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りおの終わり
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『君を愛してる、だから私のものになってくれ』
「はぁ~、堪んない!この声優さんの演技も相俟って最高すぎ!」
岬りお、25歳、会社員。普通のサラリーマンと言いたいところだけど。
実は俺、三度の飯よりBLが好きな腐男子です。
今日もこの学園モノBLゲー『赤い糸が繋ぐ先』通称“アカツナ“をプレイしているところだ。
全年齢対象のこのゲームは、俺が高校生の頃姉ちゃんから譲ってもらった物。
姉ちゃんとは喧嘩もしたけど仲も良く、姉ちゃんからよく漫画を借りていて、その中にBLが混ざっていたのだ。
とりあえず読んでみるとそこはもう…沼だった。
因みに俺はこの影響か、色素の薄い髪の儚げ男子が好きになった。
それからは姉ちゃんからよく本を借りたし、コンプしたゲームを貰ったりもした。
その頃はまだ高校生だったから、勿論全年齢モノだったけど。
その中で一番ハマったのが、この『アカツナ』だ。
そこには俺の理想があった。
長い銀髪を一括りにし、垂れ目でアンニュイな雰囲気を漂わせる王太子。彼は俺の推しだ。
何年経ってもこの王子以上の推しに出会えずに居るが、それでもよかった。
俺はもしかしたら、王子に恋をしていたのかもしれない。
…なんて、相手はゲームのキャラだ。
そんな事言ったらイタイ奴認定されるだろう。
それに、俺は男が好きって訳じゃないし。
「あ、そうだ。姉ちゃんの誕生日プレゼント買いに行くんだった」
俺はゲームの電源を落とし、適当な服を見繕って羽織った。
来週は姉ちゃんの誕生日。主婦になった今でも同人活動してる。
旦那さん…義兄さんの理解もあり、婚約時とても嬉しそうに話していたのを今でも覚えている。
新作ゲームでも買ってあげようかな。
最近はどんなジャンルにハマってたっけ?
そんな事を考えながらゲームの種類が豊富な店舗に行こうとした。
そう、行こうとしたのだ。
「きゃあああああ!!!」
「!?」
女性の悲鳴が響く。ビルだらけの中で反響するように。
何事かと振り返ろうとしたその時、背中が途端に熱くなった。
腹部が特に、熱い…!
何が起きたか分からないまま、力の抜けた体は膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んだ。
熱い、痛い。
悲鳴はまだ続いていた。
逃げろ、とか、男の狂った声だとかが耳を劈く。
ボヤけた視界に映るその光景に、俺は漸く理解した。
刃物を振り回している男。あいつに刺されたのだ。
心臓が動く度、傷口から何かが溢れる感覚がする。
おそらく血だろう。
「大丈夫ですか!?お兄さん!だ、誰か!救急車!!」
女性か男性かの判別も付かない、けれど、誰かが助けてくれようとしていた。
でもその声も遠く感じる。
あーあ…、せっかく義兄さんと、姉ちゃんの誕生日、祝う約束してたのにな…。
白い服が赤く染まっていく。
俺の意識は、そこで終わった。
「はぁ~、堪んない!この声優さんの演技も相俟って最高すぎ!」
岬りお、25歳、会社員。普通のサラリーマンと言いたいところだけど。
実は俺、三度の飯よりBLが好きな腐男子です。
今日もこの学園モノBLゲー『赤い糸が繋ぐ先』通称“アカツナ“をプレイしているところだ。
全年齢対象のこのゲームは、俺が高校生の頃姉ちゃんから譲ってもらった物。
姉ちゃんとは喧嘩もしたけど仲も良く、姉ちゃんからよく漫画を借りていて、その中にBLが混ざっていたのだ。
とりあえず読んでみるとそこはもう…沼だった。
因みに俺はこの影響か、色素の薄い髪の儚げ男子が好きになった。
それからは姉ちゃんからよく本を借りたし、コンプしたゲームを貰ったりもした。
その頃はまだ高校生だったから、勿論全年齢モノだったけど。
その中で一番ハマったのが、この『アカツナ』だ。
そこには俺の理想があった。
長い銀髪を一括りにし、垂れ目でアンニュイな雰囲気を漂わせる王太子。彼は俺の推しだ。
何年経ってもこの王子以上の推しに出会えずに居るが、それでもよかった。
俺はもしかしたら、王子に恋をしていたのかもしれない。
…なんて、相手はゲームのキャラだ。
そんな事言ったらイタイ奴認定されるだろう。
それに、俺は男が好きって訳じゃないし。
「あ、そうだ。姉ちゃんの誕生日プレゼント買いに行くんだった」
俺はゲームの電源を落とし、適当な服を見繕って羽織った。
来週は姉ちゃんの誕生日。主婦になった今でも同人活動してる。
旦那さん…義兄さんの理解もあり、婚約時とても嬉しそうに話していたのを今でも覚えている。
新作ゲームでも買ってあげようかな。
最近はどんなジャンルにハマってたっけ?
そんな事を考えながらゲームの種類が豊富な店舗に行こうとした。
そう、行こうとしたのだ。
「きゃあああああ!!!」
「!?」
女性の悲鳴が響く。ビルだらけの中で反響するように。
何事かと振り返ろうとしたその時、背中が途端に熱くなった。
腹部が特に、熱い…!
何が起きたか分からないまま、力の抜けた体は膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んだ。
熱い、痛い。
悲鳴はまだ続いていた。
逃げろ、とか、男の狂った声だとかが耳を劈く。
ボヤけた視界に映るその光景に、俺は漸く理解した。
刃物を振り回している男。あいつに刺されたのだ。
心臓が動く度、傷口から何かが溢れる感覚がする。
おそらく血だろう。
「大丈夫ですか!?お兄さん!だ、誰か!救急車!!」
女性か男性かの判別も付かない、けれど、誰かが助けてくれようとしていた。
でもその声も遠く感じる。
あーあ…、せっかく義兄さんと、姉ちゃんの誕生日、祝う約束してたのにな…。
白い服が赤く染まっていく。
俺の意識は、そこで終わった。
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