18 / 26
18
しおりを挟むその静けさの中、私は思わず目を閉じた。これまで築いてきたもの、信じてきたもの、全てが今、音もなく崩れ去っているように感じた。
玲央の言葉、桜子の言葉、そして私の心が交錯して、どうしてもそれを整理できなかった。
桜子の存在が、私の心をますます乱していった。彼女はただ、過去に縛られているわけではない。
彼女が言った「私たちの約束」という言葉が、今も玲央の心に重くのしかかっていることが分かった。
過去と現在、そして未来。そのすべてが、私にとって耐えがたいものとなった。
「玲央、桜子のこと…本当に今も心の中にあるんですね。」
私は、ようやく自分の声を聞いた。
玲央はその言葉に一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに彼の目が曇った。
「凛花…それは、違うんだ。桜子のことは過去のことだよ。俺が何度も言ったように、君が今一番大事なんだ。」
その言葉には、どこか躊躇いと嘘が混じっているように感じた。心の中で、「本当にそうなら、どうしてこんなに曖昧な態度を取るんだ?」という問いが沸き上がった。
桜子は一歩踏み出し、私の目をしっかりと見つめながら、静かに言った。
「凛花さん、私はあなたを困らせたくない。ただ、玲央さんにとって私たちの関係がどうしても消化できていない部分があること、分かっているつもりです。」
その言葉に、私は何も言えなくなった。桜子は私の気持ちを知っている。玲央が言葉でどれだけ「過去のことだ」と言おうとも、彼の行動はすべてが証拠となっていた。
その場の空気が重くなり、言葉がどこか遠くへ消えていくような気がした。何も言わずにただ立ち尽くす私の前で、桜子は小さく息をつきながら、やや控えめに言った。
「もし、私が気になるなら、今すぐにでも辞めます。玲央さんの心が凛花さんに向いているなら、私はもう関わるべきではない。」
その言葉が私の胸を打ち、少しだけ心の中で何かが動いた。しかし、それでも何も変わらなかった。私の心は、もうこれ以上彼に与える信頼を持つことができないと感じていたからだ。
玲央が一歩近づいてきて、私の手を取ろうとした。けれど、その手を振り払うように、私は一歩後ろに下がった。
「玲央、私もあなたと向き合うのが怖い。これまで通りにはいかない。何をどう話しても、私はもう…」
言葉が続かなかった。泣きたかったが、涙は出なかった。
桜子は静かにその場を離れ、玲央も私を見つめながら深い溜息をついた。二人の間には、もうどうしても越えられない距離ができてしまっていた。
「ごめん、凛花。俺がもっと早くに向き合うべきだった。」
その言葉が、私の心に突き刺さった。
「でも、遅すぎたんじゃない?」
その一言が、私の全てを変えるきっかけになった。
7
あなたにおすすめの小説
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる