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26章 魔国へ
そして
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公爵家での話を終えて、翌日は方々の手配を行う事となり、実際の移動はさらに次の日。
「よもやと、そう考えてしまう物ですね」
「どうにも、マリーア公爵としても急ぎと考えていたようです。御身を急かす、結果としてそのようになったことに関しましては、誠に申し訳なく。何卒、ご寛恕を」
「もとより、私としても戻ることを考えていた、それは事実です」
では、いつ動くのかとそんな話にもなり。まずは生活の場を最低限整えよう、実際にどうなっているのかを改めて確認をしようとそう言った話になるかと、公爵とオユキの間では互いにそんな認識を抱えていたのだが。トモエのほうが、どうせ移動をしなければならず、急ぐつもりがあるのなら明日にでもとすればよいとそう言いだしたこともあった。公爵夫人にしても、その案があるのならとトモエの意見に乗った。ならば、どうにも己の配偶者に対して弱みを抱える者たちはならばそのようにとそうせざるを得なくなったものだ。何故急ぐのか、相も変わらずそれはわからぬままではあるのだが、とにかく準備はどうにか間に合わせて。
「あなた方と、幾人か、それを我が国へと招待できた。その成果で、此度は一先ず良しとしておきましょう」
「あとから来る者たちも多くいますが」
あまりに急なこととなったのだが、今回はやはり同行者もかなり多い。
ファンタズマ子爵家をはじめ、今回の同行者でもあるアベルにアイリス、初代マリーア公爵でもあるミリアム、ついでとばかりにファルコと彼の頼る少女二人。そして、何故こうなったと言わんばかりに今まさにオユキの馬車に同席しているルイス。生憎と少年たちのほうはそれとなく訪ねてみれば近々行われる祭りの準備の為に、一度始まりの町に戻る心算だとそんな話でもあり今回は同行していない。あとは、カナリアとイリアについてもイリアには話をすることが出来たのだが、相も変わらずフスカに連れていかれたカナリアが戻ってきていないため後追いでとなっている。
「正直、かなり助かります」
「窮状、その認識は共通の物とできているかとは思うのですが」
オユキの理解のためではなく、どちらかと言えばルイスに聞かせるために。
「魔物から得られるものが、魔石に偏りすぎている。それを改善するためにと先ごろアイリスさんの祖霊による加護もあったかと思いますが」
「ええ、確かに得られたものもあります。ですが、少し毛色が違うと、そう言わざるを得ないでしょう」
「確かに、神国で行った者とは違って、氷雪としての姿でしたが」
確かに、祖霊として振るった力の質は違う。だからと言って、本質からそれることなどないはずではあるし、アイリスが呼んだのは、それを願っての事。ならば、叶えられたには違いないのだが。問題としては確かめられた相手の格、そう言った差が存在している。
「ええ。貴女にとっては、少しはこちらに比べて過ごしやすい環境となるでしょう」
どうやら、それもあってトモエはすぐにでもと考えての事であるらしい。
「であれば有難いのですが、とにもかくにも向こうにつけば急がねばならぬこととして」
「ええ、魔物の討伐、それを」
奇跡ではなく、魔術を使う事でよどみがたまるというのであれば、そしてこの世界に対してかつて水と癒しの告げた言葉が世界全体に対して適用されているのだとすれば。あまり猶予という物は無かろう。
「こちらでは、よどみがある程度の指標となっているとか」
「成程、我が国から流れた知識の一端ですか。ですが、実際にはもう少し複雑な仕組みなのです」
「複雑、ですか」
「ええ、淀みだけであれば、私たちがマナを利用する結果として発生する少し変質した、マテリアルとしての形質も持った創世の混沌となっただけの物に依りはしないのです」
「創世の混沌、ですか」
教示の奇跡は、未だに生きているのだろうか。もしくは、この王妃が既にとした相手には常に発揮されるものだろうか。こうして話すにつけても、これまでは間違いなく聞き取れなかったはずの言葉がオユキに届く。トモエにも、間違いなく届いている。ルイスは、さてどうだろうかと僅かに考えはするのだが、今はもっと気にしなければならないこととして新しい言葉を。
即ち、創世の時期にはそうした状態の物質ともマナなる不可思議な特性を持つ何かばかりではなく。中間的な、そんな存在が満たしていたのだと。魔物として形を成すには実に都合の良い物質としてこちらで活動する生き物たちが、日々間違いなく出すだろう何かを利用してと。だとすれば、魔物がその姿形を変える、結果として残るもの。それに対して、人の、狩猟する人間の意志が働く余地があるのではないかと。
「何やら、すっかりと己の思考に、その様子ですね」
「初めて聞いた言葉、創世の混沌、オユキはどうやらそれに思う所がある様子」
「それすらも知らずと、そうでしたか」
「凡そ、言葉の意味は分かります。つまりは、魔物という存在を神々が用意するにあたって必要なものがあるのではないかと、実に都合が良いものだと考えていましたが」
己の思考に没頭し始めたオユキの後を引き取って、トモエが。オユキが間違いなく気にするだろう、ルイス、そちらの様子も確認しながら。
「都合がよい、とはまた違うのです。魔物とて神々が私たちに与えている試練、そして最たるものとしてこの世界に根付いています」
「最たるもの、ですか」
「全てに等しくとそうされているものの一つ、ですね」
つまりは、他にもあるのだとそう言う事であるらしい。
「他の試練、ええ、この世界に暮らす者たちに普く与えられるものは多い。我が国が貴ぶのは、知識。神国では、信仰」
「武国、では。いえ、国として存在し、冠する神々の名が分け与えられているというのであれば、つまりは少なくとも」
「その通り、というわけでもありませんが、ええ、普遍的にこちらに暮らしている者たちに与える試練、それを全ての神々がお持ちです」
日々の生活だけで、功績の余剰を示す器、それに色が満ちていくように。ここ暫くの間、オユキは刺繍に手を取られたこともあり、見慣れぬ色が随分と強くなっているとそんなことを言っていたものだが、要はそのあたりが原因。美と芸術、そちらからの評価が増したのだとそう言う事であるらしい。常々トモエとオユキの功績に含まれる知らぬ色は、それこそ華と恋かもしれぬのだが。
「神々の示す色、それについても学ばねばなりませんか」
「貴方方の得ている功績、己の身に存在する余剰として未だに昇華されておらぬ神々の加護を示す器、ですね」
「昇華、ですか」
「そのあたり、語るのは流石にまだまだ尚早。巫女、伝道者、その位を持つのであれば」
「筋違いと、確かにそうした話ですか」
神々の色、それを知るのに学問を頼るというのは、トモエとオユキが得ている位に対して色々と厄介がある。王妃としても少し話過ぎた、よもや知らぬなどとは考えていなかったと、わかりやすい。これに関しては、トモエとオユキに明確に落ち度があるのは事実。神々にも、きちんと時間を使いなさいとそう言われて久しい事ではある。それを後回しにし続けた結果というのが、まぁ今回の事ばかりではなく先ごろ改めて神国の王妃と王太子妃から忠告を得た場面にも繋がることだ。ただ、オユキの言い分というのは、間違いなくトモエが望むことがあるからこそ、教会に押し込められるような時間はないのだとそうなるだろう。
「さて、話を戻しましょう。既に、神国からも確かに得ているものとして」
「その、私は流石にあまり詳しくありませんが、とにかく王都の周囲で魔物を狩ればよいのだろうと、そうした認識ですが」
「ええ、一つは間違いなく」
トモエの理解している部分を話せば、それが一つでしかないとそう返される。流石に、魔物の乱獲にお気に入りを早々持ち出すつもりもないため、今はこの馬車の一室にしてももはや武器庫と呼んでもよいようなありさま。大量の数打ちを詰め込んで。
「一つ、ですか」
「トモエは、貴方はそれでよいのでしょう。オユキは理解しているようでしたから」
「では、オユキさんに尋ねることとしましょう、一応組織の立ち上げと言えばいいのでしょうか、そうした切欠程度とは聞いているのですが」
だから、ルイスにも声がかかったのだと。ただ、押し黙って、僅かな情報でも手に入れようと考えているだろうルイスに、簡単に視線でだけ。それを受けて、ルイスのほうは何やら随分と遠い目をしながらこぶしを握りこんだりもしているのだが、そのあたりはアベルと話し合ってもらうとして。
「どちらかと言えば、そちらに重きを置いています。今後も、ええ、今後も間違いなく運用が、持続が可能となる様にと」
「流石に、それには随分と時間が足りぬようには思いますが」
「そのために、借り受ける者たちが多いと、ええ、私も理解しています」
トモエの言葉に、隣国の王妃はただただ重たい溜息を。オユキは、相も変わらず己の思考に没頭しており、トモエがやはり話は進めなければならない。苦手な事ではある、だが、オユキとしてもトモエが問い詰めると、少しでもいいから頼る様にと問い詰めることで示したこともあり、より一層と決めたのだろう。ならば、この場はどうにか続けなければと、トモエとしても考えるのだが。
「こちらに来て、常々思うのですが」
ただ、オユキとは違って、己の疑問に、己の思う所にまっすぐな部分というのがトモエには存在している。
「随分と、そう、随分と位の高い人々の溜息を聞くものです」
公爵にしても、公爵夫人にしても。
「民の明日を創らねばならぬ、その責務故なのでしょう。考えねばならぬことが、どうにもならぬと一見してそう見える物をどうにかせねばならぬことが、本当に多いのです」
「一部は、僭越ではありますが理解が及んでいますし、間違いなく助けられるとは思うのですが」
ただ、常々、過去から疑問に思う事として。それこそ、かつて己の読んだ多くの物語に対しても思う事として。
「助けを求めれば、ただそれだけのことで多くの事が解決するのではと、本当に」
「そうでしょうとも。それをもはや言い出せぬ、それだけの積み重ねがあり助けを求めたとして、その結果がどうなるのかを思うと」
本当に難しい問題なのだと。またしても、ただただ重たい溜息が馬車に響く。今度は、ルイスとオユキも揃って。
「よもやと、そう考えてしまう物ですね」
「どうにも、マリーア公爵としても急ぎと考えていたようです。御身を急かす、結果としてそのようになったことに関しましては、誠に申し訳なく。何卒、ご寛恕を」
「もとより、私としても戻ることを考えていた、それは事実です」
では、いつ動くのかとそんな話にもなり。まずは生活の場を最低限整えよう、実際にどうなっているのかを改めて確認をしようとそう言った話になるかと、公爵とオユキの間では互いにそんな認識を抱えていたのだが。トモエのほうが、どうせ移動をしなければならず、急ぐつもりがあるのなら明日にでもとすればよいとそう言いだしたこともあった。公爵夫人にしても、その案があるのならとトモエの意見に乗った。ならば、どうにも己の配偶者に対して弱みを抱える者たちはならばそのようにとそうせざるを得なくなったものだ。何故急ぐのか、相も変わらずそれはわからぬままではあるのだが、とにかく準備はどうにか間に合わせて。
「あなた方と、幾人か、それを我が国へと招待できた。その成果で、此度は一先ず良しとしておきましょう」
「あとから来る者たちも多くいますが」
あまりに急なこととなったのだが、今回はやはり同行者もかなり多い。
ファンタズマ子爵家をはじめ、今回の同行者でもあるアベルにアイリス、初代マリーア公爵でもあるミリアム、ついでとばかりにファルコと彼の頼る少女二人。そして、何故こうなったと言わんばかりに今まさにオユキの馬車に同席しているルイス。生憎と少年たちのほうはそれとなく訪ねてみれば近々行われる祭りの準備の為に、一度始まりの町に戻る心算だとそんな話でもあり今回は同行していない。あとは、カナリアとイリアについてもイリアには話をすることが出来たのだが、相も変わらずフスカに連れていかれたカナリアが戻ってきていないため後追いでとなっている。
「正直、かなり助かります」
「窮状、その認識は共通の物とできているかとは思うのですが」
オユキの理解のためではなく、どちらかと言えばルイスに聞かせるために。
「魔物から得られるものが、魔石に偏りすぎている。それを改善するためにと先ごろアイリスさんの祖霊による加護もあったかと思いますが」
「ええ、確かに得られたものもあります。ですが、少し毛色が違うと、そう言わざるを得ないでしょう」
「確かに、神国で行った者とは違って、氷雪としての姿でしたが」
確かに、祖霊として振るった力の質は違う。だからと言って、本質からそれることなどないはずではあるし、アイリスが呼んだのは、それを願っての事。ならば、叶えられたには違いないのだが。問題としては確かめられた相手の格、そう言った差が存在している。
「ええ。貴女にとっては、少しはこちらに比べて過ごしやすい環境となるでしょう」
どうやら、それもあってトモエはすぐにでもと考えての事であるらしい。
「であれば有難いのですが、とにもかくにも向こうにつけば急がねばならぬこととして」
「ええ、魔物の討伐、それを」
奇跡ではなく、魔術を使う事でよどみがたまるというのであれば、そしてこの世界に対してかつて水と癒しの告げた言葉が世界全体に対して適用されているのだとすれば。あまり猶予という物は無かろう。
「こちらでは、よどみがある程度の指標となっているとか」
「成程、我が国から流れた知識の一端ですか。ですが、実際にはもう少し複雑な仕組みなのです」
「複雑、ですか」
「ええ、淀みだけであれば、私たちがマナを利用する結果として発生する少し変質した、マテリアルとしての形質も持った創世の混沌となっただけの物に依りはしないのです」
「創世の混沌、ですか」
教示の奇跡は、未だに生きているのだろうか。もしくは、この王妃が既にとした相手には常に発揮されるものだろうか。こうして話すにつけても、これまでは間違いなく聞き取れなかったはずの言葉がオユキに届く。トモエにも、間違いなく届いている。ルイスは、さてどうだろうかと僅かに考えはするのだが、今はもっと気にしなければならないこととして新しい言葉を。
即ち、創世の時期にはそうした状態の物質ともマナなる不可思議な特性を持つ何かばかりではなく。中間的な、そんな存在が満たしていたのだと。魔物として形を成すには実に都合の良い物質としてこちらで活動する生き物たちが、日々間違いなく出すだろう何かを利用してと。だとすれば、魔物がその姿形を変える、結果として残るもの。それに対して、人の、狩猟する人間の意志が働く余地があるのではないかと。
「何やら、すっかりと己の思考に、その様子ですね」
「初めて聞いた言葉、創世の混沌、オユキはどうやらそれに思う所がある様子」
「それすらも知らずと、そうでしたか」
「凡そ、言葉の意味は分かります。つまりは、魔物という存在を神々が用意するにあたって必要なものがあるのではないかと、実に都合が良いものだと考えていましたが」
己の思考に没頭し始めたオユキの後を引き取って、トモエが。オユキが間違いなく気にするだろう、ルイス、そちらの様子も確認しながら。
「都合がよい、とはまた違うのです。魔物とて神々が私たちに与えている試練、そして最たるものとしてこの世界に根付いています」
「最たるもの、ですか」
「全てに等しくとそうされているものの一つ、ですね」
つまりは、他にもあるのだとそう言う事であるらしい。
「他の試練、ええ、この世界に暮らす者たちに普く与えられるものは多い。我が国が貴ぶのは、知識。神国では、信仰」
「武国、では。いえ、国として存在し、冠する神々の名が分け与えられているというのであれば、つまりは少なくとも」
「その通り、というわけでもありませんが、ええ、普遍的にこちらに暮らしている者たちに与える試練、それを全ての神々がお持ちです」
日々の生活だけで、功績の余剰を示す器、それに色が満ちていくように。ここ暫くの間、オユキは刺繍に手を取られたこともあり、見慣れぬ色が随分と強くなっているとそんなことを言っていたものだが、要はそのあたりが原因。美と芸術、そちらからの評価が増したのだとそう言う事であるらしい。常々トモエとオユキの功績に含まれる知らぬ色は、それこそ華と恋かもしれぬのだが。
「神々の示す色、それについても学ばねばなりませんか」
「貴方方の得ている功績、己の身に存在する余剰として未だに昇華されておらぬ神々の加護を示す器、ですね」
「昇華、ですか」
「そのあたり、語るのは流石にまだまだ尚早。巫女、伝道者、その位を持つのであれば」
「筋違いと、確かにそうした話ですか」
神々の色、それを知るのに学問を頼るというのは、トモエとオユキが得ている位に対して色々と厄介がある。王妃としても少し話過ぎた、よもや知らぬなどとは考えていなかったと、わかりやすい。これに関しては、トモエとオユキに明確に落ち度があるのは事実。神々にも、きちんと時間を使いなさいとそう言われて久しい事ではある。それを後回しにし続けた結果というのが、まぁ今回の事ばかりではなく先ごろ改めて神国の王妃と王太子妃から忠告を得た場面にも繋がることだ。ただ、オユキの言い分というのは、間違いなくトモエが望むことがあるからこそ、教会に押し込められるような時間はないのだとそうなるだろう。
「さて、話を戻しましょう。既に、神国からも確かに得ているものとして」
「その、私は流石にあまり詳しくありませんが、とにかく王都の周囲で魔物を狩ればよいのだろうと、そうした認識ですが」
「ええ、一つは間違いなく」
トモエの理解している部分を話せば、それが一つでしかないとそう返される。流石に、魔物の乱獲にお気に入りを早々持ち出すつもりもないため、今はこの馬車の一室にしてももはや武器庫と呼んでもよいようなありさま。大量の数打ちを詰め込んで。
「一つ、ですか」
「トモエは、貴方はそれでよいのでしょう。オユキは理解しているようでしたから」
「では、オユキさんに尋ねることとしましょう、一応組織の立ち上げと言えばいいのでしょうか、そうした切欠程度とは聞いているのですが」
だから、ルイスにも声がかかったのだと。ただ、押し黙って、僅かな情報でも手に入れようと考えているだろうルイスに、簡単に視線でだけ。それを受けて、ルイスのほうは何やら随分と遠い目をしながらこぶしを握りこんだりもしているのだが、そのあたりはアベルと話し合ってもらうとして。
「どちらかと言えば、そちらに重きを置いています。今後も、ええ、今後も間違いなく運用が、持続が可能となる様にと」
「流石に、それには随分と時間が足りぬようには思いますが」
「そのために、借り受ける者たちが多いと、ええ、私も理解しています」
トモエの言葉に、隣国の王妃はただただ重たい溜息を。オユキは、相も変わらず己の思考に没頭しており、トモエがやはり話は進めなければならない。苦手な事ではある、だが、オユキとしてもトモエが問い詰めると、少しでもいいから頼る様にと問い詰めることで示したこともあり、より一層と決めたのだろう。ならば、この場はどうにか続けなければと、トモエとしても考えるのだが。
「こちらに来て、常々思うのですが」
ただ、オユキとは違って、己の疑問に、己の思う所にまっすぐな部分というのがトモエには存在している。
「随分と、そう、随分と位の高い人々の溜息を聞くものです」
公爵にしても、公爵夫人にしても。
「民の明日を創らねばならぬ、その責務故なのでしょう。考えねばならぬことが、どうにもならぬと一見してそう見える物をどうにかせねばならぬことが、本当に多いのです」
「一部は、僭越ではありますが理解が及んでいますし、間違いなく助けられるとは思うのですが」
ただ、常々、過去から疑問に思う事として。それこそ、かつて己の読んだ多くの物語に対しても思う事として。
「助けを求めれば、ただそれだけのことで多くの事が解決するのではと、本当に」
「そうでしょうとも。それをもはや言い出せぬ、それだけの積み重ねがあり助けを求めたとして、その結果がどうなるのかを思うと」
本当に難しい問題なのだと。またしても、ただただ重たい溜息が馬車に響く。今度は、ルイスとオユキも揃って。
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