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28章 事も無く
神国に
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「構造の話になるのですが」
「オユキさんは、そうしたことを私にあまり話さないとばかり」
そして、色々な雑事は一度全て置き。朝食の席に、オユキが顔を出さないと決めた事。一応は、神々から言われたことを終えたのだと、そうした話もあるため。一先ず、トモエとオユキを一度神国にとそれは決まった。生憎と、魔国からの礼品については、流石に手配が間に合わないと言われたこともあり、今は馬車に王太子妃に渡すようにと言われたものをこれまた大量に詰めて。
そして、一体どうやって話を聞きつけたのかと、心底疑問に思いはするのだが、馬車が魔国の門を出るころにはそれが当然とばかりにフスカがカナリアを連れて合流した。相も変わらず、一体何をしてきたのかと思うほどにくたびれた様子のカナリアは、既に他の馬車でしっかりと眠りについている頃だろう。そして、そのような状況で、今度はトモエとオユキが二人。シェリアは馬車の操作に。エステールとタルヤは、問題児二人がいない時間を愉しむために、魔国にそのまま残って。
「いえ、この場であればと、そのようにも考えますので」
そして、ゆられている馬車にしても、今となっては門を潜っている。それは、オユキの腕に揺れる炎が分かりやすく示している。ならば、この時間はあくまでこの門を維持する柱、この世界に根を張る存在からの眼が届かない空間として。それこそ、眼が届いているのであればこうして腕を焼かれることを良しとしない柱とて存在しているのだから。どうにも通訳が働いていたりと、そうした問題があるのだが、それこそ裏層と表層の差だとも考えられるだろう。
「理屈はわかります、そしてこれまでにできなかったことがと言う事なのでしょう」
「時間は、流石に長くありませんから、まずは確認として」
「はい。この世界は切り離される、それを良しとしないのが今の座を持つ神々だと」
「はい。こちらに来て暮らし、色々と見聞きしたことを一先ず考えれば」
そう、一度たりともそのあたりについて言及されたことがない。切り離しは行わなければならない、それは確かに言及していた。しかし、それをそのままにするといった話を、されてはいない。それから先の話を、聞いた覚えがない。しかし、そのヒントはミズキリの目的として。彼が、あくまで過去の世界との接続を維持することを望んだからと、それが神々の計画に沿うものであると理解したからこそ。
「どうにも、こちらの誤解を助長するように動いていたと言う事なのでしょう」
「ですが、オユキさん」
「一度接続が確立してしまえば、私たちは間違いなくこちらの物と」
「そうなりますか」
しかし、神々にしても口にする言葉。トモエとオユキがそうあれかしと望むからこそ、存在する選択の時までの刻限。そこに生まれる制限とは何か。もはや、トモエとオユキははっきりと魂という物に手が入っているらしい。こちらの柱に選ばれて、そこに紐づく形で存在が確立している。輪廻転生の存在については、魂の総量、今後この世界で増えていくことが決まったそれで示されている。ならば、死後はどこの流れに従うのかと言えば、世界が切り離された後にはやはり今紐づいている先なのだ。
トモエも、オユキも。それは望まないからと、選択の時を決めている。その折には、かつての世界の流れに戻れるようにと。
「であれば、尚の事」
そう、であればこそとトモエは一つ頷いて。
「そして、そういった仕組みに基づいて、色々と見えてくることもやはりあるのです」
「それは、例えばオユキさんが少し自暴自棄になるほどの」
ここ暫くのオユキの様子は、トモエにはそう映っていたのだから。そして、理由にも多少の想像位はつくのだ。
「オユキさんのご両親は、間違いなくこちらの流れに組み込まれているのだと、その事実が」
「使徒、そう呼ばれていますから」
トモエに尋ねられて、オユキはただそう零す。どうにも、トモエとこうして話しているというのに気分が上向くことも無く。
「オユキさんは、それが動機に」
「どう、でしょうか」
しかし、オユキとしてはそれを理由にこちらに残ろうと考えているのかと聞かれれば、やはりトモエも気が付いている通りではあるのだ。
「トモエさんは」
「ええ、オユキさんはもはや残る気がないのだと、それは既に」
「ですが、トモエさんは」
「そうですね。私にとっては、やはり技が十全に振るえる、己の身に着けたものが確かに生活の糧となるこの環境は、好ましくはあります」
そう、トモエにとって、己の身を一振りの刃と捕らえるトモエにとって、こちらの世界と言うのはやはり心地よい。オユキは決して口にはしない、そうした部分にしてもトモエは勿論理解をしている。かつての世界で、そうした誘惑が無かったのかと言えば、そう茶化して本音を言ってみたのはトモエ自身なのだから。
「ですが、やはりオユキさんが過剰に負担を感じるのならば、私も望みませんとも」
「こちらならでは、こちらでなら」
「一人で道を歩く、それにもはや意味を感じられません」
そう。とうにトモエの心は決まっている。
武の道を歩くだけであれば、一人でも構いはしない。その先にある物、その先にあるだろう物を目指して、ただ歩き続ける事はとうに覚悟が決まっている。だが、人の生としてと考えたときに、隣にオユキがいない事にはやはり耐えられそうもないのだから。
「あの、トモエさん」
「私も、オユキさんと変わりませんよ」
そう、言い残して己が先にその時を迎えた事。それについては、未だに申し訳ないどころではない、ただただ深い後悔が其処にはある。己は、到底叶えることが出来なかったことを、ただ約束だといい残して。それこそ、他の係累たちがいれば、オユキであれば留まれることだろうと、トモエには到底できない選択だとしても、約束と残される者たちの悲しみとを持てばオユキならと。
「たとえ約束があったとしても、私は無理ですから」
「あの」
そして、流れる涙をそのままに、顔を上げるオユキに。
「少し、気分も上向いたでしょう」
「冗談であればよかったのですが、そうでない以上は」
そう。事ここに至って、オユキが見誤っていることの一つ。トモエならば、本気でやるだろうと考えてはいたのだが、それがどこまでも真実だと思わせる熱を確かに瞳にのせて。
「オユキさんであれば、今はまた難しいのでしょうが」
「それくらいの自由はと、確かにこうなる前までは考えていました」
「ええ、手放しはしないでしょう」
そして、オユキが構造と呼ぶものについて、トモエも己の理解を話す。とはいっても、その全てをオユキのように整然と言葉にすることが出来るでもなく。ただ、オユキの言葉に対して、己が思う所を想う様に。
「魂への干渉、それについては名前の前例が」
「はい。ですが、それはもはや」
「哲学の命題の一つではありますが、恐らくはこちらでは問題がないのでしょう」
だからこそ、オユキにははっきりと与えられている位がある。本来であれば、逆であったはず。だが、実に都合の良い事が、起こらないと考えていないことが起きてしまった。それ以外にも、実に多くの仕組みは用意していたのだろう。用意されていたのだろう。この世界の基軸に存在する理、構造。それらにオユキを捕らえるべく。
「オユキさんが、選択をしなければ」
「それは、無かったのでしょうね」
選択肢など、あるようでなかったのだろう。
「トモエさんの言葉が無ければ、確かに私はこちらに来る事は無かったでしょう」
「全く、確かに伯母上に甘やかされていると、そう評されるだけの事はありますね」
「私が核だと、そのように自惚れるつもりはありません。ですが、ミズキリがいる以上は」
そう、過去から今に至るまで。オユキ自身知らぬことを知っていた、あのミズキリと言う人物。そんな人間が、今もこうして己の目的の為に、容赦なく使うのだと、予定に組み込んでくれている物なのだから。
「あの人自身では」
「不足が多かったのでしょうね」
だからこそ、オユキなどよりも遥かに過酷な試練を、使命を成し遂げて使徒等と言う位を得ているのだろう。
「恐らく、でしかありませんが」
「この世界が独立した、ほとんどその頃でしょう」
「ええ」
他人という物、己という物。それらを容赦なく消耗品と考えられるミズキリらしいやり口と言うのが、色々とこれまでの歴史を聞くたびに見て取れる。正直、いくら異邦人とはいえ、一度こちらに招き入れた存在を神々が無下に扱うと言われても疑問ではあったのだ。そんなことをするくらいであれば、それこそ安息の守りのうちにと月と安息にしても、水と癒しにしても言い出したものだろう。それを、いかなる手段でか説き伏せて見せたのがあのミズキリと言う人物。
「オユキさんは」
「ええ、可能性はあるでしょう」
言ってしまえば、神々がそれを当然とするように。ミズキリと言う人間が他者の思考をある程度覗き見ることが出来るのかとトモエの質問に対して。
生前から、何処かそのような様子は見せていた。そして、こちらに長くありその能力をさらに磨いて見せたのだろう。
「戻った時には」
「そう、ですね」
だが、どうだろうかと。
「始まりの町による余裕は、なさそうなのですよね」
「あの、オユキさん、休むと決めたのでは」
「決めはしましたが、まずは王都で暫くはとなりますから」
そう、休むのだとしても予定と言うのは基本的に決まってしまっている。一度始まりの町に戻って、ようやく自分たちの変えるべき場所だと感じ始めた、あの長閑な町にある屋敷に戻って、それは今度ばかりは叶わない。
「王都で、豊穣祭もありますから」
「ああ」
「一応は、アイリスさんが主役ではありますし、水と癒しの神殿には巫女様も」
「ですが、オユキさんは」
そう、何もオユキが巫女としての振る舞いをしなくても良いのではないかと、そうトモエは考えていたものだが。
「クレリー公爵領に、本職の巫女様がいかれるでしょうから」
しかし、今回の豊穣祭ではなさねばならぬことがある。そして、それを為そうというのであれば不慣れなオユキではなく、慣れた物にこそ任せようと人は考える物だ。王都での豊穣の祈り、アイリスが行うそれ。そんなアイリスとの共同作業に、オユキは慣れていることもあるだろうと。
「オユキさんは、そうしたことを私にあまり話さないとばかり」
そして、色々な雑事は一度全て置き。朝食の席に、オユキが顔を出さないと決めた事。一応は、神々から言われたことを終えたのだと、そうした話もあるため。一先ず、トモエとオユキを一度神国にとそれは決まった。生憎と、魔国からの礼品については、流石に手配が間に合わないと言われたこともあり、今は馬車に王太子妃に渡すようにと言われたものをこれまた大量に詰めて。
そして、一体どうやって話を聞きつけたのかと、心底疑問に思いはするのだが、馬車が魔国の門を出るころにはそれが当然とばかりにフスカがカナリアを連れて合流した。相も変わらず、一体何をしてきたのかと思うほどにくたびれた様子のカナリアは、既に他の馬車でしっかりと眠りについている頃だろう。そして、そのような状況で、今度はトモエとオユキが二人。シェリアは馬車の操作に。エステールとタルヤは、問題児二人がいない時間を愉しむために、魔国にそのまま残って。
「いえ、この場であればと、そのようにも考えますので」
そして、ゆられている馬車にしても、今となっては門を潜っている。それは、オユキの腕に揺れる炎が分かりやすく示している。ならば、この時間はあくまでこの門を維持する柱、この世界に根を張る存在からの眼が届かない空間として。それこそ、眼が届いているのであればこうして腕を焼かれることを良しとしない柱とて存在しているのだから。どうにも通訳が働いていたりと、そうした問題があるのだが、それこそ裏層と表層の差だとも考えられるだろう。
「理屈はわかります、そしてこれまでにできなかったことがと言う事なのでしょう」
「時間は、流石に長くありませんから、まずは確認として」
「はい。この世界は切り離される、それを良しとしないのが今の座を持つ神々だと」
「はい。こちらに来て暮らし、色々と見聞きしたことを一先ず考えれば」
そう、一度たりともそのあたりについて言及されたことがない。切り離しは行わなければならない、それは確かに言及していた。しかし、それをそのままにするといった話を、されてはいない。それから先の話を、聞いた覚えがない。しかし、そのヒントはミズキリの目的として。彼が、あくまで過去の世界との接続を維持することを望んだからと、それが神々の計画に沿うものであると理解したからこそ。
「どうにも、こちらの誤解を助長するように動いていたと言う事なのでしょう」
「ですが、オユキさん」
「一度接続が確立してしまえば、私たちは間違いなくこちらの物と」
「そうなりますか」
しかし、神々にしても口にする言葉。トモエとオユキがそうあれかしと望むからこそ、存在する選択の時までの刻限。そこに生まれる制限とは何か。もはや、トモエとオユキははっきりと魂という物に手が入っているらしい。こちらの柱に選ばれて、そこに紐づく形で存在が確立している。輪廻転生の存在については、魂の総量、今後この世界で増えていくことが決まったそれで示されている。ならば、死後はどこの流れに従うのかと言えば、世界が切り離された後にはやはり今紐づいている先なのだ。
トモエも、オユキも。それは望まないからと、選択の時を決めている。その折には、かつての世界の流れに戻れるようにと。
「であれば、尚の事」
そう、であればこそとトモエは一つ頷いて。
「そして、そういった仕組みに基づいて、色々と見えてくることもやはりあるのです」
「それは、例えばオユキさんが少し自暴自棄になるほどの」
ここ暫くのオユキの様子は、トモエにはそう映っていたのだから。そして、理由にも多少の想像位はつくのだ。
「オユキさんのご両親は、間違いなくこちらの流れに組み込まれているのだと、その事実が」
「使徒、そう呼ばれていますから」
トモエに尋ねられて、オユキはただそう零す。どうにも、トモエとこうして話しているというのに気分が上向くことも無く。
「オユキさんは、それが動機に」
「どう、でしょうか」
しかし、オユキとしてはそれを理由にこちらに残ろうと考えているのかと聞かれれば、やはりトモエも気が付いている通りではあるのだ。
「トモエさんは」
「ええ、オユキさんはもはや残る気がないのだと、それは既に」
「ですが、トモエさんは」
「そうですね。私にとっては、やはり技が十全に振るえる、己の身に着けたものが確かに生活の糧となるこの環境は、好ましくはあります」
そう、トモエにとって、己の身を一振りの刃と捕らえるトモエにとって、こちらの世界と言うのはやはり心地よい。オユキは決して口にはしない、そうした部分にしてもトモエは勿論理解をしている。かつての世界で、そうした誘惑が無かったのかと言えば、そう茶化して本音を言ってみたのはトモエ自身なのだから。
「ですが、やはりオユキさんが過剰に負担を感じるのならば、私も望みませんとも」
「こちらならでは、こちらでなら」
「一人で道を歩く、それにもはや意味を感じられません」
そう。とうにトモエの心は決まっている。
武の道を歩くだけであれば、一人でも構いはしない。その先にある物、その先にあるだろう物を目指して、ただ歩き続ける事はとうに覚悟が決まっている。だが、人の生としてと考えたときに、隣にオユキがいない事にはやはり耐えられそうもないのだから。
「あの、トモエさん」
「私も、オユキさんと変わりませんよ」
そう、言い残して己が先にその時を迎えた事。それについては、未だに申し訳ないどころではない、ただただ深い後悔が其処にはある。己は、到底叶えることが出来なかったことを、ただ約束だといい残して。それこそ、他の係累たちがいれば、オユキであれば留まれることだろうと、トモエには到底できない選択だとしても、約束と残される者たちの悲しみとを持てばオユキならと。
「たとえ約束があったとしても、私は無理ですから」
「あの」
そして、流れる涙をそのままに、顔を上げるオユキに。
「少し、気分も上向いたでしょう」
「冗談であればよかったのですが、そうでない以上は」
そう。事ここに至って、オユキが見誤っていることの一つ。トモエならば、本気でやるだろうと考えてはいたのだが、それがどこまでも真実だと思わせる熱を確かに瞳にのせて。
「オユキさんであれば、今はまた難しいのでしょうが」
「それくらいの自由はと、確かにこうなる前までは考えていました」
「ええ、手放しはしないでしょう」
そして、オユキが構造と呼ぶものについて、トモエも己の理解を話す。とはいっても、その全てをオユキのように整然と言葉にすることが出来るでもなく。ただ、オユキの言葉に対して、己が思う所を想う様に。
「魂への干渉、それについては名前の前例が」
「はい。ですが、それはもはや」
「哲学の命題の一つではありますが、恐らくはこちらでは問題がないのでしょう」
だからこそ、オユキにははっきりと与えられている位がある。本来であれば、逆であったはず。だが、実に都合の良い事が、起こらないと考えていないことが起きてしまった。それ以外にも、実に多くの仕組みは用意していたのだろう。用意されていたのだろう。この世界の基軸に存在する理、構造。それらにオユキを捕らえるべく。
「オユキさんが、選択をしなければ」
「それは、無かったのでしょうね」
選択肢など、あるようでなかったのだろう。
「トモエさんの言葉が無ければ、確かに私はこちらに来る事は無かったでしょう」
「全く、確かに伯母上に甘やかされていると、そう評されるだけの事はありますね」
「私が核だと、そのように自惚れるつもりはありません。ですが、ミズキリがいる以上は」
そう、過去から今に至るまで。オユキ自身知らぬことを知っていた、あのミズキリと言う人物。そんな人間が、今もこうして己の目的の為に、容赦なく使うのだと、予定に組み込んでくれている物なのだから。
「あの人自身では」
「不足が多かったのでしょうね」
だからこそ、オユキなどよりも遥かに過酷な試練を、使命を成し遂げて使徒等と言う位を得ているのだろう。
「恐らく、でしかありませんが」
「この世界が独立した、ほとんどその頃でしょう」
「ええ」
他人という物、己という物。それらを容赦なく消耗品と考えられるミズキリらしいやり口と言うのが、色々とこれまでの歴史を聞くたびに見て取れる。正直、いくら異邦人とはいえ、一度こちらに招き入れた存在を神々が無下に扱うと言われても疑問ではあったのだ。そんなことをするくらいであれば、それこそ安息の守りのうちにと月と安息にしても、水と癒しにしても言い出したものだろう。それを、いかなる手段でか説き伏せて見せたのがあのミズキリと言う人物。
「オユキさんは」
「ええ、可能性はあるでしょう」
言ってしまえば、神々がそれを当然とするように。ミズキリと言う人間が他者の思考をある程度覗き見ることが出来るのかとトモエの質問に対して。
生前から、何処かそのような様子は見せていた。そして、こちらに長くありその能力をさらに磨いて見せたのだろう。
「戻った時には」
「そう、ですね」
だが、どうだろうかと。
「始まりの町による余裕は、なさそうなのですよね」
「あの、オユキさん、休むと決めたのでは」
「決めはしましたが、まずは王都で暫くはとなりますから」
そう、休むのだとしても予定と言うのは基本的に決まってしまっている。一度始まりの町に戻って、ようやく自分たちの変えるべき場所だと感じ始めた、あの長閑な町にある屋敷に戻って、それは今度ばかりは叶わない。
「王都で、豊穣祭もありますから」
「ああ」
「一応は、アイリスさんが主役ではありますし、水と癒しの神殿には巫女様も」
「ですが、オユキさんは」
そう、何もオユキが巫女としての振る舞いをしなくても良いのではないかと、そうトモエは考えていたものだが。
「クレリー公爵領に、本職の巫女様がいかれるでしょうから」
しかし、今回の豊穣祭ではなさねばならぬことがある。そして、それを為そうというのであれば不慣れなオユキではなく、慣れた物にこそ任せようと人は考える物だ。王都での豊穣の祈り、アイリスが行うそれ。そんなアイリスとの共同作業に、オユキは慣れていることもあるだろうと。
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