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しおりを挟むその日以来、桜子と私はあまり顔を合わせることなく、日々が過ぎていった。
しかし、私は確実に感じていた。玲央の帰りが遅くなることが増え、仕事に没頭している時間も長くなっていった。
そして、桜子がいることで、何かが変わり始めているような気がした。
夜、玲央が帰宅する時間帯になると、私は無意識に時計を見ていた。
彼が帰ってくる時間、桜子が仕事を終える時間、そしてその後の会話。
何気ない日常が、私にとっては次第に重荷になっていった。
ある晩、玲央が帰宅すると、いつも通りの笑顔で「ただいま」と言ってくれたが、その笑顔が何か嘘っぽく感じた。
私が「おかえり」と返すと、玲央はしばらく黙っていた。
「今日は少し遅くなった。桜子が新しい企画を持ってきて、あれを一緒に考えてたんだ。」玲央は軽く説明したが、私はその言葉をどこか信用できなかった。桜子が出てきたその時、私の心には一つの不安が灯った。
「そう…」私は目を伏せて答える。玲央がどんなに明るく、社交的で周囲に愛されている人物であっても、桜子と彼の過去の関係が、私の心の中に霧のように立ち込めていた。
数日後、カフェで桜子と偶然再び顔を合わせた。彼女は笑顔で「凛花さん、こんにちは!」と声をかけてきたが、その笑顔の奥に潜む何かを私は見逃せなかった。
「桜子さん、最近玲央とよく仕事をしているのね。」私は少し意地を張りながら言った。
桜子は一瞬だけ顔をしかめた後、すぐに笑顔に戻り、「はい、彼はとても頼りにしています。私も全力でサポートしていますから。」と言った。
その言葉には、どこか計算されたものが感じられ、私は一層不安になった。桜子は間違いなく、玲央の心の中で何か特別な存在になりつつある。
「彼を支えているなら、お願いね。」
私は微笑みながら答えたが、その笑顔は偽りだった。
その後、何気ない日常の中でも、桜子が頻繁に玲央の家に来るようになり、私の心は次第に疲れていった。
彼女が玲央に言葉をかけるその一言一言が、まるで二人の過去を再生させるようで、私はその度に胸が締め付けられる思いだった。
そして、ある日、私は玲央に言った。
「最近、あなたが私から遠くなっている気がする。」
玲央は少し驚いたように目を見開き、「そんなことないよ。」と答えたが、その目には誤魔化しの色があった。
「桜子と一緒にいる時間が増えて、私にはその変化が感じられるの。」私は冷静に続けた。
玲央はしばらく黙っていた後、やっと言葉を口にした。「凛花、分かっている。桜子は重要な人だけど、君のことを忘れることはないよ。だけど、仕事が忙しいだけなんだ。」
その言葉には一瞬だけ本気が感じられたが、私はもうその言葉を信じることができなかった。
桜子が玲央の近くにいる限り、私の不安は消えることはない。
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