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35章 流れに揺蕩う
足引きの
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「初めての開催と考えれば、成功、なのでしょう」
「ありがとうございます」
公爵夫人のお褒めの言葉に対して、そもそも成功例とでもいえばいいのだろうか。そうした物の経験がほとんどないオユキとしては、そのような物なのだろうとただ言葉をその通りに受け取る。今後、回数を熟せば自然とそうした評価もできるようになるのだろうが、オユキに現状その心算は無い。
事今回に関しては、政治的な思惑があまりにも強く働く事柄であるために、已む無くとそうした会でしかなかったのだ。散々に、方々からせめてお披露目の機会までに回数を熟しておけと言われていたこともあるのだが。
そして、一先ず目的の話を聞けたからと満足したオユキは早々に夜会の為にと公爵夫人に連れられて、今は別邸の控室とでもいえばいいのだろうか。衣裳部屋ともまた違う、化粧室と言うとどうしたところでオユキの頭に浮かぶものが異なるために。主催者然り、客人然り。身嗜みを整えるための、相応の広さを持ち主催者が道具を一通りそろえている部屋に公爵夫人と。
「まったく、何をもって評価されているのか気にもしないのですから」
「いえ、一応気になりはしますがその評価項目を使う機会はと考えると。何より」
「オユキ様」
公爵夫人の言葉に、オユキが言葉を返すためにと首を動かそうとすれば。素敵な笑顔を浮かべるシェリアに顎を尋常ならざる力で固定されて。さらには、どうか口を開いてくれるなと、その目があまりにも雄弁に語っている。
侍女たちに化粧を、身嗜みを整えられながら話し合いに興じることが出来る程オユキはやはり慣れていないのだ。オユキの名前を呼ぶことで、そうして改めてシェリアから公爵夫人にあまり邪魔をしてくれるなとそうした意図を伝えたと言う事なのだろう。軽く肩をすくめた公爵夫人にしても、夜会用の装いに手早く侍女たちに着替えさせられたかと思えば、こちらも同様に軽く化粧を直させている。
公爵夫人が行っている手順、これが恐らく一般的な流れではあるのだろう。だが、オユキに関しては、オユキ自身が持っている衣装、好んでいる衣装が非常に少ない事もありまずは化粧を決めてからとなる。その化粧にしても、オユキ自身が実にどうでもいいと、侍女たちに、トモエに任せるといった姿勢を崩さないためにまた難しいところではあるのだが。
「オユキは、今回の夜会はかなり急となりましたが、簡単な作法はエステールから習っている、それに間違いは」
公爵夫人の作る言葉に、オユキは軽く頷きをもって答えとする。
事、これに関してはオユキよりもトモエのほうが問題となる部分も出てくるだろう。言ってしまえば、オユキは基本的にトモエに身を任せる立場なのだ。トモエのほうこそ、細かく周囲に気を配って、オユキに気を配った上でとしなければならない。勿論、教育を受けたオユキとしては、慣れぬトモエに暗に示すことに否やは無いのだがそれが出来るほどに、そもそも慣れていないというのが大きいのだ。かつての世界で、オユキが参加したことがあるものなどパートナーを連れて行ったところでと言うものではあった。何より、家族単位でと言う事がほとんどでもあったのだから。
「であれば、一先ず良しとしましょうか。今回の物に関しては、先ほどの顔ぶれから王家を除き」
どうやら、今回の夜会に関しては公爵家の手配と言う事らしい。トモエがオユキに何の相談も無く、それこそオユキに色々と不安がある以上はトモエの判断で開く事は無いだろうとオユキは考えていたのだがそれに間違いは無いようであるらしい。
どうにも、トモエとオユキというよりもオユキ個人の把握できている範囲の外。先ほどの王妃の話にしても相応に不穏を孕む物ではあったのだが、今後に関して神国の中でもかなり派手に意見が割れているとでもいえばいいのだろうか。王兄という存在が、かなり厄介を呼んでいるらしい。
オユキのほうでもシェリアによる化粧が終わり、今は見覚えのないドレスに着替えさせられている処。先ほどまでは、戦と武技の巫女だと言う事を大いに主張するために神授の衣装を着こんで臨んでいたのだが今度ばかりはトモエに合わせていよいよ夜会の装いに。
トモエの手による刺繍が行われた小物、そちらについては別で用意したうえで広げて並べられているために残念ながらオユキの視線は完全にそちらに向いている。新しい衣装、勿論これらに関してもトモエが公爵夫人に相談のうえで用意している物ではあるのだが、生憎とそうした事実を知らないオユキにとってはいよいよというものだ。
「異邦人は、成長がほとんどないとは聞いていますが」
そして、オユキが着せられている夜会用の少々派手なドレス。普段着込んでいる物に比べて、肩回りが開いている物を着せられたオユキを公爵夫人が改めて観察したうえで溜息を一つ。
どうしたところで、起伏に乏しく背丈も低いオユキではこちらで一般的とされている衣装があまりに合っているとは言えない。寧ろ、何処まで行っても子供が背伸びをしているという範囲から出るものではない。
「こう、別の方法でと考えざるを得ませんが」
「背丈については厚底、限度はあるでしょうが其方を使って、体系に関してはかつてであれば何かあったと聞いているのですが」
「何か、ですか」
「シリコンだったでしょうか、注入してという話も聞きましたが、そういった物ではなく衣服の下に身に着けてそれらしく整える物があった様に思うのですが」
オユキにしても、男性物であれば肩にパッドを仕込んでとそうした話を聞いた覚えがある。いよいよこちらであれば手に何かを、装飾以外に身に着ける物が無いためにそこまで気にすることも無く身に着けることもできるのだろう。そのあたり、トモエのほうが詳しいのだろうが、手配がない以上はこちらでは難しいと言う事なのかもしれない。
「オユキ」
「いえ、流石に範疇外ですから。代替品に関しても、心当たりがありませんし」
「綿を詰めて、そうした方法も無いではないのですが」
「綿を使うとなれば、強度に難がありそうですね。こう、事前に型を作ってそこに大量に詰め込んでと言う事であればまだ可能性はありそうですが」
過去には、そうしたこともあったのだろうか。オユキはそんな事を考えながらも、着々と整えられる己の姿を鏡越しに確認する。
こうして、公爵夫人の前で着替える事になるのはいつ以来だろうか、そんな事を考えながら。以前の時には、己の表情が自分自身でも信じたくないようなものになっていたのだが、今はオユキの自己評価ではきちんと愛想笑いを、かつて仕事の上では当然とできていた表情が浮かんでいる。
この先に、この表情の奥に何があるのか。それをきちんと見ることが出来るのは、それこそ現状であればトモエとユーフォリア、一応はケレスもとなるだろうか。サキの話あうぃの結果、オユキの内にははっきりと疲労が積もっている。王妃から言われた事、勅命として言われた言葉にはっきりと思う所がある。
戦と武技の巫女、それも神殿勤めの。どうにも選ばれた背景を、本人が勘違いしている節もあるのだがそれに関してはオユキから言わなければならないのかと、ただただそうした不満がある。さらにはといえばいいのだろうか。どうにも、その巫女が満足する結果を、彼女が求めているだろう結果を達成するためにトモエが時間を使わなければならないのだ。その事実に、何処までも不満がたまるというものだ。
「そういえば、先ほどの話にありましたが」
「招待客、ですか。夜会の主役は、種類次第となりますが今回に関してはファンタズマ子爵とその伴侶を予定されている者、このお披露目となります。だからこそ、少々人数も多く」
「名前を覚えることが出来る範囲であれば、よいのですが」
「一度会っただけの者を覚える、それは人の上に立つ以上は」
「ええ、その自覚は勿論ありますが、何分」
ドレスの用意が終わり、装飾もあれこれと取り付けられて。今度はオユキが自分で手袋などをはめた上で。シェリアがそっと示すもの。先ほどの衣装にきちんと仕込んでおいた寸鉄、鉄菱、組紐、さらには短刀に投擲用の短剣までが改めて並べられている。マーメイドラインと呼ばれる装いのどこに仕込もうかと、そんな事を考えながら。
もはや、公爵夫人はこちらに関してはただただ深い溜息をつくばかりで何を言う事も無い。だからこそ、暗器をしまうための空間がほとんど存在しない衣装をトモエに用意させていると言う事もある。これがシェリアであれば、胸回りに空間を作って、そこに短剣の一つでも仕込めるのだろうなどとオユキは考えながら。
「その、今日の夜会についてですが」
「私達だけが楽しんでしまった事もありますから、夜会に関しては殿方に特にセツナ様の良人に向けた物になります」
「とすると、私は早々に場を下がることになりそうですが」
「ええ、セツナ様もそのように仰せでしたね。一応、カナリアに話をしたうえで、匂いを避けるための場の用意を行う言ってはいますが」
「こう、視界に入るだけでも、ですね」
「種族の特性だからと、そうした話は既に聞いています。既に交流を持っている種族、花精や木精にしても苦手とする者たちばかりですから」
「ご理解いただけているようで」
そこまでオユキが口にして、僅かに首をかしげる。
今の公爵夫人の言葉、それに何か違和感を覚えたのだ。それが何なのか、オユキは思い出すことが出来ないのだが、確かに何かの違和感を。
「ええ、ご理解に改めて感謝を」
「オユキ」
「どうにも、色々と」
「人払いが、要りますか」
「そう、ですね」
オユキは公爵夫人が見せる配慮に、感謝を覚えるとともにどこか安堵とでもいえばいいのだろうか。少なくとも、マリーア公爵家、此処からの庇護は間違いが無い。勿論、公爵家という存在である以上、難しいところは多いのだろう。政治的な事に、当然配慮を行わなければいけないのだろう。それが無いところでは、こうしてきちんとオユキに、配慮を見せてくれる。
振り返ってみるまでも無く、こうしてまがりになりも子爵家としての振る舞いが出来ているのも公爵家から大量に貸与されている人と場のおかげでもある。
「公爵様と、トモエさんと」
「では、今日は難しいでしょうから、明日、ですね」
「今日は難しい、ですか」
「オユキ、夜会ですから飲み物は基本的に酒精の入っている物ですよ」
「ありがとうございます」
公爵夫人のお褒めの言葉に対して、そもそも成功例とでもいえばいいのだろうか。そうした物の経験がほとんどないオユキとしては、そのような物なのだろうとただ言葉をその通りに受け取る。今後、回数を熟せば自然とそうした評価もできるようになるのだろうが、オユキに現状その心算は無い。
事今回に関しては、政治的な思惑があまりにも強く働く事柄であるために、已む無くとそうした会でしかなかったのだ。散々に、方々からせめてお披露目の機会までに回数を熟しておけと言われていたこともあるのだが。
そして、一先ず目的の話を聞けたからと満足したオユキは早々に夜会の為にと公爵夫人に連れられて、今は別邸の控室とでもいえばいいのだろうか。衣裳部屋ともまた違う、化粧室と言うとどうしたところでオユキの頭に浮かぶものが異なるために。主催者然り、客人然り。身嗜みを整えるための、相応の広さを持ち主催者が道具を一通りそろえている部屋に公爵夫人と。
「まったく、何をもって評価されているのか気にもしないのですから」
「いえ、一応気になりはしますがその評価項目を使う機会はと考えると。何より」
「オユキ様」
公爵夫人の言葉に、オユキが言葉を返すためにと首を動かそうとすれば。素敵な笑顔を浮かべるシェリアに顎を尋常ならざる力で固定されて。さらには、どうか口を開いてくれるなと、その目があまりにも雄弁に語っている。
侍女たちに化粧を、身嗜みを整えられながら話し合いに興じることが出来る程オユキはやはり慣れていないのだ。オユキの名前を呼ぶことで、そうして改めてシェリアから公爵夫人にあまり邪魔をしてくれるなとそうした意図を伝えたと言う事なのだろう。軽く肩をすくめた公爵夫人にしても、夜会用の装いに手早く侍女たちに着替えさせられたかと思えば、こちらも同様に軽く化粧を直させている。
公爵夫人が行っている手順、これが恐らく一般的な流れではあるのだろう。だが、オユキに関しては、オユキ自身が持っている衣装、好んでいる衣装が非常に少ない事もありまずは化粧を決めてからとなる。その化粧にしても、オユキ自身が実にどうでもいいと、侍女たちに、トモエに任せるといった姿勢を崩さないためにまた難しいところではあるのだが。
「オユキは、今回の夜会はかなり急となりましたが、簡単な作法はエステールから習っている、それに間違いは」
公爵夫人の作る言葉に、オユキは軽く頷きをもって答えとする。
事、これに関してはオユキよりもトモエのほうが問題となる部分も出てくるだろう。言ってしまえば、オユキは基本的にトモエに身を任せる立場なのだ。トモエのほうこそ、細かく周囲に気を配って、オユキに気を配った上でとしなければならない。勿論、教育を受けたオユキとしては、慣れぬトモエに暗に示すことに否やは無いのだがそれが出来るほどに、そもそも慣れていないというのが大きいのだ。かつての世界で、オユキが参加したことがあるものなどパートナーを連れて行ったところでと言うものではあった。何より、家族単位でと言う事がほとんどでもあったのだから。
「であれば、一先ず良しとしましょうか。今回の物に関しては、先ほどの顔ぶれから王家を除き」
どうやら、今回の夜会に関しては公爵家の手配と言う事らしい。トモエがオユキに何の相談も無く、それこそオユキに色々と不安がある以上はトモエの判断で開く事は無いだろうとオユキは考えていたのだがそれに間違いは無いようであるらしい。
どうにも、トモエとオユキというよりもオユキ個人の把握できている範囲の外。先ほどの王妃の話にしても相応に不穏を孕む物ではあったのだが、今後に関して神国の中でもかなり派手に意見が割れているとでもいえばいいのだろうか。王兄という存在が、かなり厄介を呼んでいるらしい。
オユキのほうでもシェリアによる化粧が終わり、今は見覚えのないドレスに着替えさせられている処。先ほどまでは、戦と武技の巫女だと言う事を大いに主張するために神授の衣装を着こんで臨んでいたのだが今度ばかりはトモエに合わせていよいよ夜会の装いに。
トモエの手による刺繍が行われた小物、そちらについては別で用意したうえで広げて並べられているために残念ながらオユキの視線は完全にそちらに向いている。新しい衣装、勿論これらに関してもトモエが公爵夫人に相談のうえで用意している物ではあるのだが、生憎とそうした事実を知らないオユキにとってはいよいよというものだ。
「異邦人は、成長がほとんどないとは聞いていますが」
そして、オユキが着せられている夜会用の少々派手なドレス。普段着込んでいる物に比べて、肩回りが開いている物を着せられたオユキを公爵夫人が改めて観察したうえで溜息を一つ。
どうしたところで、起伏に乏しく背丈も低いオユキではこちらで一般的とされている衣装があまりに合っているとは言えない。寧ろ、何処まで行っても子供が背伸びをしているという範囲から出るものではない。
「こう、別の方法でと考えざるを得ませんが」
「背丈については厚底、限度はあるでしょうが其方を使って、体系に関してはかつてであれば何かあったと聞いているのですが」
「何か、ですか」
「シリコンだったでしょうか、注入してという話も聞きましたが、そういった物ではなく衣服の下に身に着けてそれらしく整える物があった様に思うのですが」
オユキにしても、男性物であれば肩にパッドを仕込んでとそうした話を聞いた覚えがある。いよいよこちらであれば手に何かを、装飾以外に身に着ける物が無いためにそこまで気にすることも無く身に着けることもできるのだろう。そのあたり、トモエのほうが詳しいのだろうが、手配がない以上はこちらでは難しいと言う事なのかもしれない。
「オユキ」
「いえ、流石に範疇外ですから。代替品に関しても、心当たりがありませんし」
「綿を詰めて、そうした方法も無いではないのですが」
「綿を使うとなれば、強度に難がありそうですね。こう、事前に型を作ってそこに大量に詰め込んでと言う事であればまだ可能性はありそうですが」
過去には、そうしたこともあったのだろうか。オユキはそんな事を考えながらも、着々と整えられる己の姿を鏡越しに確認する。
こうして、公爵夫人の前で着替える事になるのはいつ以来だろうか、そんな事を考えながら。以前の時には、己の表情が自分自身でも信じたくないようなものになっていたのだが、今はオユキの自己評価ではきちんと愛想笑いを、かつて仕事の上では当然とできていた表情が浮かんでいる。
この先に、この表情の奥に何があるのか。それをきちんと見ることが出来るのは、それこそ現状であればトモエとユーフォリア、一応はケレスもとなるだろうか。サキの話あうぃの結果、オユキの内にははっきりと疲労が積もっている。王妃から言われた事、勅命として言われた言葉にはっきりと思う所がある。
戦と武技の巫女、それも神殿勤めの。どうにも選ばれた背景を、本人が勘違いしている節もあるのだがそれに関してはオユキから言わなければならないのかと、ただただそうした不満がある。さらにはといえばいいのだろうか。どうにも、その巫女が満足する結果を、彼女が求めているだろう結果を達成するためにトモエが時間を使わなければならないのだ。その事実に、何処までも不満がたまるというものだ。
「そういえば、先ほどの話にありましたが」
「招待客、ですか。夜会の主役は、種類次第となりますが今回に関してはファンタズマ子爵とその伴侶を予定されている者、このお披露目となります。だからこそ、少々人数も多く」
「名前を覚えることが出来る範囲であれば、よいのですが」
「一度会っただけの者を覚える、それは人の上に立つ以上は」
「ええ、その自覚は勿論ありますが、何分」
ドレスの用意が終わり、装飾もあれこれと取り付けられて。今度はオユキが自分で手袋などをはめた上で。シェリアがそっと示すもの。先ほどの衣装にきちんと仕込んでおいた寸鉄、鉄菱、組紐、さらには短刀に投擲用の短剣までが改めて並べられている。マーメイドラインと呼ばれる装いのどこに仕込もうかと、そんな事を考えながら。
もはや、公爵夫人はこちらに関してはただただ深い溜息をつくばかりで何を言う事も無い。だからこそ、暗器をしまうための空間がほとんど存在しない衣装をトモエに用意させていると言う事もある。これがシェリアであれば、胸回りに空間を作って、そこに短剣の一つでも仕込めるのだろうなどとオユキは考えながら。
「その、今日の夜会についてですが」
「私達だけが楽しんでしまった事もありますから、夜会に関しては殿方に特にセツナ様の良人に向けた物になります」
「とすると、私は早々に場を下がることになりそうですが」
「ええ、セツナ様もそのように仰せでしたね。一応、カナリアに話をしたうえで、匂いを避けるための場の用意を行う言ってはいますが」
「こう、視界に入るだけでも、ですね」
「種族の特性だからと、そうした話は既に聞いています。既に交流を持っている種族、花精や木精にしても苦手とする者たちばかりですから」
「ご理解いただけているようで」
そこまでオユキが口にして、僅かに首をかしげる。
今の公爵夫人の言葉、それに何か違和感を覚えたのだ。それが何なのか、オユキは思い出すことが出来ないのだが、確かに何かの違和感を。
「ええ、ご理解に改めて感謝を」
「オユキ」
「どうにも、色々と」
「人払いが、要りますか」
「そう、ですね」
オユキは公爵夫人が見せる配慮に、感謝を覚えるとともにどこか安堵とでもいえばいいのだろうか。少なくとも、マリーア公爵家、此処からの庇護は間違いが無い。勿論、公爵家という存在である以上、難しいところは多いのだろう。政治的な事に、当然配慮を行わなければいけないのだろう。それが無いところでは、こうしてきちんとオユキに、配慮を見せてくれる。
振り返ってみるまでも無く、こうしてまがりになりも子爵家としての振る舞いが出来ているのも公爵家から大量に貸与されている人と場のおかげでもある。
「公爵様と、トモエさんと」
「では、今日は難しいでしょうから、明日、ですね」
「今日は難しい、ですか」
「オユキ、夜会ですから飲み物は基本的に酒精の入っている物ですよ」
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