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第3章 大切なもの
玲華の狙い⑪
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「あのさ、玲華の知ってる私ってなに? 教えてよ」
凛がきつい視線で玲華を睨んだ。こんな風に怒っている凛を俺は初めて見た。吉祥寺で玲華と再会した時は怯えきった目をしていたのに、今はキッと睨んでいる。
多分、こうして凛を怒らせる事に、玲華には玲華なりの意図があるのだろう。でも、俺は、こんな凛を見たくなかった。出来ればで⋯⋯彼女の意思に反する事に巻き込んでほしくないとも思っていた。
そんな凛を見て、玲華は自信ありげに笑って言った。
「──つらくても、逃げない子」
その言葉で、凛がはっとした表情をして玲華を見つめる。
「いつも上を見て立ち向かってて⋯⋯私が唯一仲良くできるって思った女の子で、最高にかっこいい友達。それが、私の知ってるリン」
玲華はにやりと笑って、凛に言った。
その言葉を聞いて、凛の表情から敵意が消えていって、蒼白になっていく。
「やめて⋯⋯」
声を震わせて、凛は顔を伏せる。
でも、玲華はやめない。
「この仕事してればうまくいかない事もあるし、失敗する事もある。それはリンもよく知ってるでしょ? まさかリン、私が1回も失敗してないとでも思ってるの? 私だって何回も失敗してるよ。リンが知らないだけで」
凛は顔を伏せたままだが、肩が震えていた。
「リンの代打で復帰してからなんて特にそう。初めてのことだらけで、期待に応えられなくて、失敗してる。田中にも何回も謝らせちゃってる」
そうだったのか⋯⋯。
玲華はそんな失敗をおくびにも出さず、淡々と学業と仕事を両立していたのか。
何が、玲華は完全無欠の人間だ⋯⋯彼女も努力しているんじゃないか。
俺は、自分が努力していないことを棚に上げて、全て玲華が他と違うから、と思い込んでいた。そう思うことで、出来ない自分から逃げようとしていた。でも、違ったのだ。
「失敗したら、その都度共演者からは『REIKAって実物大したことないしブスじゃん、なんでゴリ推しされてんの?』とか聞こえよがしに言われるし、クライアントからだって『RINの方がよかった』って言われた事だって一回や二回じゃない」
「⋯⋯⋯」
「今回の撮影だってそう。全然監督の期待に応えられなくて、サヤカと一緒に足を引っ張ってた」
でも、と玲華は続けた。
「失敗したら、それ以上のものを出して、挽回していくしかない。そういう業界でしょ?」
玲華が昨日見せた涙が脳裏に蘇る。
彼女は俺の知らないところで⋯⋯復帰を決めてから活動している中で、昨日みたいに1人で抱え込んで泣いていたのかもしれない。
それを乗り越えて、昨日も乗り越えて、監督に自分の演技を認めさせて、彼女は自身を確立している。
本当に強い女性だった。玲華は、俺なんかとは、やっぱり住んでいる世界が違う人間なのだと思えた。むしろ、完璧な超人でいてくれた方が幾分かはマシだったかもしれない。
たった1度の挫折で崩れ落ちてしまった自分が惨めに思えてならなかった。
「もし、リンが『迷惑かけた』『悪かった』って思ってるんなら⋯⋯今が挽回のチャンスなんじゃないの?」
玲華のその言葉で、凛が驚いた方に顔を上げる。
玲華は悪戯げな笑み凛に向けていた。まるで、ここに導くための導線だったと言わんばかりに、策士としての顔がそこにあった。
そこで、ひとりの人間が拍手をした。
拍手していた主を見ると、それはなんと、犬飼監督だった。
凛がきつい視線で玲華を睨んだ。こんな風に怒っている凛を俺は初めて見た。吉祥寺で玲華と再会した時は怯えきった目をしていたのに、今はキッと睨んでいる。
多分、こうして凛を怒らせる事に、玲華には玲華なりの意図があるのだろう。でも、俺は、こんな凛を見たくなかった。出来ればで⋯⋯彼女の意思に反する事に巻き込んでほしくないとも思っていた。
そんな凛を見て、玲華は自信ありげに笑って言った。
「──つらくても、逃げない子」
その言葉で、凛がはっとした表情をして玲華を見つめる。
「いつも上を見て立ち向かってて⋯⋯私が唯一仲良くできるって思った女の子で、最高にかっこいい友達。それが、私の知ってるリン」
玲華はにやりと笑って、凛に言った。
その言葉を聞いて、凛の表情から敵意が消えていって、蒼白になっていく。
「やめて⋯⋯」
声を震わせて、凛は顔を伏せる。
でも、玲華はやめない。
「この仕事してればうまくいかない事もあるし、失敗する事もある。それはリンもよく知ってるでしょ? まさかリン、私が1回も失敗してないとでも思ってるの? 私だって何回も失敗してるよ。リンが知らないだけで」
凛は顔を伏せたままだが、肩が震えていた。
「リンの代打で復帰してからなんて特にそう。初めてのことだらけで、期待に応えられなくて、失敗してる。田中にも何回も謝らせちゃってる」
そうだったのか⋯⋯。
玲華はそんな失敗をおくびにも出さず、淡々と学業と仕事を両立していたのか。
何が、玲華は完全無欠の人間だ⋯⋯彼女も努力しているんじゃないか。
俺は、自分が努力していないことを棚に上げて、全て玲華が他と違うから、と思い込んでいた。そう思うことで、出来ない自分から逃げようとしていた。でも、違ったのだ。
「失敗したら、その都度共演者からは『REIKAって実物大したことないしブスじゃん、なんでゴリ推しされてんの?』とか聞こえよがしに言われるし、クライアントからだって『RINの方がよかった』って言われた事だって一回や二回じゃない」
「⋯⋯⋯」
「今回の撮影だってそう。全然監督の期待に応えられなくて、サヤカと一緒に足を引っ張ってた」
でも、と玲華は続けた。
「失敗したら、それ以上のものを出して、挽回していくしかない。そういう業界でしょ?」
玲華が昨日見せた涙が脳裏に蘇る。
彼女は俺の知らないところで⋯⋯復帰を決めてから活動している中で、昨日みたいに1人で抱え込んで泣いていたのかもしれない。
それを乗り越えて、昨日も乗り越えて、監督に自分の演技を認めさせて、彼女は自身を確立している。
本当に強い女性だった。玲華は、俺なんかとは、やっぱり住んでいる世界が違う人間なのだと思えた。むしろ、完璧な超人でいてくれた方が幾分かはマシだったかもしれない。
たった1度の挫折で崩れ落ちてしまった自分が惨めに思えてならなかった。
「もし、リンが『迷惑かけた』『悪かった』って思ってるんなら⋯⋯今が挽回のチャンスなんじゃないの?」
玲華のその言葉で、凛が驚いた方に顔を上げる。
玲華は悪戯げな笑み凛に向けていた。まるで、ここに導くための導線だったと言わんばかりに、策士としての顔がそこにあった。
そこで、ひとりの人間が拍手をした。
拍手していた主を見ると、それはなんと、犬飼監督だった。
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