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第14章 異世界との交流が始まった地球文明
14.9 哀れな潜水艦隊
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ジェラムス市が解放されている頃、海洋の警戒に当たっていた、“しでん”編隊がようやく敵の痕跡を見つけた。その“しでん”編隊も地球人の指導官により操縦された3機と、訓練生としてのザラムム帝国人の操縦する5機の合計8機が警戒に当たっていたものだ。
編隊の指導官の指揮官を勤める、王ラクタン中尉は、ミモザラ亜大陸からレガシピ大陸への航路を想定して、その線上を彼の指揮下の編隊を5km毎の間隔で1.0m/秒の比較的ゆっくりした速度で飛ばせる。無論その間、電波式とレーダーと魔力レーダーを働かせている。高度は30㎞である。
その方法で、両大陸間の距離の半分のレガシピ側2500㎞の距離を2往復した時、訓練生のマナラ・ハーマラ少尉が無線に叫ぶ、
「王指導官殿、レーダーが何かを捕らえています。でも、不安定で薄い反応です」
「うん、了解、座標を送ってくれ」
王はハーマラが送ってきた座標に向けて、速度を上げて近づき、間近になって速度を緩め、高度も落としつつ慎重に近づく。確かにもやもやした反応がある。それも一つではないが、夜間の今全く海面は見えない。
『なんだろう?どのみち、敵は潜水艦だろう。海上艦だったら如何にステルスでも、とっくに見つかっているだろう。しかし、ザラムム帝国が原子力は持っていないのは確認されているし、それより科学技術で劣るミモザラ共和国が持っているわけはない。そうかひょっとしたら………』
彼は思い、シュノーケルからの排気ガスの存在を疑った。今夜は海上に殆ど風もなく、排気ガスが飛び散りにくい。それを、レーダーが捕らえたとすれば、その反応も理解できる。彼は、自分の機の聴音マイクのスイッチを入れて、ライトのスイッチも入れる。
機体の高度はすでに500mほどに降りており、かすかにマイクにゴウゴウという音が聞こえる。明らかに機関が稼働している音だが、27歳とまだ若い王は本当には久しぶりの音だ。彼の故郷の台湾の田舎でも、近年ではエンジンは殆どか使われず、車を始め殆どの機関はAEバッテリーにモーターの組み合わせだ。
何より、近年ではすでに殆ど燃料油が入手できず、エンジン車はその音と振動が良いという金持ちの贅沢になっている。レーダーにはシュノーケルは捕らえていないので、ステレス化の塗料が塗られれいるのだろう。しかし、排気ガスはステレス化のやりようはなく、それが捕らえられたという訳だ。聞いている限り、たぶん音源は少なくとも3つ以上はありそうである。
ザラムム帝国には化学バッテリーとしては極めて優秀なものをもっているので、ミモザラ共和国はその技術で潜水艦にバッテリーを使って、昼間はバッテリーで動き、夜シュノーケルを使って充電をしているのであろう。その音を聞く限り、そのエンジンは相当大出力のものであるようだ。
王は迷ったが、低空を明かりを点けてゆっくり飛ぶと、何らかの攻撃を食らう可能性があると思った。それに、座標の位置はまだレガシピ大陸までの300km以上ある。どのみち潜水艦の弱点は、浮上して上陸する時だ。このまま潜水艦が進むと、昨日侵攻部隊を退けた港街のラムチャン市だが、潜水艦を迎える敵の部隊はない。
時間は十分あるのだ。王は反攻部隊の本部になっている、母艦の“むさし”に連絡をすると、“むさし”は直ちに、座標の位置に飛んでくる。ジェラムス市の解放は、主としてハヤトの手で順調に進んでおり、もはや“むさし”が上空に滞空する必要はないのだ。
“しでん”には、海中を探れる機器は積んでいないが、“むさし”等の母艦には様々な観測機器の中に水中を探れる質量探知機が積んでいる。“しでん”には、海中を機動する機能を持たせていないが、重力エンジン駆動のこの戦闘機は宇宙空間でも行動できるので、当然海にも潜れるし、水中でも機動できる。
ただ、低コスト・量産を第一に考えたこの機は、無駄かも知れない機能を付け加えることはしていない。だから、ソナー・自力探知機・質量探知機などの潜水に必須の機器も積んでおらず、設計上の潜水の限界水深はわずか50mである。この点で母艦は事情が異なり、水中も行動範囲であるため水深200mまで潜れるし、ソナー・磁力探知機・質量探知機などすべて搭載されている。
“むさし”が当該水域に到着した時、すでに明るくなっておりエンジン音も聞こえなくなっている。バッテリーで潜水航行しているのであろう。“むさし”の艦橋で、ジムカク派遣軍司令官の三村省吾大将(少将)と、“むさし”の艦長である山路大佐が、質力探知機機の出力を3次元モニターで見ている。
「司令官、いますね。結構な数ですよ。ええと、88隻か、なかなか頑張ったな。しかしこの速度では随分時間がかかっただろうな」
その山路艦長の言葉に三村が応じる。
「まあ、潜水艦の総重量は平均的に1200トンか、戦車や多分航空機などの大型機材を持ち込むのだったら、この大きさでは数を揃えないと意味がないよな。しかし、どうやって上陸させるつもりだったんだろう?」
「多分、壊滅させたラムチャン市の侵攻部隊が迎える予定だったんじゃないでしょうか。大将閣下」
山路が2級上級生の三村の仮階級を揶揄する。
「ははは、大将か。まあ、精々このジムカクの作戦の間は敬ってくれたまえ。まあ、その点はそうだろうな。潜入した工作員はいるだろうが、上陸用のホバークラフトくらいは持っているかもしれないな。さて、どうするかな。彼らの深度50m位だったら、上空からレールガンを撃ちかければ水蒸気爆発を起こすから、十分壊滅できるぞ」
「そうですね。陸に十分近づくまであと1日半くらいか。ちょっとそれを待つのもうっとうしいですな。まず、高度10㎞程度まで昇って威嚇射撃をしましょう。水中の彼らに通信する手段はないから、彼等から1㎞ほど離れた位置で水蒸気爆発が起きれば嫌でも気がつくでしょう。
海中の艦隊は3つに分かれているので、それぞれ2発海面に向けて撃ちます、1時間待って浮上してこなければ、中央の群れから進行方向に向かって右の群れ、左という順番で10分に1隻ずつ当てます。でも、彼らの艦相互の間隔は500mくらいですから、被害は1隻で済まないかもしれませんね」
「ああ、市民を見せしめに殺してさらに人質にするような連中だ。本部で無警告の攻撃の了承はもらっている。全滅させてもやむを得ない。解った了承する。まず6発の威嚇射撃、1時間後から10分おきに基本的には1隻ずつ撃破だな」
この三村の命令に山路艦長は敬礼をして答礼する。
「了解しました。では、高度1万mに上昇、海中の艦隊の前方1㎞の位置に150㎜レールガン6発を撃ちます」
山路の艦橋の乗員にも聞こえるように言った応答を聞いたスタッフは、直ちに応答してそれに答えた。
王中尉は、“むさし”からその方針を聞いて、列機と共に母艦から送られた敵潜水艦の位置情報を見ながら時速200km程度のゆっくりした速度で現場を周回する。その位置情報は海面を見下ろすと、そこにあたかも潜水艦の群れが浮かんでいるように示される。
それは相互に半㎞程度の間隔で群れた大きく分けて3つの群であり、それぞれ3~4㎞四方程度に広がっている。2分ほどかけて10㎞の高空に昇った“むさし”がチカ、チカ、チカと光る。ドドーンという轟音と共に、各々の群れの前方が盛り上がって弾け散る。
その後はもうもうと水蒸気がたなびいているが、その6発の水蒸気爆発の結果、海面に衝撃波が走り、高さ1mほどの一種の津波が起きる。
「おお、あれは海中の艦隊も相当揺れただろうな。警告としては十分だろう」
王中尉はつぶやくが、もちろん水中艦体には十分に伝わっている。
艦隊司令官の、ミスラム・カザラームル少将は、すでに艦隊が見つかったのは覚悟していた。シュノーケルに電波検知器を設置していたので、上空からレーダー波が浴びせられたいたのは承知していたのだ。それでも、自分でレーダー波を出すのを押さえて、航行を続けていたが、心中は不安で一杯だった。
夜間になって、エンジンの駆動を始めた時に、通信兵によって本部と念話で連絡した結果、本部が空襲によって壊滅的な被害を受けたことを知った。そのことで、すでに空間ゲートを駆動する兵が殺されたために、もはや当分の間レガシピ亜大陸にゲートを通しての増援を送れる見込みがないということも解った。
しかし、目的地まで9割の距離に至ったここにおいては、すでに引き返すにも燃料が足りない。本部からの指示は航行を続行してレガシピ大陸に橋頭保を築けであったが、本部はジェラムス市において、占領していた拠点が次々に連絡を断っていることは、カザラームル少将に知らせていなかった。
全員が戦士であることを誇りにしている彼等ノメラにとって、『降伏』というのは受け入れられない選択なのだ。少なくとも上位層から下部へそれを認めることはあり得ない。カザラームルは、テクノラートとしてのキャリアから、潜水艦隊の建設には主導的な立場であり、そのためこの艦隊の指揮を任されたが、元々無茶な今回の航行には反対であった。
まず、制空権と制海権の両方を取られているために、5千㎞もの距離を潜水して航行する必要がある。それも、夜間はシュノーケルでエンジンを動かしてバッテリーを充電し、昼間はその蓄電で航行するという極めて厳しい条件だ。結局98隻で出発した艦隊は、10隻が早い段階で機関の故障で引き返し今は88隻だ。
首尾よく目的地に着いたとしても、上陸がさらに問題だ。大砲・戦車、種々の軍用車両や回転機などの重火器は基本的にはホーバークラフトによって上陸させるが、無論、その機数は十分でなく、何度も往復が必要だ。その間の護衛は、回転機しかないが、帝国が最近運用しているという重力エンジン機の敵ではないだろう。
そのように、悲観的なことを考えている彼は、ズズーン、ズズーンという重低音と振動を感じはっと身構えた。その指令室の要員も皆それを感じて、「な、なんだ」ワイワイ言いながら艦内を見渡している。
「司令官殿、何でしょうかこれは?」
艦長のミワラタ・アジムラが彼に話しかけくる
「解らん……」
彼が続けて言おうとした時、艦がグラリと大きく揺れたが、艦に損害が出るほどではない。
「う、うむ。これは何らかの爆発だ。近くで2発、遠くで2発以上、我々の進行方向で起きている。明らかに敵の攻撃だろう。一旦航行を停止し、各艦に損害を知らせるように」
結局、爆発に近かった3隻の艦に漏水と機材の転倒による破損が起き、さらに12隻に機材の転倒による破損が起きたのみで、いずれも損害は軽微であった。
カザラームル少将は艦長に話しかける。
「これは、警告だろう。我々の3つに分かれた艦体の、それぞれの進行方法にあまり被害が出ない程度の攻撃はそれしか考えられない。要は降伏して浮上しろということだな」
「しかし、司令官殿、それが事実であっても、我がノメラがそのように脅されただけで降伏などが出来る訳がありません」
「そうは言っても、多分空を飛んでいる敵に対して我々に反撃の余地はない。あれほどの攻撃を只の警告のためのみで行ってくる敵だ。それも、損害があまり出ないように正確に撃ってくるということは、わが艦隊は完全に位置を掴まれている。
次は一定の時間を置いて、実際に艦を直接に攻撃してくるな。そして、それは我々が降伏するまで続くだろう。絶望的であっても戦う術がある場合には、私も反抗を命じるが、この場合は取れる反抗は浮上して、大砲と機銃の水封を解いて彼らを攻撃するしかない。しかし、彼らが我々の準備を待つ必要はないのだ」
「司令官殿、もっと深く潜ったらどうでしょうか?」
「いや、さきほどのかれらの我々の艦への爆発の距離は1㎞程度だ。我々の潜航限度は100mだから、今の50mより50m深いのみだ。多分かれらはピンポイントで当ててくるから、彼らの爆弾が水面で爆発するとしても、狙われた艦はもたないな。何もしないで、ただじっとして殺られる耐えられん。
いずれにせよ浮上しよう。降伏するのも良し、反撃を試みるのも良し。いずれにせよ、我々のレガシピ亜大陸侵攻作戦は失敗した。どうだ艦長、それとここにいる諸君は?」
カザラームルは艦長と、その指令室にいて艦長との会話を聞いていた乗り込み員に話かけると、乗組員はお互いに見回してやがて副長が答える。
「浮上しましょう。しかし、只降伏はできません。3門の砲と4基の機銃の水封を解いて出来るだけの反撃をしましょう」
上空500mをゆっくり飛んでいた王中尉は、穏やかな波に揺れている海面が大きく揺れ始め、次々に潜水艦が浮き上がって来るのに気が付いた。母艦“むさし”から連絡が入る。
「浮上する潜水艦を警戒せよ。攻撃の意思を見せた場合には25mm砲で攻撃せよ」
王たちの列機が見守る内に、浮上した潜水艦から飛び出した乗り込み員が艦から伸びあがってきた口径10cmほどの砲と機関銃らしきものにとりつき始めた。それは明らかにすべての艦でのことであった。
「反撃の意志あるものと認める。各機攻撃せよ」
王が命じるが、その時点では、むさしから飛び立った50機のしでんも攻撃に加わった。
88隻の潜水艦は、乗組員の奮闘も空しく結局機銃を打ち出せた3隻を除き、碌な抵抗もできなかった。直接艦体をレールガンで撃たれ沈没した35隻以外の艦は浮いてはいたが、機銃で銃器を破壊されて無力になった。
これらの艦は“しでん”によって見張られた状態で後に駆け付けたザラムム帝国の海軍によって捕獲され、乗員は催眠ガスで眠らさて捕虜になった。
編隊の指導官の指揮官を勤める、王ラクタン中尉は、ミモザラ亜大陸からレガシピ大陸への航路を想定して、その線上を彼の指揮下の編隊を5km毎の間隔で1.0m/秒の比較的ゆっくりした速度で飛ばせる。無論その間、電波式とレーダーと魔力レーダーを働かせている。高度は30㎞である。
その方法で、両大陸間の距離の半分のレガシピ側2500㎞の距離を2往復した時、訓練生のマナラ・ハーマラ少尉が無線に叫ぶ、
「王指導官殿、レーダーが何かを捕らえています。でも、不安定で薄い反応です」
「うん、了解、座標を送ってくれ」
王はハーマラが送ってきた座標に向けて、速度を上げて近づき、間近になって速度を緩め、高度も落としつつ慎重に近づく。確かにもやもやした反応がある。それも一つではないが、夜間の今全く海面は見えない。
『なんだろう?どのみち、敵は潜水艦だろう。海上艦だったら如何にステルスでも、とっくに見つかっているだろう。しかし、ザラムム帝国が原子力は持っていないのは確認されているし、それより科学技術で劣るミモザラ共和国が持っているわけはない。そうかひょっとしたら………』
彼は思い、シュノーケルからの排気ガスの存在を疑った。今夜は海上に殆ど風もなく、排気ガスが飛び散りにくい。それを、レーダーが捕らえたとすれば、その反応も理解できる。彼は、自分の機の聴音マイクのスイッチを入れて、ライトのスイッチも入れる。
機体の高度はすでに500mほどに降りており、かすかにマイクにゴウゴウという音が聞こえる。明らかに機関が稼働している音だが、27歳とまだ若い王は本当には久しぶりの音だ。彼の故郷の台湾の田舎でも、近年ではエンジンは殆どか使われず、車を始め殆どの機関はAEバッテリーにモーターの組み合わせだ。
何より、近年ではすでに殆ど燃料油が入手できず、エンジン車はその音と振動が良いという金持ちの贅沢になっている。レーダーにはシュノーケルは捕らえていないので、ステレス化の塗料が塗られれいるのだろう。しかし、排気ガスはステレス化のやりようはなく、それが捕らえられたという訳だ。聞いている限り、たぶん音源は少なくとも3つ以上はありそうである。
ザラムム帝国には化学バッテリーとしては極めて優秀なものをもっているので、ミモザラ共和国はその技術で潜水艦にバッテリーを使って、昼間はバッテリーで動き、夜シュノーケルを使って充電をしているのであろう。その音を聞く限り、そのエンジンは相当大出力のものであるようだ。
王は迷ったが、低空を明かりを点けてゆっくり飛ぶと、何らかの攻撃を食らう可能性があると思った。それに、座標の位置はまだレガシピ大陸までの300km以上ある。どのみち潜水艦の弱点は、浮上して上陸する時だ。このまま潜水艦が進むと、昨日侵攻部隊を退けた港街のラムチャン市だが、潜水艦を迎える敵の部隊はない。
時間は十分あるのだ。王は反攻部隊の本部になっている、母艦の“むさし”に連絡をすると、“むさし”は直ちに、座標の位置に飛んでくる。ジェラムス市の解放は、主としてハヤトの手で順調に進んでおり、もはや“むさし”が上空に滞空する必要はないのだ。
“しでん”には、海中を探れる機器は積んでいないが、“むさし”等の母艦には様々な観測機器の中に水中を探れる質量探知機が積んでいる。“しでん”には、海中を機動する機能を持たせていないが、重力エンジン駆動のこの戦闘機は宇宙空間でも行動できるので、当然海にも潜れるし、水中でも機動できる。
ただ、低コスト・量産を第一に考えたこの機は、無駄かも知れない機能を付け加えることはしていない。だから、ソナー・自力探知機・質量探知機などの潜水に必須の機器も積んでおらず、設計上の潜水の限界水深はわずか50mである。この点で母艦は事情が異なり、水中も行動範囲であるため水深200mまで潜れるし、ソナー・磁力探知機・質量探知機などすべて搭載されている。
“むさし”が当該水域に到着した時、すでに明るくなっておりエンジン音も聞こえなくなっている。バッテリーで潜水航行しているのであろう。“むさし”の艦橋で、ジムカク派遣軍司令官の三村省吾大将(少将)と、“むさし”の艦長である山路大佐が、質力探知機機の出力を3次元モニターで見ている。
「司令官、いますね。結構な数ですよ。ええと、88隻か、なかなか頑張ったな。しかしこの速度では随分時間がかかっただろうな」
その山路艦長の言葉に三村が応じる。
「まあ、潜水艦の総重量は平均的に1200トンか、戦車や多分航空機などの大型機材を持ち込むのだったら、この大きさでは数を揃えないと意味がないよな。しかし、どうやって上陸させるつもりだったんだろう?」
「多分、壊滅させたラムチャン市の侵攻部隊が迎える予定だったんじゃないでしょうか。大将閣下」
山路が2級上級生の三村の仮階級を揶揄する。
「ははは、大将か。まあ、精々このジムカクの作戦の間は敬ってくれたまえ。まあ、その点はそうだろうな。潜入した工作員はいるだろうが、上陸用のホバークラフトくらいは持っているかもしれないな。さて、どうするかな。彼らの深度50m位だったら、上空からレールガンを撃ちかければ水蒸気爆発を起こすから、十分壊滅できるぞ」
「そうですね。陸に十分近づくまであと1日半くらいか。ちょっとそれを待つのもうっとうしいですな。まず、高度10㎞程度まで昇って威嚇射撃をしましょう。水中の彼らに通信する手段はないから、彼等から1㎞ほど離れた位置で水蒸気爆発が起きれば嫌でも気がつくでしょう。
海中の艦隊は3つに分かれているので、それぞれ2発海面に向けて撃ちます、1時間待って浮上してこなければ、中央の群れから進行方向に向かって右の群れ、左という順番で10分に1隻ずつ当てます。でも、彼らの艦相互の間隔は500mくらいですから、被害は1隻で済まないかもしれませんね」
「ああ、市民を見せしめに殺してさらに人質にするような連中だ。本部で無警告の攻撃の了承はもらっている。全滅させてもやむを得ない。解った了承する。まず6発の威嚇射撃、1時間後から10分おきに基本的には1隻ずつ撃破だな」
この三村の命令に山路艦長は敬礼をして答礼する。
「了解しました。では、高度1万mに上昇、海中の艦隊の前方1㎞の位置に150㎜レールガン6発を撃ちます」
山路の艦橋の乗員にも聞こえるように言った応答を聞いたスタッフは、直ちに応答してそれに答えた。
王中尉は、“むさし”からその方針を聞いて、列機と共に母艦から送られた敵潜水艦の位置情報を見ながら時速200km程度のゆっくりした速度で現場を周回する。その位置情報は海面を見下ろすと、そこにあたかも潜水艦の群れが浮かんでいるように示される。
それは相互に半㎞程度の間隔で群れた大きく分けて3つの群であり、それぞれ3~4㎞四方程度に広がっている。2分ほどかけて10㎞の高空に昇った“むさし”がチカ、チカ、チカと光る。ドドーンという轟音と共に、各々の群れの前方が盛り上がって弾け散る。
その後はもうもうと水蒸気がたなびいているが、その6発の水蒸気爆発の結果、海面に衝撃波が走り、高さ1mほどの一種の津波が起きる。
「おお、あれは海中の艦隊も相当揺れただろうな。警告としては十分だろう」
王中尉はつぶやくが、もちろん水中艦体には十分に伝わっている。
艦隊司令官の、ミスラム・カザラームル少将は、すでに艦隊が見つかったのは覚悟していた。シュノーケルに電波検知器を設置していたので、上空からレーダー波が浴びせられたいたのは承知していたのだ。それでも、自分でレーダー波を出すのを押さえて、航行を続けていたが、心中は不安で一杯だった。
夜間になって、エンジンの駆動を始めた時に、通信兵によって本部と念話で連絡した結果、本部が空襲によって壊滅的な被害を受けたことを知った。そのことで、すでに空間ゲートを駆動する兵が殺されたために、もはや当分の間レガシピ亜大陸にゲートを通しての増援を送れる見込みがないということも解った。
しかし、目的地まで9割の距離に至ったここにおいては、すでに引き返すにも燃料が足りない。本部からの指示は航行を続行してレガシピ大陸に橋頭保を築けであったが、本部はジェラムス市において、占領していた拠点が次々に連絡を断っていることは、カザラームル少将に知らせていなかった。
全員が戦士であることを誇りにしている彼等ノメラにとって、『降伏』というのは受け入れられない選択なのだ。少なくとも上位層から下部へそれを認めることはあり得ない。カザラームルは、テクノラートとしてのキャリアから、潜水艦隊の建設には主導的な立場であり、そのためこの艦隊の指揮を任されたが、元々無茶な今回の航行には反対であった。
まず、制空権と制海権の両方を取られているために、5千㎞もの距離を潜水して航行する必要がある。それも、夜間はシュノーケルでエンジンを動かしてバッテリーを充電し、昼間はその蓄電で航行するという極めて厳しい条件だ。結局98隻で出発した艦隊は、10隻が早い段階で機関の故障で引き返し今は88隻だ。
首尾よく目的地に着いたとしても、上陸がさらに問題だ。大砲・戦車、種々の軍用車両や回転機などの重火器は基本的にはホーバークラフトによって上陸させるが、無論、その機数は十分でなく、何度も往復が必要だ。その間の護衛は、回転機しかないが、帝国が最近運用しているという重力エンジン機の敵ではないだろう。
そのように、悲観的なことを考えている彼は、ズズーン、ズズーンという重低音と振動を感じはっと身構えた。その指令室の要員も皆それを感じて、「な、なんだ」ワイワイ言いながら艦内を見渡している。
「司令官殿、何でしょうかこれは?」
艦長のミワラタ・アジムラが彼に話しかけくる
「解らん……」
彼が続けて言おうとした時、艦がグラリと大きく揺れたが、艦に損害が出るほどではない。
「う、うむ。これは何らかの爆発だ。近くで2発、遠くで2発以上、我々の進行方向で起きている。明らかに敵の攻撃だろう。一旦航行を停止し、各艦に損害を知らせるように」
結局、爆発に近かった3隻の艦に漏水と機材の転倒による破損が起き、さらに12隻に機材の転倒による破損が起きたのみで、いずれも損害は軽微であった。
カザラームル少将は艦長に話しかける。
「これは、警告だろう。我々の3つに分かれた艦体の、それぞれの進行方法にあまり被害が出ない程度の攻撃はそれしか考えられない。要は降伏して浮上しろということだな」
「しかし、司令官殿、それが事実であっても、我がノメラがそのように脅されただけで降伏などが出来る訳がありません」
「そうは言っても、多分空を飛んでいる敵に対して我々に反撃の余地はない。あれほどの攻撃を只の警告のためのみで行ってくる敵だ。それも、損害があまり出ないように正確に撃ってくるということは、わが艦隊は完全に位置を掴まれている。
次は一定の時間を置いて、実際に艦を直接に攻撃してくるな。そして、それは我々が降伏するまで続くだろう。絶望的であっても戦う術がある場合には、私も反抗を命じるが、この場合は取れる反抗は浮上して、大砲と機銃の水封を解いて彼らを攻撃するしかない。しかし、彼らが我々の準備を待つ必要はないのだ」
「司令官殿、もっと深く潜ったらどうでしょうか?」
「いや、さきほどのかれらの我々の艦への爆発の距離は1㎞程度だ。我々の潜航限度は100mだから、今の50mより50m深いのみだ。多分かれらはピンポイントで当ててくるから、彼らの爆弾が水面で爆発するとしても、狙われた艦はもたないな。何もしないで、ただじっとして殺られる耐えられん。
いずれにせよ浮上しよう。降伏するのも良し、反撃を試みるのも良し。いずれにせよ、我々のレガシピ亜大陸侵攻作戦は失敗した。どうだ艦長、それとここにいる諸君は?」
カザラームルは艦長と、その指令室にいて艦長との会話を聞いていた乗り込み員に話かけると、乗組員はお互いに見回してやがて副長が答える。
「浮上しましょう。しかし、只降伏はできません。3門の砲と4基の機銃の水封を解いて出来るだけの反撃をしましょう」
上空500mをゆっくり飛んでいた王中尉は、穏やかな波に揺れている海面が大きく揺れ始め、次々に潜水艦が浮き上がって来るのに気が付いた。母艦“むさし”から連絡が入る。
「浮上する潜水艦を警戒せよ。攻撃の意思を見せた場合には25mm砲で攻撃せよ」
王たちの列機が見守る内に、浮上した潜水艦から飛び出した乗り込み員が艦から伸びあがってきた口径10cmほどの砲と機関銃らしきものにとりつき始めた。それは明らかにすべての艦でのことであった。
「反撃の意志あるものと認める。各機攻撃せよ」
王が命じるが、その時点では、むさしから飛び立った50機のしでんも攻撃に加わった。
88隻の潜水艦は、乗組員の奮闘も空しく結局機銃を打ち出せた3隻を除き、碌な抵抗もできなかった。直接艦体をレールガンで撃たれ沈没した35隻以外の艦は浮いてはいたが、機銃で銃器を破壊されて無力になった。
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異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
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