【完結】少女探偵・小林声は渡り廊下を走らない

暗闇坂九死郞

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二人目の転校生

第27話

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 私立時計ヶ丘とけいがおか高校では、二学期に入ってから僅か二ヶ月の間に、七件もの殺人事件が起きていた。死者の数は八名、逮捕者は七名に上っていた。
 校内にはカウンセラーが派遣され、学校は生徒たちの心のケアに取り組んでいる。

 そして当の生徒たちはというと、案外あっけらかんとしている者が多数派だった。というより、すっかり殺人事件に慣れてしまっていた。
 校内のどこかで殺人事件が起こると、大半の生徒が野次馬根性丸出しで、率先して噂話に花を咲かせていた。それが殺人のショックから身を守る為の、一種の対症療法になっていたのかもしれない。

 これだけ死人を出していてまだ学園生活が保たれている要因の一つに、小林こびやしこえが事件を速やかに解決したことが挙げられる。
 過去にどんな事件があったとしても、それは既にもう終わった出来事なのだ。

     〇 〇 〇

「沖縄から来ました~、喜屋武きゃん彩芽あやめですゥ。皆さんよろしく~。イエーイ」

 十一月初旬。美里みさとふみのクラスに転校生がやって来た。身長160センチの、腰まであるロングの黒髪に褐色の肌で両耳には10カ所以上ピアスが開いている。制服は時計ヶ丘高校のセーラー服ではなく、紺のブレザーにチェックのスカートだ。

「実は僕、ちょとした特技がありまして~」

 喜屋武はそう言って、鞄から口がすぼんだ四角い空瓶と、ルービックキューブを取り出した。

「じゃあ先生、瓶とルービックキューブに仕掛けがないか確認してくれません?」

 突然話を振られた担任の神津かみつ正樹まさきは、面食らいながらも丹念に道具を調べている。

「……特に変わったところはないようだ」

「じゃあ、このルービックキューブを瞬間移動で瓶の中に移動させるね~」

 ふみ香は喜屋武が両手に持つルービックキューブと瓶の口を見比べる。どう見ても、ルービックキューブの方が大きい。あれでは瓶の中に入れることなど不可能だ。

「行ッきま~す!! はああああッ!!」

 喜屋武が両手を背後に回した、一瞬のうちだった。
 次にルービックキューブを正面に見せたときには、瓶の中に隙間なくぴったりと収まってしまっていた。

「……何だ今の!?」
「スゲーッ!!」

 教室中に割れんばかりの拍手が鳴り響き、喜屋武彩芽は恭しく一礼する。

「……今の、手品か何か?」
 教師の神津が目をぱちくりしながら質問する。

「いやァ、あれは手品じゃなくて僕の能力っていうか、瞬間移動ね。タネも仕掛けもありませ~ん」
 ふみ香と目が合うと、喜屋武はペロリと舌を出して笑った。

「…………」

 ふみ香は何か嫌な予感がした。
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