百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ

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本編

008 二人きりのカラオケ、何も起きないはずはなく

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 サラさんと入ったのは市内にある普通のカラオケチェーン店。市内にはコンテナを改修した個室型のカラオケ店もあるが、そっちはなんていうかエッチなことをするのによく使っていたから、今回は別のお店にした。流されてシてしまいそうだからね。

「へぇ、こんな感じのお部屋なんですね。けっこう狭いです」
「まあ二人で入るならこんくらいの規模じゃないかな」
「そうなんですね。あら? マラカスとかタンバリンってないんですか?」

 部屋を見渡すサラさん。そういえば最近は見かけなくなったようなきがする。まぁ、使うことも少ないし。

「確か……フロントで言えば貸してくれるんじゃないかな。まぁ、必要ないよ」
「そうなんですね」

 取り敢えずテレビの正面に腰を下ろすと、当たり前のようにサラさんが真横にぴとっと座る。
 うーん、なんでだろう。いい匂いする。

「ランさんはどんな歌を歌うんですか?」
「まぁ、バンド系が多いかな。BANKofSHARKとかCATwinksとかガールズバンドならストレイシープとかラックメイデンもいいかなぁ」
「うーん、聞いたことあるような、ないような……」

 わりと有名なところをチョイスしたような気がするんだけどなぁ。とはいえ、聴かない人は聴かないよなぁ。歌ってみたらわかるかもしれないし、取り敢えず有名な曲を何曲かカラオケにいれていく。
 採点はいれない。本気で歌う時はそれなりに準備があるしな。

「~~~~♪」

 3曲ほど続けて歌うと、サラさんがぱちぱちを拍手をしてくれる。友達と行っても今更拍手をしてくれるような子はいないから、けっこう気持ちいいな。

「すっごく上手です! あと、CMとかで聞いたことあるかもしれません!!」

 ドラマ主題歌とかアニソンだし、そもそもヒットした曲だからテレビにもよく出ていると思うのだけれど。サラさん、テレビもあまり見ないのかな。CMソングって分かるくらいだから見てはいると思うけど。

「サラさん、なにか知ってる曲ない?」

 取り敢えずテキトーに履歴を見せながら、知っている曲が無いか尋ねてみる。アニソンだろうとアイドルソングだろうと、20世紀の曲だろうと洋楽だろうと、ある程度は歌えると思うけど……。

「い、一緒に歌うんですか?」
「そうだね。カラオケは歌った方が楽しいからさ」

 履歴をスワイプしながらサラさんが選んだのは、三十年くらい前のアイドルが発表したヒット曲。『白い砂浜に青のパラソル』。夏ソングなのでこの時期にはちょうどいいか。

「じゃあ、入れてみようか」

 入れるとすぐにイントロが流れ始める。母がよく聞いていたし、音楽番組でも時折聞く。

「「~~♪」」

 歌い始めてみるとサラさんは歌詞を追うのにせいいっぱいでリズムがかなり疎かだった。私の声を聞いてくれているから、ギリギリだけど初めてならこんな感じなのかな。

「はわぁ……難しかったです」
「曲そのものの難易度はそんなに高くないはずだし、音域もそこまで悪くなかったと思う。一曲、いっぱい練習して得意な曲を作ると自信がつくかも」
「そうなんですねぇ。じゃあ、せっかくなのでこの曲をもっと練習してみます。ありがとうございます、ランさん!」

 その笑顔だけで、カラオケに来て良かったって思える。次のバイトも頑張ろっと。
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