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15章 這いよるもの
些事の訪れ
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では、そうして改まった時間を過ごし、既に死んだ者達が改めてその有り様をこちらに生きる者達に告げる時間を経てから。何が変わったのかと言われれば、直ぐに多くが変わるわけもない。
アベルにしろ、メイにしろ。そもそもしっかりと役割を与えられた者達であり、まず何よりも、そう言った言葉を報告しなければならない相手がいる。大枠としては、やはりそう変わる物では無いのだ。しかし、小さなことというのは、実にはっきりと変わる。
これまでは、必ずそれを許されることが無かったように、異邦人だけという場面が屋敷の中では許されるようになった。トモエにしてみれば、以前既に領都で王太子に向けて、神々が保証をしただろうと、そう言いたいものではある。それについては、オユキから優先順位が存在すると取れる範囲、その言葉しかなかったのが今まで問題を引きずった理由だと。そうとりなす程度には、身の回りでは大いに変わったものだ。そして、それが数日もすれば、実にわかりやすい変化を、アベルの口から告げられる。
「私が、河沿いの町にですか。」
「ああ。嬢ちゃんが、それが良いだろうとな。」
意外としか言えない事柄として、ローレンツと共に、オユキもそちらに配置するという事であるらしい。そもそも、出発は今日の事。マリーア伯爵、そちらの到着の方を受けて、ファルコが向かうのに合わせて纏めて移動をと。既に狩猟者ギルドからも突然に増えた淀み、それが限界値を迎えているのだという報告もある。何とも、実に見事なタイミングで事を運ぶものだと、報告を受けて感心している所であった。
「自分でやらないと、気がすみゃしないんだろうとな。」
「それは、まぁ、そうですが。ミズキリとケレスも絡んでいますね。」
あの少女に対しても、分からぬことを分からぬと。手に負えぬ事が有れば、助けを求めるのは何ら問題が無い事なのだと、オユキは示した。そして、実に見事な宣戦布告をした以上は、その挙げた気炎そのままに、大いに動き出しているのだろう。
「ま、ご想像の通りだな。ついでに、俺も含めてだが、改めて色々言われたもんだ。」
「私は何処までもその役割を持たれる方と見ますが、メイ様はまた違うでしょうから。」
「何、それにしても間違いって訳でも無い。」
騎士に向ける憧れ、それをただ持つものと。それに応える役割を得たのだと理解を示すもの。
「となると、私はこちらでアベルさんとですか。」
「一応、メイの嬢ちゃんもこっちで門の外に立つな。後はガキどもだが。」
「領都からとこの町から、そう分けるのでしょうね。」
領都からの子供たちについては、いよいよこれから王都に向かい、水と癒しの神を祀る神殿で新しい教会が作られるのだとその報告をして、そこを任される物を迎えるという非常に大きな仕事が与えられている。騎士を目指すと教会から出たのに、それを僅かなりとも申し訳なくは思いはしたが、そんな事よりもも大事だからと受け入れてくれている。そちらも、かなりあれこれと詰め込まれているようで、年に似合わぬ笑いをしたりもしていたが。
ティファニアの言葉で、最も印象的だったのがある。トモエの施す訓練が、ちゃんと限界を見極めた優しいものだったのだとよくわかったと。
「では、此度の事が終われば、色々と報告も兼ねて直ぐに領都に向かいましょうか。」
「王都での事は、ある程度こっちに任せてくれ。暮らす場所は、申し訳ないが公爵の本邸だがな。」
「流石に、ああも目立つものを持ち込んで、王都の誰の目にも止まらない等と、そんな事は流石に私も考えませんよ。」
オユキが被るであろう煩わしさ。巫女として表に立つと、分かりやすい奇跡を多く得る巫女が、そう口にしたのならと。そこで生まれるだろう事も、ある程度アベルの方で、恐らく王太子もだろうが。
オユキが繰り返した言葉として、折り合いというものがある。急ぐ理由があり、その中でトモエとの時間を得るためにと。忙しくない、老境にあった時間をある程度はという事であるらしい。
「そうであるなら、ヴィルヘルミナさんの話していた公園なども見てみたいものですね。」
「一応場所は聞いたが、公園ではなく王祖様が最初に野営地を築いた跡地だな。どうにも、その周囲で良いのか中に入る事までを求めているかが分からん。」
「確かに、そうした重要な史跡であるなら、中にとまで望めばそれは色々手続きが要りそうですね。」
建国の先駆けであった場所、王家というものがある以上、それこそ祖先の始まりの足跡がある地だ。周囲は観光地化していると、口ぶりで分かる。だが、実際の場所はそれは厳重に守られている事だろう。
その辺りの説明はしたのかと、そうオユキからアベルに先を促せば。
「こう、聞いた話とやはり町並みも変わっていそうでな。位置関係が今一つわからん。王城を西に望む、湧き水の溢れる少し小高い場所と言われれば、そこになるのだろう。そう言った判断しかできなくてな。」
「許可を求めて、実際に違ったら、まぁ、申し訳ない場所ですよね。」
恐らく、そう言った場であればこそ、そこで眠ることを選んだ相手も居そうなものなのだから。
「色々と、配慮を頂けるのでしょう。ならば、この町で叶ったように、王都でも叶うものでしょう。オユキさんも、仕事ばかりに目を向けず。以前も言っていたでしょう。」
「そうですね。過去は確かに人の暮らす場には、あまり目を向けていませんでしたから。」
何も、トモエばかりが旅行や観光を好むという訳でも無い。
「ただ、オユキさんが好む形となると。」
「なんだ、まだ何かあるのか。」
「いえ、ゆっくりと景色を眺めて進むことを好むので。」
そして、そんな事をしまえば、どうした所で騒ぎになる。
過去、よくある旅行の形というのは、まずはオユキの好む方法でまずは遠景を望み、それこそ有名な川を船でのんびりと下りながら、あれこれとそこから見える物に思いを馳せ。特にと思うものに足を運び、トモエがそこで案内があれば来歴を強請ってとなっていた。
それをこちらで行おうと思えば、それはもう仰々しい事になるだろう。
「ふむ。それくらいなら、どうにでもなるだろうな。」
「おや。」
「それこそ、そう言った文化の保全というのも王妃様の担当だ。ここまでの事に対する礼として、寧ろ都合がいい。」
なんと言えばいいのか、大事になる事は決まってしまうが、それでも存分に観光を楽しむことは出来そうである。
「それは、楽しみな事ですね。」
「そういった物を好まれるのでしたら、以前の領都でも、ご遠慮なさらずとも良かったのでは。」
「いえ、流石に次の移動とその準備が控えていましたから。」
「そういや、トモエも王都の水路周りを気にしていたか。だが、そっちはなぁ。」
それについては、流石に実際に王都に訪れて見なければ分からない事でもある。国として有事のためにと保管していた物資、それを放出する必要が解消されたのかもそうである。たとえ終わったとしても、今度に供えてまた減った物を戻さなければならない。それこそ、長期的な計画によるものだろうが。
「あまり往来も無かったので、馬車でも十分かと思いますが。」
「今は酷いことになってるぞ。」
トモエの言葉は、アベルから実に簡単な回答が返ってくる。それもそうだろう。新しい王族が生まれた、新年に向けて国中の貴族がそのお披露目であったり、既に周知されているらしい新しい奇跡に興味を持ち、集まってきているのだろう。誕生したその時に送れてしまったものたちにしても、いっそ帰らずそのままでとしているものであろう。
そうして、人が集まれば其処には喧騒というものが相応に生まれるというものだ。
「それは、残念ですね。」
「一応、そうだな。今回の神々からの頂き物を、王城から神殿に向けて水路でという話もあるにはあったが。」
ただ、それについてはロザリア司教から、はっきりとそのまま神殿に運ぶようにと言われている。忘れられていたものが戻るのであって、新しく与えられたのではないのだと。それを示す為にも譲れない事であるらしい。
「そうですね、落ち着いたら、それもお願いしましょうか。トモエさんはことのほか気に入っていましたし。ヴィルヘルミナさんにお願いすれば、実に楽しいものになるでしょうから。」
実際には、カンツォーネではなくリートになるだろうが、その辺りも間違いなく抑えているだろう。先日の席でも、実に当然とばかりにカリンの要望に応えていた。
「さて、その辺りの話はひとまず置いておきましょうか。シェリア、用意を。」
先の話の結果なのだろう。実に先の話をあれこれと持ち出してくるものだ。あまり長期の目標はやはり数日で建てられはしないため、直近の物ばかりではあるが。その中で、感触の良い物を探るつもりだと、実にわかりやすい事で結構な事だと。ただ、現実としての時間は、やはりオユキはしっかりと把握している。ファルコと連れ立ってとなるのであれば、そろそろ用意もいる。実際には昼を過ぎた頃なのだろうが、オユキが先に向かい、そのまま領都にとなるのであれば、教会から持ち出さなければならないものがある。
今頃、領都から来た子供たちが、最後の確認とばかりに準備をしている事だろう。
「それにしても、門の外に出られるのなら。」
オユキが頼めば、シェリアが頭を下げて部屋を出ていく。それを見送って、オユキは一つ惜しいことをしたと、そう思う事が有るのだ。
「神殿に送らずに、持ち歩かせて頂けば、よかったかもしれませんね。」
オユキは、その位を示すにあたって、その名の下に振るうにそれ以上に相応しい刃というのを持っていない。しかし、生憎と今はそちらはアベルの生まれた国に。
「それでは、トモエさん。」
「ええ。こちらの事は任せてください。」
こちらに来てからはすっかり逆になることが多かったが。
「では、仕事に行ってきますね。」
「はい。生憎と送り出すのに、オユキさんに迎えて頂く事になりますが。」
ただ、まったくかつての通りとばかりに行くものでもない。
「本命は、こちらのようです。既に、変異種の姿もいくらか確認されていると。」
「今度の事は、私としても枠を用意して振舞う気がありませんから。」
見せるべき相手として、オユキがいない。弟子という訳でも無かったが、それでも随分な所まで足を進めようと、そうした相手が今はいない。乱獲として行った、鍛錬の場としてもまた違う。だからこそ、今回トモエに対して一切の制限が存在しない。見せるべきではない相手ばかり、その制限はむしろ存在するが。
アベルにしろ、メイにしろ。そもそもしっかりと役割を与えられた者達であり、まず何よりも、そう言った言葉を報告しなければならない相手がいる。大枠としては、やはりそう変わる物では無いのだ。しかし、小さなことというのは、実にはっきりと変わる。
これまでは、必ずそれを許されることが無かったように、異邦人だけという場面が屋敷の中では許されるようになった。トモエにしてみれば、以前既に領都で王太子に向けて、神々が保証をしただろうと、そう言いたいものではある。それについては、オユキから優先順位が存在すると取れる範囲、その言葉しかなかったのが今まで問題を引きずった理由だと。そうとりなす程度には、身の回りでは大いに変わったものだ。そして、それが数日もすれば、実にわかりやすい変化を、アベルの口から告げられる。
「私が、河沿いの町にですか。」
「ああ。嬢ちゃんが、それが良いだろうとな。」
意外としか言えない事柄として、ローレンツと共に、オユキもそちらに配置するという事であるらしい。そもそも、出発は今日の事。マリーア伯爵、そちらの到着の方を受けて、ファルコが向かうのに合わせて纏めて移動をと。既に狩猟者ギルドからも突然に増えた淀み、それが限界値を迎えているのだという報告もある。何とも、実に見事なタイミングで事を運ぶものだと、報告を受けて感心している所であった。
「自分でやらないと、気がすみゃしないんだろうとな。」
「それは、まぁ、そうですが。ミズキリとケレスも絡んでいますね。」
あの少女に対しても、分からぬことを分からぬと。手に負えぬ事が有れば、助けを求めるのは何ら問題が無い事なのだと、オユキは示した。そして、実に見事な宣戦布告をした以上は、その挙げた気炎そのままに、大いに動き出しているのだろう。
「ま、ご想像の通りだな。ついでに、俺も含めてだが、改めて色々言われたもんだ。」
「私は何処までもその役割を持たれる方と見ますが、メイ様はまた違うでしょうから。」
「何、それにしても間違いって訳でも無い。」
騎士に向ける憧れ、それをただ持つものと。それに応える役割を得たのだと理解を示すもの。
「となると、私はこちらでアベルさんとですか。」
「一応、メイの嬢ちゃんもこっちで門の外に立つな。後はガキどもだが。」
「領都からとこの町から、そう分けるのでしょうね。」
領都からの子供たちについては、いよいよこれから王都に向かい、水と癒しの神を祀る神殿で新しい教会が作られるのだとその報告をして、そこを任される物を迎えるという非常に大きな仕事が与えられている。騎士を目指すと教会から出たのに、それを僅かなりとも申し訳なくは思いはしたが、そんな事よりもも大事だからと受け入れてくれている。そちらも、かなりあれこれと詰め込まれているようで、年に似合わぬ笑いをしたりもしていたが。
ティファニアの言葉で、最も印象的だったのがある。トモエの施す訓練が、ちゃんと限界を見極めた優しいものだったのだとよくわかったと。
「では、此度の事が終われば、色々と報告も兼ねて直ぐに領都に向かいましょうか。」
「王都での事は、ある程度こっちに任せてくれ。暮らす場所は、申し訳ないが公爵の本邸だがな。」
「流石に、ああも目立つものを持ち込んで、王都の誰の目にも止まらない等と、そんな事は流石に私も考えませんよ。」
オユキが被るであろう煩わしさ。巫女として表に立つと、分かりやすい奇跡を多く得る巫女が、そう口にしたのならと。そこで生まれるだろう事も、ある程度アベルの方で、恐らく王太子もだろうが。
オユキが繰り返した言葉として、折り合いというものがある。急ぐ理由があり、その中でトモエとの時間を得るためにと。忙しくない、老境にあった時間をある程度はという事であるらしい。
「そうであるなら、ヴィルヘルミナさんの話していた公園なども見てみたいものですね。」
「一応場所は聞いたが、公園ではなく王祖様が最初に野営地を築いた跡地だな。どうにも、その周囲で良いのか中に入る事までを求めているかが分からん。」
「確かに、そうした重要な史跡であるなら、中にとまで望めばそれは色々手続きが要りそうですね。」
建国の先駆けであった場所、王家というものがある以上、それこそ祖先の始まりの足跡がある地だ。周囲は観光地化していると、口ぶりで分かる。だが、実際の場所はそれは厳重に守られている事だろう。
その辺りの説明はしたのかと、そうオユキからアベルに先を促せば。
「こう、聞いた話とやはり町並みも変わっていそうでな。位置関係が今一つわからん。王城を西に望む、湧き水の溢れる少し小高い場所と言われれば、そこになるのだろう。そう言った判断しかできなくてな。」
「許可を求めて、実際に違ったら、まぁ、申し訳ない場所ですよね。」
恐らく、そう言った場であればこそ、そこで眠ることを選んだ相手も居そうなものなのだから。
「色々と、配慮を頂けるのでしょう。ならば、この町で叶ったように、王都でも叶うものでしょう。オユキさんも、仕事ばかりに目を向けず。以前も言っていたでしょう。」
「そうですね。過去は確かに人の暮らす場には、あまり目を向けていませんでしたから。」
何も、トモエばかりが旅行や観光を好むという訳でも無い。
「ただ、オユキさんが好む形となると。」
「なんだ、まだ何かあるのか。」
「いえ、ゆっくりと景色を眺めて進むことを好むので。」
そして、そんな事をしまえば、どうした所で騒ぎになる。
過去、よくある旅行の形というのは、まずはオユキの好む方法でまずは遠景を望み、それこそ有名な川を船でのんびりと下りながら、あれこれとそこから見える物に思いを馳せ。特にと思うものに足を運び、トモエがそこで案内があれば来歴を強請ってとなっていた。
それをこちらで行おうと思えば、それはもう仰々しい事になるだろう。
「ふむ。それくらいなら、どうにでもなるだろうな。」
「おや。」
「それこそ、そう言った文化の保全というのも王妃様の担当だ。ここまでの事に対する礼として、寧ろ都合がいい。」
なんと言えばいいのか、大事になる事は決まってしまうが、それでも存分に観光を楽しむことは出来そうである。
「それは、楽しみな事ですね。」
「そういった物を好まれるのでしたら、以前の領都でも、ご遠慮なさらずとも良かったのでは。」
「いえ、流石に次の移動とその準備が控えていましたから。」
「そういや、トモエも王都の水路周りを気にしていたか。だが、そっちはなぁ。」
それについては、流石に実際に王都に訪れて見なければ分からない事でもある。国として有事のためにと保管していた物資、それを放出する必要が解消されたのかもそうである。たとえ終わったとしても、今度に供えてまた減った物を戻さなければならない。それこそ、長期的な計画によるものだろうが。
「あまり往来も無かったので、馬車でも十分かと思いますが。」
「今は酷いことになってるぞ。」
トモエの言葉は、アベルから実に簡単な回答が返ってくる。それもそうだろう。新しい王族が生まれた、新年に向けて国中の貴族がそのお披露目であったり、既に周知されているらしい新しい奇跡に興味を持ち、集まってきているのだろう。誕生したその時に送れてしまったものたちにしても、いっそ帰らずそのままでとしているものであろう。
そうして、人が集まれば其処には喧騒というものが相応に生まれるというものだ。
「それは、残念ですね。」
「一応、そうだな。今回の神々からの頂き物を、王城から神殿に向けて水路でという話もあるにはあったが。」
ただ、それについてはロザリア司教から、はっきりとそのまま神殿に運ぶようにと言われている。忘れられていたものが戻るのであって、新しく与えられたのではないのだと。それを示す為にも譲れない事であるらしい。
「そうですね、落ち着いたら、それもお願いしましょうか。トモエさんはことのほか気に入っていましたし。ヴィルヘルミナさんにお願いすれば、実に楽しいものになるでしょうから。」
実際には、カンツォーネではなくリートになるだろうが、その辺りも間違いなく抑えているだろう。先日の席でも、実に当然とばかりにカリンの要望に応えていた。
「さて、その辺りの話はひとまず置いておきましょうか。シェリア、用意を。」
先の話の結果なのだろう。実に先の話をあれこれと持ち出してくるものだ。あまり長期の目標はやはり数日で建てられはしないため、直近の物ばかりではあるが。その中で、感触の良い物を探るつもりだと、実にわかりやすい事で結構な事だと。ただ、現実としての時間は、やはりオユキはしっかりと把握している。ファルコと連れ立ってとなるのであれば、そろそろ用意もいる。実際には昼を過ぎた頃なのだろうが、オユキが先に向かい、そのまま領都にとなるのであれば、教会から持ち出さなければならないものがある。
今頃、領都から来た子供たちが、最後の確認とばかりに準備をしている事だろう。
「それにしても、門の外に出られるのなら。」
オユキが頼めば、シェリアが頭を下げて部屋を出ていく。それを見送って、オユキは一つ惜しいことをしたと、そう思う事が有るのだ。
「神殿に送らずに、持ち歩かせて頂けば、よかったかもしれませんね。」
オユキは、その位を示すにあたって、その名の下に振るうにそれ以上に相応しい刃というのを持っていない。しかし、生憎と今はそちらはアベルの生まれた国に。
「それでは、トモエさん。」
「ええ。こちらの事は任せてください。」
こちらに来てからはすっかり逆になることが多かったが。
「では、仕事に行ってきますね。」
「はい。生憎と送り出すのに、オユキさんに迎えて頂く事になりますが。」
ただ、まったくかつての通りとばかりに行くものでもない。
「本命は、こちらのようです。既に、変異種の姿もいくらか確認されていると。」
「今度の事は、私としても枠を用意して振舞う気がありませんから。」
見せるべき相手として、オユキがいない。弟子という訳でも無かったが、それでも随分な所まで足を進めようと、そうした相手が今はいない。乱獲として行った、鍛錬の場としてもまた違う。だからこそ、今回トモエに対して一切の制限が存在しない。見せるべきではない相手ばかり、その制限はむしろ存在するが。
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