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015 次の目標
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翌朝、朝食を摂った俺たちはマイホームにいた。
「すごく広くなってますね!」
部屋そのものが六畳に広がった上、若干場所を取っていたキッチンが独立したため目に見えて広くなった。
「これなら二人で料理できそうですね」
マリーは嬉しそうに言う。
二人で料理か……それもいいな。今はまだマイホームが生成してくれる食品ばかりを口にしているが、このマイホームが成長してキッチンが充実していけば、こちらの世界で買った食品を調理して食べることもできそうだ。次元収納のおかげでおそらく長期保存も可能だろう。こっちにはないような地球の料理を作ってそれを売るというのも……いや、俺そこまで料理上手でもないしな。
「さて、今日の宿代はいらないって言われたものの……お金は大事だよな。実は俺、お金がなくて……」
「あら、そうだったんですね。私も手持ちは少なくて……」
そう言ってベッド横のテーブルにマリーが置いたのは小さい銅貨が4枚と大きい銅貨が2枚……。
「フレッサを目指しつつ、依頼をこなしていくしかないですね。スタル村の宿はギルドの出張所にもなっているので、何かしらの依頼は受けられると思います。ただ、登録はフレッサじゃないとできないのでレックスさんはただ働きみたいになっちゃいますけど……」
「まあ俺のことは気にしないでくれ。マリーを手伝うよ」
マリーはありがとうございます、と頭を下げたあとにこう続けた。
マリーの話によると、冒険者ギルドで受注されている依頼にはいくつかの種類があり、一番メジャーなのは魔獣討伐依頼、他にも物品の納品依頼や、街から街への移動時における護衛、街中での雑用など多岐にわたる。
マイホームから宿の一室に戻りつつ、チェックアウトの手続きを済ませる。そのまま隣のカウンターにある依頼の一覧を見ると……宿の主から声をかけられる。
「フレッサを目指すだろうが、その前に依頼をやってほしくてな。これなんだが……」
「ハンマーボアの討伐……ですか」
依頼書に書かれている文字は明らかに日本語ではないのに、普通に読むことができる。これが言語の加護によるものか。
しかし、この世界に来て初めて見た魔物の名前だ。どんな魔物なのかわからないから何とも言えないが、魔物と戦う機会は多い方がいいだろう。
俺はこの依頼を受けることにした。
ハンマーボアは依頼書の絵で見る分には、おでこがハンマーのように迫り出した魔物だ。この突進をくらったら吹っ飛ぶどころじゃすまないだろう。
「ハンマーボアが東の草原に何頭か現れてな。どこからか群れから独立した何頭なのだろう。街道に近づくと危険だから、討伐してほしい」
「ハンマーボアって……食えるか?」
俺の気になるところとしてはその一点だ。せっかくキッチンが大きくなったのだから、ただ焼くだけでもいいから料理をしたいのだ。
「新鮮な肉は美味い。少々臭う上にあっという間に腐るが、血抜きを丁寧にやれば保存も少しだけ利く」
「へぇ……いいことを聞いた」
「レックスさん、食べ物のことしか頭にないんですか? もうちょっと他に考えましょうよ」
マリーにジト目で見られる。仕方がないじゃないか。宿の夕飯は美味かったが、肉料理は無かった。焼いただけでいい、分厚い肉が食いたいんだ。
ちなみに依頼主は村長さんで、報酬は銀貨1枚。手元には銅貨しかないから、これはありがたい。
「よし、早速行こう」
俺とマリーは村を出て、東の草原へと向かった。
「すごく広くなってますね!」
部屋そのものが六畳に広がった上、若干場所を取っていたキッチンが独立したため目に見えて広くなった。
「これなら二人で料理できそうですね」
マリーは嬉しそうに言う。
二人で料理か……それもいいな。今はまだマイホームが生成してくれる食品ばかりを口にしているが、このマイホームが成長してキッチンが充実していけば、こちらの世界で買った食品を調理して食べることもできそうだ。次元収納のおかげでおそらく長期保存も可能だろう。こっちにはないような地球の料理を作ってそれを売るというのも……いや、俺そこまで料理上手でもないしな。
「さて、今日の宿代はいらないって言われたものの……お金は大事だよな。実は俺、お金がなくて……」
「あら、そうだったんですね。私も手持ちは少なくて……」
そう言ってベッド横のテーブルにマリーが置いたのは小さい銅貨が4枚と大きい銅貨が2枚……。
「フレッサを目指しつつ、依頼をこなしていくしかないですね。スタル村の宿はギルドの出張所にもなっているので、何かしらの依頼は受けられると思います。ただ、登録はフレッサじゃないとできないのでレックスさんはただ働きみたいになっちゃいますけど……」
「まあ俺のことは気にしないでくれ。マリーを手伝うよ」
マリーはありがとうございます、と頭を下げたあとにこう続けた。
マリーの話によると、冒険者ギルドで受注されている依頼にはいくつかの種類があり、一番メジャーなのは魔獣討伐依頼、他にも物品の納品依頼や、街から街への移動時における護衛、街中での雑用など多岐にわたる。
マイホームから宿の一室に戻りつつ、チェックアウトの手続きを済ませる。そのまま隣のカウンターにある依頼の一覧を見ると……宿の主から声をかけられる。
「フレッサを目指すだろうが、その前に依頼をやってほしくてな。これなんだが……」
「ハンマーボアの討伐……ですか」
依頼書に書かれている文字は明らかに日本語ではないのに、普通に読むことができる。これが言語の加護によるものか。
しかし、この世界に来て初めて見た魔物の名前だ。どんな魔物なのかわからないから何とも言えないが、魔物と戦う機会は多い方がいいだろう。
俺はこの依頼を受けることにした。
ハンマーボアは依頼書の絵で見る分には、おでこがハンマーのように迫り出した魔物だ。この突進をくらったら吹っ飛ぶどころじゃすまないだろう。
「ハンマーボアが東の草原に何頭か現れてな。どこからか群れから独立した何頭なのだろう。街道に近づくと危険だから、討伐してほしい」
「ハンマーボアって……食えるか?」
俺の気になるところとしてはその一点だ。せっかくキッチンが大きくなったのだから、ただ焼くだけでもいいから料理をしたいのだ。
「新鮮な肉は美味い。少々臭う上にあっという間に腐るが、血抜きを丁寧にやれば保存も少しだけ利く」
「へぇ……いいことを聞いた」
「レックスさん、食べ物のことしか頭にないんですか? もうちょっと他に考えましょうよ」
マリーにジト目で見られる。仕方がないじゃないか。宿の夕飯は美味かったが、肉料理は無かった。焼いただけでいい、分厚い肉が食いたいんだ。
ちなみに依頼主は村長さんで、報酬は銀貨1枚。手元には銅貨しかないから、これはありがたい。
「よし、早速行こう」
俺とマリーは村を出て、東の草原へと向かった。
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