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18章 魔国の下見
花冠か根か
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「覚悟は、ありました。」
「ああ。一度だけ。王ではなく、親として一度だけかけた言葉もある。」
旅路だけでも危険がある。こんな世界であまりに遠い場所に送り出す心境は、如何なるものか。そして、他国から来た相手に対して、後継ぎという問題を何処まで重く見られる存在が明確に他に理由があるとしても、どうした目で見られるか。そして、神々の予定を予感させるだけの事があり、それに気が付けるだけの知識があったのだ。
「民の為を思うからこそ、そうであるのだろうと。」
「隣国は、豊かだ。わが国では、食料ばかりはどうにもならん。改善の策は立てておる。他も模索しておる。だが。」
「ええ。どれも時が必要な事ばかり。」
当然、国主は理解している。対策も。神国が急場をしのぐだけの用意が、確かにあったように。今もそれを元に戻すためにと、今後に向けて備えを行い続けているように。
「そちらは、流石に私の管轄外ね。それこそ、私に近しい子たちをこの国に向かわせると、もっと大変な事にもなるのだし。」
「花精の方ですか。確か、大地から栄養を得るとか。」
「そうなのよね。それにある程度地力とマナが無いと、あの子たちも体調を崩してしまうし。」
「つまり、そう言う流れも生まれる訳ですか。」
「あら、失言だったわね。」
そこから生まれる予想が正しいと、そうはっきりと言われたにも等しい為頭を抱えている相手もいる。荒野に咲く花とて存在する。そして、道中見て回った折には小規模ながらも、人里から離れた位置には、森もあった。今後の為に備えようと、今回得られる物を喜んでいた相手は、それが別で消費されることが分かり揃って眉間にしわなど寄せているが。
「花精の存在は、協力が得られるのは大きいのだが。」
「ここまで来れる子は、そこまで多くないわよ。暫くは。」
今後は増えるらしい。さて、知識を間違いなく蓄えている相手が、協力が得られることを喜ぶ、そう言った種族ではあるらしい。確かに、人などとは比べ物にならないほどに魔術という意味では、マナの扱いという意味では頭抜けている。恐らく、アイリスたち獣の特徴を持つ相手と比べても。
「御身に直接尋ねる非礼を、まずは。」
「構わないわよ。恋の成就を見守りたいと願うのも、親心でしょう。ええ、この華と恋が改めて宣言しましょう。確かに育てた種は、花開いたと。」
「何とも、有難い事ですな。」
「それにこの子たちの手で、今はあの子の暮らす場は特別に安息の加護が濃いもの。」
「ええ、手紙にも書かれていました。正しく礼をとも。ただ。」
そこで、王妃がなかなか場に似つかわしくない盛大なため息をつく。
「教会にしか、それも神域の種から開いた教会にしか許されぬ神の現身を、人の暮らす場、それも離宮に。それに報いるものなど、早々あるわけもなく。」
「私としましては、此度の事で方々に便宜を図って頂いていますので。」
「ええ。その費用は確かに補填しましょう。ですが、その程度では。」
「では、橋を架けた後には、始まりの町に戻ろうと考えておりますので。」
オユキが有利な状況でもあるからと、するりと今後の予定を捩じ込もうと動きを見せる。
「そうね、この子たちは戻ってやることがあるもの。木々と狩猟から察しているようだったけれど、まぁ、私も係わりがあるものね。」
「畏まりました。未だ果たすべき使命の途中というのであれば、我らも否はありません。」
神々から実に分かりやすい追認を得た事もあり、そこは早々に決まる。
「勿論、私どもがこちらで暮らす目的の一つに、観光というものがあります。」
オユキとしても、神が同席している中で、では王族に向けて言葉を飾るのが正しいかと言われれば首をかしげるしかない。流石に、そこを細かく分けてとするだけの知識も不足しているため、一先ず平素の口調でと諦めた。
「配慮はしますが、しかし、急ぎ戻らねばならぬとなると。」
「流石に、ここまで案内を頂いた方は疲れているでしょうし、橋を架ける予定地、そこもあります。」
生憎と、どの町にというのはオユキの知らない事だ。それこそ、ミズキリが先に送り出した古い知り合いがその辺りで待機しているはずではあるのだが。
「それについては、我らが既に伺っておる。王都からとなれば、1週程か。急ぐとなれば、半分ほど短縮も出来ようが。」
「神国は一月かかる位置、それを考えるとまた難しそうですね。」
魔国側が近すぎる。先代アルゼオ公爵は露骨に喜色を浮かべているが、マリーア公爵麾下である身としては、実に考えるべきことが多い。レジス侯爵が、先にこちらで外交周りの訓練も兼ねてきているとは聞いているが、そちらと顔を合わせる事もなくここまで来たこともある。色々と、考えるべきことは多い。
「実際の所、どのような物なのか。」
「そればかりは神の御心のままに、そう言うしかありません。しかし、河を、山を迂回してというよりも、かなり早くなるとは考えています。」
下手をすれば、橋と見えるのは外観だけ。足を踏み入れれば、ダンジョンに近い物になるとオユキはトモエと話している中でそう考え始めている。神々が負担を得る、それを考えたときに、そうせざるを得ないだけの物として、ミズキリが考えているだろう事を叶えるためにも、蓋然性が高いと。
「私からのご褒美として、その考えは正しいと、そうとだけ言っておきましょう。ただ、便利にするために、それには違いないわ。急ごうと思えば、河を渡るだけで済むわよ。」
「相応しい苦難はあると、そう言う事ですか。」
「聡いわね。そうよ。」
では、肯定された予想とは何なのだと、周囲からの視線の圧が一気に増すのだが、オユキとしてもさてどう説明した物かと少し頭を悩ませる。インスタントダンジョン、これについては現状神国にだけ与えられている奇跡だ。その情報をどの程度までここで話しても良いのか、それこそ魔国からの流入する人々が、河沿いの町のすぐそば、始まりの町に迄足を延ばせば知れる事でもある。だが、此処で情報をどうこうしていいのかと言われれば、それはオユキが決めるような事ではない。そういった諸々を視線に乗せて先代アルゼオ公爵を見れば、少し考えこむそぶりを見せ、苦難という部分から正解を引いたのだろう。
「成程、資源を得るための奇跡と同様の物が。」
「恐らく。いえ、華と恋の神が私共の予想を認めてくださいました。」
「しかし、言外に示されていることが。いや、だからこそ、か。」
「ふむ。話せぬ事か。」
「いいえ、陛下。そのような事はありません。しかし前提とすべき事柄があり、少し長い話にならざるを得ず。」
そして、今はお茶会の場であり、そこまで長い時間を取ってと出来ない物でもある。このまま晩餐にとするには、オユキとアイリスもあくまで神事に向けた装いであり向いていない。トモエやアベルにしてもそれに合わせている装いであり、本来であれば茶会としてもどうなのかと、そう言った装いで臨んでいる。先方が急ぎ、それを気にしないからと招かれたから許されているに過ぎない。
「ならば、フォンタナ公に預けてくれと頼んでも。」
「畏まりました、陛下。私共で間違いなく、聞き取りを。」
そして、急いだ理由というのが、この機会を逃せばまた時間を取るのが難しいというのがある。
国の代表として、咲き誇る花として。その職責を全うしながらも、国を確かなものとするために実に多くの手を打たねばならないのだ。
「まぁ、その辺りは人の世の事。私からは好きになさいとそう告げておくわ。後は、あなた達への言い訳に仕える者を、私からも。試練としては過剰であったと、そうする理由はあったのだけれど、私もそう考えているもの。」
だからと、王と王妃の前に、現れる功績がある。花びらを、流石にそれだけでは何かわかるものではないが。
「まぁ、通行証のような物よ。あなた達にも。少なくともこの一度、それだけは、私が負担をしましょう。限度はあるけれど、あなた達だけでなく、ある程度の積み荷も許すわ。不足があれば、まぁ、見れば分かるようになっているから、その場で調整はしなさい。」
そして、オユキ達の前にも、王と王妃の物に比べれば、おまけとわかるほどに小さな花弁が。
「オユキとトモエの願いは、それだもの。ええ。良くした子たちの願い、それに応えるだけの器量は私も持ち合わせているわ。」
「真に、有難く。」
オユキとしても、他の者達の予想にしても、魔国には魔術師が居りそちらが必要なマナを捻出すると考えていた。カナリアもそういった流れを否定しなかったため、叶えられると思っていたのだが、今後を考えればそれも難しそうだというのは、既に思いしっている。こちらで暮らした期間もある相手が、それを考慮しなかったことについては、たんに不慣れがあるのだと、それ以上の物ではない。魔術師であり、研鑽を共にした相手も当然いる。そういった相手の能力を考えて可能だと、ただそう判断したに過ぎない。魔国や神国が抱える状況というのは、その判断に含まれていない。
「では、私はここまでね。ああ、それと今回の事を恩に感じるのなら、私にも相応に。」
「今後を考えれば、間違いなく。寧ろ私としては、頼まれることも増えそうで今から頭が痛いのですが。」
華と恋の神、人口の制限がなくなるとなれば、この神に認められたいと願うものがどれだけ増える事か。そればかりが目的ではないとはいえ、一つの形でもあるのだから。そして、生まれた子供の前途を祈るのも、現状オユキが行える分かりやすい職務でもある。
「頼めるのであれば。」
「誠に申し訳ございませんが、御身の庭では戦と武技、その道を求める者は多くないかと。」
「増えてくれねば困るのだが。」
「となると成程。魔術、それに関連する色に彼の神は顕れぬと聞いていましたが、やはり別枠となっていますか。」
「生憎と、彼の神の道に傾倒しているものは協力的ではあるのだが、あまりにも。」
協力は惜しまないのだが、理論立ててとするには不足が多すぎるという事であるらしい。
「娘からの手紙にも、伝聞でしかないと書かれてはいましたが。」
「さて。高貴な方の心情の斟酌を行うには、生憎と経験も知識も足りず。己の菲才故、ご迷惑をおかけすることは誠に心苦しくはありますが。」
「そうして躱すための言葉を即座に使えて、知識も経験もないなどと。まったく。」
華と恋の神が去ったこともあり、少し気安い空気は流れるのだが、主催の二人が周囲から急かされたこともある。今回の事を改めて王都に暮らす人々へ告知をしなければならない、他国の賓客を正式にもてなす会を開かねばならない等、仕事は山と積まれている。
「ああ。一度だけ。王ではなく、親として一度だけかけた言葉もある。」
旅路だけでも危険がある。こんな世界であまりに遠い場所に送り出す心境は、如何なるものか。そして、他国から来た相手に対して、後継ぎという問題を何処まで重く見られる存在が明確に他に理由があるとしても、どうした目で見られるか。そして、神々の予定を予感させるだけの事があり、それに気が付けるだけの知識があったのだ。
「民の為を思うからこそ、そうであるのだろうと。」
「隣国は、豊かだ。わが国では、食料ばかりはどうにもならん。改善の策は立てておる。他も模索しておる。だが。」
「ええ。どれも時が必要な事ばかり。」
当然、国主は理解している。対策も。神国が急場をしのぐだけの用意が、確かにあったように。今もそれを元に戻すためにと、今後に向けて備えを行い続けているように。
「そちらは、流石に私の管轄外ね。それこそ、私に近しい子たちをこの国に向かわせると、もっと大変な事にもなるのだし。」
「花精の方ですか。確か、大地から栄養を得るとか。」
「そうなのよね。それにある程度地力とマナが無いと、あの子たちも体調を崩してしまうし。」
「つまり、そう言う流れも生まれる訳ですか。」
「あら、失言だったわね。」
そこから生まれる予想が正しいと、そうはっきりと言われたにも等しい為頭を抱えている相手もいる。荒野に咲く花とて存在する。そして、道中見て回った折には小規模ながらも、人里から離れた位置には、森もあった。今後の為に備えようと、今回得られる物を喜んでいた相手は、それが別で消費されることが分かり揃って眉間にしわなど寄せているが。
「花精の存在は、協力が得られるのは大きいのだが。」
「ここまで来れる子は、そこまで多くないわよ。暫くは。」
今後は増えるらしい。さて、知識を間違いなく蓄えている相手が、協力が得られることを喜ぶ、そう言った種族ではあるらしい。確かに、人などとは比べ物にならないほどに魔術という意味では、マナの扱いという意味では頭抜けている。恐らく、アイリスたち獣の特徴を持つ相手と比べても。
「御身に直接尋ねる非礼を、まずは。」
「構わないわよ。恋の成就を見守りたいと願うのも、親心でしょう。ええ、この華と恋が改めて宣言しましょう。確かに育てた種は、花開いたと。」
「何とも、有難い事ですな。」
「それにこの子たちの手で、今はあの子の暮らす場は特別に安息の加護が濃いもの。」
「ええ、手紙にも書かれていました。正しく礼をとも。ただ。」
そこで、王妃がなかなか場に似つかわしくない盛大なため息をつく。
「教会にしか、それも神域の種から開いた教会にしか許されぬ神の現身を、人の暮らす場、それも離宮に。それに報いるものなど、早々あるわけもなく。」
「私としましては、此度の事で方々に便宜を図って頂いていますので。」
「ええ。その費用は確かに補填しましょう。ですが、その程度では。」
「では、橋を架けた後には、始まりの町に戻ろうと考えておりますので。」
オユキが有利な状況でもあるからと、するりと今後の予定を捩じ込もうと動きを見せる。
「そうね、この子たちは戻ってやることがあるもの。木々と狩猟から察しているようだったけれど、まぁ、私も係わりがあるものね。」
「畏まりました。未だ果たすべき使命の途中というのであれば、我らも否はありません。」
神々から実に分かりやすい追認を得た事もあり、そこは早々に決まる。
「勿論、私どもがこちらで暮らす目的の一つに、観光というものがあります。」
オユキとしても、神が同席している中で、では王族に向けて言葉を飾るのが正しいかと言われれば首をかしげるしかない。流石に、そこを細かく分けてとするだけの知識も不足しているため、一先ず平素の口調でと諦めた。
「配慮はしますが、しかし、急ぎ戻らねばならぬとなると。」
「流石に、ここまで案内を頂いた方は疲れているでしょうし、橋を架ける予定地、そこもあります。」
生憎と、どの町にというのはオユキの知らない事だ。それこそ、ミズキリが先に送り出した古い知り合いがその辺りで待機しているはずではあるのだが。
「それについては、我らが既に伺っておる。王都からとなれば、1週程か。急ぐとなれば、半分ほど短縮も出来ようが。」
「神国は一月かかる位置、それを考えるとまた難しそうですね。」
魔国側が近すぎる。先代アルゼオ公爵は露骨に喜色を浮かべているが、マリーア公爵麾下である身としては、実に考えるべきことが多い。レジス侯爵が、先にこちらで外交周りの訓練も兼ねてきているとは聞いているが、そちらと顔を合わせる事もなくここまで来たこともある。色々と、考えるべきことは多い。
「実際の所、どのような物なのか。」
「そればかりは神の御心のままに、そう言うしかありません。しかし、河を、山を迂回してというよりも、かなり早くなるとは考えています。」
下手をすれば、橋と見えるのは外観だけ。足を踏み入れれば、ダンジョンに近い物になるとオユキはトモエと話している中でそう考え始めている。神々が負担を得る、それを考えたときに、そうせざるを得ないだけの物として、ミズキリが考えているだろう事を叶えるためにも、蓋然性が高いと。
「私からのご褒美として、その考えは正しいと、そうとだけ言っておきましょう。ただ、便利にするために、それには違いないわ。急ごうと思えば、河を渡るだけで済むわよ。」
「相応しい苦難はあると、そう言う事ですか。」
「聡いわね。そうよ。」
では、肯定された予想とは何なのだと、周囲からの視線の圧が一気に増すのだが、オユキとしてもさてどう説明した物かと少し頭を悩ませる。インスタントダンジョン、これについては現状神国にだけ与えられている奇跡だ。その情報をどの程度までここで話しても良いのか、それこそ魔国からの流入する人々が、河沿いの町のすぐそば、始まりの町に迄足を延ばせば知れる事でもある。だが、此処で情報をどうこうしていいのかと言われれば、それはオユキが決めるような事ではない。そういった諸々を視線に乗せて先代アルゼオ公爵を見れば、少し考えこむそぶりを見せ、苦難という部分から正解を引いたのだろう。
「成程、資源を得るための奇跡と同様の物が。」
「恐らく。いえ、華と恋の神が私共の予想を認めてくださいました。」
「しかし、言外に示されていることが。いや、だからこそ、か。」
「ふむ。話せぬ事か。」
「いいえ、陛下。そのような事はありません。しかし前提とすべき事柄があり、少し長い話にならざるを得ず。」
そして、今はお茶会の場であり、そこまで長い時間を取ってと出来ない物でもある。このまま晩餐にとするには、オユキとアイリスもあくまで神事に向けた装いであり向いていない。トモエやアベルにしてもそれに合わせている装いであり、本来であれば茶会としてもどうなのかと、そう言った装いで臨んでいる。先方が急ぎ、それを気にしないからと招かれたから許されているに過ぎない。
「ならば、フォンタナ公に預けてくれと頼んでも。」
「畏まりました、陛下。私共で間違いなく、聞き取りを。」
そして、急いだ理由というのが、この機会を逃せばまた時間を取るのが難しいというのがある。
国の代表として、咲き誇る花として。その職責を全うしながらも、国を確かなものとするために実に多くの手を打たねばならないのだ。
「まぁ、その辺りは人の世の事。私からは好きになさいとそう告げておくわ。後は、あなた達への言い訳に仕える者を、私からも。試練としては過剰であったと、そうする理由はあったのだけれど、私もそう考えているもの。」
だからと、王と王妃の前に、現れる功績がある。花びらを、流石にそれだけでは何かわかるものではないが。
「まぁ、通行証のような物よ。あなた達にも。少なくともこの一度、それだけは、私が負担をしましょう。限度はあるけれど、あなた達だけでなく、ある程度の積み荷も許すわ。不足があれば、まぁ、見れば分かるようになっているから、その場で調整はしなさい。」
そして、オユキ達の前にも、王と王妃の物に比べれば、おまけとわかるほどに小さな花弁が。
「オユキとトモエの願いは、それだもの。ええ。良くした子たちの願い、それに応えるだけの器量は私も持ち合わせているわ。」
「真に、有難く。」
オユキとしても、他の者達の予想にしても、魔国には魔術師が居りそちらが必要なマナを捻出すると考えていた。カナリアもそういった流れを否定しなかったため、叶えられると思っていたのだが、今後を考えればそれも難しそうだというのは、既に思いしっている。こちらで暮らした期間もある相手が、それを考慮しなかったことについては、たんに不慣れがあるのだと、それ以上の物ではない。魔術師であり、研鑽を共にした相手も当然いる。そういった相手の能力を考えて可能だと、ただそう判断したに過ぎない。魔国や神国が抱える状況というのは、その判断に含まれていない。
「では、私はここまでね。ああ、それと今回の事を恩に感じるのなら、私にも相応に。」
「今後を考えれば、間違いなく。寧ろ私としては、頼まれることも増えそうで今から頭が痛いのですが。」
華と恋の神、人口の制限がなくなるとなれば、この神に認められたいと願うものがどれだけ増える事か。そればかりが目的ではないとはいえ、一つの形でもあるのだから。そして、生まれた子供の前途を祈るのも、現状オユキが行える分かりやすい職務でもある。
「頼めるのであれば。」
「誠に申し訳ございませんが、御身の庭では戦と武技、その道を求める者は多くないかと。」
「増えてくれねば困るのだが。」
「となると成程。魔術、それに関連する色に彼の神は顕れぬと聞いていましたが、やはり別枠となっていますか。」
「生憎と、彼の神の道に傾倒しているものは協力的ではあるのだが、あまりにも。」
協力は惜しまないのだが、理論立ててとするには不足が多すぎるという事であるらしい。
「娘からの手紙にも、伝聞でしかないと書かれてはいましたが。」
「さて。高貴な方の心情の斟酌を行うには、生憎と経験も知識も足りず。己の菲才故、ご迷惑をおかけすることは誠に心苦しくはありますが。」
「そうして躱すための言葉を即座に使えて、知識も経験もないなどと。まったく。」
華と恋の神が去ったこともあり、少し気安い空気は流れるのだが、主催の二人が周囲から急かされたこともある。今回の事を改めて王都に暮らす人々へ告知をしなければならない、他国の賓客を正式にもてなす会を開かねばならない等、仕事は山と積まれている。
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