スイさんの恋人~本番ありの割りきった関係は無理と言ったら恋人になろうと言われました~

樹 史桜(いつき・ふみお)

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本編

86 悶絶! ローションストッキング(もどき)プレイ ※R18

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「………」
「……ごめん」
「いや、あたしも悪いし」

 まあ、あれだ。遠距離恋愛なうえにしばらく会えていなかったし、ようやく二人きりになれたからエミリオが迫ってきたのはまあしょうがない。イチャイチャ成分が足りないところに機会が巡って来ればそりゃあのるだろう普通。
 用意周到にもエミリオは認識阻害の魔法を使ったらしくて、ああそうなの? とスイもちょっとクラッと流されそうになったけれども、流石に義実家になる家に初めて来た日に庭でやらかすとかどうなのと少し冷静になった結果、エミリオを正気に戻そうと、彼の尻を両側から鷲掴みにしたのが良くなかった。
 エミリオはちょっとMっ気がある人だ。それもスイに対してだけは。ちょっと発情しかけているところに尻を鷲掴みされたらそりゃあ感じちゃってもしょうがないだろうなあと、スイは余計な事をしたなあと、目の前で絶望した表情のエミリオをちらっと見ながら思う。

 尻を掴まれた衝撃でビクンビクンしてしまって、思わず脱がしかけていたスイのドレスのレースを破ってしまったことに、やらかしてしまったとショックを受けているらしいエミリオ。

「本当にごめん。大事なドレスなんだよな……」
「あ、うん……まあ、確かに」
「弁償……」
「いやあ、つうか……これシュクラ神殿の聖女のおばちゃんたちの手作り」
「……! なんてことだ……! 俺は聖女様がたの想いを踏みにじって……!」
「いや、あの、エミさんだけのせいじゃないよ。あたしも悪かったし」

 まあ、確かにこのドレスはシュクラ神殿の聖女のおばちゃんらが「スイ様の晴れの日だから」と一生懸命作ってくれた一点もののドレスだ。縁取りのレースだって彼女らのひと針ひと針丁寧な手仕事で編まれたもので、これは手直しするにも手間がかかりそうだ。あんなに時間をかけてスイのために作ってくれたドレスなのに、こんな一時の戯れで破いてしまったなんて、なんとも申し訳ない。破けてしまったと白状したところで、おばちゃんらは怒りはしないだろうけれど、あの人の好いおばちゃんらのちょっと残念そうな顔を想像したら、罪悪感で胸が痛くなるわけで。

「あ、そうだ」

 しかしよく考えたら目の前に王都を代表する魔術師様がいるじゃないかとスイは気付いたのだ。長距離を大勢移動させる転移魔法や、身体を空中に浮かせる魔法などの上級魔法を使いこなせる、なんでもござれの大魔術師が、これをパパっと直せないはずがない。

「ね、エミさん、これって直せるかな? ほら、魔法でパパっと。そういうのって無理?」
「…………」

 スイは魔力こそ六万越えのエミリオと同等ではあるものの、現代日本からやってきたこちらでいう稀人であるため、魔法知識に明るくない。エミリオが転移や空中浮遊、派手な攻撃などの高位の魔法を操れる魔法のエキスパートなら、これを元の状態に戻すことなど容易いのではないかと、スイは気軽に考えて、努めて明るく聞いてみた。

 しかし、エミリオの表情は明るくなるどころか、更に暗さを増してしまった。

「……スイ。魔法というものは、その物体の構造に外部から働きかけるものなんだ」
「うん……?」
「炎なら炎の成分、水なら水の構造、空気、重力の仕組みなど、様々な物体の成り立ちや構造を頭に叩き込んで、魔力を使ってそれに外部から働きかける、それが魔法なんだ」
「……うん。急な魔法講義、一体どうしたの?」
「その物体の構造を把握していないと、魔法というのはかけられないわけで……」
「……その、心は?」
「………………俺はレースが編めない」
「………………あたしも編めない」

 ……確かにレース編みなんて大抵は服飾の専門家や職人の仕事、もしくは女性らが嗜むものであって、貴族制度のあるこの世界において末端とはいえ貴族のお坊ちゃんであるエミリオが、レース編みなどを知っているわけがない。
 魔法というのは以外にもファンタジー的なものではなくて、化学的な学術に基づいているらしい。
 そうなると、いくら魔法を使ってパパっと直そうにも、レースの網目構造や編み方がわからなければ、大魔術師でも直そうにも直せないのである。

「うちの……女性陣や使用人に頼めば」
「だ、だめだよ、何でこうなったか聞かれたらどう説明するの?」
「うっ……!」
「今はケープ羽織ればなんとかなるって。あとであたしから引っ掛けちゃったとか言っておばちゃんたちに謝っとくから」
「編み方さえ、わかれば……!」
「エミさんがごっつい指でちまちまレース編みしてるのとかどうなのよ……。あたしもおばちゃんらに教えてもらったことあるけど、数分で投げ出したよ……」
「うっ、そうなのか。確かに、この細かな編み目を初心者がやったところで直せるものでもないか……」

 みるみるとしょんぼりしていき、最終的に頭を抱えてしゃがみ込んでしまうエミリオ。ケープで隠せば、とりあえずこの場は乗り切れそうだと思ってなんとか「大丈夫だから!」と慰めるも、エミリオはなかなか浮上してくれない。一度罪悪感に苛まれるととことん落ち込むタイプのようだ。

「俺を殴ってくれ。蹴ってくれてもいい」
「……は?」
「いや、むしろ踏みにじってくれないか」
「いやいやいや、何急にドM発言してんの」
「それくらいじゃないと気がすまない。……俺は今シュクラ神殿の聖女様に懺悔したい気分だ」
「だからエミさんだけのせいじゃないからって言ってるでしょ? あたしもエミさんのお尻にいたずらしたりしなければ……って何言ってんだあたし。てか、やっちまったものはしょうがないから、あとで一緒に謝ろうよ。そうだよ、隠蔽しようと直せるかどうか聞いたりして、あたしがバカだった」
「いや、そもそも俺が感極まってスイに迫ったりしなければこんなことには……」
「そんな、イチャイチャしたかったのはあたしも同罪だし、しょうがなくない?」
「違うよ、こういうのは男が我慢すれば済んだことなんだ」
「いや、だからね……」
「俺が悪い。俺が全部」
「…………」

 ……堂々巡りだ。いくら宥めても罰を望む罪悪感の塊には響かないようだ。こんな頑固な人だったかな?
 とりあえず殴れ蹴れ踏めと譲らないめんどくさいエミリオに、スイはいい加減にしてほしいと若干イラっとしてきた。
 ここですぐに直せないものは仕方ないじゃないか。それに申し訳ないと、謝りたい相手も今この場に居ないんだから、ここでぐだぐだやってても何もならないというのに、エミリオは頑として譲らない。

 ああめんどくさい。
 もうこうなったらやけくそだ。
 認識阻害の魔法かけてあるんだし、エミさん欲求不満なんでしょ。モヤモヤをスッキリさせたいんでしょ。

 おもむろにハイヒールを片方脱いだスイは、少しドレスのスカートをたくし上げてから、しゃがみこんでガニ股状態のエミリオの足の間に、その爪先を差し入れてみた。片足立ち状態で少々ぐらつくのは、エミリオの肩に手を置いてなんとか防ぐ。

「……っ?」
「だぁーって、エミさんが踏めっていうからさあ」

 エミリオの股の間に入り込んだスイの爪先は、そのままエミリオの大事な部分をさすり始めた。さすがに先ほどの一件でエキサイトしたのは治まったらしいのを、足の指をワキワキ動かしながらムニュムニュと揉んで刺激を与える。

「……う、あっ……ん、あぅっ……!」
「ふはは、足吊りそう。……あー、ほら、元気になってきたねえ」
「ス、スイ……!」
「どうしたの? ……踏んでってエミさんが自分で言ったんじゃない」
「ん……! あ、ふぅっ……!」
「認識阻害の魔法かけてるんでしょ。いっぱい声出していいんじゃない?」
「あ、ひぐっ……ぅ、あ、ああ、スイ、はあぁっ……!」

 ストッキング越しにもぞもぞと足の指を動かしながら、エミリオのブツを器用に揉んでいくと、エミリオは苦し気かつ恍惚とした真っ赤な顔になって熱い悩ましい吐息を吐き出した。それと同時に先ほどの件で大人しくなっていたブツがご立派様にシフトチェンジしていくのがわかって、スイはドキドキと胸を鳴らしながらも口元には笑みが浮かんでいるのを自分で感じていた。

「……直接、する?」
「あ、ん、……いい?」
「いいよ、てか、エミさんはそんなにこれいいんだ? 女に足でされちゃうの」
「……意地悪言わないでくれ」

 拗ねたみたいに言うエミリオは、おもむろにカチャカチャとベルトを緩めて、羞恥に顔を真っ赤に染めながらもボトムスの前を寛げて下着から雄茎をぐいとさらけ出す。そして無言でねだるようにスイを熱い視線で見上げたので、それを合図にスイもくすっと笑いながら再び爪先をエミリオの股の間に差し入れた。

「ああっ……」

 エミリオが法悦に喘ぐと、スイは濡れる。それはこれまでの彼との行為によって分かった性癖だ。
 こんな時に、あたしって奴は。スイは思わず自嘲する。エミリオもエミリオだが、自分だって大概だ。似た者同士、変わった性癖同士、似合いのカップルじゃないか。

 エミリオはしゃがんだ状態から膝をついて、ドレスのスカートに包まれたスイの軸足のほうを片手で抑えて、もう片方の手は自分の肩に置かれたスイの手首を掴んだ。

「んっ、あっ……んふ、あぁ……スイ、ああ、好き、好きだ……! ん、んちゅ、ふ、あふ……」

 はっはっ、と息を荒げながら、エミリオは肩に置かれたスイの手首にちゅ、ちゅ、とキスをし始める。そのうち手を取ってスイの掌をべろりべろりと舐め始めた。

「あーらら……エミさんたらワンちゃんみたい」
「んんぅっ……んは、はぁ……はぁ……っ」
「……ねえエミさん? 実家の庭園でさ、向こうにご家族が居るのに、こんな発情しちゃって恥ずかしいね?」
「ん、ううっ……しょ、うがない、だろ……!」

 言葉で煽ってみるが、怒るどころか悪態ついてもエミリオはこのくらいだ。可愛らしいものである。
 それにさっきまで罪悪感に苛まれて頑なになっていたくせに、こうして愛撫されたらすぐに素直に快感を拾って甘えだすエミリオが本当に可愛い、愛おしい。そんな彼の色々な部分をさらけ出して見てみたい、そんな意地悪な部分が顔を出す。

「そこ、やめてほしいって言わないあたり、エミさん恥ずかしいのが快感になっちゃったの?」
「だ、だって、それ、は……っ、あ、はっ……」
「エッチだな~……」

 自分のことは棚に上げて、よく言うと自分でも思う。でもこうして意地悪なことを言うと泣きそうな表情をするエミリオだけれど、そのくせ雄茎はぐいぐいと屹立を高めてくる。その姿を見てスイも身体が火照り始めるのだから始末が悪い。

 なんておバカなカップルなんだろうね、あたしたちは。エミさんはどうかわからないけれど、あたしはこんなエミさんが可愛くてしょうがないんだよ。

 その間もスイの片足はエミリオのすっかり勃起した雄茎を足の裏でぐりぐりと擦り上げていく。エミリオの荒く熱い吐息と、鼻にかかったような悩ましい喘ぎ声に、スイもだんだんと興奮してくる。
 竿を擦り上げる爪先がだんだんと湿り気を帯びてくる感触に、スイはぐふふ、と自分でもちょっと下品かもと思うような笑い声が出てしまった。

「あは、ぬるぬるしてきた。気持ちいいの、エミさん?」
「気持ち、いい……! あ、ああ、スイ、気持ちぃ……! ん、ふぅ、んあ……!」
「またペロペロして……ほんとワンちゃんみたい。じゃあー、これってワンちゃんの嬉ションみたいな感じかな」

 じわじわとストッキングに染みてくる潤いを足の裏全体に馴染ませてぬるついたところで、少し強めに雁部分をぐりぐりとこすり付けてやると、エミリオは目を見開いて仰け反った。

「……んああっ!」

 エミリオの先走ったカウパー腺液がどくどくと溢れているところに、それが染み込んだストッキングの足が強めにぐりぐりと撫で擦ったら、それはまるで……。

「あは、ローションストッキングもどき?」
「ひ、あぁあ……っ、ぐ、ぁあ……、は、はぁっ……!」
「あら、気持ちいの? エミさん」
「あ、ふあ、だ、ダメ、だ、そん、なぁあっ……!」

 ローションを染み込ませたストッキングで男性器を刺激すると気持ちいいと、スイも元彼の悟とのセックスレスに悩んだ挙句ネットで検索したことがあった。ただやりすぎると戻れなくなるとか、普通のセックスだと物足りなくなるというような弊害があるらしいので、加減は必要だとかそんな知識を得たものの、そんな機会はついぞ訪れなかった。
 だから「本当にそんな感じになるのか?」と疑問だったけれど、この疑似ローションストッキングプレイでのエミリオのよがりっぷりを見ると、なんだかそんな気がしてきた。すげえなストッキング。現代とは全然違う素材で出来てるはずなのに。

 現代日本で得たあほな風俗的知識を、こうして異世界の男性で試してるなんて、なんと滑稽なことか。滑稽なのは自分かもしれないが。

「ん、んうっ……ぐぅっ……」
「ごめんね、ちょっと強かったかな?」

 エミリオが歯を食いしばっているのを見て、若干可哀そうになったスイは、ちょっと小休止入れるかと足の動きを止める。エミリオははー、はー、と大きく呼吸してから仰け反った体勢から前のめりに倒れ掛かり、スイの腰にしがみついてきた。下腹にかかるエミリオの吐息が熱い。

「はあっ……はあっ……はあっ……ああ、はあ……っ」
「ぬるぬる気持ちいい? エミさん」
「……ん、はぁ……スイ、これ、もう……」
「うん? もうやめたい?」
「…………」
「ふふ、迷ってる迷ってる。ぬるぬる~ってこれ、エミさんのエッチな液でびっちょびちょなストッキングの足でさあ……ココ、ぐりぐり~ってされて……」

 エミリオが少し落ち着いてきたところで、彼が腰にしがみついた状態で、スイは再び足を動かし始める。

「ん、んあっ! や、それ、んん、ぐうぅっ……!」

 落ち着いていたところに再び激しめの刺激を与えられて、エミリオはスイの腰に回した腕に力を込めて抱き着きながら、歯を食いしばって襲い来る強烈な快楽にぶるぶると震えた。

「んぐっ、う、あぁっ……! お、おかしく、なる……っ、あ、ひっ……!」
「あは……いいよぉ、おかしくなっちゃうよねえ? しょうがないもんねえ? エッチ大好きだもんねえエミさん~」
「おぁっ……! んぐ、……ぁあ、イ、イく、イく……ああもう、スイ、スイ……っ!」

 泣き叫ぶみたいにしてスイの腰に縋り付くようにして大きな身体をブルブル震えさせたエミリオは、強烈な快楽に耐えきれずにスイの足にびゅるりと射精した。一度足首に、一瞬間をおいてから今一度、今度はふくらはぎから膝がしらに至るまで噴き上げて精を放つ。
 出し切るまで息を止めていたのをぶはあーっっと吐き出してから、スイの腰回りから腕をだらりと落としたエミリオ。スイは彼のその頭をいい子いい子と撫でてやった。
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