【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第五章 大陸戦争編

第248話 古代浮遊遺跡編 名剣強奪

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ネネル軍副将、ルガクト率いる有翼人兵たちが、



遺跡の平原に降り立った。



背中からアルトゥール軍副将ルゼル、



ベミー軍副将マーナが指揮する地上軍がすぐさま展開、



陣形を整える。



「来たぞ!」



前方から敵地上軍、



そして空からハイガー旅団の有翼人兵が見えた。



その後ろには竜翼人兵も見える。



「まず俺たちが弓で削ります!」



ルゼルたちが隊列を整える。



「任せたわ!」



獣人兵たちが一列に並ぶ。



その後ろから矢が乱れ飛んだ。



アルトゥール軍の半数は連弩を装備しているので、



従来の軍とは矢の総量と装填速度が桁違いだ。



空が矢で黒く覆われ、敵軍に突き刺さる。



十本の矢が入る矢倉を取り換え、



持ち手のレバーを引けば1秒で次の矢が発射できる。



一人の弓兵には矢倉6本が配備されていて、



弓兵は「剣を抜くのは矢がゼロになってから」



をモットーにしている。



他国の一般的な弓兵は、



矢が残っていても敵兵が近づけば剣を抜く。



しかしキトゥルセン軍の弓兵は、



敵が近づいてきたら距離を取り、



可能な限り連弩で対応するよう訓練されている。



当時軍部内の老将などから、



この戦術は「卑怯では」とか「誇りはないのか」



など批判が出ていたが、



自分たちよりも強大な敵に勝つためには、



兵士一人一人の生存率を上げる事が必須と、



王子自らが説いて回り、ようやく浸透したものだ。



「左翼、矢が尽きるぞ!」



「了解! 行くよ、みんな!!」



マーナを先頭に、獣人兵が突撃を開始する。









空ではネネル軍副将ルガクト率いる有翼人部隊が、



ハイガー旅団に突っ込んだ。



「ここでハイガー旅団を潰す!」



抜刀と同時にルガクトが吠える。



「一人も逃すな!」



「我らの恐ろしさを思い知らせよ!」



各部隊長たちも兵士を鼓舞する。



「うおおおーっ!!!」



至る所で剣と剣のぶつかる金属音が響く。



空の戦力では勝っている。



敵勢は大陸中で戦ってきた歴戦の猛者たちだ。



好んで死地に向かうような粗暴な奴が多い。



一人一人の力量では敵わない。



しかしウルエストの戦士たちも実戦で鍛えてきた。



奇襲の優位性が加わり、



戦いはほとんど五分と見て取れた。



両軍入り乱れる三次元の空中戦。



中でもルガクトは、



人一倍のスピードで乱戦の中を突き進む。



ルガクトが飛んだ後は、



敵兵が次々と落ちてゆく。



「ぐっ、こいつら強いぞ!!」



「ウルエストを舐めるな!」



「出たぞ、斧手だ!」



「団長!!」



声が背中に流れてゆく。



ふいに殺気を感じ、本能的に軌道を変えた。



その瞬間、頭上から影が降ってきた。



「よう久しぶりだな。まだ生きてたのか」



その影はハイガーだった。



躊躇なく一撃で仕留める気満々の動きだった。



気が付かなければ首をいかれていただろう。



ルガクトの額に冷や汗が流れた。



「お前との悪縁もここまでだ」



「そりゃこっちのセリフだ」



ハイガーはニタリと歯を見せる。



動いたのは両者同時だった。



ハイガーの剣とルガクトの斧が激しく衝突する。



凄まじい速さの剣戟が続き、



二人は錐もみ状態で落ちてゆく。



















「浮かない顔をしているな、ネネル」



「……あなたは、どうなんですか」



ネネルとカフカスは城の上空にいた。



周りには一人の兵士も飛んでいない。



これから始まる魔人同士の戦いに、



巻き込まれては大変だと、誰も近づかない。



カフカス越しに自軍の戦いが見える。



「……あの日々は何だったのですか?



私には、嘘をついていたのですか?」



声が震える。



目の前の男……カフカスさんは、



私を裏切ったわけではない。



何があったのかは知らないが、



多分途中で思想が変わってしまったのだろう。



もう子供ではない。



そんなことは分かっている。



だがこうして顔を合わせると、



どうしても感情が先走る。



肉親とも思える間柄だった人と、



戦わないといけないなんて。



「運命が変わる日は、



いつだって急に来るものだ。



己の思惑通りに事が運ぶと思っているのは、



まだまだ小娘の証拠じゃ、ネネル。



予期せぬ出来事を楽しむことこそ、



人生の醍醐味よ」



カフカスはゆらりと両手を前に出した。



老体ながら隙の無い構え。



理解している。



ただ私の感情が現実に追い付いていないだけと。



私には守らなければならない数千の部下がいる。



国民がいる。



オスカーがいる。



簡単だ。



現実に対応するためには心を殺せばいい。



静寂。



小鳥が二人の間を飛んで行く。



バチリと電気が爆ぜた。



瞬間、ネネルがその場から消えた。



同時に小鳥がつぶれる。



「ふむ、速いのう。年寄りには追い切れん」



カフカスの〝重力圧縮〟は不発に終わった。



自身を雷で包んで移動するネネルは、



常人には感知できない速さでカフカスの裏を取った。



手には雷剣。



一気に距離を詰め、背後から一突き。



雷剣は、カフカスの背中を貫いた。



「ほっほっほ。なんて奴じゃ。反応できん。



じゃが、わしもやるときはやるでな。



前の時と同じと思うなよ」



カフカスの身体には黒い穴が開いていた。



「なっ……!」



重力で空間を曲げたのだ。



雷剣は黒い穴の中に入っている。



「さて、覚悟はいいか、ネネル」













「シボ・アッシュハフ……



この戦争を始めた奴か」



シボ達の前に立ち塞がったのは、



敵の大将、ジュールダン将軍だった。



「責任は取るんだろうな?」



高圧的な笑みで見下してくる。



「……死んで償えと?」



「そのとおりだ。案外頭がいいじゃないか」



愉快そうに剣を抜く。



だがそこで、お互い目を見張る。



「……名剣ブロッキス」



「……名剣レイシス」



「これは面白そうだ」



「私がソレをもらうよ」



シボは舌なめずりした。



「見た目通り、強欲だな」



ジュールダンは赤い髪を揺らしながら、



斬りかかってきた。



周りの兵達も衝突する。



しばらく斬り合いを続けたが、



シボの剣は当たらない。



とんでもなく力量があるわけではない。



もっと剣術に長けた敵はいた。



なによ、この感覚……。



「どうした? 腑に落ちない顔をしているな。



ふふふ、この剣には霊石が埋め込まれている。



なんの効力があるか知りたいか?」



そういうことか、とシボは納得した。



「眉間に指を近づけるとぞわっとするだろう?



あの感覚が自身を攻撃しようとしてくる方向に現れるんだ。



お前が右上から剣を振り下ろすなら、



そのほんの少し前に私の左側、



特に頭部や首、肩なんかがぞわっとして教えてくれる」



ジュールダンは優越感に満ちた顔で語る。



「ペラペラお喋りしちゃって。



自ら弱点をさらけ出して、



とっても頭がいいことね」



「ははは、違うな。



絶対にお前なんかに負けない自信があるからさ。



何ともかわいそうに見えてね。



ハンデを与えてやったのさ」



「そう」



シボは笑顔を見せ、猛攻を仕掛けた。



「話を聞いていなかったのか?



お前の攻撃は予測できる。



私は隙を突けばいいだけだ、こんなふうに」



ジュールダンの剣先が鎧を砕き、



シボの肩にめり込んだ。



シボは苦痛に顔を歪めたが、



ジュールダンの鎧の首を掴んだ。



「じゃあ教えてよ。



こういう場合はどう対処するの?」



シボは鼻頭に渾身の頭突きを当てた。



「ぐふぅっ!」



その隙にジュールダンの手から、



名剣レイシスを奪い取った。



「あっ」



「まいどあり」



「待っ……」



シボは二本の名剣でジュールダンを斬り伏せた。



「剣に頼り過ぎよ。



安心して。コレは大切に使ってあげる」



鞘に納めた音が鳴ると同時に、



ジュールダンは床に崩れ落ちた。



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