87 / 206
番外編【運動しましょう!(健全)】6継続していきましょう
しおりを挟む
「ふう、こんなものか」
久しぶりに筆が乗って書き進めることが出来た。調子が悪いとパソコンの前に座ったまま、ただただ時間が過ぎて、一文字も執筆が進んでいない時がある。今回はかなり調子が良いほうだと思う。
「実際、散歩と家での運動の継続で身体が引き締まったわけだし、それをそのまま書けばいいわけだから、簡単に決まっているか」
基本的に、私が書く話は自分の実生活での体験をもとに書くことが多い。登場人物の心理描写については想像の域を出ないが、それでもそれ以外の行動についてはある程度、真実味を持たせることができる。
だから、今回が特別に書きやすいという訳ではないが、現在進行形で変わる自分自身の体型を実況するようなものは書きやすいのかもしれない。
改めて今回のプロットもどきを確認してみる。よくある王道の展開で、私独自の発想ではない。それでも書きたくなったのだから、自分自身の手で書くしかない。
「お前って、ほんと触り心地いいよな。柔らかくて気持ちいい」
ある日、いつのように夜の営みをしていて衝撃的な言葉を言われる
↓
恋人のために自分磨きをする。引き締まった身体にして見せる!
↓
相手にばれないように、朝のジョギングをしてスポーツジムに通うことを決意する
食事にも気を付けて、甘いものが好きだが我慢する
↓
恋人に「やらない宣言」をして、さらに「お触り厳禁」とも言ってしまう
↓
恋人は主人公の行動に不信を覚えるが、とりあえずそのまま様子を見る
↓
とはいえ、恋人は気の長いほうではなかったので、自分に秘密で何をしているのか問い詰めてしまう
↓
浮気を疑われていると思った主人公は、正直に朝のジョギングとジムに通いだして、自分磨きに勤しんでいたことを白状する
↓
自分のためにジムに通って自分磨きをしていたことに興奮する。恋人は襲いそうになるがぐっとこらえる
↓
主人公も恋人に触れられずに欲求不満を抱えていた。自分の身体を確認してもう大丈夫かと思い、恋人を襲ってしまう
↓
二人は一か月分我慢した欲求不満を爆発させるかのように抱き合った
↓
ようやく満足した二人は今回の件を振り返る
主人公の腰を触って、一か月の成果を確認する恋人。腰にくびれが出来て腹回りや腕が少し筋肉質になったと感じた
↓
「触り心地が悪くなったと思うか?柔らかいほうがよかったか?」
恋人が執拗に腰や尻をなでまわしてくるので、少し不安になる。それでも男のプライドとして柔らかいままでは許せなかった
↓
「今のほうが萌える」
何より、自分の一言で努力する恋人に歓びを感じる。
↓
こうして、やらない宣言は一か月で終了した
いつものラブラブな二人がそこにあった
「改めてみると、すごい内容だな」
プロットを再確認して、思わず自分自身が書いた内容なのに驚いてしまう。そもそも、BL(ボーイズラブ)は、総じて性欲が爆発している男が多い気がする。会えばやることしか考えていない攻めの思考(受けの場合もあり)。とはいえそれは、男女の話でもそんな気がする。
「想像だからこそ、面白いのかもしれない」
考えても見てほしい。創作の中では、会社でも学校でもテーマパークでも家でも、どこかしらで致している描写を見かける。そんなことが身近にあったらと思うと恐ろしい。
「トントン」
部屋をノックする音がして、慌てて部屋のドアを開ける。ドアをノックするのはひとりしかいない。隠す必要もないので、パソコンの画面はそのままに大鷹さんを招き入れる。
「すいません。帰宅時の紗々さんの顔が鬼気迫るものだったので気になって」
「すごい顔になってましたか?」
私の悪い癖かもしれない。河合さんとの仕事中に交わした会話で火が付いた私の妄想。直ぐにでもパソコンに起こさなければと思って、帰宅と同時に自分の部屋に飛び込んだ。こんな日に限って残業となってしまって急いでいた。大鷹さんがすでに帰宅していたにも関わらず、挨拶もしなかった気がする。
「何か、良いアイデアでも浮かんだんですか?」
私の言葉に肯定も否定もせずに、大鷹さんは私のパソコンの画面を見ようと近づいてくる。
「ま、まあそんなところです。と、投稿したら読んでください!」
大鷹さんに見られる前までは恥ずかしいと思わなかったのに、いざ見られると恥ずかしさがこみ上げる。慌ててパソコンの前に立ちふさがると、納得したように大鷹さんは頷いて私から離れる。
「そうそう、僕は妻がきれいになろうとする努力を素晴らしいと思いますし、誇りに思いますよ!何歳でもきれいに向けて頑張る人は美しいですから」
「い、いきなり何を」
「あと、余計なことですが僕の親せきは情報通でして、僕たちが休日に散歩を始めたことがばれてしまいました。いったい誰がばらしたんだか」
「ま、まさか!」
せっかく大鷹さんが感動的なことを言ってくれたのに、次の言葉で台無しだ。しかも、急に不穏な雰囲気となって私をじっと見つめてくる。
「わ、私を疑っているんですか?」
自分がダイエットしていることを他人にべらべらと話す人もいるが、私はそんなことはしない。そもそも、そんなプライベートなことを話せるほどの知り合いが近くにいない。大鷹さんの親せきは美男美女揃いでスタイルもいいので、私みたいな凡人の悩みを打ち明けるにはハードルが高すぎる。
「そうですか。では一体だれが」
大鷹さんがあごに手を当てて考え込んでいる。
(もしかして)
一人、大鷹さんの親せきに話しそうな相手が頭に思い浮かぶ。とはいえ、親切に大鷹さんに教えるのはどうかと思い、口をつぐむ。
ばれたということは、散歩中に彼らとでくわす機会が多くなるということか。二人きりの静かな時間が減るということだが、彼らに悪気があるわけではない。ただ興味本位で顔を出すだけだろう。
「私と大鷹さんのストーカーがいるのかもしれないです。まあ、害はなさそうなので放っておいても構わないと思いますよ」 とりあえず、仕事の後輩や目の前に立つ最愛の夫のためにも、私は今回の話を最高のものに仕上げなければならない。
「私は執筆作業に入りますので、よろしくお願いします」
「新作、楽しみにしています」
運動と散歩の効果は着実に身体と体重に現れている。このまま継続していったら、私の身体も引き締まって少しは人に見られても恥ずかしくない身体になれるかもしれない。
私の努力はまだまだ始まったばかりである。
久しぶりに筆が乗って書き進めることが出来た。調子が悪いとパソコンの前に座ったまま、ただただ時間が過ぎて、一文字も執筆が進んでいない時がある。今回はかなり調子が良いほうだと思う。
「実際、散歩と家での運動の継続で身体が引き締まったわけだし、それをそのまま書けばいいわけだから、簡単に決まっているか」
基本的に、私が書く話は自分の実生活での体験をもとに書くことが多い。登場人物の心理描写については想像の域を出ないが、それでもそれ以外の行動についてはある程度、真実味を持たせることができる。
だから、今回が特別に書きやすいという訳ではないが、現在進行形で変わる自分自身の体型を実況するようなものは書きやすいのかもしれない。
改めて今回のプロットもどきを確認してみる。よくある王道の展開で、私独自の発想ではない。それでも書きたくなったのだから、自分自身の手で書くしかない。
「お前って、ほんと触り心地いいよな。柔らかくて気持ちいい」
ある日、いつのように夜の営みをしていて衝撃的な言葉を言われる
↓
恋人のために自分磨きをする。引き締まった身体にして見せる!
↓
相手にばれないように、朝のジョギングをしてスポーツジムに通うことを決意する
食事にも気を付けて、甘いものが好きだが我慢する
↓
恋人に「やらない宣言」をして、さらに「お触り厳禁」とも言ってしまう
↓
恋人は主人公の行動に不信を覚えるが、とりあえずそのまま様子を見る
↓
とはいえ、恋人は気の長いほうではなかったので、自分に秘密で何をしているのか問い詰めてしまう
↓
浮気を疑われていると思った主人公は、正直に朝のジョギングとジムに通いだして、自分磨きに勤しんでいたことを白状する
↓
自分のためにジムに通って自分磨きをしていたことに興奮する。恋人は襲いそうになるがぐっとこらえる
↓
主人公も恋人に触れられずに欲求不満を抱えていた。自分の身体を確認してもう大丈夫かと思い、恋人を襲ってしまう
↓
二人は一か月分我慢した欲求不満を爆発させるかのように抱き合った
↓
ようやく満足した二人は今回の件を振り返る
主人公の腰を触って、一か月の成果を確認する恋人。腰にくびれが出来て腹回りや腕が少し筋肉質になったと感じた
↓
「触り心地が悪くなったと思うか?柔らかいほうがよかったか?」
恋人が執拗に腰や尻をなでまわしてくるので、少し不安になる。それでも男のプライドとして柔らかいままでは許せなかった
↓
「今のほうが萌える」
何より、自分の一言で努力する恋人に歓びを感じる。
↓
こうして、やらない宣言は一か月で終了した
いつものラブラブな二人がそこにあった
「改めてみると、すごい内容だな」
プロットを再確認して、思わず自分自身が書いた内容なのに驚いてしまう。そもそも、BL(ボーイズラブ)は、総じて性欲が爆発している男が多い気がする。会えばやることしか考えていない攻めの思考(受けの場合もあり)。とはいえそれは、男女の話でもそんな気がする。
「想像だからこそ、面白いのかもしれない」
考えても見てほしい。創作の中では、会社でも学校でもテーマパークでも家でも、どこかしらで致している描写を見かける。そんなことが身近にあったらと思うと恐ろしい。
「トントン」
部屋をノックする音がして、慌てて部屋のドアを開ける。ドアをノックするのはひとりしかいない。隠す必要もないので、パソコンの画面はそのままに大鷹さんを招き入れる。
「すいません。帰宅時の紗々さんの顔が鬼気迫るものだったので気になって」
「すごい顔になってましたか?」
私の悪い癖かもしれない。河合さんとの仕事中に交わした会話で火が付いた私の妄想。直ぐにでもパソコンに起こさなければと思って、帰宅と同時に自分の部屋に飛び込んだ。こんな日に限って残業となってしまって急いでいた。大鷹さんがすでに帰宅していたにも関わらず、挨拶もしなかった気がする。
「何か、良いアイデアでも浮かんだんですか?」
私の言葉に肯定も否定もせずに、大鷹さんは私のパソコンの画面を見ようと近づいてくる。
「ま、まあそんなところです。と、投稿したら読んでください!」
大鷹さんに見られる前までは恥ずかしいと思わなかったのに、いざ見られると恥ずかしさがこみ上げる。慌ててパソコンの前に立ちふさがると、納得したように大鷹さんは頷いて私から離れる。
「そうそう、僕は妻がきれいになろうとする努力を素晴らしいと思いますし、誇りに思いますよ!何歳でもきれいに向けて頑張る人は美しいですから」
「い、いきなり何を」
「あと、余計なことですが僕の親せきは情報通でして、僕たちが休日に散歩を始めたことがばれてしまいました。いったい誰がばらしたんだか」
「ま、まさか!」
せっかく大鷹さんが感動的なことを言ってくれたのに、次の言葉で台無しだ。しかも、急に不穏な雰囲気となって私をじっと見つめてくる。
「わ、私を疑っているんですか?」
自分がダイエットしていることを他人にべらべらと話す人もいるが、私はそんなことはしない。そもそも、そんなプライベートなことを話せるほどの知り合いが近くにいない。大鷹さんの親せきは美男美女揃いでスタイルもいいので、私みたいな凡人の悩みを打ち明けるにはハードルが高すぎる。
「そうですか。では一体だれが」
大鷹さんがあごに手を当てて考え込んでいる。
(もしかして)
一人、大鷹さんの親せきに話しそうな相手が頭に思い浮かぶ。とはいえ、親切に大鷹さんに教えるのはどうかと思い、口をつぐむ。
ばれたということは、散歩中に彼らとでくわす機会が多くなるということか。二人きりの静かな時間が減るということだが、彼らに悪気があるわけではない。ただ興味本位で顔を出すだけだろう。
「私と大鷹さんのストーカーがいるのかもしれないです。まあ、害はなさそうなので放っておいても構わないと思いますよ」 とりあえず、仕事の後輩や目の前に立つ最愛の夫のためにも、私は今回の話を最高のものに仕上げなければならない。
「私は執筆作業に入りますので、よろしくお願いします」
「新作、楽しみにしています」
運動と散歩の効果は着実に身体と体重に現れている。このまま継続していったら、私の身体も引き締まって少しは人に見られても恥ずかしくない身体になれるかもしれない。
私の努力はまだまだ始まったばかりである。
0
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

30歳、魔法使いになりました。
本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に魔法に目覚めた鞍馬花凛。
そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。巻き込まれた花凛を助けたのは1人の青年。……彼も『魔法』を使っていた。
そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、鞍馬家本家当主から呼び出され思わぬ事実を知らされる……。
ゆっくり更新です。

後宮の才筆女官
たちばな立花
キャラ文芸
後宮の女官である紅花(フォンファ)は、仕事の傍ら小説を書いている。
最近世間を賑わせている『帝子雲嵐伝』の作者だ。
それが皇帝と第六皇子雲嵐(うんらん)にバレてしまう。
執筆活動を許す代わりに命ぜられたのは、後宮妃に扮し第六皇子の手伝いをすることだった!!
第六皇子は後宮内の事件を調査しているところで――!?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる