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番外編【突然の出来事】6健康的な生活を心がけましょう
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「ふう、ざっとこんなものか」
夕食後、さっそく私は自室に戻り、パソコンに向かって今回の私の体験の基づいたBLの冒頭を執筆していた。それにしても、やはり筆が乗るとスラスラと手が動く。「継続は力なり」。数年の継続が私の小説を執筆するスピードを速めている。今後の展開はこのように計画している。
・恋人が家にやってきて主人公の身体の異変(蕁麻疹)に気づいて慌てて病院に駆け込む。
・アレルギーかもしれないと診断される
・心当たりがあるとすれば、今日の寿司の大食いかもしれない
・医者に自分の仕事を伝えると、食べるのを控えたほうがよいと忠告される
・それは無理だ
→恋人は自分のたくさん食べる姿が好きだ
大食いできない自分に恋人としての価値はない
食べること以外では自分に特徴はない、どうしたらいいだろうか
・診察室の外で待っている恋人にどうやって言い訳しようか
・心配そうな顔に真実を言わなくてはならない
「僕は君が食べる姿を見るのが好きだった」
→いきなりの恋人の言葉に主人公は覚悟を決める
過去形ということは、自分の症状が食べ過ぎのよるものだと恋人は気づいている
「ごめんなさい」
→主人公は先に謝り、別れたくないと泣きながら懇願する
・突然のことに恋人は驚く。恋人は食べ過ぎの末の今回の件だと理解していた
自分が食べる姿が好きと伝えたことが重荷になっていると思っての言葉だった
決して主人公と別れるつもりで発した言葉ではない
「食べることが出来ない自分に愛想をつきた、そうでしょう?」
→そんなわけがない、主人公のたわいない笑顔に惚れている
・お互いの気持ちを再確認し合うことでさらに仲が深まる
「ここは病院ですからお静かに」
・病院の人に注意されて、二人は見つめあい笑いあった
・主人公の家に帰宅する
という感じの予定だが、最後の仲直りエッチはどうしようか。蕁麻疹という身体異常があったのにそこから致すことが出来るのか。
「ううん、ここで盛り上がるのが王道なんだけどなあ。それでこそのBLという気もするし」
実際に考えると、致すのは辞めるのが無難だ。とはいえ、ここはBL小説という私の妄想。やってもいいのかもしれない。だが、現実とあまりにもかけ離れているとそれはそれで違和感を覚えてしまう。
「紗々さん、今大丈夫ですか?」
そんな感じで最後の盛り上がり(R18展開)を考えていたら、ドアのノックの音とともに大鷹さんの声が部屋の外から聞こえた。毎回律儀に入室の許可を求めてくれる、素晴らしい夫である。
「どうしましたか?」
目の前に映し出された執筆画面を一度閉じて、大鷹さんを部屋に迎え入れるために扉を開ける。そこには、深刻そうな顔をした大鷹さんが立っていた。
「実は、今回のお盆をどうしようかと思いまして……」
「はあ」
世間がもうすぐお盆ということをすっかり忘れていた。とはいえ、世間がお盆休みだが私には関係ない。それは大鷹さんも知っているはずだ。今更何を言いに来たのだろうか。私の疑問が顔に出ていたのが分かったのか、大鷹さんは顔をしかめる。
「とりあえず、座ってください」
「はい」
内容はわからないが、あまり良い話ではなさそうだ。私が床に置いたクッションに大鷹さんは腰を下ろす。
「毎年、お盆と正月に僕の実家では親せきが集まって食事をしています」
「それは知っています。私も参加していますし」
お盆は仕事の休みの関係上、参加したことがないが、正月は参加している。その時に、個性豊かな大鷹家の人々を目の当たりにした。今年はお盆に休みを取ってでも会って欲しい、と言われたのだろうか。
「別に強制参加ではないです。ですが、どうにも僕の親せきが紗々さんのことを気に入ってしまって、お盆にも会いたいとごねているんです。日にちもわざわざ土日にしようと言い始めて……」
私の予想は当たったが、それにしてもなぜ、そんなことで深刻そうな顔をするのかが分からない。嫁が親せきに嫌われるよりは好かれた方がいいと思う。
「確かに紗々さんが嫌われるよりはましです。ですが、食事内容がいただけない。何せ、紗々さんは現在、食事制限があるのに」
「もしかして、寿司を手配してくれるということでしょうか?」
食べられないという訳ではないので、特に問題はない。それに、薬ももらっているので少量であれば食べても蕁麻疹などの異常はでないだろう。大鷹さんは心配しすぎだ。それとも、大鷹さんは実は私のことを親せきに会わせるのが嫌なのだろうか。
「もし、大鷹さんが心配なら参加しませんよ。基本的に休日に外に出るのは面倒ですから」
大鷹さんが断りにくいのであれば、私自ら断っても構わない。そもそも、彼らは私が一度誘いを断ったところで特に気にしないはずだ。
「断わりは僕が入れるので大丈夫です」
この話は終わりとばかりに大鷹さんは大きな溜息を吐く。そして、今度は私の机に置かれているパソコンに視線を向けた。
「ああ、新作のことですか?まだ冒頭部分のみしかかけていないので、投稿するのにはもう少し時間が」
「楽しみにしています」
大鷹さんの意図を察して発した私の言葉は途中で遮られた。まあ、楽しみにしてくれているのなら、作者としては嬉しい限りだ。大鷹さんはその後、部屋を出ていった。
後日、新作を小説投稿サイトに投稿したら、感想が二件ほど投稿された。
『新作もとても面白かったです。あまり見ない設定で新鮮でした。私の同僚にも、小説の中のような症状が出てしまったみたいで、もしかしたら、小説のようなやり取りがあったのかもしれないと思うと、二倍楽しめました。これからもお身体に気をつけて執筆頑張ってください』 【仕事の先輩が大好きすぎて困っている女】
『今回も面白いお話をありがとうございます。恋人は主人公のことを本当に愛していたのですね。お互いの愛が深まって感動しました。僕たち夫婦も結婚当初よりはだいぶ愛が深まってきた気がします。とはいえ、健康面には気をつけたほうがよいと思いました。暑い日が続きますが、健康面には充分気をつけてください。これからも応援しています。』
【妻のことを世界一愛しているが、最近ようやく妻にはわかってもらえつつある男】
感想なら、本人がいる前で言ってくれ。感想をもらえたのは嬉しいが、それが身内からだった時の恥ずかしさ。
「ていうか、ペンネームが進化している……」
二件目の感想をくれた人物は、今までは【妻のことを世界一愛しているが、妻にはわかってもらえていない不憫な男】だった。私の恥ずかしさはそれに気づいて倍増した。しばらくの間、パソコンを直視できなかった。
夕食後、さっそく私は自室に戻り、パソコンに向かって今回の私の体験の基づいたBLの冒頭を執筆していた。それにしても、やはり筆が乗るとスラスラと手が動く。「継続は力なり」。数年の継続が私の小説を執筆するスピードを速めている。今後の展開はこのように計画している。
・恋人が家にやってきて主人公の身体の異変(蕁麻疹)に気づいて慌てて病院に駆け込む。
・アレルギーかもしれないと診断される
・心当たりがあるとすれば、今日の寿司の大食いかもしれない
・医者に自分の仕事を伝えると、食べるのを控えたほうがよいと忠告される
・それは無理だ
→恋人は自分のたくさん食べる姿が好きだ
大食いできない自分に恋人としての価値はない
食べること以外では自分に特徴はない、どうしたらいいだろうか
・診察室の外で待っている恋人にどうやって言い訳しようか
・心配そうな顔に真実を言わなくてはならない
「僕は君が食べる姿を見るのが好きだった」
→いきなりの恋人の言葉に主人公は覚悟を決める
過去形ということは、自分の症状が食べ過ぎのよるものだと恋人は気づいている
「ごめんなさい」
→主人公は先に謝り、別れたくないと泣きながら懇願する
・突然のことに恋人は驚く。恋人は食べ過ぎの末の今回の件だと理解していた
自分が食べる姿が好きと伝えたことが重荷になっていると思っての言葉だった
決して主人公と別れるつもりで発した言葉ではない
「食べることが出来ない自分に愛想をつきた、そうでしょう?」
→そんなわけがない、主人公のたわいない笑顔に惚れている
・お互いの気持ちを再確認し合うことでさらに仲が深まる
「ここは病院ですからお静かに」
・病院の人に注意されて、二人は見つめあい笑いあった
・主人公の家に帰宅する
という感じの予定だが、最後の仲直りエッチはどうしようか。蕁麻疹という身体異常があったのにそこから致すことが出来るのか。
「ううん、ここで盛り上がるのが王道なんだけどなあ。それでこそのBLという気もするし」
実際に考えると、致すのは辞めるのが無難だ。とはいえ、ここはBL小説という私の妄想。やってもいいのかもしれない。だが、現実とあまりにもかけ離れているとそれはそれで違和感を覚えてしまう。
「紗々さん、今大丈夫ですか?」
そんな感じで最後の盛り上がり(R18展開)を考えていたら、ドアのノックの音とともに大鷹さんの声が部屋の外から聞こえた。毎回律儀に入室の許可を求めてくれる、素晴らしい夫である。
「どうしましたか?」
目の前に映し出された執筆画面を一度閉じて、大鷹さんを部屋に迎え入れるために扉を開ける。そこには、深刻そうな顔をした大鷹さんが立っていた。
「実は、今回のお盆をどうしようかと思いまして……」
「はあ」
世間がもうすぐお盆ということをすっかり忘れていた。とはいえ、世間がお盆休みだが私には関係ない。それは大鷹さんも知っているはずだ。今更何を言いに来たのだろうか。私の疑問が顔に出ていたのが分かったのか、大鷹さんは顔をしかめる。
「とりあえず、座ってください」
「はい」
内容はわからないが、あまり良い話ではなさそうだ。私が床に置いたクッションに大鷹さんは腰を下ろす。
「毎年、お盆と正月に僕の実家では親せきが集まって食事をしています」
「それは知っています。私も参加していますし」
お盆は仕事の休みの関係上、参加したことがないが、正月は参加している。その時に、個性豊かな大鷹家の人々を目の当たりにした。今年はお盆に休みを取ってでも会って欲しい、と言われたのだろうか。
「別に強制参加ではないです。ですが、どうにも僕の親せきが紗々さんのことを気に入ってしまって、お盆にも会いたいとごねているんです。日にちもわざわざ土日にしようと言い始めて……」
私の予想は当たったが、それにしてもなぜ、そんなことで深刻そうな顔をするのかが分からない。嫁が親せきに嫌われるよりは好かれた方がいいと思う。
「確かに紗々さんが嫌われるよりはましです。ですが、食事内容がいただけない。何せ、紗々さんは現在、食事制限があるのに」
「もしかして、寿司を手配してくれるということでしょうか?」
食べられないという訳ではないので、特に問題はない。それに、薬ももらっているので少量であれば食べても蕁麻疹などの異常はでないだろう。大鷹さんは心配しすぎだ。それとも、大鷹さんは実は私のことを親せきに会わせるのが嫌なのだろうか。
「もし、大鷹さんが心配なら参加しませんよ。基本的に休日に外に出るのは面倒ですから」
大鷹さんが断りにくいのであれば、私自ら断っても構わない。そもそも、彼らは私が一度誘いを断ったところで特に気にしないはずだ。
「断わりは僕が入れるので大丈夫です」
この話は終わりとばかりに大鷹さんは大きな溜息を吐く。そして、今度は私の机に置かれているパソコンに視線を向けた。
「ああ、新作のことですか?まだ冒頭部分のみしかかけていないので、投稿するのにはもう少し時間が」
「楽しみにしています」
大鷹さんの意図を察して発した私の言葉は途中で遮られた。まあ、楽しみにしてくれているのなら、作者としては嬉しい限りだ。大鷹さんはその後、部屋を出ていった。
後日、新作を小説投稿サイトに投稿したら、感想が二件ほど投稿された。
『新作もとても面白かったです。あまり見ない設定で新鮮でした。私の同僚にも、小説の中のような症状が出てしまったみたいで、もしかしたら、小説のようなやり取りがあったのかもしれないと思うと、二倍楽しめました。これからもお身体に気をつけて執筆頑張ってください』 【仕事の先輩が大好きすぎて困っている女】
『今回も面白いお話をありがとうございます。恋人は主人公のことを本当に愛していたのですね。お互いの愛が深まって感動しました。僕たち夫婦も結婚当初よりはだいぶ愛が深まってきた気がします。とはいえ、健康面には気をつけたほうがよいと思いました。暑い日が続きますが、健康面には充分気をつけてください。これからも応援しています。』
【妻のことを世界一愛しているが、最近ようやく妻にはわかってもらえつつある男】
感想なら、本人がいる前で言ってくれ。感想をもらえたのは嬉しいが、それが身内からだった時の恥ずかしさ。
「ていうか、ペンネームが進化している……」
二件目の感想をくれた人物は、今までは【妻のことを世界一愛しているが、妻にはわかってもらえていない不憫な男】だった。私の恥ずかしさはそれに気づいて倍増した。しばらくの間、パソコンを直視できなかった。
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