結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
43 / 234

番外編【バレンタイン】6一足先に渡しました~おぞましい言葉をもらいました~

しおりを挟む
 三連休が終わり、明日からは仕事が通常通りに始まる。それは、オレも紗々さんも同じである。三連休をオレは、守と亨と大輔さんと過ごし、バレンタインの準備に費やしたが、紗々さんはどうやって過ごしたのだろうか。


「紗々さんは、三連休、どう過ごしたんですか。」

 まさか、一日も外出していないとは言わないだろう。いや、紗々さんの引きこもり度をなめてはいけない。オレには三日も休みがあって、どこにも出かけないという選択肢はないのだが。

「そうですねえ。」

 何やら悩みだした紗々さんだが、悩むことはないだろう。悩むということは、何かやましいことでもあったということか。オレの厳しい視線に気づいたのか、慌てて紗々さんは正直に話してくれた。


「まあ、大鷹さんには秘密にしていても仕方ありません。実は三連休は……。」

 クイズ番組の答え合わせや賞の発表の時のデレレレレレレという効果音が背景から響いてきそうだ。





「すべて、実家に行っていました。」

 嬉しそうにどや顔でそんなことを言う紗々さんに拍子抜けしてしまった。

「三日間ともですか。」

「そうです。だって、もうすぐバレンタインでしょう。バレンタインは二次元では、とても大切で重要なイベントです。それを一作家として書かずにはいられないでしょう。」



 話を促すと、どうやらネタ集めとして実家に通っていたようだ。さすがに実家に泊まることはしなかったようだが、一緒に昼食や夕飯を食べたりはしたそうだ。もちろん、紗々さんの最愛のペット「グリム」ともしっかりと触れ合ってきたようだ。実家での出来事を真剣に話す紗々さんにほっこりとしてしまう。その後、自分に質問が帰ってくることをすっかり忘れていた。


「それで、私は実家で過ごしましたが、大鷹さんは何をして過ごしたのですか。ああ、話したくないならいいですよ。勝手に妄想、いや、想像しますから。」

 あっさりと話さなくてもいいと言われると、へこんでしまう。しかし、何も話さないのが良くないことは、紗々さんと暮らしてはっきりしていることだ。黙っていると、紗々さんが勝手にオレが男でも女でも妄想上の人物と付き合うことになってしまう。いくら、現実のことではないとはいえ、紗々さんの頭の中で自分が紗々さん以外と付き合うのは承認できない。






「いや、話せないことではありません。オレは……。」

 チョコを作ったことだけを隠せばいいだけだ。いや、むしろ、バレンタインには早いが、守の家で作ったお菓子をここで渡してしまおうか。結局、渡し方についてはいい案が思いつかなかったのだ。それに、バレンタイン当日は木曜日で日にちがある。お菓子が傷んでしまうということも考慮すると、今が渡すチャンスなのかもしれない。


「そう、オレは紗々さんにあげるバレンタインのお菓子を作っていました。守と亨と大輔さんの三人で。だから、これ、もらってください。」

 自分の部屋に置いてあったお菓子をもって紗々さんの目の前に出すが、紗々さんの目にオレのお菓子は目に入っていないようだ。正直に話してお菓子を渡したのだが、オレが話している最中で、紗々さんの頭の中で何かがひらめいたようだった。


「そうですか。それはそれはお楽しみだったようで。そうですか。4Pですか。しかも、その中の三人は既婚者。これは急いで創作に組み込む必要があります。」

 意味不明なことを言って、紗々さんはそのまま自分の部屋に向かっていった。ばたんと部屋のドアが閉まる音が響く。







「ああ、お菓子はありがとうございました。カモフラージュということで有り難くいただいておきます。」

 お菓子はもらってくれたようだが、どうにも納得がいかない。


「きっとこれはネタにされてしまったということか。」

 しかも、4Pとかおぞましい言葉を聞いてしまった。きっと、紗々さんは平気でそのネタを自分のBLに使ってくるだろう。



「それを好きなオレは変態ということか。」

 そう思ったが、別に誰にも迷惑をかけることもないので、この気持ちを大事にすることにしよう。まずは、自分の気持ちを改めて最愛の人に伝えよう。お菓子は渡せたが、自分の気持ちは伝えられなかった。


 オレはこの時、紗々さんも自分に隠し事をしていることに気付くことはなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...