもないし、寂しかったということもない。
長期休暇は学校に行く必要はない。だからこそ、ここで真の友達ムーブが発動する。学校以外のプライベートまで一緒に居られる関係を築くと、長期休暇は友達とのランデブーということになる。たとえ毎日ではなくても、それなりの頻度で一緒に遊ぶこともあるだろう。
それがなかったというだけだ。幸いに私には両親もいるし、妹もいたので家でひとり過ごすこともなかった。だから、寂しい思いをしていない。
夏祭りも花火もプールも、肝試しも、誰かと家や図書館で勉強したことがない。ただそれだけの話だ。
休みを思い出すと、つい友達もセットで考えてしまう。
「あの子、今頃、何をしているだろうか」
「あの子?」
思い出を語っていたら、つい、ポロリと言葉が口に出た。私みたいな友達がいなさそうな彼女。中学の時の同級生は今、何をしているだろうか。
帰宅後、さっそく私と世間の認識のずれを確認するため、大鷹さんに質問する。最近は人手不足の影響もあり、定時で帰宅できる日が少ない。残業代はもらえるので頑張るが、それでも定時に仕事が終わるくらいの仕事量が望ましい。昼間に河合さんと話した「週休三日制」はいつになったら実現されるのか。
私とは反対に、大鷹さんは定時に帰ってくることが多い。今日もまた、大鷹さんが私より先に帰宅していた。定時上がりの人間と残業アリの給料がどうしてこれほどまでに違うのか。いや、詳細な金額までは見ていないが、大鷹さんはかなりの高給取りだ。まったく、残業するのが馬鹿らしくなってくる。
「学生時代の休みなんて、久しぶりに思い出しますね。今度のネタに使うんですか?」
とりあえず、帰ってきたら帰宅の挨拶が先だと思いますけど。
帰宅後一番の私の質問に大鷹さんは驚いていたが、持ち前の勘の良さを発揮してくれた。しかし、ぼそりとつぶやかれた言葉は手厳しい。確かに「親しき中にも礼儀あり」である。
「た、ただいま戻りました」
「おかえりなさい。紗々さん」
まだ玄関に居たので、改めて帰宅の挨拶をして靴を脱いで家に上がる。大鷹さんはリビングにいて夕食の準備を進めていたようだ。私が帰ってきたことを察して、リビングから玄関に顔を出してくれていた。毎回、出来過ぎた夫だと感心している。今日はしゃぶしゃぶのようだ。
「まずは紗々さんの学生時代の休みから聞いていきましょうか」
「はあ」
夕食の豚肉のしゃぶしゃぶをお腹いっぱいに食べた私は、食後になぜか大鷹さんから取り調べを受けるかのように質問されていた。テーブルを挟んで対面に私と大鷹さんが座っている。心なしか、私を見る目が厳しい気がするのは気のせいか。ただ、学生時代の休みを暴露するだけなのに、どうしてこんなに緊張するのか。
「あれ、そういえばこの話って、前に大鷹さんにしたことありませんでしたか?」
ふと、大鷹さんを見ていたら思い出す。結婚後、一緒に住むという話になり、そこでお互いの条件について話し合った時のことだ。その時に私の休日の過ごし方はあらかた説明したはずだ。
「だとしたら、この話は無しにしましょう。同じ話を何度も聞かせるのも、大鷹さんに悪いですし」
とはいえ、あの時は土日などの通常の休みに限定していた。今、私が考えている新しいネタは学校での長期休暇をメインにしたい。まあ、長期休暇は二次元からこっそりアイデアを拝借すれば問題ないだろう。そもそも、二次元の彼らに授業中の描写などあまり必要ない。必要なのは充実したイベント盛りだくさんな長期休暇だけだ。あとは休み時間と放課後。
二次元とはなんと罪深いことか。だからこそ、治安が悪い話が多いのかもしれない。
「……」
先ほどから、大鷹さんの返事がない。なぜ一方的に私が話しているのか。私を見る大鷹さんの表情に変化はない。今回は特に何かしでかした記憶はない。私は世間話的なノリで学生時代の休みの過ごし方について質問しただけだ。
「休みと聞いて、なんとなく嫌な予感はしていました。ですが、これは僕の思い違いであって欲しいと思っています。なので」
「いや、嫌な予感って何ですか?ていうか、大鷹さんの思い描く休みの過ごし方でおおむね間違いないと思いますけど」
いったい、何に頭を悩ませているかと思えば、大したことはなかった。だって、今更過ぎるのだ。私が学生時代から引きこもり体質だったのはすでに大鷹さんも知っている。それなのに、どうして私の口から聞くのが嫌なのか。
「だって、僕からしたら、あまりにも紗々さんの学生時代は可哀想なものだなって」
「それ、私をバカにしています?」
「別にそういう訳では」
ふむ、大鷹さんの考えが読めてきた。改めて大鷹さんを観察すると、申し訳なさそうな顔が目の前にある。先ほどまでの雰囲気から一転、急に緩い空気に変化していた。
「まったく、大鷹さんは心配しすぎで。私はいじめられていたわけではありません。私は……」
ただ、なんとなく誰とも付き合ってこなかっただけだ。そう、私の意思で誰ともつるんでこなかった。決してコミュ障のせいではない。
学生時代の休み。どちらかというと、小中高、どの時代をさかのぼっても、長期休暇にあまり良い思い出はない。決して辛い思いをしたわけでもないし、寂しかったということもない。
長期休暇は学校に行く必要はない。だからこそ、ここで真の友達ムーブが発動する。学校以外のプライベートまで一緒に居られる関係を築くと、長期休暇は友達とのランデブーということになる。たとえ毎日ではなくても、それなりの頻度で一緒に遊ぶこともあるだろう。
それがなかったというだけだ。幸いに私には両親もいるし、妹もいたので家でひとり過ごすこともなかった。だから、寂しい思いをしていない。
夏祭りも花火もプールも、肝試しも、誰かと家や図書館で勉強したことがない。ただそれだけの話だ。
休みを思い出すと、つい友達もセットで考えてしまう。
「あの子、今頃、何をしているだろうか」
「あの子?」
思い出を語っていたら、つい、ポロリと言葉が口に出た。私みたいな友達がいなさそうな彼女。中学の時の同級生は今、何をしているだろうか。
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