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サブストーリー
クロス・ティン・メディル
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クロス・ティン・メディル
それはここメディル王国の第三王子であった男だ
この男クロスは、誰も来ることの許されない、世で最も高い塔、《罪王の塔》の最上階に幽閉されていた
罪王の塔は王族が罪を犯した時、最も最上の罰を与える塔であった
クロスは虚に虚空を見つめていた
会えはしない愛しい女
愛しい女に罵倒され続ける
それがこの男の罰だ
クロスは昔から我儘で強欲だった
聡明で強い兄達と比べ、劣等感から使用人に当たり散らし、我儘放題であった
故に、自分の思った事が全て正しく、他の者の言う事は信じなかった
兄達の優しさにも気付けぬほど、自身の内に閉じこもっていた
なのに、愛しい女の言葉には心が動いた
愛しい女、マイン・カーリー
『貴方はお兄さん達より劣ってる。でも大丈夫。私が側にいてあげるから』
普段なら激怒しただろう言葉
だが怒りはなく、ただただ安心した
“マインといれば、俺は兄上達より…”
あれ?
あの時、なんて思ったんだっけ?
クロスは幻影・幻聴の中、マインとの出会いを思い出す
幻影のマインを見つめる
罪王の塔で、クロスは発狂する事を禁じられ、マインに己の罪を言われ続け、今まであの黒の男に言っていた言葉を言われ続ける
それがクロスの罰だから
心が軋む音がする
幸せだったマインとの日々を思い出す
だが、クロスにマインとの幸せだった日々を思い出す事が出来なかった
あの時は確かに幸せだった
でも、思い返した今は、なぜ幸せと思ったのかわからない
マインとの日々を思い出そうとし、思い出されるのは、ライ兄様の、あの黒の男、ルシェリオに向ける優しく甘い表情
普段何を言われても無表情だというのに、ライ兄様に笑いかけられ、嬉しそうに少し微笑むルシェリオ
黒は忌色で、蔑まれるべきなのに…
何故?
あれ?母上や父上も蔑んでいなかった
僕の周りに黒を蔑んでいた者はいない
なら、なんで俺は黒を蔑むべきなんて思ったんだっけ…?
クロスは愛しいと思っていたマインの罵倒を聞きながら思考にふける
だが答えが出る事はないだろう
『ふふふ』
それはここメディル王国の第三王子であった男だ
この男クロスは、誰も来ることの許されない、世で最も高い塔、《罪王の塔》の最上階に幽閉されていた
罪王の塔は王族が罪を犯した時、最も最上の罰を与える塔であった
クロスは虚に虚空を見つめていた
会えはしない愛しい女
愛しい女に罵倒され続ける
それがこの男の罰だ
クロスは昔から我儘で強欲だった
聡明で強い兄達と比べ、劣等感から使用人に当たり散らし、我儘放題であった
故に、自分の思った事が全て正しく、他の者の言う事は信じなかった
兄達の優しさにも気付けぬほど、自身の内に閉じこもっていた
なのに、愛しい女の言葉には心が動いた
愛しい女、マイン・カーリー
『貴方はお兄さん達より劣ってる。でも大丈夫。私が側にいてあげるから』
普段なら激怒しただろう言葉
だが怒りはなく、ただただ安心した
“マインといれば、俺は兄上達より…”
あれ?
あの時、なんて思ったんだっけ?
クロスは幻影・幻聴の中、マインとの出会いを思い出す
幻影のマインを見つめる
罪王の塔で、クロスは発狂する事を禁じられ、マインに己の罪を言われ続け、今まであの黒の男に言っていた言葉を言われ続ける
それがクロスの罰だから
心が軋む音がする
幸せだったマインとの日々を思い出す
だが、クロスにマインとの幸せだった日々を思い出す事が出来なかった
あの時は確かに幸せだった
でも、思い返した今は、なぜ幸せと思ったのかわからない
マインとの日々を思い出そうとし、思い出されるのは、ライ兄様の、あの黒の男、ルシェリオに向ける優しく甘い表情
普段何を言われても無表情だというのに、ライ兄様に笑いかけられ、嬉しそうに少し微笑むルシェリオ
黒は忌色で、蔑まれるべきなのに…
何故?
あれ?母上や父上も蔑んでいなかった
僕の周りに黒を蔑んでいた者はいない
なら、なんで俺は黒を蔑むべきなんて思ったんだっけ…?
クロスは愛しいと思っていたマインの罵倒を聞きながら思考にふける
だが答えが出る事はないだろう
『ふふふ』
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