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十五話

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「……っ、ツバサ!」

 勢いよく、起き上がり手を伸ばした。
 けど、そこにはツバサの姿など跡形もなく消え去っていた。

「……夢…」

では、ないだろう。あんなリアルな夢、誰が見るのだろう。
 しかも、ここはよく見ると記憶の中で見た孤児院の中だ。
 僕は記憶を思い出して戻ってきてしまったのか。

 僕は、とりあえず外に出てみることにした。
部屋の中から出ると、二つの別れ道、廊下があった。
 やはり、少しボロい。廊下を渡るたびにギシギシという不安を煽るような音がした。

「……あら、テン!?大丈夫なの!!?」

 廊下でぼーとして突っ立っていると、横から驚きの声を上げたおばあさんがいた。

 誰だっただろうか、いい人だったのは覚えている。

「大丈夫……とはどういうことですか?」

「へ?け、敬語なのね??じゃなくて、その……ツバサも祐希先生もいなくなって……一日中引きこもって悲しんでたみたいだったから……」

 またもや驚きの声をあげながら、少し対応に困っていた。

 僕は、知り合いとかの人は敬語で話したほうがいいと思ったが、このおばあさんはどうやら違ったようだ。

 しかも、偽物のセカイや記憶のセカイにいる時間は長いように感じたのに、たった一日しか経っていないようだった。

 偽物のセカイにいたせいか、ここの記憶が少しだけ薄れている。

「おばあさん、僕はどうしたら正解なんですか?」

 なぜかその言葉が不思議と口からこぼれ落ちた。

「正解……ね、私はもうおばあさんだからあまり言えないけれど。この世に正解なんてないのよ?」

「ないんですか?」

「えぇ、正解とは自分自身がそれを正解だと思ったモノのほうが近いわね。ただ、他人に言われたからって行動するのはやめなさい。いつか、その選択に後悔するし、それが正解とは限らないわ………って、ところかしらね」

「そう、ですか………わかりました。ありがとうございました」

 そうお辞儀して、おばあさんの元から去っていった。
 おばあさんは心配そうにしながらも、?の表情を浮かべていた。

 僕は、僕の結末を

 たった小さな子供一人で、外に出て、高いビルの屋上へと人に見つからないように行った。
 いざ立ってみると、少しだけ勇気がいる。

 けど、そんな勇気はいらなかった。

「神様、僕はツバサの罪を一緒に償います」

 そうして、僕は羽ばたいた。



 君が望むのならば、僕はその光になろう。
  君が孤独を嫌うのならば、僕は隣にいよう。
   君が愛を忘れたのならば、僕はそれをあげよう。

 全て、全て、僕が持つ全てをあげよう。
何もかもから守ってあげよう。

 だから、僕は君のためにヴィラン悪役になってあげる。

 ツバサに祝福を。
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