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第一章
一話 婚約破棄は突然に
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「今、なんと……?」
人気のない場所に婚約者、カシュに呼び出され、その発言に耳を疑った。きっと何かの間違いだと早くなる鼓動の中でそう思った。
けど、現実は無慈悲だ。
「聞こえなかったのか?お前とはもう婚約者じゃない、赤の他人だ」
「なぜ……なぜなのですか?私がなんの行いをしたと?」
震えた、そのはっきりとした口調に、聞き返す私にうんざりするような眼差しも、何もかもに絶望した。カシュは皇帝の血をひく王子で、正当な判断をしてくれると思った。
けれどその様子にカシュは、はっと鼻で笑ったあと、面白いというように話を進めた。
「愛想もない、色気もない、知識だけ持ってる女なんていらないだろ?しかも、お前は本当に公爵家の娘なのか?本当に親二人に全く似てないよな、気味が悪い。消えてくれ」
「私は……」
「安心しろ、俺はユリと幸せになる。両親にだって話はついているからな」
ユリ、その名前に反応する。私の妹で、両親が溺愛している。
見た目は公爵家に見合うほどの可愛らしい外見で、すぐに社交界の注目の的になった。大きなくりっとした葉色の目に長くしなやかな金髪。
私は、親とは全く違う白色の髪に水色の瞳。
どちらかが浮気してできた子だと言われていた。なにも言葉が出ない中、目に写ったのはその妹だった。
「哀れなものね、お姉様。婚約者に好かれようと頑張ったのでしょう?けどね、よく考えてみなさい、私とお姉様劣っているのはどちらだと思う?お姉様なんてい~らない」
くすくすと笑う、人を見下している目。
その言葉がいつになく心に刺さった。勉学だって完璧した、マナーだって、なにもかも。
これが現実だとまた認識したあと、はーっと息を吐き、自分の自我を立ち直す。
「……それで?国外追放でも致します?」
「したいけど…そうね~、実害がないもの。それに、お姉様もまだ使えそうだし」
「使えそう……?」
その意味深な言葉に何を言っているんだとツッコミたくなった。
けど、二人のにやにやとした明らかに何かありそうな顔に冷や汗がはしった。
「お前には俺の弟と婚約してもらう、ハデス・ヒュプノス、きみの悪い怪物だ」
一瞬、思考が停止した。ハデス…?その名前は何よりも誰よりも見覚えがある。
ーーー別名、死神王子。
「いらない者同士、仲良くできると思うの。私ってなんて優しいのかしら」
「こんな駄目な姉がいてユリのほうが本当に可哀想だ。もうあの死神と婚約の手続きはすんでいる、ユリに感謝しろよ?」
そこから先のことはあまり覚えていない。トントン拍子で再婚約が決まり、妹のユリの方はあいつと幸せに暮らすらしい。
両親は何も言わなかった、けど、私は……
「言いたいこと沢山あるわよ!!」
「お嬢様、落ち着きましょ?ね?」
大声で不満を叫んでいる私に対して、私の使い魔エレボスは人型に変化して、私の扱いに戸惑っているようだった。
美少年すぎてて直視するのが恐ろしい。
「はぁーっ、もうね?勝手に婚約者決められるのが私は嫌なの」
深いため息をつき、また一つ愚痴をこぼす。確かに婚約破棄されたのは驚いたしショックだったが、今となってはどうでもいい。
それよりも無理矢理婚約させたことの方が腹立たしかった。
「……死神王子ですか。噂では、引きこもりで人を殺しているだとか、裏で変な薬を作っているだとか、それに外見も良くない方だと聞いていますよ」
「………まぁ、なんとかなるわ」
「なりません」
にこっと笑顔で圧をかましてくる。その笑みから逃れるように立ち上がって脳裏を掠ったアイデアに決心をした。
「それに、見てみないとわからないじゃない?明日見に行くわ」
「その行動力の早さはなんなんですか?」
「おやすみ!」
呆れたエレボスから逃げ、すぐさまベッドに潜り込む。温かい掛け布団に潜り込み、そっと目を閉じれば、意識は遠のいていく。
*エレボス視点*
「ったく……このお方を卑下し婚約破棄なんて……あの元婚約者は相当なバカみたいですね」
すっかり気持ち良さそうに寝ている自分の主を見て、はぁ…と溜息をつく。
主はきっと物凄いショックを受けたはずだ、婚約者に見合う女になれと趣味も何もかもとられて、せっかく努力したのに裏切られるような結果となった。
そして、一番怖い事は…………それを想像するとぞっとし同情までしたくなる。その先を考えるのはよそうと必死に脳内からかき消した。
「私なら、絶対やりたくないですよ……敵にしちゃいけない、能ある鷹は爪を隠すんですから………」
人気のない場所に婚約者、カシュに呼び出され、その発言に耳を疑った。きっと何かの間違いだと早くなる鼓動の中でそう思った。
けど、現実は無慈悲だ。
「聞こえなかったのか?お前とはもう婚約者じゃない、赤の他人だ」
「なぜ……なぜなのですか?私がなんの行いをしたと?」
震えた、そのはっきりとした口調に、聞き返す私にうんざりするような眼差しも、何もかもに絶望した。カシュは皇帝の血をひく王子で、正当な判断をしてくれると思った。
けれどその様子にカシュは、はっと鼻で笑ったあと、面白いというように話を進めた。
「愛想もない、色気もない、知識だけ持ってる女なんていらないだろ?しかも、お前は本当に公爵家の娘なのか?本当に親二人に全く似てないよな、気味が悪い。消えてくれ」
「私は……」
「安心しろ、俺はユリと幸せになる。両親にだって話はついているからな」
ユリ、その名前に反応する。私の妹で、両親が溺愛している。
見た目は公爵家に見合うほどの可愛らしい外見で、すぐに社交界の注目の的になった。大きなくりっとした葉色の目に長くしなやかな金髪。
私は、親とは全く違う白色の髪に水色の瞳。
どちらかが浮気してできた子だと言われていた。なにも言葉が出ない中、目に写ったのはその妹だった。
「哀れなものね、お姉様。婚約者に好かれようと頑張ったのでしょう?けどね、よく考えてみなさい、私とお姉様劣っているのはどちらだと思う?お姉様なんてい~らない」
くすくすと笑う、人を見下している目。
その言葉がいつになく心に刺さった。勉学だって完璧した、マナーだって、なにもかも。
これが現実だとまた認識したあと、はーっと息を吐き、自分の自我を立ち直す。
「……それで?国外追放でも致します?」
「したいけど…そうね~、実害がないもの。それに、お姉様もまだ使えそうだし」
「使えそう……?」
その意味深な言葉に何を言っているんだとツッコミたくなった。
けど、二人のにやにやとした明らかに何かありそうな顔に冷や汗がはしった。
「お前には俺の弟と婚約してもらう、ハデス・ヒュプノス、きみの悪い怪物だ」
一瞬、思考が停止した。ハデス…?その名前は何よりも誰よりも見覚えがある。
ーーー別名、死神王子。
「いらない者同士、仲良くできると思うの。私ってなんて優しいのかしら」
「こんな駄目な姉がいてユリのほうが本当に可哀想だ。もうあの死神と婚約の手続きはすんでいる、ユリに感謝しろよ?」
そこから先のことはあまり覚えていない。トントン拍子で再婚約が決まり、妹のユリの方はあいつと幸せに暮らすらしい。
両親は何も言わなかった、けど、私は……
「言いたいこと沢山あるわよ!!」
「お嬢様、落ち着きましょ?ね?」
大声で不満を叫んでいる私に対して、私の使い魔エレボスは人型に変化して、私の扱いに戸惑っているようだった。
美少年すぎてて直視するのが恐ろしい。
「はぁーっ、もうね?勝手に婚約者決められるのが私は嫌なの」
深いため息をつき、また一つ愚痴をこぼす。確かに婚約破棄されたのは驚いたしショックだったが、今となってはどうでもいい。
それよりも無理矢理婚約させたことの方が腹立たしかった。
「……死神王子ですか。噂では、引きこもりで人を殺しているだとか、裏で変な薬を作っているだとか、それに外見も良くない方だと聞いていますよ」
「………まぁ、なんとかなるわ」
「なりません」
にこっと笑顔で圧をかましてくる。その笑みから逃れるように立ち上がって脳裏を掠ったアイデアに決心をした。
「それに、見てみないとわからないじゃない?明日見に行くわ」
「その行動力の早さはなんなんですか?」
「おやすみ!」
呆れたエレボスから逃げ、すぐさまベッドに潜り込む。温かい掛け布団に潜り込み、そっと目を閉じれば、意識は遠のいていく。
*エレボス視点*
「ったく……このお方を卑下し婚約破棄なんて……あの元婚約者は相当なバカみたいですね」
すっかり気持ち良さそうに寝ている自分の主を見て、はぁ…と溜息をつく。
主はきっと物凄いショックを受けたはずだ、婚約者に見合う女になれと趣味も何もかもとられて、せっかく努力したのに裏切られるような結果となった。
そして、一番怖い事は…………それを想像するとぞっとし同情までしたくなる。その先を考えるのはよそうと必死に脳内からかき消した。
「私なら、絶対やりたくないですよ……敵にしちゃいけない、能ある鷹は爪を隠すんですから………」
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