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20話~39話
23:「デート」 デート攻略法
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「あのー・・・、よく当たる占い師と聞いて来たんですけど・・・」
三十前の女性。ラストチャンスではないにしても、色々と意識している年ごろ。が、滲み出てしまっている。
「よくではなく、必ず当たりますよ。どうぞおかけ下さい」
テーブルの上に置いてある水晶球に釘付けになっている。
「綺麗ですね。本物ですか?」
「水晶から削り出している物ではないですが、水晶とほぼ一緒ですよ。デートの事で相談ですね?」
彼女の表情は困惑したものになっていた。
「嫌いではないけれど、デートと言われるとどうしたら良いか・・・・、子供を産むならそろそろ結婚とか意識しないといけないけど、今がラストチャンスと言う年齢でもないし。彼とデートする事で出会いを失うならデートを断った方が良いかも・・・・なんて考えてますね」
彼女の表情は驚きに変わっている。
「そこまで分かるんですか?」
「必ず当たる占い師ですから。分単位でデートの実況をしましょうか? それとも結婚相談としますか?」
予想外の選択を迫られている・・・・、そんな表情になってしまうのは仕方がない事。
「分単位で未来がわかると、その未来が変わってしまうのではないですか?」
「エスコートする彼は未来を知らないから、あなたが未来を知ってもデートの行く場所に影響は出ないですよ。ただ・・・」
「ただ・・・・?」
「あなたの隠し切れない『やっぱり感』に彼は気が付きますよ。彼なりのサプライズにも『やっぱり感』が出てしまう。デートが終わる頃には彼は自信を喪失して二度とデートに誘わないですよ。そして、良縁が切れてしまいます」
最後の一言にピクリと反応している。
「良縁ですか・・・」
「はい、知らない方がうまく行く未来の方が多いですよ」
「分かりました。結婚相談でお願いします」
心なしか、迫ってくる感がある。
「はい、分かりました。では、結婚に繋がるデート攻略を、未来を見ながらアドバイスしましょう」
「よろしくお願いします」
「人生初デートの前に、デートの定義を押さえておくと良いと思います」
「デートに定義ですか? 好きな異性と一緒に出掛けるのがデートだと思っていました」
「間違ってはいませんが、結婚の前段階としてのデートなので具体的に定義づけして攻略法を考えていきたいと思います」
小さく頷き、次の言葉を待っている。
「デートの定義は、好意を抱いている相手と時間と空間を共有し、普段と違う相手の一面に触れる事で理解を深める事。他者の知らない一面を知る事で優位性、特別感を醸成する事。結婚の前段階のデートの場合、一緒に生活する相手としての金銭感覚、日常と記念日でメリハリをつけられるかも大事になります。ただ、マメ過ぎる場合、将来浮気に繋がる場合もあります。もう一つ忘れてはいけないのがアクシデントの対処が大事です。素が出ますからね」
「デートは難しいものですね・・・・、私に出来るでしょうか?」
「若い頃は無自覚にデートを重ねて、言葉で説明できなくてもそう言う基準を持つようになっていきます。今回、人生初のデートなので敢えて説明しています」
いつの間にか手帳にメモっている。
「他に注意事項ありますか?」
「相手も見ている事を忘れてはいけません。デートの時に先ほどの事を意識している訳ではありませんが、数日経ってフラッシュバックした時にどう言う印象を抱くかです。これはデートの時にいくら装っても無駄です。必ず見抜かれるので、洋服は多少おしゃれに、メイクはナチュラルで、行動は素のままが良いです。今日の雰囲気そのままで良いと思いますよ」
デートを難しく考えていた中で、等身大を勧められ安心していくのが良く分かる。
「ありがとう、ございました」
表面的には難しく色々考えているけど、結局、彼の事を好き。世の中を単純に見れなくなった大人は可哀想。
「最後に、一つアドバイス。当日は天気予報で快晴でも必ず男性用の大きな折りたたみ傘を買って持って行くと良いですよ。そして、素直な気持ちで行動する事」
彼女を笑顔で見送ると、時計を見る。
「あと、三分」
水晶球を箱に仕舞うと守衛所に預け、看板を片づけ何事も無かった様に本を開く。
! 自動ドアが開く音がする。
「紀世子さん、ディナーをご一緒して頂けませんか?」
石塚さんが顔を覗かせている。
「まぁ、来るなんて聞いてないから、ビックリよ」
石塚さんがニッコリしている。
「片づけは終わっているようですね。さっそく行きましょう」
「まぁ、石塚さんは何でもお見通しなのね」
三十前の女性。ラストチャンスではないにしても、色々と意識している年ごろ。が、滲み出てしまっている。
「よくではなく、必ず当たりますよ。どうぞおかけ下さい」
テーブルの上に置いてある水晶球に釘付けになっている。
「綺麗ですね。本物ですか?」
「水晶から削り出している物ではないですが、水晶とほぼ一緒ですよ。デートの事で相談ですね?」
彼女の表情は困惑したものになっていた。
「嫌いではないけれど、デートと言われるとどうしたら良いか・・・・、子供を産むならそろそろ結婚とか意識しないといけないけど、今がラストチャンスと言う年齢でもないし。彼とデートする事で出会いを失うならデートを断った方が良いかも・・・・なんて考えてますね」
彼女の表情は驚きに変わっている。
「そこまで分かるんですか?」
「必ず当たる占い師ですから。分単位でデートの実況をしましょうか? それとも結婚相談としますか?」
予想外の選択を迫られている・・・・、そんな表情になってしまうのは仕方がない事。
「分単位で未来がわかると、その未来が変わってしまうのではないですか?」
「エスコートする彼は未来を知らないから、あなたが未来を知ってもデートの行く場所に影響は出ないですよ。ただ・・・」
「ただ・・・・?」
「あなたの隠し切れない『やっぱり感』に彼は気が付きますよ。彼なりのサプライズにも『やっぱり感』が出てしまう。デートが終わる頃には彼は自信を喪失して二度とデートに誘わないですよ。そして、良縁が切れてしまいます」
最後の一言にピクリと反応している。
「良縁ですか・・・」
「はい、知らない方がうまく行く未来の方が多いですよ」
「分かりました。結婚相談でお願いします」
心なしか、迫ってくる感がある。
「はい、分かりました。では、結婚に繋がるデート攻略を、未来を見ながらアドバイスしましょう」
「よろしくお願いします」
「人生初デートの前に、デートの定義を押さえておくと良いと思います」
「デートに定義ですか? 好きな異性と一緒に出掛けるのがデートだと思っていました」
「間違ってはいませんが、結婚の前段階としてのデートなので具体的に定義づけして攻略法を考えていきたいと思います」
小さく頷き、次の言葉を待っている。
「デートの定義は、好意を抱いている相手と時間と空間を共有し、普段と違う相手の一面に触れる事で理解を深める事。他者の知らない一面を知る事で優位性、特別感を醸成する事。結婚の前段階のデートの場合、一緒に生活する相手としての金銭感覚、日常と記念日でメリハリをつけられるかも大事になります。ただ、マメ過ぎる場合、将来浮気に繋がる場合もあります。もう一つ忘れてはいけないのがアクシデントの対処が大事です。素が出ますからね」
「デートは難しいものですね・・・・、私に出来るでしょうか?」
「若い頃は無自覚にデートを重ねて、言葉で説明できなくてもそう言う基準を持つようになっていきます。今回、人生初のデートなので敢えて説明しています」
いつの間にか手帳にメモっている。
「他に注意事項ありますか?」
「相手も見ている事を忘れてはいけません。デートの時に先ほどの事を意識している訳ではありませんが、数日経ってフラッシュバックした時にどう言う印象を抱くかです。これはデートの時にいくら装っても無駄です。必ず見抜かれるので、洋服は多少おしゃれに、メイクはナチュラルで、行動は素のままが良いです。今日の雰囲気そのままで良いと思いますよ」
デートを難しく考えていた中で、等身大を勧められ安心していくのが良く分かる。
「ありがとう、ございました」
表面的には難しく色々考えているけど、結局、彼の事を好き。世の中を単純に見れなくなった大人は可哀想。
「最後に、一つアドバイス。当日は天気予報で快晴でも必ず男性用の大きな折りたたみ傘を買って持って行くと良いですよ。そして、素直な気持ちで行動する事」
彼女を笑顔で見送ると、時計を見る。
「あと、三分」
水晶球を箱に仕舞うと守衛所に預け、看板を片づけ何事も無かった様に本を開く。
! 自動ドアが開く音がする。
「紀世子さん、ディナーをご一緒して頂けませんか?」
石塚さんが顔を覗かせている。
「まぁ、来るなんて聞いてないから、ビックリよ」
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