42 / 54
第三章 スキルの力と金策と裏切り
十四
しおりを挟むその後、各種族の長達は、外に待たせていたらしい皆を連れてきていた。
その人数は合わせるとおおよそ六百人ほど。
鼠人族が圧倒的に多いのだが、ここまで人がそろうと圧巻だ。
一体、どうやって潜んでいたんだろう。
想像もつかない。
ぞろぞろとくる人々に、僕はただただ驚くばかりだった。
「こ、こんなにたくさん?」
「え、ええ……。これは私も予想外でした。鼠人族の人たちだけで三百人ですからね……」
その六百人すべてが、僕の前を通り過ぎるときに頭を下げていく。
それにこたえるだけでも一苦労だ。
中に入ってくる人達は、そのまま狐人族の集落へと向かっていった。
「おい! こんなにいるんじゃ獲物が全然たりねぇぞ! 今から狩りにいくか!」
「ほら、あんたたち。あっちに木の実がたくさんなってるから取りに行くよ、ついておいで」
そんな声がちらほら聞こえてくる。
元々交流があったからだろう。既に、皆で協力して動き始めているようだ。
がやがやと騒がしいまま宴は始まる。
そんな中、各種族の長達は僕とレイカの周りに集まって色々と話し合っていた。
「うむ。今は狐人族はこのあたりに住んでいるだな」
「最初はわしらしかいなかったからのぉ。まあ、まだ家も数件しかたっとらん。ここが入り口から近すぎもなく遠すぎもなく。立地としては一等地だからの。移動するのはやぶさかではない」
「ふーん。この地図ってこれで全部?」
「ああ。わしらではあまり遠くまで行くことができなくての。このあたりまでしか地図が出来上がっておらんのじゃ」
皆が眺めているのは、この世界の地図だ。
それでも、十数キロの大体の地図ができているから困るものではない。
それよりも、それでも端っこにつかないこの世界はどうなっているのだろうと驚くばかりだ。
「ならば、今の段階でしっかりと区画整理を行っていくのがよいかの」
「そうですね。一応、今狐人族の方々がいる場所はエンド様方の居住区となされたほうがいいかもしれません」
「僕らは穴を掘って住むから山のほうがいいんだな」
「僕たちもだよ。山がいい」
それぞれ希望を出し合いながら、住む場所を決めているようだ。
一気に村というか町のような規模になってしまったが、いきなり同じ場所に違う種族が住むのも難しいんだろう。
僕は特に口出しをせず成り行きを任せていた。
一通り、どのような手順で開発を進めていくのか決まったようだ。
家は、材料だけがあれば熊人族と鼠人族が協力して作ってくれるそうだ。
食べ物も豊富にあるし、それらもそれぞれの得意分野を駆使して皆で共有することに決まっていた。
「これだけ大所帯だと、農園や酪農もしなければならないかもしれませんね。日常的に使う道具などを作ってくれる人もいるといいかもしれません」
「なんだか、急に大変なことになってきたね」
「しかし、それはきっと彼らがうまくやってくれますよ。もともとは、一つの種族をおさめていた長なんですから」
今だなにやら話し合っている彼らの姿を見ていると、たしかに頼りがいがある。
僕も、自分にできることをすればいいんだよな。
そんなことを思っていると、狐人族の村長さんが渋い顔をしながら僕の前にやってきた。
「エンド様。少しよろしいですかな?」
「うん、もちろん。何かあった?」
「他の種族の者たちが言ってたのじゃがな。ここにいる以外の種族にも実は声をかけていたんじゃが……」
「うん、ここにいるのが獣人達の全部じゃないもんね」
「うむ……実はここに来るのを断られたらしいのじゃが、少し気になることを言っていたようじゃ」
「気になること?」
やや言いづらそうにしている狐人族の長は、重い雰囲気のまま言葉を絞り出した。
「彼らはエンド様に反感を抱いているらしい」
「反感ですか?」
その言葉に反応したのはレイカだった。
その目は大きく見開かれ、少し怖い。
「なんでも、人間に仕えるなど獣人の恥と。誇りはないのかと罵られたそうじゃ」
「誇りなど。エンド様は彼らの誇りを傷つけるような真似をしておりません! 心外です!」
レイカが怒りをあらわにしているのをよそに、村長さんは言葉を続ける。
「できるだけ獣人のことはこちらで片づけましょう。ですが、お伝えすべきことかと思い……」
「うん。ありがとう。また何かあったら教えてくれると嬉しいな」
「もちろんじゃ」
村長さんはそういうと、そのまま会合へと戻っていった。
それにしても、どうしたものだろう。
たしかに、憎むべき人間に従うというのはきっとあまりいい気分がしないのだろう。もちろん、ここにいる彼らの中にも同じように考えるものがいるかもしれない。
もしそうなら少しでも彼らが安心して過ごせるように僕もがんばらないとなぁ。
「エンド様の慈悲を理解しない輩など、滅びてしまえばいいのです」
「いや、怖いよ、レイカ」
最近、レイカは僕のことになると怒りっぽいようだ。
疲れているのかな。
そんなことを思いつつ、僕やレイカも皆の輪に加わった。
笑顔でご飯を食べて楽しい時間を過ごしていると、獣人も人間も関係ないのかな、とそんなことを思った。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる