憧れの世界でもう一度

五味

文字の大きさ
160 / 1,235
四章 領都

少年たちの相談

しおりを挟む
「で、後はそっちのガキどもか。」
「俺らっていうか、今回トロフィーを手に入れたのは俺だから、まずは俺の分かな。
 おっさん、このグレイハウンドの骨で、武器どんだけ作れるんだ。」
「ソポルトに比べりゃ、小さいからな。物にもよるが今持ってる両手剣と同じ大きさなら、5ってところか。」

そう言われると、シグルドは少し悩むように腕を組む。

「じゃ、皆それぞれは難しいか。」
「質を落としてもいいなら、どうにかなるぞ。」
「いや、それじゃ意味がないからな。えーと、とりあえずこれと同じのを3つで。残りはホセのおっちゃんに任せるよ。」
「分かりました。ウーヴェさん割っていただいても。」
「ああ、任せろ。」

そういって、さっそく作業に移ろうとするウーヴェをシグルドが呼び止める。

「あ、待ってくれおっさん。ここって武器の修理とかもやってんのか。」
「ああ、手入れから修理まで、受け取るぞ。なんだ、駄目にしたのか。」
「俺らみんなだけどな、で、これなんだけど。」

そういってシグルドが、柄にひびが入った、そんな長剣を持ちウーヴェに渡す。
ウーヴェはそれを手に取ると、その時点で眉を顰め、鞘から少し刀身を見るとすぐにゆっくりと机に置き、首を横に振る。

「これは、もう駄目だな。鋳つぶして、うち直すしかない。安物を使い込みすぎだ。」
「そうか。初めて、一人で丸兎を斬ったんだよ。うち直して、同じのになりそうか。」
「すまんが、無理だ。鋳つぶせばどうしても嵩が減る。
 どうする、繋いで、飾っておくか。」

ぶっきらぼうではあるが、武器に込められた思い、それは作る側だからこそ、よくわかるのだろう。
ここまで聞いたどんな声よりも、穏やかで優しさに満ちた声でシグルドに尋ねる。

「いや、武器だからな、使ってやらないなら、こいつが可哀そうだ。」
「そうか。そうだな。いい心掛けだ。どうする、こいつと混ぜるときに、使うか。」
「そんなことできんのか。」
「儂を誰だと思っておる。出来ぬことなど口にはせぬさ。」
「そうか、じゃあ、頼む。お前らは、どうする。」

そういってシグルドが他の面々を振り返ると、それぞれに考えるそぶりを見せるが、最初から同じ武器を使っているものは彼以外にいない。
それもあって首を横に振る。

「私は、今はこれだから。長剣はあんたにあげたじゃない。」
「俺もだな。」
「私も。」
「私はまだ持ってるけど、最近は弓が主体だし。」
「なんだ、お前らも修理したい武器があるのか、ならとりあえず並べてみろ。」

ウーヴェの言葉にオユキとトモエもそれに便乗して机に馬車に積んでいた予備の武器まで全てを並べる。
机には20近い武器が並び、ウーヴェはただ苦い表情を浮かべながら、それを一つづつ丁寧に確認していく。

「どれもこれも手入れが最低限過ぎるな。狩猟者だから仕方ないにしても、もう少しまともに手入れをするといい。後で、武器を渡すときに、道具もつけてやろう。」
「ありがとうございます。」
「それにしても、そっちの二人はともかく、そこのガキどももかなり使い込んどる。
 どれ、手を見せてみろ。」

言われて、それぞれ手を広げて順番に見せていくと、ウーヴェは手の大きさなどを、メモしていく。

「こいつで、どんだけ持った。」
「今回は旅もあったからな、10日くらいか。」
「普段どんだけ使っとる。」
「毎日丸兎、いやそれはグレイハウンドもか、を5匹多い時は8匹斬って、後は素振りを二百。」
「安物に無理させすぎじゃ、阿呆が。」
「でもさ、おっさん。始まりの町じゃそれ以上なんてそうそうないし、買えないんだよ。」
「ああ、あそこか。鉄が取れる場所が遠いからな、なら仕方ないが、も少し腕が上がれば多少は持つかもしれんが、お前らはその分魔物を狩って余計消耗させそうだな。」
「その辺どうにかならないのか。」

シグルドもそれには困っていると、腕組みし、難しい顔でウーヴェに尋ねる。
しかしウーヴェの答えはそっけない。

「どうにもならん。熟練の狩猟者でも、手入れをさぼれば二月で駄目になる。
 どれだけいいものでも、2年持てばいい。それこそ億もするようなそんな武器でもな。」
「ほんと、大変だなぁ、武器。」
「だから、持ち歩くものは選ぶことだな。訓練用と狩猟で分ける。それだけで、少しはもちも良くなる。」
「町にいるときは傭兵ギルドで借りられるけどさ。」
「お前、旅の間も素振りしたのか。」
「ああ。」

シグルドが当たり前と頷くのに合わせて少年たちも、同じ仕草で応える。
それに対してウーヴェはため息をつきながら、剣の持ち手を示しながら提案する。

「ふむ。持ち手のところを少し太くするか。その分持つようになるが。」
「いえ、今のままで。暫くは武器の癖を覚えず、よくある武器に合わせる形で見ますから。」

ただ、それにはシグルドではなくトモエが答える。

「お前が教えとるのか。まぁ、わかった。ガキどもは、出来合いの武器を買っていくか。」
「ああ、あんちゃんこの店で大丈夫そうか。」

シグルドが片側に集められた、両手剣の詰まった樽、それを見ながら、トモエに尋ねる。

「ウーヴェさん。こちら試しに触れるような場所は。」
「勿論ある、そこの横だ。
 おい、餓鬼ども、こっちは修理でいいのか。」
「あー、俺のは全部新しく作る奴に混ぜられるならそれで。」
「よし、わかった。どれ、少し振って見せろ。作りの参考にするからな。」

そういって、ウーヴェに案内され、工房の横手、すこっし広い庭のような場所に出て、少年たちがそれぞれ店内にあった武器から一つ選んだものを持ち出して振り始める。

「ふむ。見た目よりしっかりしておるな。
 おい、そこのクソガキ、損だけ触れて一本曲げたのがあったが。」
「ああ、あれか。こうグレイハウンドの首を落とした時に、勢い余って。」

暫く少年たちの素振りを黙ってみていたウーヴェがシグルドに声をかけると、シグルドも剣を振りながら、呼吸を乱さずに答える。
始めたばかりの頃は、直ぐに息が上がっていたというのに、加護があるにしても早い成長だろう。
他の子どもたちにしても、今となっては素振りも百を超えるまでは息も乱れないし、汗をかくこともない。
初めて会ったとき、丸兎一匹を五人で相手にし、30分追いかけ回し、囲んで、そして疲労困憊となっていたころに比べると、大分成長をしてきた。

「まだまだ甘いという事か。」
「まぁ、そうだな。怒られたし。」
「今振っているように、きちんと絞って止めていれば、あんなことにはなりませんでしたよ。」
「そうなんだよなぁ。こう、なんかうまいこと言ってさ。普段よりもだいぶ早く地面叩いたんだよな。」
「ええ、上手く振れていましたよ。他の方にも言われたでしょう、それがいつもとなるようにと。」

少し首をかしげながら、恐らくその時のことを思い出して振ろうとして、それがうまくいかないと、その違和感をどうにかものにしようと、シグルドが素振りを繰り返すのを見ながら、トモエが声をかける。

「新しい武器ができたら、そのあたりの理屈も教えていきましょうか。」
「あんちゃんとオユキの話って、なんか急に難しくなる時があるんだよなぁ。」
「あ、分かるかも。たまに学者様みたいなこと言い出すんだもの。」

アナにまでそのように言われて、トモエが照れくさそうに笑いながら、言葉を返す。

「その、分かり難い事が有れば行ってくださいね。
 なるべく平易に説明するようには、努力していますが。」
「それが分かってるから、言いにくいというか。馬鹿で悪いと、謝らなきゃいけないのかなって。」
「そのようなことはありませんよ。私が教える側です。なら私はあなた達が分かるように、そうしなければいけないのですから。」
「んー。でも甘えすぎも良くないよな。」
「ま、そのあたり匙加減だろう。良し、こっちもだいたいわかった、で、餓鬼ども、武器はそれでいいのか、他も試すか。」

ウーヴェが割って入ってそう声をかけると、パウがすぐに口を開く。

「ピッケルだったか、あれば、見てもいいか。」
「ん、ああ、戦闘にも使えるからな、少し待っとれ。」

そうしてウーヴェが持ってきたピッケルにパウがほれ込んだ。
彼は数度それを振ると、さっそく買うことを決め、それならと少年たちもまずは一つ、練習と実戦用に一つずつ武器を買いもとめる。
ついでだたからと、それぞれトモエが両手剣、オユキが片手剣を買い、店を後にすることとした。
明らかに良い品質の武器であるのに、値段が始まりの町の者より少し割高、その程度で収まっていたことを不思議に思う少年たちに、輸送にかかる費用を簡単に説明しながら、傭兵ギルドへと向かう。
訓練所があれば、良いのだが。そんなことを考えながら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...