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20話~39話
24:「迷い」 希望の呪縛
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点と点が繋がり、今が見えた時・・・・、彼女の涙は止まらないでいる。
「私の今までの努力は無駄だったの?」
「お店を持ちたい夢に対しては『はい』です。一つ一つの努力が間違っている訳ではありません。目の前の問題に手を打っている間に道を失うのです。縁がないから、少しずつ外れていくのです」
「自分で考えてお客さんに喜んで貰う仕事をしたくて、辿り着いたのが小料理屋だったのに。頑張ってきたのに・・・・。どうしたらいいのかな」
彼女の涙は止まらないでいる。
「今までのアドバイスは店舗経営の知識経験のないお客さん、学生時代の友人、相談窓口の担当者でしたね? お客さんからのアドバイスでは品数増えて売り上げが増えても廃棄率が高くなって利益は悪化しましたよね。相談窓口では貸借対照表や損益計算書の作成方法や一般論だけで、現状に即したアドバイスではありませんでしたよね」
彼女の困惑が絶望へと変わっている。
「酷だと思いますが、著名な画家がどんなに頑張ってもアスリートの世界で評価される事はないのと同じで、その人なりの生まれ持った役割があります」
「私の夢は、私の頑張りは、毎日流されて生きている人達より価値のないモノだったの? 頑張ったとか価値とかじゃなくて、我慢して頑張った事より、流されている方が良いと聞こえてしまう」
「今までに、軌道修正をさせる事があったのではないですか? 例えば、小料理屋の資金を騙し取られたり、たちの悪い客の所為で他の客が離れたり。その反対に、条件の良い就職の紹介とか、です」
記憶を辿って行くなかで、思い当たる節があった様だ。目に生気が戻っている、でも・・・
「私の生きる希望が間違っていたのでしょうか? 自らお客さんに喜んで貰う事は私には許されないのでしょうか? 成長の為の試練だと思って挫折しそうになりながらも自分を鼓舞して進んで来たのに・・・・」
「全ての人が夢を見つけて、叶える努力をしている訳ではありません。不本意で小料理屋をしている人と同じ様に、逆の人も存在します。恋愛と一緒で運命にも片思いが存在しています。私は占い師としてクライアントに本来の役割を気づかせて軌道修正を手伝う事。これが私の運命です。そうする事でその人が普通に幸せを感じる世界に戻る事が出来るのです」
彼女の感情が目まぐるしく入れ替わっている。希望と絶望と、受容と抗議と・・・、
「他の事なんて要らない。夢を手に入れる為なら何だって我慢できる」
お昼休みなど、とっくに終わっている。占いコーナーの張り詰めた空気に恐れをなし、ビルの住民は忍び足で通り過ぎている。
「今までの話は、過去の部分です」
彼女は、一分の望みが残されている事に気が付いた様だ。
「未来が分かれば、頑張りの工夫も出来ます。その為に来たのだから」
彼女は念を押す様に言った。
「世の中の大半は、やるべき事をやらずに流されている人です。あなたは、流されるべき所で抗い、違う所で迷っている。と言う話をしました。これからは、目の前の事だけを考え、生きていく事です」
「未来の話ではないですよね。アドバイスですよね?」
彼女は冷静さを取り戻している。
「はい、あなたの未来は隠されています。それは、未来を知る事でその未来に辿り着けなくなるからです」
困惑している、信じて良いのか。彼女は色々な意味で試されている。人を信じない事と信じる事。
「屋台の小料理屋もパートも全て辞めて、心の底から湧き出て来る言葉に耳をすませなさい。全てを白紙に戻し出会いに対して神経を研ぎ澄ませなさい。その時に聞こえてくる言葉に死力を尽くしなさい。既に可能性の扉は殆ど閉まっていますが、針の孔ほどは残っています。今日私の所に辿り着いたのがラストチャンスです。希望を追い求める猪突『盲進』から、心の底から湧き出てくる言葉に耳をすます『縁』で行動出来るかの、分かれ道です」
失うだけで得るモノの提示のない話に彼女が信じるのか? 会ってから二時間ほどの私の言う事を信じる事が出来るのか?
「私は幸せになれるのでしょうか?」
「生まれた時に賜った役割を果たす事が出来た時に、幸せを感じるものだと思います。今は、全て捨て去る事です」
クライアントが私の言葉を信じるのか、信じないのか。最終的には彼女の人を見る目に全てが掛かっている。
「分かりました。お昼を食べる時間を取ってしまいました。ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。今日の事は分かっていたので、軽く食べておきましたから」
「ほんとに未来が分かるのですね」
彼女にはまだ迷いが残っている。でも、彼女がパンドラの箱にあらゆる災いと一緒に希望が封印されていた意味を理解できれば、きっと針の孔ほどの隙間を通り抜けて幸せに辿り着く事が出来るはず。
駱駝も通れる針の孔だから、彼女なら通れるはずだ。
「私の今までの努力は無駄だったの?」
「お店を持ちたい夢に対しては『はい』です。一つ一つの努力が間違っている訳ではありません。目の前の問題に手を打っている間に道を失うのです。縁がないから、少しずつ外れていくのです」
「自分で考えてお客さんに喜んで貰う仕事をしたくて、辿り着いたのが小料理屋だったのに。頑張ってきたのに・・・・。どうしたらいいのかな」
彼女の涙は止まらないでいる。
「今までのアドバイスは店舗経営の知識経験のないお客さん、学生時代の友人、相談窓口の担当者でしたね? お客さんからのアドバイスでは品数増えて売り上げが増えても廃棄率が高くなって利益は悪化しましたよね。相談窓口では貸借対照表や損益計算書の作成方法や一般論だけで、現状に即したアドバイスではありませんでしたよね」
彼女の困惑が絶望へと変わっている。
「酷だと思いますが、著名な画家がどんなに頑張ってもアスリートの世界で評価される事はないのと同じで、その人なりの生まれ持った役割があります」
「私の夢は、私の頑張りは、毎日流されて生きている人達より価値のないモノだったの? 頑張ったとか価値とかじゃなくて、我慢して頑張った事より、流されている方が良いと聞こえてしまう」
「今までに、軌道修正をさせる事があったのではないですか? 例えば、小料理屋の資金を騙し取られたり、たちの悪い客の所為で他の客が離れたり。その反対に、条件の良い就職の紹介とか、です」
記憶を辿って行くなかで、思い当たる節があった様だ。目に生気が戻っている、でも・・・
「私の生きる希望が間違っていたのでしょうか? 自らお客さんに喜んで貰う事は私には許されないのでしょうか? 成長の為の試練だと思って挫折しそうになりながらも自分を鼓舞して進んで来たのに・・・・」
「全ての人が夢を見つけて、叶える努力をしている訳ではありません。不本意で小料理屋をしている人と同じ様に、逆の人も存在します。恋愛と一緒で運命にも片思いが存在しています。私は占い師としてクライアントに本来の役割を気づかせて軌道修正を手伝う事。これが私の運命です。そうする事でその人が普通に幸せを感じる世界に戻る事が出来るのです」
彼女の感情が目まぐるしく入れ替わっている。希望と絶望と、受容と抗議と・・・、
「他の事なんて要らない。夢を手に入れる為なら何だって我慢できる」
お昼休みなど、とっくに終わっている。占いコーナーの張り詰めた空気に恐れをなし、ビルの住民は忍び足で通り過ぎている。
「今までの話は、過去の部分です」
彼女は、一分の望みが残されている事に気が付いた様だ。
「未来が分かれば、頑張りの工夫も出来ます。その為に来たのだから」
彼女は念を押す様に言った。
「世の中の大半は、やるべき事をやらずに流されている人です。あなたは、流されるべき所で抗い、違う所で迷っている。と言う話をしました。これからは、目の前の事だけを考え、生きていく事です」
「未来の話ではないですよね。アドバイスですよね?」
彼女は冷静さを取り戻している。
「はい、あなたの未来は隠されています。それは、未来を知る事でその未来に辿り着けなくなるからです」
困惑している、信じて良いのか。彼女は色々な意味で試されている。人を信じない事と信じる事。
「屋台の小料理屋もパートも全て辞めて、心の底から湧き出て来る言葉に耳をすませなさい。全てを白紙に戻し出会いに対して神経を研ぎ澄ませなさい。その時に聞こえてくる言葉に死力を尽くしなさい。既に可能性の扉は殆ど閉まっていますが、針の孔ほどは残っています。今日私の所に辿り着いたのがラストチャンスです。希望を追い求める猪突『盲進』から、心の底から湧き出てくる言葉に耳をすます『縁』で行動出来るかの、分かれ道です」
失うだけで得るモノの提示のない話に彼女が信じるのか? 会ってから二時間ほどの私の言う事を信じる事が出来るのか?
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「生まれた時に賜った役割を果たす事が出来た時に、幸せを感じるものだと思います。今は、全て捨て去る事です」
クライアントが私の言葉を信じるのか、信じないのか。最終的には彼女の人を見る目に全てが掛かっている。
「分かりました。お昼を食べる時間を取ってしまいました。ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。今日の事は分かっていたので、軽く食べておきましたから」
「ほんとに未来が分かるのですね」
彼女にはまだ迷いが残っている。でも、彼女がパンドラの箱にあらゆる災いと一緒に希望が封印されていた意味を理解できれば、きっと針の孔ほどの隙間を通り抜けて幸せに辿り着く事が出来るはず。
駱駝も通れる針の孔だから、彼女なら通れるはずだ。
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