百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

017 ぬりぬり

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 その日は初めて指名してくれたお客様に、注文されたオムライスをあーんしてあげていた。

「いやあ、こういうお店来るの初めてだったけど、けっこうありだね」
「楽しんでいただけているようでなによりです」

 お客様は二十代半ばくらいで髪色も明るいギャルっぽいお姉さんだ。爪も綺麗に塗られている。

「ネイル、ご自分でやられるんですか?」
「え? あ、そうなんだよ。爪とぉ、車塗るの得意なんだよ」
「車もですか?」

 車を塗るって、お仕事でそういうことをしているんだろうか。

「あたし、駐車場借りてるんだけど、砂利の駐車場でさあ、けっこう石が跳ねて車に傷がつくの。そしたら、タッチペンっていう……うーん、それこそマニキュアみたいなやつで塗ってあげるんだよ。実際、ほんと同じようなもんだよ。下地があって、色を置いて、クリアを重ね塗りする感じでさ」

 そんな話をしつつもお客様の手が私のおっぱいをさわさわと下着越しに撫でる。癒しを提供するお仕事だから気にしはしないんだけど、なんとなく上手な気がしてちょっと背中がぞわっとする。

「お姉さん、仕事はネイル系なの?」

 少し距離感を詰めてお姉さん呼びしてみる。お姉さんは首を横に振って、普通のOLだと答えた。

「爪も実はこれつけ爪なんだよね。それに、つけ爪の方がなにかと便利だし?」

 胸元にあった手をつーっと太ももまで下ろすお姉さん。これはタチの手つきだ。

「お姉さん、彼女は?」
「いたらここには来れないよ。最近別れたんだ。ランちゃんはどっち?」
「どっちかって言われればタチかなあ」

 一応ギターボーカルやってる身だから指使いには自信はある。けどまぁ、バリタチに抱かれるのも悪くないかなっていう思いはある。なんならモエちゃんには抱かれたいくらいだ。マカさんは抱きたいかも。

「っふ、彼女がいるかいないかって質問なんだけど」
「……あぁ、あはは。それはさておき、お姉さんはタチでしょ?」

 完全に勘違いしていた。自分の中でお姉さんをタチ判定しているうちに、タチネコの二択が頭の中を占めてしまったらしい。とはいえ、別に彼女がいるかどうかはちょっと躱しておきたいような、そうでもないような。

「まあね。で、今はフリーなの?」
「口説かれてます? フリーですけど、別にこの店アフターとかないですよ」
「なぁんだ、健全だなぁ」

 このお店を健全って表現する人、非常にレアだな。かなーり不健全だと思うんだけどな。

「元カノはさあ、別にビアンじゃなかったのにあたしが強引に抱いて彼女にしちゃったからさぁ、次はちゃんと好き同士になりたいんだよね」
「なるほどね」
「まぁ、取り敢えず今日はありがと。また来ることがあったら指名するよ」

 時間も来たのでお姉さんの席を離れる。今日も一風変わったお客様に出会ったなぁ。この仕事、案外楽しんでるなぁ。
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