憧れの世界でもう一度

五味

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二章 新しくも懐かしい日々

魔物を狩るという事

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イマノルはそこで一度言葉を切り、いま説明した二匹であれば、お二人であれば問題なく対処できるでしょう、そう言い切る。
それに対して、二人も頷いて答える。
オユキは、歩きキノコに少々苦戦はしたが、その原因は手に持っているものが短剣だったから、それに尽きる。
今手にしている槍であれば、危なげなく対応できるだろう。

そして、イマノルは説明を続ける。
初心者に対する一つの壁、また初心者の多くをその牙にかける魔物。

「 グレイハウンドですが、まず遭遇するときは2体以上です。
 一対多での対応を強いられるため、慣れないうちは、遭遇しないように気を付けるのがいいでしょう。
 それでも遭遇した場合は、やはり丸兎と変わりません。攻撃の方法は、飛び掛かったうえでの牙による噛みつき、前足の詰めによるひっかきのどちらかです。
 牙に比べ、爪はそこまで警戒する必要はありません、革製の鎧で十分に防げます。
 ただ、守りがない場所は、相応に負傷しますが。
 牙に関しては、革製の鎧でも穴が空くことがあります。生身で噛みつかれれば、骨を砕かれますし、肉はまず残りません。」

言われてオユキは、昨日噛みつかれた足に目をやる。
幸い分厚い革製のブーツは穴が空くこともなく、足も無事なままだ。
ただ、対応が、短剣を投げつけ、口を離させるのが遅れれば、どうなっていたことだろうか。

「耐久力は、歩きキノコよりも低く、有効打さえ与えられれば、それこそショートソードがまともに振れる筋力があれば、二振りもすれば、討伐できます。
 やはり、問題は最低でも2体、多ければ10数体の群れを形成している、それにつきます。」

その言葉に、トモエも眉根を寄せる。

「森の外に出てくることはあまりないので、町の側であれば、そこまで気にすることもありません。
 たまに出てくるのははぐれですので、一匹のみです。
 何よりも森に近づきすぎない、それを心掛けるのが肝要です。」

そういうとイマノルは、これまでの少し重たい口調から、ガラッと変わり、軽いものへと切り替える。
頭を左右に緩く振りながら、続きを口にする。

「問題は、初心者よりも中級者なんですよね。」

その言葉に、トモエが首をかしげる。

「それを切り抜けたのであれば、油断はなくなりそうなものですが。」
「いえ、油断をする必要がなくなるんです。」

その言葉に、トモエはますます意味が分からないと、そう言いたげな表情を浮かべる。
一方でオユキは思い当たることがある。
元がゲーム、そのシステムはこの世界でも多分に生きている。
遊んでいた当時は、確認すら難しかったが、やはり魔物を繰り返し討伐すれば、明確な恩恵があったのだ。
他のゲームで言えば、レベルアップとそう呼ばれるような、それが。

「中級者、そう呼ばれる頃にはグレイハウンドに噛みつかれたところで、怪我一つしませんよ。
 そして、そういった事ができるような人物が、群れに対処して、無傷で切り抜ける。
 それを見てしまった初心者が、グレイハウンドを過小評価してしまう。」

そこまで口にして、イマノルはため息をつく。
その気持ちは二人にもわかる。中級者そう呼ばれるものが強い事、それとグレイハウンドが、初心者が、その力量や脅威には、なんら寄与するわけではないのだ。
彼にしてみれば、初心者の無謀を助長しているように見えるのか、それとも初心者の軽率さが際立って見えるのか。

「その、そのようなことが?」
「ええ、少しお見せしましょうか。」

そう、軽く口にしたイマノルが、並べられたショートソードを手に取り、その腹を反対の手にたたきつける。
鈍い音が響き、結果としてショートソードは砕け、イマノルは特に何を感じたわけでもない、平静な顔をしたまま、トモエに差し出す。
受け取ったトモエは、刀身を矯めつ眇めつしながら、数度指ではじく。
聞こえる音は堅く、特別もろいとそう感じるものではない。

「これは、すごいですね。痣なども?」
「はい。この程度であれば。」

そういって、袖をめくりさらしたそこには、痣どころか、赤くなる様子もない肌がある。

「勿論、成長に個人差はあります。より強い魔物を倒せば早くなる、そういった俗説もあります。
 ただ、きちんと訓練を行い、魔物を狩っていけば、いずれはこうなるのです。
 さて、こうして学ぶ機会をもとめられた方に、口うるさく言う必要ないかと思いますが、つまり魔物の相手とは、とにかく彼我の力量差、それを常に判断する事、劣っているのなら、勝っている相手を狙う、それに尽きるのですよ。」
「こうして、目の前で見ても信じられませんね。」

トモエは、過去の自分が同じ真似をすれば、木剣で腕を、生身を打ち据えればどうなるか、言うまでもなく理解している。それこそ頭部を狙えば、致命傷だ。
それに対し、目の前では木剣が砕け、なんら怪我を負っていない相手がいる。
オユキにしてみれば、ゲームの設定が残っているのだろう、そう納得できるものではあるが、そういった物に慣れていないトモエにしてみれば、奇妙でしかないだろう。

「少し、触れさせていただいても?」

トモエがそう声をかけると、イマノルはどうぞと、腕を差し出す。
それにトモエだけでなく、オユキも手を伸ばす。ゲームの時は人の感触と変わらない物だったが、今はどうなのだろうかと、興味がわいたからだ。
だが、触れた感触は、木が砕ける様な、そんな堅さを持ったものではない。
勿論鍛えた筋肉の硬さは感じられるが、それ以上のものでもない。
そうして、二人してイマノルの腕を触り、自分のものも触り、また、オユキとトモエでお互いの腕に触れる。

「確認の仕様がない、それもまた一つの問題なんですよね。
 だから、過信が生まれ、そこで悲劇が起こると、そうとも言えますが。
 曰く、魔物の討伐、それを神々が評した結果加護が授けられる、己を正しく顧みず、神々への感謝を忘れ、驕れる物は、ふさわしい末路が待つ、と。」

そういうと、二人が手を離した間に彼は袖を戻し、そう口にして、またため息をつく。

「こうして、多くの人が町の側で、同じ獲物を狩り続ければ、何か目安のようなものもできそうですが。」

トモエが、確認を終え、特に何があるともわからない、そう結論を付けたうえで、そう口にする。

「先ほども言いましたが、個人差が大きいようですので。
 過去には、神学者、研究者、各ギルドの長、そういった方々も長年の課題として、神の加護を量る方法はないのかと、研究されたそうですが。」
「神のみぞ知る、そういう事でしょうね。
 我々の行いを見て、それを評価してくださる、それ以上を望むのはそれこそと、そういう事なのでしょう。」
「はい。そのように結論付けられ、今は一部のものだけが、行っているようですね。」

そもそも、グレイハウンド、それに対応できるかどうか、そんなものはいきなり群れに飛び込まず、森の周辺にいる少ないものを狙う、それこそはぐれだけを相手にすれば、量れるのだ。
逃げられないほど、対応もできないほどに力が離れているというのであれば、それこそ門の周り、あの門番が逸れも職務だと口にしたように、助けが得られる場所で、助けてくれる人と、狩りを続けよ、ゲームと変わらず、そういう事なのだろう。
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