その愛は契約に含まれますか?[本編終了]

谷絵 ちぐり

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残ればいいのに!

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大浴場の扉の前、ジリジリイライラと腕を組んで待つ二人は王都からやってきた上位貴族であると共に上位のαである。
宿の使用人達の間でひそひそこそこそと噂を立てられる二人でもある。
曰く、容姿が良い、所作が綺麗、そしてなんといっても伴侶に向ける姿勢がとても良い。
あんな風に愛されてみたい、と。

「・・・お前、リュカの湯上りを見る気だろ」
「は?お前こそナルの・・・」
「微塵も興味がない」
「俺だって今更ないね」
「今更ってなんだ、お前やっぱりリュカを・・・」
「はぁ?今はナルだけだし」

お互い胸ぐらを掴んで睨み合いギリギリと歯を噛み締める音までが聞こえてきそうな中、大浴場の扉が開いた。

「なんで喧嘩してんの?」
「どうかしましたか?」

不機嫌な顔がパッと明るくなりお互いの伴侶を、相手から隠すように囲いこんだ。

「リュカ、広い湯殿は気持ちよかったか?」
「はい!」

すべすべの桃色の頬を緩ませるのが愛らしい。
お前のとこはこんな風にはいかないだろ?とアイザックはチラリともう一人を窺った。
ぼたぼたと髪の先から雫が垂れているのを見て、だらしないなと思う。

「ナル、ちゃんと拭け」
「エルが拭いてくれよ」
「しょうがないな」

わしわしと拭かれるのを目を閉じて気持ちよさそうにするナルシュ、ふふんと得意げなエルドリッジの顔に腹が立つ。
きちんと着込んで髪もしっとりしているだけでリュカはちゃんとしている。
それでいい、それでいいが色々かまいたいとも思うアイザックだった。



数日ぶりの天蓋付きのベッドは広く沈み込むような柔らかさがあった。
ただ、そこからアイザックの匂いがしないのでベッド以外で睡眠をとっていたんだなと推測する。
もしかしたらあまり眠れていないのかもしれない。
部屋付きの温泉で湯を浴びるアイザックを待ちながらリュカはうとうとと微睡んでいた。

「リュカ?」

頬を突かれて瞼をあげるとアイザックがいた。
腰にタオルを巻いただけの姿、引き締まった体にリュカは目を奪われる。

「眠い?」

同じように横たわって腰を抱き寄せて見つめあって、自然と唇が触れた。
その柔らかさを楽しむように何度も小さく合わせる。
下唇に舌を這わすとリュカの口が開いたので、深く口づけた。
引っ込んだ舌を引きずり出して、腰も後頭部も引き寄せて思う存分堪能する。

「・・・アイク、歯が欠けてる」
「ん?あぁ、どこだった?」
「奥歯?んー?」

大きく開けた口の中をリュカがまじまじと眺め、指を突っ込んできた。
グリグリと内頬を擦り、歯のひとつひとつをなぞったり押したりする。

「・・・ひゅ、ひゅか?」

開けっ放しの口からは唾液がこぼれて話す言葉もままならない。
指はもう四本入っていて上顎を指の腹で撫でられ、舌を挟まれずりずりと扱かれた。
ふふふ、と笑うリュカがなんだか艶かしい。

「大事なものが欠けたんですね。奥歯のここ」

欠けたであろう箇所をグイグイと押されていると、不意に錆臭い味が口内に広がった。

「ひゅあ・・・ち・・・」
「はい、指の皮が破れたようです」

そのまま指を喉奥まで突っ込まれてリュカの血を飲まされた。
喉が嚥下したのを見てとってやっと指が引き抜かれる、番った時と同じ血の味がする。

「・・・リュカ?」

じゅうと中指を吸うリュカに堪らなく興奮してなにかが焼き切れたような気がした。


たった数日、それでも肌が心が体全部がリュカを欲してしたのだとわかった。
滑らかな白い肌、どこに触れても敏感な反応を返してくるのが嬉しい。

「リュカ、リュカ・・・ここに入りたい、入らせて?」

膝に乗せてトントンと小刻みに下から突き上げながら懇願する。
平らな胸のそれは真っ赤に膨れあがっていて舐めしゃぶる。
あっあっ、と仰け反るのを落ちないようにしっかり支えて突き上げながら今度は耳朶を食んだ。
ぐちぐちとわざと音を立てて舌先を耳の穴に入れて、合間に受け入れてと囁く。
甘ったるい匂いと、か細く鳴く声と必死になってこちらにしがみついてくる様に煽られた。

「奥まで?」
「うん、挿れたい・・・お願い」

ふっと吐息のような笑みのようなものを漏らしたリュカがゆっくりと腰を落とした。
柔らかく先端に吸い付いていたそこがゆっくりと開いていく。
じわじわと飲み込まれていくのがわかって痺れるような快感が突き抜けていく。

「はっ・・・んっ・・・リュカ」

深く深呼吸して一気に落とした瞬間にリュカが喉仏に噛み付いた。
ギリギリと力を入れてプチと皮が弾ける音が耳に入ってきた。
激しい痛みと快感に脳髄が焼けそうになった時、じゅるるっと音をたててリュカが血を啜った。

「項と同じでこれも痕が残ればいいのに」

リュカのその言葉を最後にアイザックの頭は真っ白になった。
がむしゃらにリュカを貪ったような気もするし、優しくリュカに抱かれたような気もする。
そのうち目の前が真っ黄色になってぶっ倒れた。

そして、目覚めた時には隣にいるはずのリュカがいなかった。
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