結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【外に出掛けましょう!】4三連休初日~男たちの場合~(大鷹視点)

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「どうしたら、紗々さんを元気づけられるだろうか」

「そんなの知らねえよ。ていうか、どうして、兄貴の惚気を俺たちが聞かなくちゃいけないんだ」

「まあまあ、亨君、落ち着いて。攻君が僕たちに相談してくるなんて珍しいんだから、聞いてあげようよ」

「そうだよな。夫婦関係だっていろいろある。他の夫婦がどんなものか気になるしな」

 オレは今、千沙さんの家にお邪魔している。今日は三連休初日の土曜日。紗々さんは宣言通り、朝から実家に帰ってしまった。複数の知り合いから遊ばないかと誘われていたが、紗々さんのことが気になりすぎて、すべて断ってしまった。ちなみに、集合場所が千沙さんの家になったのは守君の提案だ。

 相談を持ち掛けたのは弟の亨、守君、きらりさんの夫の大輔さんの三人だ。バレンタインの時は大変お世話になったので、今回も良いアドバイスがもらえると考えた。

「ところで守、今日から三連休だろ?お前はこんなことしていていいのか?高校生の大事な青春の1ページを、オレらおっさんたちと過ごして大丈夫なのか?」

「別に構わないよ。だって、高校に特別に親しい人なんていないから。それなら、一緒に居て気が楽な攻君たちと過ごしたほうがいい」

「歪んでるなあ。まあ、あの千沙さんの息子さんだしねえ」

 守君は高校生だが、母親の千沙さんのせいかずいぶんと大人びている。だが、弟の言う通り、高校生の貴重な休日をオジサンのオレが奪ってしまった。

「攻君、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいよ。僕が決めた事だし。それに僕は紗々さんと違って、友達がいないわけじゃないからね」

 紗々さん。

 そうだ、守君は紗々さんと違ってコミュ障ではないのだ。オレの用事に付き合わせたからと言って、友達がいないわけがなかった。

「今日、千沙さんは出かけているからね。いろいろ話せると思うよ」

「それじゃあ、聞きたくないけど、兄貴の悩みを聞かせろよ。オレが弟として立派なアドバイスしてやるよ!」

 千沙さんの家のリビングで、オレたち男四人はテーブルを囲み、オレのお悩み相談会が始まった。


「……ということなんだ。紗々さんは、自分が凡人であることに悩みを抱えているらしくて、最近、元気がないんだ」

 紗々さんのことを話し終えたオレは、少しだけ気が楽になった。やはり、悩みをひとりで抱えるのは良くない。こうして、悩みを打ち明けられる人間がいることに感謝する。相手が自分の親せきだというのは何とも言えないが。

「凡人ねえ。紗々さんが言うのなら、そうなんじゃないの?確かに僕たちから見たら、紗々さんは多少変わって見えるかもしれないけど、普通の女性に見えるよ。まあ、攻君と結婚した女性、という時点で普通ではないかもだけど」

 守君は千沙さんに似たのか、思ったことをずけずけと口にする。オレと結婚したから普通じゃないという基準が理解不能だ。だがよくよく考えると、紗々さんは自分の趣味であるBL(ボーイズラブ)や自分の生活に関して以外は、案外まともな感性を持っている。

「オレは兄貴の愛が足らないからだと思う。兄貴がもっと義姉さんに愛を注げば、そのくだらない凡人とかいう劣等感がなくなるんじゃないのか?」

 なんともメルヘンチックな回答をしたのは弟だ。『愛』なんて抽象的なことをアドバイスされるとは思わなかった。弟の顔は冗談を言っているようには見えない。もしかして。

「お前、李江さんと喧嘩したのか?」

「ば、バカなこと言うなよ。俺たちはいつでもラブラブだ!」

 随分とわかりやすい反応だ。三連休だというのに、兄であるオレと会っている時点で想像がつく。とはいえ、『愛』というのは難しい言葉だ。

「でも、オレがあんまり愛を伝えすぎると、紗々さん、逃げていくんだよな」

「アハハハハ!」

 弟のアドバイスは保留にしておくことにしよう。愛は十分伝えられている気がする。もっと紗々さんに愛を与えるとなると、やり方を考えなくてはならない。

 そんなことを考えていたら、突然、大輔さんが腹を抱えて笑い出した。この中では最年長にあたるきらりさんの旦那にとって、オレの悩みはそんなにおもしろいのだろうか。

「悪いな。なんだか昔の俺たちを思い出してしまって」

『昔?』

「そうそう、きらりもさ、今はあんな姿だけど、あの姿に悩んでいた時期があって。それを俺の愛で何とかしたなあって」

「や、やっぱり、最終的に夫婦の問題は『愛』で解決しますよね?うんうん、さすがです、大輔さん!」

「漫画の読み過ぎだと思いますけどね。僕はそういう『愛』とかいう不確かなものに頼るのは嫌いだ」

 それからしばらくの間、オレたちはそれぞれが考える『愛』について思う存分語り合ったのだった。
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