結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
上 下
113 / 206

番外編【外に出掛けましょう!】4三連休初日~男たちの場合~(大鷹視点)

しおりを挟む
「どうしたら、紗々さんを元気づけられるだろうか」

「そんなの知らねえよ。ていうか、どうして、兄貴の惚気を俺たちが聞かなくちゃいけないんだ」

「まあまあ、亨君、落ち着いて。攻君が僕たちに相談してくるなんて珍しいんだから、聞いてあげようよ」

「そうだよな。夫婦関係だっていろいろある。他の夫婦がどんなものか気になるしな」

 オレは今、千沙さんの家にお邪魔している。今日は三連休初日の土曜日。紗々さんは宣言通り、朝から実家に帰ってしまった。複数の知り合いから遊ばないかと誘われていたが、紗々さんのことが気になりすぎて、すべて断ってしまった。ちなみに、集合場所が千沙さんの家になったのは守君の提案だ。

 相談を持ち掛けたのは弟の亨、守君、きらりさんの夫の大輔さんの三人だ。バレンタインの時は大変お世話になったので、今回も良いアドバイスがもらえると考えた。

「ところで守、今日から三連休だろ?お前はこんなことしていていいのか?高校生の大事な青春の1ページを、オレらおっさんたちと過ごして大丈夫なのか?」

「別に構わないよ。だって、高校に特別に親しい人なんていないから。それなら、一緒に居て気が楽な攻君たちと過ごしたほうがいい」

「歪んでるなあ。まあ、あの千沙さんの息子さんだしねえ」

 守君は高校生だが、母親の千沙さんのせいかずいぶんと大人びている。だが、弟の言う通り、高校生の貴重な休日をオジサンのオレが奪ってしまった。

「攻君、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいよ。僕が決めた事だし。それに僕は紗々さんと違って、友達がいないわけじゃないからね」

 紗々さん。

 そうだ、守君は紗々さんと違ってコミュ障ではないのだ。オレの用事に付き合わせたからと言って、友達がいないわけがなかった。

「今日、千沙さんは出かけているからね。いろいろ話せると思うよ」

「それじゃあ、聞きたくないけど、兄貴の悩みを聞かせろよ。オレが弟として立派なアドバイスしてやるよ!」

 千沙さんの家のリビングで、オレたち男四人はテーブルを囲み、オレのお悩み相談会が始まった。


「……ということなんだ。紗々さんは、自分が凡人であることに悩みを抱えているらしくて、最近、元気がないんだ」

 紗々さんのことを話し終えたオレは、少しだけ気が楽になった。やはり、悩みをひとりで抱えるのは良くない。こうして、悩みを打ち明けられる人間がいることに感謝する。相手が自分の親せきだというのは何とも言えないが。

「凡人ねえ。紗々さんが言うのなら、そうなんじゃないの?確かに僕たちから見たら、紗々さんは多少変わって見えるかもしれないけど、普通の女性に見えるよ。まあ、攻君と結婚した女性、という時点で普通ではないかもだけど」

 守君は千沙さんに似たのか、思ったことをずけずけと口にする。オレと結婚したから普通じゃないという基準が理解不能だ。だがよくよく考えると、紗々さんは自分の趣味であるBL(ボーイズラブ)や自分の生活に関して以外は、案外まともな感性を持っている。

「オレは兄貴の愛が足らないからだと思う。兄貴がもっと義姉さんに愛を注げば、そのくだらない凡人とかいう劣等感がなくなるんじゃないのか?」

 なんともメルヘンチックな回答をしたのは弟だ。『愛』なんて抽象的なことをアドバイスされるとは思わなかった。弟の顔は冗談を言っているようには見えない。もしかして。

「お前、李江さんと喧嘩したのか?」

「ば、バカなこと言うなよ。俺たちはいつでもラブラブだ!」

 随分とわかりやすい反応だ。三連休だというのに、兄であるオレと会っている時点で想像がつく。とはいえ、『愛』というのは難しい言葉だ。

「でも、オレがあんまり愛を伝えすぎると、紗々さん、逃げていくんだよな」

「アハハハハ!」

 弟のアドバイスは保留にしておくことにしよう。愛は十分伝えられている気がする。もっと紗々さんに愛を与えるとなると、やり方を考えなくてはならない。

 そんなことを考えていたら、突然、大輔さんが腹を抱えて笑い出した。この中では最年長にあたるきらりさんの旦那にとって、オレの悩みはそんなにおもしろいのだろうか。

「悪いな。なんだか昔の俺たちを思い出してしまって」

『昔?』

「そうそう、きらりもさ、今はあんな姿だけど、あの姿に悩んでいた時期があって。それを俺の愛で何とかしたなあって」

「や、やっぱり、最終的に夫婦の問題は『愛』で解決しますよね?うんうん、さすがです、大輔さん!」

「漫画の読み過ぎだと思いますけどね。僕はそういう『愛』とかいう不確かなものに頼るのは嫌いだ」

 それからしばらくの間、オレたちはそれぞれが考える『愛』について思う存分語り合ったのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。 そこに迷い猫のように住み着いた女の子。 名前はミネ。 どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい ゆるりと始まった二人暮らし。 クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。 そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。 ***** ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※他サイト掲載

処理中です...