上 下
123 / 192
第3章 大切なもの

玲華の狙い③

しおりを挟む
「あの子って、豪プロのサヤカちゃんだよね? サヤカちゃんって女優志望だっけ?」

 凛が遠巻きに叱られている女の子を見て、小さな声で言う。
 豪プロってなんだ? と思っていると、有名なプロダクションの名前だと補足してくれた。

「前に一緒に仕事した時に少し話したんだけどさ、あの時は歌手やりたいって言ってた」
「あー⋯⋯実はそれには裏の事情があってね。聞きたい?」
「え、聞きたい聞きたい!」

 凛と玲華がサヤカちゃんとやらについて何やら楽しそうに話している。
 そんな二人が話しているのを見て、俺は『うわ、なんかすげー芸能人同士の会話って感じがする』などと勝手に思っていた。
 俺全然ついていけてない。ていうか、やっぱりこの二人が仲良くしているのに違和感しかない。こいつらまじで何があったんだよ。

「あんまり大きな声じゃ言えないんだけどさ、サヤカはスポンサーのご要望なんだって。"沙織"役のオーディションも出来レース。サヤカ本人が言ってたから間違いなし」

 玲華が声を潜めて、そして楽しそうに話していた。おそらく誰かに話したくて堪らなかったのだろう。その説明を聞いて、凛は「あー、なるほど」と納得していた。ちなみに"沙織"とは、サヤカちゃんとやらが演じている女の子で、玲華演じる"優菜"のライバル役だ。

「えっと⋯⋯それっていいの?」

 一般人の俺、思わず聞いてしまう。オーディションが出来レースって、オーディションの意味がないじゃないか。

「まあ、良いか悪いかでいうと悪いんだけど、よくある話だよ。映画作りには巨額な資金が必要だからね」

 田中マネージャーが代わりに答えてくれた。
 彼の話によると、映画作りは基本的にスポンサーからお金を集めて作られる事が多いという。特に、犬飼監督レベルの作品になると、安くても数千万ほど必要なのだそうだ。
 スポンサーには、お金を持っているプロダクションもなることが多い。あとは想像するのも容易いが、出資するから自分のところの売り出したいタレントを使え、と言う要望を突きつけるのだという。

「マンガの実写映画とかで、明らかにその人選はないって配役見たことがあるだろう? それも、こういう大人の事情が絡んでるのさ」
「うわあ⋯⋯すっごい夢が壊れる話⋯⋯」

 知らないほうが良かった。芸能界ってこわいんだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。

山法師
青春
 四月も半ばの日の放課後のこと。  高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。

【たいむりーぷ?】『私。未来であなたの奥様やらせてもらってます!』~隣の席の美少女はオレの奥様らしい。きっと新手の詐欺だと思う……たぶん。~

夕姫
青春
第6回ライト文芸大賞 奨励賞作品(。・_・。)ノ 応援と感想ありがとうございました(>_<) 主人公の神坂優斗は普通のどこにでもいるような平凡な奴で友達もほとんどいない、通称ぼっち。 でも高校からは変わる!そう決めていた。そして1つ大きな目標として高校では絶対に『彼女を作る』と決めていた。 入学式の帰り道、隣の席の美少女こと高宮聖菜に話しかけられ、ついに春が来たかと思えば、優斗は驚愕の言葉を言われる。 「実は私ね……『タイムリープ』してるの。将来は君の奥様やらしてもらってます!」 「……美人局?オレ金ないけど?」 そんな聖菜は優斗に色々話すが話がぶっ飛んでいて理解できない。 なんだこれ……新手の詐欺?ただのヤバい電波女か?それとも本当に……? この物語は、どこにでもいる平凡な主人公優斗と自称『タイムリープ』をしているヒロインの聖菜が不思議な関係を築いていく、時には真面目に、時に切なく、そして甘酸っぱく、たまにエッチなドタバタ青春ストーリーです。

処理中です...