【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第21話 ダルク民国攻略編  【腐王】討伐

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「下がっていろ。いくぞ」

俺は魔剣フラレウムを【腐樹の森】へ向け発動した。

初めから全力。強火だ。

木々を焦がしながら炎は一気に森を進んでいく。

方角は【腐王】のいる北の山。

発動させてから気が付いた。空に向けて炎を出した時より勢いが悪い。

意外にも森の木々が炎の勢いを邪魔しているらしい。

確かに考えてみれば相当な質量だ。

これじゃ多分、【腐王】まで一回ではたどり着けない感じだ。

手前の木々は【腐樹】も針葉樹も炭化してきたが、

【千里眼】で確認すると、炎の先端付近では表面が燃えているだけだった。

疲れてきたので炎を止めた。

そして燃えている森の火を消す。

フラレウムは炎を出せるだけじゃなく、炎を消すことが出来た。

これは訓練中に気が付いたことだった。

消したのは見える範囲だけで、奥の方はまだしばらく燃やしておく。

これで、焼け焦げた幅十メートルの道が完成した。

両側の炎は残したままなので、魔物に対しての壁になる。

【腐王】までの炎の道。

キトゥルセン王国軍270名、魔獣カカラル、有翼魔人ネネルと共に、

俺は【腐樹の森】へと足を踏み入れた。


身体を回復させるため、俺は馬に乗って進んだ。

カカラルは上空から両側の森へ定期的に火を噴いてもらっている。

前衛はネネルに頼んだ。その後ろには弓兵が続く。

進み始めて一時間ほど経った頃から、徐々に魔物の襲撃が多くなった。

「魔物は火を嫌うはずなのに。流石にこれは奇妙ですな」

対魔物スペシャリストのマーハントも首を捻る。

「【腐王】が全ての魔物を操れるんだ……」

確証はないが自信があった。

「そんなことが出来るものでしょうか?」

「だから【腐王】と呼ばれているんじゃないのか?」

「ふむ。古い文献などにもそのような事は書かれていませんでしたが、

あながちそうかもしれませんな。ここ数日の魔物の動きは、

いつもと異なりますので」

「もしそうなら、やはりここで倒しておくべきだ。

全ての魔物を率いてノーストリリアに来られたら、半日と持たず落とされる」

「同感ですな。数日前から嫌な予感がプンプンします。

この遠征で終わりにしましょう。

我々はオスカー様の剣であり盾。覚悟は出来ております故、

思いのまま好きにお使い下さい」

マーハント、なんていい奴。給料上げておこう。



側面から来るチグイの群れにカカラルが火を吐き、

正面から向かってきた巨大ムカデのようなオオサメにネネルが電撃を食らわせる。

木々の間をゆらゆら漂う細長いトンボのようなハネヌイには矢が刺さる。

今の所、足は止めていない。順調だ。

右から迫る大きなアシダカグモのようなイトアシをフラレウムで焼き、

左に現れた羽の生えたトカゲっぽいキバウも焼く。

ちょくちょく炎を出すので、中々体力が回復しない。

ネネルも同じで、頻繁に電撃を出しているからずいぶんと疲れているに違いない。

「ネネル! 無理はするな。 疲れたら一旦退け」

「わかってるわ! けどまだ大丈夫……」

うーん、心配だ。


【腐樹の森】に入り半日ほど経った頃、

【千里眼】にて前方からウデナガに乗ったダルク軍を発見した。

数はこちらと同じくらい。

まともにぶつかったら損害はでかい。

俺は前に出てフラレウムの中火で攻撃した。

向こうとしては完全に虚を突かれた形だろう。

敵の前線は崩壊し、こちらからは見えない位置で隊列を組み直している。

俺には丸見えだが。

そして敵は散開した。右、前方、左から同時に飛び出し、

そのままこちらの隊列に突っ込んできた。

すぐに隊列を変えて対処していたが、これはまずい。

あちらこちらで剣の音が鳴り、怒号と血飛沫が舞う。

ネネルは電撃量を増やし人一倍敵を撃破しているが、見るからにもうきつそうだ。

マーハントは小樽のような身体ながらも慣れた剣捌きで、

冷静に魔物と敵兵を狩ってゆく。

俺も近くの敵を味方に当てないように、火炎放射で攻撃した。

数分の間、皆が自分の事で精いっぱいになった。

その一瞬の隙に、上空で炎を撒いていたカカラルが網にかかった。

ダルク軍の別動隊が木の上から網を手繰り寄せる。

「カカラル!」

俺たちを近づかせないように敵は猛攻を仕掛けてきた。

これは結構ヤバいぞ。防ぐだけで精一杯だ。

魔物の前足やダルク兵の槍が目の前を覆う。

ああ、くそ! どきやがれ!

あっという間にカカラルは捕縛され、敵兵たちに担がれて森の奥へと消えた。

不安そうな鳴き声が段々遠ざかっていく。

斬っても燃やしても射貫いても、敵は攻撃の手を休めない。

俺は呼吸が変になるくらいフラレウムを使った。

その後、しばらくしてダルク軍は一斉に退いた。

こちらの死者は50名を超えた。
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