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第十章 俺様、暗黒破壊神と対峙する
5、仲間になれ
しおりを挟む「リージェの奴……いったいどうしちまったんだ……?」
「リージェ様……!」
闇色の檻に閉じ込められた面々は、目の前で起きる異変をただ見ていることしかできなかった。
暗黒破壊神を倒すなんて次元の話ではない。
その目的のためにこれまで戦い続けてきたというのに、何もできないことが歯がゆかった。
『ふふ、はは、ふはははははっ!!!!』
暗黒破壊神と最初に邂逅した時は、ただ見つからないよう息をひそめて震えていることしかできなかった。
二度目に邂逅した時は、分身体だったとはいえ撃退することができた。
その時よりも強くなった。たとえ本体であっても倒すことができるだろう。
そう思っていたのは驕りでしかなかったのだとルシアは唇を噛む。
「リージェ! おい、しっかりしろ! 目を覚ませ!」
「ルシアちゃんも、呼びかけるんだ!」
アルベルトを筆頭に口々に呼びかけるが、まるで聞こえていないかのようだ。
暗黒破壊神が作り出した闇の手に囚われたリージェは、明らかに様子がおかしくなった。
ルシアの名を叫び、暗黒破壊神への恨みを叫びながらもがくように明後日の方向へと攻撃を飛ばす。
やがてその白銀の鱗は闇に染まるように変色していき――今に至る。
理性を完全に失ってしまった。そうとしか思えないほどに、意味のわからないことを叫び、見境なく攻撃を繰り出し続けているのだ。
「! 伏せろ!」
アルベルトが短く叫び、ルシアを地面にねじ伏せる。
そのすぐ真上を黒い波動が貫いていった。
破壊された檻は、抜け出す間もなくまたぐねぐねと蠢き元に戻る。
「クソッ、どうしたら……」
「! 1号様?!」
現状の打開策を必死に探るアルベルトは、ルシアの声にその視線の先を追う。
いつの間にか1号がリージェの頭によじ登っていた。
「なっ?! 何やってんだあいつ……!」
確かに、手のひらほどしかないあの体躯であればこんな檻など簡単にすり抜けられる。
だが、いったいどうやって暴れ狂うドラゴンの頭の上に移動したというのか。
「おーい、落ち着け、リージェ」
『グゥゥゥゥゥッ!!』
1号がぽこぽことリージェの頭を叩き呼びかける。
しかし、その声すら聞こえていないようで唸り声を上げるだけだ。
「ちぇ、ダメか」
「何だ? この珍妙な魔物は……何故私の支配下に入らない?」
「俺か? 俺は魔物じゃないぜ?」
目立つ行動をしていれば当然、アミールもその存在に気付く。
小さな闇の手で1号をつまみ上げると、アミールは眼前に運びまじまじと1号を見つめた。
アミールの言葉から、リージェは暗黒破壊神に支配されてしまったと一同は判断する。
では、その支配からリージェを解放するにはどうしたらよいのだろうか。
さらなる情報を求め、アミールと1号の会話に一同は耳を傾ける。
「俺は群馬県産食用きのこ! 煮てよし、焼いてよし! 俺的にはバターソテーがおすすめだ!」
「食料が何故喋り動く?」
「滑った?! くそう、俺の鉄板ネタが通じないなんて!」
かみ合っているようで微妙にずれた会話を繰り広げる1号とアミール。
お互いに会話しているようで、1号はアミールの欲しい答えは何一つ答えていない。
本当に何をやっているんだ、と呆れ半分に見守る一同。
「それよりさ、あんた、俺達と一緒に偽女神を倒したいんだろう?」
「貴様たちと? 笑わせるな。私が仲間にしたいのはその聖竜もどきだけだ。まだ力が足りぬようだから、私がこうして成長を促している」
「うーん、わかんねぇなぁ。だってあんた、自分の竜がいるじゃねえか。何でリージェにこだわる?」
「ほう? 面白い。何故私に竜がいると」
「そりゃ、俺がお前と同じ、異界の勇者だからだよ」
1号の言葉に、突如アミールは声を上げて笑う。
途端に、リージェと1号を捕まえていた影が歪む。
形を変え、巨大な竜の姿となる。
「お前、アミールだっけ? 2代前の勇者なんだろ? だけど当時の女神の玩具である暗黒破壊神を倒してしまって、暗黒破壊神になった。当時の聖竜と一緒に」
「うむ、そうだ。我らはその時一つになった。私は暗黒破壊神であると同時に魔物を統べる暗黒竜でもある。その頃の文献など奴らが消し去ったというに、よく知っているな」
「まぁ、俺は特別だからな」
ふふん、と胸を張る1号。
アミールの興味が1号に移ったからか、リージェの攻撃が止んだ。
しかし、放心したように動かない。体表は黒いままだ。
「共闘を望むならさ、リージェをそっちに染めるんじゃなくて、お前らがこっちに合わせりゃいい」
「何だと?」
「たぶんだけどさ、リージェを必要としてるっていうのは、お前らが聖竜か勇者、もしくはその両方の力を失ったからだろ? このままリージェを支配するなら、今代勇者の俺が黙っちゃいねえ。だが、リージェを解放し、そちらが俺達の仲間になるっていうなら一緒にいられるぜ? 勇者に聖竜、聖女、雑魚を引き受ける人類最強の冒険者もついてくる。な? 偽女神にだって勝てそうな気がしてこねぇか?」
1号の提案に、一同は「何を言い出すんだ」と焦る。
よりにもよって、暗黒破壊神をパーティーに加えるなど。
そしてその提案は、アミールの逆鱗に触れた。
応援ありがとうございます!
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更新ありがとうございます。
アミールの逆鱗に触れてどうなるのか見ものですね。
いつもありがとうございますヾ(=゚ω゚=)ノシ
暗黒破壊神ですら1号のペースに振り回されてますね。
はてさて、1号は慌てるのか、それとも「計画どーり!」としたり顔するのか……(´・ω・`)?
いよいよ因縁の相手、暗黒破壊神と再会!真の黒幕たちと戦うまえにまずは当初の討伐目標だったこいつと決着をつけなくてはなりません。さあ、気張れよリージェ!
いつもありがとうございますヾ(=゚ω゚=)ノシ
とうとうここまで来ましたね!
偽物を倒して本当の暗黒破壊神になるんだと意気込んでおりましたが、はてさて……?
遂に他のメンバーにも真実を伝えましたね。とんでもなく強大な真の敵の存在を知らされた彼らはどう決断するのか……願わくば出来るだけたくさんの人たちが残ってくれることを願うのです。
いつもありがとうございますヾ(=゚ω゚=)ノシ
レガメのメンバーには来て欲しいところですね(*´▽`*)