祖国を追放された聖女の私を拾ったのは敵国の皇帝陛下!? ~裏切られ聖女の復讐譚~

楠富 つかさ

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王国編

第1話 さよなら母国

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「セレーナ。悪いが君をこの国にとどめておくのはもう無理だ」

 瀟洒な宮殿の一室、その主である男が、私に向けてそう言い放った。突然の言葉に、私は思わず自分の耳を疑った。また二十にも満たない私が、耳が遠くなったはずがないのだと自分に言い聞かせ、失礼を承知で問いなおす。

「なんと仰いましたか、殿下」

 私の目の前に座るのはこの国エフェタリア王国の第二王子、ローランス殿下だ。年は私より四つ上で二十二歳。五年前に元服を済ませて以来、皇太子たるエルフレッド殿下と共に国政を支えてきた殿下……。私の、愛しい婚約者さまが、どうして私を国から追放するのでしょうか。

「我が国も領土を広げ、ザブリッツ帝国と比肩する大国になった。領土が広がればそれだけ金がいる。それにこの国はもう、聖女に頼る弱小国じゃないんだ。聖女にかける税金は、民衆からの批判が殺到していてな……」

 エフェタリア王国は私の先祖、初代聖女であるルナーラ様が魔の物を追い払ったことで建国した歴史がある。三百年前に異世界から現われた勇者一行によって魔王は倒され、この世界から魔物は消え去った。
 それからは人間同士が争う戦乱の世になったが、今では七つの大国がほぼ大陸の覇権を握り、一次的ではあるが平和な国になった。その戦乱の中で生き延びてこられたのは、聖女の祈りがあってこそだったのではないのでしょうか……。

「元老院からも聖女への公費投入が莫大すぎると反感が高まっていてな、ヘタに君を擁護しようものなら……何らかの罪で君を処刑することになりかねん」
「え、えっと……その、公費について削減すればいい話ではないのでしょうか?」
「そうだろう。俺もそう思う。だがな、聖女の祈りというのは……はっきり言ってしまえば目に見えないんだ。魔物もいないこの世の中で、祈ったところで何になる」

 ……言われてしまえばそれまでだ。私は聖女だというのに治療に関する魔法が一切使えない。けれど語学には一家言ある。外交官としてそれなりに働いてきたという自負もある。そう殿下に陳情するが……。

「それについても心配ない。入れ」
「失礼します」

 現われたのは金髪の女性。胸元が大きく開いた豪奢なドレスから覗く深い谷間は、私ですら羨むほどだ。……というか、誰?

「一昨年の戦役で功を上げ伯爵となったジゼル伯の令嬢、エレットだ。彼女こそ、俺の新しい婚約者だ」

 ……は?

「レペゼット王国にも留学に行っていたほどの才女でな、語学も上出来で魔法も達者だ。なにより、聖女以上に華がある」

 華がある? 金髪で胸が大きいだけで華があるぅ? ……なるほど、王子といえども所詮は男、そういうわけか。

「分かりました。私はこの国を去ります」
「ふふ、さようなら。税金泥棒さん」

 ……名前すら覚えずにいきましょうか。金髪女の言葉を無視し、礼もせずに第二王子の執務室を後にする。
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