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四章 領都
水と癒しの神本教会
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馬車から降りて軽く体を伸ばすと、するりと歩き近寄ってきたアマリーアが全員に視線を送り、軽く頭を下げる。
「その、ごめんなさいね。」
「構いませんよ。必要な事なのでしょう。」
「まぁ、そうらしいけど。面倒じゃね、こういうの。」
オユキとトモエがそれぞれに応えると、アマリーアもただ苦笑いでそれに応える。
「今回ばかりは、必要でしたのよ。狩猟者ギルドで、ホセさんに優先権を、そう書面にされていましたから。」
「ああ、それが教会の理由になるのですか。それこそギルドでよいのでは、そう思いますが。」
「私たちがあちらに向かえば、どうしても耳目を引きますから。」
「私たちが尋ねても同様では。」
「そのための宿と、あの場所です。」
「商人ギルドはやはり別ですか。こういう物もありそうだ、そう思ってしまいましたが。」
オユキがそう言えば、アマリーアはくすくすと笑う。
「それぐらいの遊び心があればいいのですが、目を楽しませる庭より、商品を置く倉庫、そのような人間ばかりですもの。潤いが足りませんわ、心に。」
「遊び心は商品価値です。そうであれば、それを付加する商品を入れる場所こそ重要でしょう。」
「全く。そんな事だから、こうして面倒を引き寄せるというのに。」
「売り手も、買い手も。どちらもいなければ私達は立ち行きませんから。」
アマリーアはため息でカレンに応えると、再び少年たちに謝る。
「本当にごめんなさいね。ギルドはこういう物からあなた方を煩わせない、そのためにあるのだけれど。」
「いいさ、俺らよりできる人ができない、そういうなら本当に難しいんだろ。
こっちのやりたいことができなくなると困るけど。」
そう答えるシグルドの頭をアマリーアが撫でると、気恥ずかし気にシグルドが振り払う。
「それでは、後は教会で。邪魔も入りませんし、契約を変えるにも、神の前、その方が何かと都合が良いですから。」
そういって歩き出すアマリーアについて、教会の中へと入る。
外観はそれこそ教会などと言わず、聖堂と呼ぶ方がしっくりくる。
そして、町中の水路は何処からかと、そう思えば、この聖堂、その最も高い位置から、水がゆるやかに流れている。
滝のようと、そう感じさせないのは、高い位置から引く位置へと、そう水が落ちているというのに、緩やかな流れ、そう言い切れる速度であるからだ。
この聖堂の正確な位置を、オユキとトモエも把握できていないが、それでも蜘蛛の巣上にこの聖堂を中心に置いて伸びる水路を見れば、ここがこの町の水路、その起点と見て取れる。
「美しい建造物ですね。」
「全くです。以前も、もっと興味を持てばと、悔やまれますね。」
「では、これから見て回りましょうか。」
オユキとトモエはそう話しながら教会に入る。
外観の際たる特徴は、その水ではあるが、壁面も要所に貴金属や貴石が埋め込まれ、細部にも彫刻は施されている。
時間を後で貰って、周囲に並ぶ彫像や、その細工の説明も聞いてみたい、そういう思いに駆られたが、中は吹き抜けの高い天井。
その天井の数か所からまっすぐと、水が落ちてきており、透明な柱と見える物を作っている。
室内にも水が流れる、小さな道があり、そこには水生植物だろう、目を楽しませる手入れの行き届いたと一目でわかる植物が浮かんでいる。
礼拝所らしきその場所は、入口の門から、正面に置かれた立像迄、相応の幅を持つ絨毯が引かれ、左右に長椅子がきれいに並んでいる。
流石に壁画や絵画は飾られていないが、それでも磨き抜かれた、それが人の手か、流れる水による物かはわからないが、石造りの内装は柔らかな光を、石そのものが放ち、教会の中を明るく照らしている。
「素敵な場所ですね。」
「凄い。綺麗。」
トモエたちが、ただただその絢爛と呼ぶには質素だが、確かな美しさを持つそんな教会に見とれていると、ローブを来た幾人かの女性が近寄ってくる。
「よく御出でくださいました。本日は、どのようなご用件でしょうか。」
「私たちは、いつもの部屋を。こちらの方たちと。それと、この方たちは、それぞれ用があるとそう聞いています。」
アマリーアにそう話を向けられると、未だに周囲を熱心に見まわしているアナの方をオユキが軽くたたき、注意を引く。
「ほら、アナさん。目的地に着きましたよ。」
「あ、すみません。綺麗だったので、つい。」
「褒められて怒るものなど居りませんとも、さて、本日はどの様なご用件でしょうか、小さな狩猟者様。」
そう、ローブ姿の女性に話しかけられると、アナが片手に持っていた荷袋から、少々大きく、分厚い便箋を取り出す。
「えっと。初めまして、助祭様。始まりの町、最も古い教会でお世話になっているアナです。
本日は、ロザリア・マリア・カルディナーレからの手紙を、この町の本教会へと、届けに参りました。」
何か、そういう作法があるのだろう。
取り出した便箋を持つと、一度それに向けて印を切り、それを捧げるようにして自分の前で持ち、アナが彼女にしては珍しい、固い挨拶を行う。
「まあ、これはこれは。申し遅れました、私は、この教会で助祭の任を頂いております、リザ。
歓迎しますよ、持祭アナ。それと司教様からの手紙ですね、今司祭様を呼んでまいります。
少々お時間を頂きますので、お連れの方もどうぞ、くつろげる場所へご案内させていただきますね。」
「ありがとうございます。その。」
アナが、そういうと少し言いにくそうにする。
その様子にトモエが後を引き取る。
「リザ様。私どもはこの町へと昨日の夕方前に着いたばかり。祀る神が違うと、それはわかってはいるのですが、叶うなら旅路の無事を、神に感謝したく。」
「まぁ、何を遠慮することがありますか。確かに我らは、水と癒しの神を主として祀っていますが、神々全てへ敬意を払うものです。
もちろんですとも。あちら、その、中央ではなく恐縮ではありますが、風と旅の神、その立像もあります。
どうぞ皆様の旅の無事をご報告されてください。」
「ありがとうございます、助祭様。
それと、こちら些少ではございますが。」
「お心遣いありがとうございます。では、こちらはまず風と旅の神その御前に。
商人ギルドからの方は、先にご案内させていただいたほうが。」
「お客様を先に応接間で待つ商人はいませんわ。」
「かしこまりました。それでは私は司祭様を呼んでまいります。後の事はこのものに。頼みましたよ。」
そうしてリザと名乗った女性が、礼拝堂の脇へと歩いていく。
そして、オユキ達は、言われたままに、風と旅の神、その前へ案内される。
「その、アナさん。作法をお伺いしても。」
「あ、そっか。オユキちゃんたちは知らないよね。うん、任せて。」
そうして、創造神に対するものとまた違う動きで印を切り、膝を付き頭を下げ、旅の無事を神に感謝する。
以前であれば、ある程度安全の保障は、それこそ事故以外ではされていたが、今となっては、魔物に襲われるのが当然であり、危険しかない、そんなものになっている。
旅の出発に際しては、安全祈願などをしていなかったと、今更ながらにトモエは反省する。
それもこれまでの習慣、それがどうしても残り、こちらの風習に馴染み切れていない、その分かり易い証拠の一つだろう。
オユキとトモエにしてみれば、あっさりした物とはなるのだが、初めてというわけでもないにしても、ここまで大きく町から離れたのは初めての事だろう、少年たちはあれこれと紙に報告することもあるのか、熱心に祈りを捧げている。
それを邪魔するまいと、静かに立ち上がり、少し距離を開ける。
司祭を呼びに行っていたリザが戻ってくる気配も感じていたため、断りをとそう思ったが、そもそも相手は教会の関係者なのだ、信徒の祈りを邪魔することなどなく、視線を向けたオユキとトモエにただ静かにほほ笑んで口元で指を立てる。
ローブとしての形は変わらないが、施された刺繍が少し増え、豪華とそう感じる物になっているその女性が司祭なのだろう。
相手が名乗る前からアナが位階を言い当てたこともある、恐らくその刺繍が意味あるもので、位階を伝える物でもあるようだ。
「その、ごめんなさいね。」
「構いませんよ。必要な事なのでしょう。」
「まぁ、そうらしいけど。面倒じゃね、こういうの。」
オユキとトモエがそれぞれに応えると、アマリーアもただ苦笑いでそれに応える。
「今回ばかりは、必要でしたのよ。狩猟者ギルドで、ホセさんに優先権を、そう書面にされていましたから。」
「ああ、それが教会の理由になるのですか。それこそギルドでよいのでは、そう思いますが。」
「私たちがあちらに向かえば、どうしても耳目を引きますから。」
「私たちが尋ねても同様では。」
「そのための宿と、あの場所です。」
「商人ギルドはやはり別ですか。こういう物もありそうだ、そう思ってしまいましたが。」
オユキがそう言えば、アマリーアはくすくすと笑う。
「それぐらいの遊び心があればいいのですが、目を楽しませる庭より、商品を置く倉庫、そのような人間ばかりですもの。潤いが足りませんわ、心に。」
「遊び心は商品価値です。そうであれば、それを付加する商品を入れる場所こそ重要でしょう。」
「全く。そんな事だから、こうして面倒を引き寄せるというのに。」
「売り手も、買い手も。どちらもいなければ私達は立ち行きませんから。」
アマリーアはため息でカレンに応えると、再び少年たちに謝る。
「本当にごめんなさいね。ギルドはこういう物からあなた方を煩わせない、そのためにあるのだけれど。」
「いいさ、俺らよりできる人ができない、そういうなら本当に難しいんだろ。
こっちのやりたいことができなくなると困るけど。」
そう答えるシグルドの頭をアマリーアが撫でると、気恥ずかし気にシグルドが振り払う。
「それでは、後は教会で。邪魔も入りませんし、契約を変えるにも、神の前、その方が何かと都合が良いですから。」
そういって歩き出すアマリーアについて、教会の中へと入る。
外観はそれこそ教会などと言わず、聖堂と呼ぶ方がしっくりくる。
そして、町中の水路は何処からかと、そう思えば、この聖堂、その最も高い位置から、水がゆるやかに流れている。
滝のようと、そう感じさせないのは、高い位置から引く位置へと、そう水が落ちているというのに、緩やかな流れ、そう言い切れる速度であるからだ。
この聖堂の正確な位置を、オユキとトモエも把握できていないが、それでも蜘蛛の巣上にこの聖堂を中心に置いて伸びる水路を見れば、ここがこの町の水路、その起点と見て取れる。
「美しい建造物ですね。」
「全くです。以前も、もっと興味を持てばと、悔やまれますね。」
「では、これから見て回りましょうか。」
オユキとトモエはそう話しながら教会に入る。
外観の際たる特徴は、その水ではあるが、壁面も要所に貴金属や貴石が埋め込まれ、細部にも彫刻は施されている。
時間を後で貰って、周囲に並ぶ彫像や、その細工の説明も聞いてみたい、そういう思いに駆られたが、中は吹き抜けの高い天井。
その天井の数か所からまっすぐと、水が落ちてきており、透明な柱と見える物を作っている。
室内にも水が流れる、小さな道があり、そこには水生植物だろう、目を楽しませる手入れの行き届いたと一目でわかる植物が浮かんでいる。
礼拝所らしきその場所は、入口の門から、正面に置かれた立像迄、相応の幅を持つ絨毯が引かれ、左右に長椅子がきれいに並んでいる。
流石に壁画や絵画は飾られていないが、それでも磨き抜かれた、それが人の手か、流れる水による物かはわからないが、石造りの内装は柔らかな光を、石そのものが放ち、教会の中を明るく照らしている。
「素敵な場所ですね。」
「凄い。綺麗。」
トモエたちが、ただただその絢爛と呼ぶには質素だが、確かな美しさを持つそんな教会に見とれていると、ローブを来た幾人かの女性が近寄ってくる。
「よく御出でくださいました。本日は、どのようなご用件でしょうか。」
「私たちは、いつもの部屋を。こちらの方たちと。それと、この方たちは、それぞれ用があるとそう聞いています。」
アマリーアにそう話を向けられると、未だに周囲を熱心に見まわしているアナの方をオユキが軽くたたき、注意を引く。
「ほら、アナさん。目的地に着きましたよ。」
「あ、すみません。綺麗だったので、つい。」
「褒められて怒るものなど居りませんとも、さて、本日はどの様なご用件でしょうか、小さな狩猟者様。」
そう、ローブ姿の女性に話しかけられると、アナが片手に持っていた荷袋から、少々大きく、分厚い便箋を取り出す。
「えっと。初めまして、助祭様。始まりの町、最も古い教会でお世話になっているアナです。
本日は、ロザリア・マリア・カルディナーレからの手紙を、この町の本教会へと、届けに参りました。」
何か、そういう作法があるのだろう。
取り出した便箋を持つと、一度それに向けて印を切り、それを捧げるようにして自分の前で持ち、アナが彼女にしては珍しい、固い挨拶を行う。
「まあ、これはこれは。申し遅れました、私は、この教会で助祭の任を頂いております、リザ。
歓迎しますよ、持祭アナ。それと司教様からの手紙ですね、今司祭様を呼んでまいります。
少々お時間を頂きますので、お連れの方もどうぞ、くつろげる場所へご案内させていただきますね。」
「ありがとうございます。その。」
アナが、そういうと少し言いにくそうにする。
その様子にトモエが後を引き取る。
「リザ様。私どもはこの町へと昨日の夕方前に着いたばかり。祀る神が違うと、それはわかってはいるのですが、叶うなら旅路の無事を、神に感謝したく。」
「まぁ、何を遠慮することがありますか。確かに我らは、水と癒しの神を主として祀っていますが、神々全てへ敬意を払うものです。
もちろんですとも。あちら、その、中央ではなく恐縮ではありますが、風と旅の神、その立像もあります。
どうぞ皆様の旅の無事をご報告されてください。」
「ありがとうございます、助祭様。
それと、こちら些少ではございますが。」
「お心遣いありがとうございます。では、こちらはまず風と旅の神その御前に。
商人ギルドからの方は、先にご案内させていただいたほうが。」
「お客様を先に応接間で待つ商人はいませんわ。」
「かしこまりました。それでは私は司祭様を呼んでまいります。後の事はこのものに。頼みましたよ。」
そうしてリザと名乗った女性が、礼拝堂の脇へと歩いていく。
そして、オユキ達は、言われたままに、風と旅の神、その前へ案内される。
「その、アナさん。作法をお伺いしても。」
「あ、そっか。オユキちゃんたちは知らないよね。うん、任せて。」
そうして、創造神に対するものとまた違う動きで印を切り、膝を付き頭を下げ、旅の無事を神に感謝する。
以前であれば、ある程度安全の保障は、それこそ事故以外ではされていたが、今となっては、魔物に襲われるのが当然であり、危険しかない、そんなものになっている。
旅の出発に際しては、安全祈願などをしていなかったと、今更ながらにトモエは反省する。
それもこれまでの習慣、それがどうしても残り、こちらの風習に馴染み切れていない、その分かり易い証拠の一つだろう。
オユキとトモエにしてみれば、あっさりした物とはなるのだが、初めてというわけでもないにしても、ここまで大きく町から離れたのは初めての事だろう、少年たちはあれこれと紙に報告することもあるのか、熱心に祈りを捧げている。
それを邪魔するまいと、静かに立ち上がり、少し距離を開ける。
司祭を呼びに行っていたリザが戻ってくる気配も感じていたため、断りをとそう思ったが、そもそも相手は教会の関係者なのだ、信徒の祈りを邪魔することなどなく、視線を向けたオユキとトモエにただ静かにほほ笑んで口元で指を立てる。
ローブとしての形は変わらないが、施された刺繍が少し増え、豪華とそう感じる物になっているその女性が司祭なのだろう。
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