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第14章 異世界との交流が始まった地球文明
14.8 ジムカクでの反撃、ハヤトの活躍
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ハヤトは、探知魔法で地上の様子を探っている。このジムカクは、マナが濃く、強力な魔法を使うには都合が良いが、探知魔法は届きにくく精々100kmが限度である。しかし、今の高度1㎞で4㎞四方の基地内を探ることは全く問題がない。
廃墟、瓦礫が散在して、煙がもうもうと立ち上る中で火災があちこちで起きている状態で、レーダーを始めとする計器測定は殆ど無意味であるが、人間を選択的に探ることのできる魔法による探査は非常に有用である。地球人で探査が使えるものは、魔力の強い日本人に限定されており、知られている限りでは千人もいない。
ジムカクには、もともと探査能力持ちは配置されていなかったが、ハヤトが来るこということで、当然貴重なその人材は他に伴っていない。
「うん、結構な人数が生き残っているけれど、危険なほど魔力の強い者は生き残っていないな。また、レーダーなどの機器、さらに航空機を含めて大きな機材は大体破壊されているので、この基地の機能は失われた」
ハヤトはそう言って機内の乗員を見渡す。
「ここは、とりあえずいいでしょう。後でノメラの支配体制を崩壊させる必要はあるけれど、ジュラムス市の方が優先です。今から、ジェラムス市へ帰ることでいいですか?」
ハヤトの呼びかけに機内の全員が口々に「「O.K」」と言って大きく頷くが、パイロットの西田中尉が応じる。
「では、引き返します」
さらに、彼はマイクで呼びかける。
「列機、こちらは西田だ。本基地は無力化されたとハヤト氏が認めた。直ちにジェラムス市へ向かう。続け!」
飛行する“らいでん”の中で、ハヤトは三村大将に無線で連絡を取る。
「こちら、ハヤト。三村さん、空間ゲートはまず間違いなく無力されたはずです。また、攻撃した基地の機能も失われました。現在ジェラムス市に向かっていますが、到着時刻、さらにどこに向かうかは、担当者から西田中尉と連絡願いたい。さらに、現在決められている人質解放の手法について説明願いたい」
大将たる三村が直接連絡の窓口になるのは不自然であるが、三村の元々の階級は少将であり、ハヤトの対応は将官が当たるのはむしろ当然である。
三村から返事が来るので、ハヤトは乗機の全員が聞けるようにする。
「こちら、三村。ありがとうございます、ハヤトさん。空間ゲートを潰せれば、今後の方針は立てやすくなります。対象ヶ所が32という点は変わっていません。全体としては、人質は相当に消耗していますが、敵は流石に鍛えられていて、気の緩みはないようですね。
それで、現地側とも相談の上で、警察署に立てこもっているノメラを狙撃してみました。これは、殺さないように肩を狙わせたわけです。射程の長い420型電磁銃であれば半数以上の敵は、狙撃しようとすれば簡単ですからね。
それで狙撃は成功したものの、懸念していた通り人質が1名殺されました。
彼らが言うには、狙撃されたものが死んでいないので1人で済ませたが、1人殺されたら人質を10人殺すとのことです。なかなか難しい相手ですな。それで、解放の順番は決めさせて頂きました。最初はノメラの人数が少ない場所から始めて、最後は市庁舎としたいと思っています。いずれにせよ、当面、母艦の“むさし”でお待ちしています」
ハヤトがむさしの会議室に入った時、そこにはザラムム帝国軍のミウラム・ジクラ少将以下の5名に、地球側は三村大将以下7人が座っていたが、さらにザラムム帝国皇太子のザムイ・カザル・ザラムム殿下も出席している。
ハヤトが、皆に一礼して席に着くと三村が口火を切る。地球側は英語で、ザラムム帝国側は自国語でしゃべり、端末(スマホ)の翻訳機能で自動翻訳している。
「ハヤトさん、ご苦労様です。ええ、皇太子殿下からひと言ということでお言葉を頂きます」
皇太子は立ち上がり、ハヤトに語りかける。
「三村大将。ありがとう。さて、ハヤトさんは地球最高の魔法使いということですね。今からの人質救出とジェラムス市解放は、ハヤトさんの全面的な介入なしには成り立たないとか。私も、ここに至っては犠牲無しに、両者の達成は困難であると理解しています。
しかしながら、でき得れば、我が国の人々が一人でも無事に救い出させるように、お願いしたい。物が壊れることは、いくらでも取り返しがつくが、人の生命は取り返しがつかない。どうかお願いしたい」
さらに彼は、他の人々に体を向けて続ける。
「地球の戦士の皆さん。我が国の危機に当たって素早く対処頂き、更に三村大将を始めとしての増援を大変ありがたく思っております。今は、恩に思うことばかりですが、わが帝国も力をつけて、地球のお役に立てるようになり、今後とも長く良き関係でありたいと思っております。
また、わが帝国の軍の皆も、今回の経験は苦いものであるが、この経験からよく学び今後は自ら当たれるようになってほしい。今回に使われる機材も十分使いこなせないものであり、また基本的な能力も残念ながら劣るかもしれない。しかし、今回の経験では学ぶとともに、我々ができることは能力を振り絞って出来るだけのことをする、そういう決意であってほしい」
皇太子は静かに言って、手の平を皆に向ける形の敬礼をして話を終えた。ハヤトは貴人という存在は多く知っていたが、まれにみる立派な人柄だと感心した。彼には皇太子の言葉が全くの本音であることが判ったのだ。確かに今後は地球とジムカクの間には良い関係が築けるだろう。
それからは、すぐに実務的な協議に入った。32ヶ所の立てこもり場所の位置情報、平面、縦横断面の提示、調査時点の人質とノメラの位置情報、ノメラの警戒態勢、彼らの持つ武器、様々な動画が手早く提示され、ハヤトの端末に送られた。
1時間後には、ハヤトは同じ“らいでん”改211に乗り込み、最初の解放地点である、仮番号A-12に移動した。ハヤトは、10kg入りの麻酔ガスボンベを5本収納に持っている。
そこは、警察官学校であり、寄宿舎と事務棟がノメラにのって占拠してされている。ノメラは122人で、生徒は282人である。ノメラの武器は、魔法による爆発よけの措置を施した銃弾を使う、半自動小銃と拳銃さらに刃渡り80cmほどの諸刃の剣とナイフである。
彼等は、手榴弾などの爆裂弾は魔法に対してガードが出来ないということで所持してきていない。また当然、バイクはあるが、すばやくここに来るのに便利であったものの、今となっては無用の長物である。ノメラは1/3の人員は休憩または睡眠をとらせ、他が警戒態勢に入っている。
彼らは、主として脅しのために占領時に50人以上の生徒と教師及び学校の従業員を殺している。そのほとんどを、剣またはナイフで斬殺・刺殺している。その方がより血が出て恐怖を煽れることを良く知っているのだ。
このAB2拠点の小隊指揮官のキーナム・ムスマルク中尉は通信士のミーマルを怒鳴り上げた。
「基地と連絡が取れないとはどういうことよ!2回目の転移は全滅したというし」
「は、はい。どうもミモザ基地に何かあったとしか思えません」
念話が使える彼は、ジェラムス市の拠点相互の念話での連絡は支障なく行えるが、本国のミモザ基地との念話が通じないのだ。
ジェラムス市内程度の近距離であれば、念話が出来れば相互に通信が可能であるが、5千㎞を超える本国では相互に“相性”がよほどよくないと無理である。ミモザ基地では、魔力の強いものはハヤトに根絶やしにされたのである。 ムスマルク中尉は、優柔不断な侵攻軍司令官のポラサル・サキイ少将に怒っていたが、これは部下の前ではうかつに口に出せない。
彼女の判断では、今の状態で漫然と人質を確保するのみでは危険である。なにしろ、上空には忌々しいあの戦闘機が我が物顔で飛び回っているのだ。その上、それらの母艦と思われる巨大な船が少なくとも1隻は空に浮かんでいるので、戦闘機もその母艦で補給を受けることができるのだ。
また、自分たちの拠点の外には、あの地球という世界の兵士を加えた兵が、少なくとも自分たちと同じ数以上取り巻いている。あの戦闘機がその小さな砲弾を地上に打ち込む映像を見たが、その弾速は信じられないほど早く、その結果は大きな爆発を起こす。
明らかに人質がいなければ、自分たちは一掃されることは明らかだ。だから、人質をもっと積極的に使って空と地上の敵に退去を求めるというのが彼女の意見である。しかし、一方で、司令の言うように無理を押し過ぎて、人質を無視されたらこちらに打つ手は無くなる。
その意味では、唯一の望みは再度のこのジェラムス市への重火器を持った増援だ。別部隊が近づいているという話があるが、潜水艦によるものらしい。港からから内陸のここまでどうやってくるか?難しいと思う。
はっ!と気がつく。『眠い!なぜだ』粗末な椅子に腰かけていた彼女が辺りの部下を見ると、腰に差した剣の柄に手を掛けていた一人の部下が目をトロンとして、今にも崩れ落ちそうになっていた。彼女は焦って頭を振り叫ぼうとする。
しかし、その様子はボンベから一定量の麻酔ガスを、彼女の周辺に送り出して振りまいたハヤトによって検知されていた。彼女は、突然、喉に細いなにかが巻き付き、一挙に締まるのに抵抗する間もなく喉を潰されて気絶した。足がビクン、ビクンと痙攣している。
ハヤトは“らいでん”改でくつろいで座って兵士の塊ごとに、ボンベから直接異空間を通して麻酔薬をどんどん散布していく。
『なかなか、優秀な麻酔薬だ。最初に判断力を鈍くして寝させるからよほどのものしか、気絶させれれるのに気づかない』
そう思いながら散布し、警告を出そうとするものは、細めた力の帯で喉を絞り上げる。
別に、殺すまでもなく声をださず、気絶させればよいので楽な魔法だ。むろん、人質も眠り込むが、体格の良いノメラより早く寝る。醒めたとき少し頭痛があるらしいが、人体には害がないということなので安心だ。ものの10分もかからず、その警察学校のノメラと人質は一人残らず眠った。もっとも、ノメラの2人はハヤトの首絞めが少し強すぎ死んでいたが。
ハヤトが、その学校を封鎖していた陸戦隊の東寺皆太郎少尉に念話で告げる。
「ハヤトだ。ノメラと人質は全員眠っている。ガスマスクをしたものが、まず突入して、窓を開け放つこと。さらに10分以上して他の者は入ること」
「はい、承知しました。ハヤト特別官殿」
東寺少尉は応じ、続いて部下と指導下にある帝国兵に告げる。
「ハヤト氏から連絡があった。中のノメラは眠った。ガスマスクをつけた者は急げ」
東寺の直属の部下の篠田2曹以下の、25人のガスマスクを吊るしていた者達が、「は!了解」一斉に敬礼をしてマスクを装着し、入口を叩き壊して中に入っていく。
それをスクリーンで見ている“らいでん”の中は微妙な雰囲気になる。
「おい、ハヤト君、ちっとも僕らの出番がないよな。まあ、大体は今までもそんなもんだったが……」
ヤフワ・ジェジャートは黒い顔で苦笑いして言うが、自衛隊出身の5人は慌てて手を振って否定し、隊長の影山が言う。
「い、いや。我々は全く構いませんよ」
まあ、それは真実だろう。軍人である彼らは特段戦いたいとは思っていない。目的を果たせて安全であればそれに越したことはないのだ
しかし、ジェジャートは違う、彼はモザンビークの国会議員になっているが、何かといえばハヤトについていく。それは、新しい体験ができるからでもあるし、本当のところは闘いたいのだ。
それが判っているので、ハヤトは少し慌てて答える。
「うむ、そ、そうだな。でも、人質がいる状態では、彼らに何かあると問題だ。だから次だ。再度、ミモザラ共和国へ帰る時はノメラの支配体制を撃ち壊すために行くし、ここのように微妙な情景はないだろう。
次のときは、刀を持って一緒に攻め込むぜ。ノメラの戦闘能力はそこそこのものらしいからな。俺も結構楽しみだ」
「うーん。わかっちゃいるんだよね。だけど、機内で何もしないというのもな」
ジャガートが少し膨れ面で応じる。
残り31ヶ所も、大同小異で終わったが、ハヤトのように探査で監視ができ、異常があったら直ちに措置を取れるものがいるから、自軍には全く被害なく順調には違法していった。しかし、彼がいてさえ、人質には12人の犠牲が出た。これは、ガスにより眠らされるのに気が付いたノメラの数人が、人質を殺したからである。
こうした行為をした数人を含み、ノメラ側にはハヤトの魔法によって19人の死亡者がでたが、それは誰もが当然と判断し、咎める者はいなかった。結局、13時間をかけてジェラムス市は解放された。
廃墟、瓦礫が散在して、煙がもうもうと立ち上る中で火災があちこちで起きている状態で、レーダーを始めとする計器測定は殆ど無意味であるが、人間を選択的に探ることのできる魔法による探査は非常に有用である。地球人で探査が使えるものは、魔力の強い日本人に限定されており、知られている限りでは千人もいない。
ジムカクには、もともと探査能力持ちは配置されていなかったが、ハヤトが来るこということで、当然貴重なその人材は他に伴っていない。
「うん、結構な人数が生き残っているけれど、危険なほど魔力の強い者は生き残っていないな。また、レーダーなどの機器、さらに航空機を含めて大きな機材は大体破壊されているので、この基地の機能は失われた」
ハヤトはそう言って機内の乗員を見渡す。
「ここは、とりあえずいいでしょう。後でノメラの支配体制を崩壊させる必要はあるけれど、ジュラムス市の方が優先です。今から、ジェラムス市へ帰ることでいいですか?」
ハヤトの呼びかけに機内の全員が口々に「「O.K」」と言って大きく頷くが、パイロットの西田中尉が応じる。
「では、引き返します」
さらに、彼はマイクで呼びかける。
「列機、こちらは西田だ。本基地は無力化されたとハヤト氏が認めた。直ちにジェラムス市へ向かう。続け!」
飛行する“らいでん”の中で、ハヤトは三村大将に無線で連絡を取る。
「こちら、ハヤト。三村さん、空間ゲートはまず間違いなく無力されたはずです。また、攻撃した基地の機能も失われました。現在ジェラムス市に向かっていますが、到着時刻、さらにどこに向かうかは、担当者から西田中尉と連絡願いたい。さらに、現在決められている人質解放の手法について説明願いたい」
大将たる三村が直接連絡の窓口になるのは不自然であるが、三村の元々の階級は少将であり、ハヤトの対応は将官が当たるのはむしろ当然である。
三村から返事が来るので、ハヤトは乗機の全員が聞けるようにする。
「こちら、三村。ありがとうございます、ハヤトさん。空間ゲートを潰せれば、今後の方針は立てやすくなります。対象ヶ所が32という点は変わっていません。全体としては、人質は相当に消耗していますが、敵は流石に鍛えられていて、気の緩みはないようですね。
それで、現地側とも相談の上で、警察署に立てこもっているノメラを狙撃してみました。これは、殺さないように肩を狙わせたわけです。射程の長い420型電磁銃であれば半数以上の敵は、狙撃しようとすれば簡単ですからね。
それで狙撃は成功したものの、懸念していた通り人質が1名殺されました。
彼らが言うには、狙撃されたものが死んでいないので1人で済ませたが、1人殺されたら人質を10人殺すとのことです。なかなか難しい相手ですな。それで、解放の順番は決めさせて頂きました。最初はノメラの人数が少ない場所から始めて、最後は市庁舎としたいと思っています。いずれにせよ、当面、母艦の“むさし”でお待ちしています」
ハヤトがむさしの会議室に入った時、そこにはザラムム帝国軍のミウラム・ジクラ少将以下の5名に、地球側は三村大将以下7人が座っていたが、さらにザラムム帝国皇太子のザムイ・カザル・ザラムム殿下も出席している。
ハヤトが、皆に一礼して席に着くと三村が口火を切る。地球側は英語で、ザラムム帝国側は自国語でしゃべり、端末(スマホ)の翻訳機能で自動翻訳している。
「ハヤトさん、ご苦労様です。ええ、皇太子殿下からひと言ということでお言葉を頂きます」
皇太子は立ち上がり、ハヤトに語りかける。
「三村大将。ありがとう。さて、ハヤトさんは地球最高の魔法使いということですね。今からの人質救出とジェラムス市解放は、ハヤトさんの全面的な介入なしには成り立たないとか。私も、ここに至っては犠牲無しに、両者の達成は困難であると理解しています。
しかしながら、でき得れば、我が国の人々が一人でも無事に救い出させるように、お願いしたい。物が壊れることは、いくらでも取り返しがつくが、人の生命は取り返しがつかない。どうかお願いしたい」
さらに彼は、他の人々に体を向けて続ける。
「地球の戦士の皆さん。我が国の危機に当たって素早く対処頂き、更に三村大将を始めとしての増援を大変ありがたく思っております。今は、恩に思うことばかりですが、わが帝国も力をつけて、地球のお役に立てるようになり、今後とも長く良き関係でありたいと思っております。
また、わが帝国の軍の皆も、今回の経験は苦いものであるが、この経験からよく学び今後は自ら当たれるようになってほしい。今回に使われる機材も十分使いこなせないものであり、また基本的な能力も残念ながら劣るかもしれない。しかし、今回の経験では学ぶとともに、我々ができることは能力を振り絞って出来るだけのことをする、そういう決意であってほしい」
皇太子は静かに言って、手の平を皆に向ける形の敬礼をして話を終えた。ハヤトは貴人という存在は多く知っていたが、まれにみる立派な人柄だと感心した。彼には皇太子の言葉が全くの本音であることが判ったのだ。確かに今後は地球とジムカクの間には良い関係が築けるだろう。
それからは、すぐに実務的な協議に入った。32ヶ所の立てこもり場所の位置情報、平面、縦横断面の提示、調査時点の人質とノメラの位置情報、ノメラの警戒態勢、彼らの持つ武器、様々な動画が手早く提示され、ハヤトの端末に送られた。
1時間後には、ハヤトは同じ“らいでん”改211に乗り込み、最初の解放地点である、仮番号A-12に移動した。ハヤトは、10kg入りの麻酔ガスボンベを5本収納に持っている。
そこは、警察官学校であり、寄宿舎と事務棟がノメラにのって占拠してされている。ノメラは122人で、生徒は282人である。ノメラの武器は、魔法による爆発よけの措置を施した銃弾を使う、半自動小銃と拳銃さらに刃渡り80cmほどの諸刃の剣とナイフである。
彼等は、手榴弾などの爆裂弾は魔法に対してガードが出来ないということで所持してきていない。また当然、バイクはあるが、すばやくここに来るのに便利であったものの、今となっては無用の長物である。ノメラは1/3の人員は休憩または睡眠をとらせ、他が警戒態勢に入っている。
彼らは、主として脅しのために占領時に50人以上の生徒と教師及び学校の従業員を殺している。そのほとんどを、剣またはナイフで斬殺・刺殺している。その方がより血が出て恐怖を煽れることを良く知っているのだ。
このAB2拠点の小隊指揮官のキーナム・ムスマルク中尉は通信士のミーマルを怒鳴り上げた。
「基地と連絡が取れないとはどういうことよ!2回目の転移は全滅したというし」
「は、はい。どうもミモザ基地に何かあったとしか思えません」
念話が使える彼は、ジェラムス市の拠点相互の念話での連絡は支障なく行えるが、本国のミモザ基地との念話が通じないのだ。
ジェラムス市内程度の近距離であれば、念話が出来れば相互に通信が可能であるが、5千㎞を超える本国では相互に“相性”がよほどよくないと無理である。ミモザ基地では、魔力の強いものはハヤトに根絶やしにされたのである。 ムスマルク中尉は、優柔不断な侵攻軍司令官のポラサル・サキイ少将に怒っていたが、これは部下の前ではうかつに口に出せない。
彼女の判断では、今の状態で漫然と人質を確保するのみでは危険である。なにしろ、上空には忌々しいあの戦闘機が我が物顔で飛び回っているのだ。その上、それらの母艦と思われる巨大な船が少なくとも1隻は空に浮かんでいるので、戦闘機もその母艦で補給を受けることができるのだ。
また、自分たちの拠点の外には、あの地球という世界の兵士を加えた兵が、少なくとも自分たちと同じ数以上取り巻いている。あの戦闘機がその小さな砲弾を地上に打ち込む映像を見たが、その弾速は信じられないほど早く、その結果は大きな爆発を起こす。
明らかに人質がいなければ、自分たちは一掃されることは明らかだ。だから、人質をもっと積極的に使って空と地上の敵に退去を求めるというのが彼女の意見である。しかし、一方で、司令の言うように無理を押し過ぎて、人質を無視されたらこちらに打つ手は無くなる。
その意味では、唯一の望みは再度のこのジェラムス市への重火器を持った増援だ。別部隊が近づいているという話があるが、潜水艦によるものらしい。港からから内陸のここまでどうやってくるか?難しいと思う。
はっ!と気がつく。『眠い!なぜだ』粗末な椅子に腰かけていた彼女が辺りの部下を見ると、腰に差した剣の柄に手を掛けていた一人の部下が目をトロンとして、今にも崩れ落ちそうになっていた。彼女は焦って頭を振り叫ぼうとする。
しかし、その様子はボンベから一定量の麻酔ガスを、彼女の周辺に送り出して振りまいたハヤトによって検知されていた。彼女は、突然、喉に細いなにかが巻き付き、一挙に締まるのに抵抗する間もなく喉を潰されて気絶した。足がビクン、ビクンと痙攣している。
ハヤトは“らいでん”改でくつろいで座って兵士の塊ごとに、ボンベから直接異空間を通して麻酔薬をどんどん散布していく。
『なかなか、優秀な麻酔薬だ。最初に判断力を鈍くして寝させるからよほどのものしか、気絶させれれるのに気づかない』
そう思いながら散布し、警告を出そうとするものは、細めた力の帯で喉を絞り上げる。
別に、殺すまでもなく声をださず、気絶させればよいので楽な魔法だ。むろん、人質も眠り込むが、体格の良いノメラより早く寝る。醒めたとき少し頭痛があるらしいが、人体には害がないということなので安心だ。ものの10分もかからず、その警察学校のノメラと人質は一人残らず眠った。もっとも、ノメラの2人はハヤトの首絞めが少し強すぎ死んでいたが。
ハヤトが、その学校を封鎖していた陸戦隊の東寺皆太郎少尉に念話で告げる。
「ハヤトだ。ノメラと人質は全員眠っている。ガスマスクをしたものが、まず突入して、窓を開け放つこと。さらに10分以上して他の者は入ること」
「はい、承知しました。ハヤト特別官殿」
東寺少尉は応じ、続いて部下と指導下にある帝国兵に告げる。
「ハヤト氏から連絡があった。中のノメラは眠った。ガスマスクをつけた者は急げ」
東寺の直属の部下の篠田2曹以下の、25人のガスマスクを吊るしていた者達が、「は!了解」一斉に敬礼をしてマスクを装着し、入口を叩き壊して中に入っていく。
それをスクリーンで見ている“らいでん”の中は微妙な雰囲気になる。
「おい、ハヤト君、ちっとも僕らの出番がないよな。まあ、大体は今までもそんなもんだったが……」
ヤフワ・ジェジャートは黒い顔で苦笑いして言うが、自衛隊出身の5人は慌てて手を振って否定し、隊長の影山が言う。
「い、いや。我々は全く構いませんよ」
まあ、それは真実だろう。軍人である彼らは特段戦いたいとは思っていない。目的を果たせて安全であればそれに越したことはないのだ
しかし、ジェジャートは違う、彼はモザンビークの国会議員になっているが、何かといえばハヤトについていく。それは、新しい体験ができるからでもあるし、本当のところは闘いたいのだ。
それが判っているので、ハヤトは少し慌てて答える。
「うむ、そ、そうだな。でも、人質がいる状態では、彼らに何かあると問題だ。だから次だ。再度、ミモザラ共和国へ帰る時はノメラの支配体制を撃ち壊すために行くし、ここのように微妙な情景はないだろう。
次のときは、刀を持って一緒に攻め込むぜ。ノメラの戦闘能力はそこそこのものらしいからな。俺も結構楽しみだ」
「うーん。わかっちゃいるんだよね。だけど、機内で何もしないというのもな」
ジャガートが少し膨れ面で応じる。
残り31ヶ所も、大同小異で終わったが、ハヤトのように探査で監視ができ、異常があったら直ちに措置を取れるものがいるから、自軍には全く被害なく順調には違法していった。しかし、彼がいてさえ、人質には12人の犠牲が出た。これは、ガスにより眠らされるのに気が付いたノメラの数人が、人質を殺したからである。
こうした行為をした数人を含み、ノメラ側にはハヤトの魔法によって19人の死亡者がでたが、それは誰もが当然と判断し、咎める者はいなかった。結局、13時間をかけてジェラムス市は解放された。
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主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております

ユーヤのお気楽異世界転移
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死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
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