上 下
1 / 19

りおの終わり

しおりを挟む
『君を愛してる、だから私のものになってくれ』


「はぁ~、堪んない!この声優さんの演技も相俟って最高すぎ!」

岬りお、25歳、会社員。普通のサラリーマンと言いたいところだけど。
実は俺、三度の飯よりBLが好きな腐男子です。

今日もこの学園モノBLゲー『赤い糸が繋ぐ先』通称“アカツナ“をプレイしているところだ。
全年齢対象のこのゲームは、俺が高校生の頃姉ちゃんから譲ってもらった物。
姉ちゃんとは喧嘩もしたけど仲も良く、姉ちゃんからよく漫画を借りていて、その中にBLが混ざっていたのだ。

とりあえず読んでみるとそこはもう…沼だった。

因みに俺はこの影響か、色素の薄い髪の儚げ男子が好きになった。

それからは姉ちゃんからよく本を借りたし、コンプしたゲームを貰ったりもした。
その頃はまだ高校生だったから、勿論全年齢モノだったけど。

その中で一番ハマったのが、この『アカツナ』だ。
そこには俺の理想があった。
長い銀髪を一括りにし、垂れ目でアンニュイな雰囲気を漂わせる王太子。彼は俺の推しだ。
何年経ってもこの王子以上の推しに出会えずに居るが、それでもよかった。


俺はもしかしたら、王子に恋をしていたのかもしれない。


…なんて、相手はゲームのキャラだ。
そんな事言ったらイタイ奴認定されるだろう。
それに、俺は男が好きって訳じゃないし。

「あ、そうだ。姉ちゃんの誕生日プレゼント買いに行くんだった」

俺はゲームの電源を落とし、適当な服を見繕って羽織った。
来週は姉ちゃんの誕生日。主婦になった今でも同人活動してる。
旦那さん…義兄さんの理解もあり、婚約時とても嬉しそうに話していたのを今でも覚えている。

新作ゲームでも買ってあげようかな。
最近はどんなジャンルにハマってたっけ?

そんな事を考えながらゲームの種類が豊富な店舗に行こうとした。


そう、行こうとしたのだ。


「きゃあああああ!!!」
「!?」


女性の悲鳴が響く。ビルだらけの中で反響するように。
何事かと振り返ろうとしたその時、背中が途端に熱くなった。

腹部が特に、熱い…!


何が起きたか分からないまま、力の抜けた体は膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んだ。
熱い、痛い。

悲鳴はまだ続いていた。
逃げろ、とか、男の狂った声だとかが耳をつんざく。
ボヤけた視界に映るその光景に、俺は漸く理解した。

刃物を振り回している男。あいつに刺されたのだ。
心臓が動く度、傷口から何かが溢れる感覚がする。
おそらく血だろう。

「大丈夫ですか!?お兄さん!だ、誰か!救急車!!」

女性か男性かの判別も付かない、けれど、誰かが助けてくれようとしていた。
でもその声も遠く感じる。

あーあ…、せっかく義兄さんと、姉ちゃんの誕生日、祝う約束してたのにな…。

白い服が赤く染まっていく。

俺の意識は、そこで終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

彼の至宝

まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...