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第2章 久瀬玲華
逃亡者同盟の解消
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「凛はその撮影、行く?」
訊いてから、後悔した。
俺はまた、自分の選択から逃げた。彼女の選択に従おうとしている。
『私は⋯⋯行くよ。行きたいかって言われたら行きたくないし、怖いんだけどね、ほんとは。犬飼監督もいるし、田中さんもいるし⋯⋯どんな顔して行けばいいのかわからないから』
彼女が裏切ってしまった人たち、そして、彼女が逃げた人達。玲華だけでなく、彼女の傷をえぐる人がたくさんいる場に、彼女は単身で乗り込もうという。
『でも、行かなきゃ⋯⋯』
これ以上逃げないためにも。
彼女が逃げないと誓ったのは、きっとこういう事なのだろう。
「うん。じゃあ、俺も行くよ」
それなら、俺も行かなきゃいけない。
凛にそう決断させてしまったのは、俺なのだから。
凛が立ち向かうことを選んだ理由の一端には、きっと俺もいる。それなら、俺もそこに一緒に行くべきだろう。それが、数少ないながら、彼女の為に俺ができる事なのだろうとも思うのだ。
『⋯⋯ありがとう』
俺は何もお礼を言われることなんてしていない。
むしろ、俺が全部悪い。
この2人を苦しめているのは俺の他ならない。
『ほんとはさ、ひとりでいくの恐かったんだ。あははっ』
少し冗談っぽく付け足して。
本当は不安で押しつぶされそうなのだろう。
俺がその撮影現場にいったところで、きっと何がどう変わるというわけではないだろう。それでも、彼女の恐怖心を少しでも緩和できるのであれば、俺にはいく義務がある。
『じゃあ、また明日ね。場所はあとでLIMEする』
「あ、待った」
凛が通話を切ろうとしたので、慌ててそれを遮る。なんだか、切ってほしくなかった。
『どうしたの?』
「⋯⋯いや、やっぱなんでもない」
『なに? 気になるから言って』
「いや、やっぱりいい」
『気になって寝れなくなるから。ほら、早く』
今から言うべき言葉に、少し緊張している。当たり前の言葉なのに。
それでも、今この言葉を伝えておきたかった。
「その⋯⋯好きだよって」
言ってから後悔した。バカみたいに恥ずかしい。
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
凛も黙り込んでしまった。
「えっと⋯⋯凛?」
不安になってしまって、彼女の名前を呼んだ。変に思われてしまっただろうか。
『ご、ごめん⋯⋯びっくりした。翔くんって、そういうこと言わない人だと思ってた。もしかして、電話だと強引になるタイプ?』
電話だと強引になれる⋯⋯のだろうか。確かに、目の前にいないだけ、少し恥ずかしい事も言えてしまうかもしれない。
「そういうわけではない⋯⋯と思うんだけど。なんか、ごめん」
『どうして謝るかなぁ。すごく嬉しいよ。電話かけてよかった』
その言葉にほっとした。笑われるんじゃないかと不安だったのだ。
「えっと、じゃあ、そういうことだから。また明日」
そう言って通話を切ろうとすると、
『待ってよ』
今度は俺が呼び止められる。
「なに?」
『私も⋯⋯翔くんが好き。大好き』
お返しをされてしまった。
「えっと⋯⋯その、ありがとう」
なんだかすごく恥ずかしいやりとりをしている気がする。顔が火照っているのがよくわかる。誰もいない屋外でよかった。
それからお互いにおやすみを言って、通話を切った。
通話を切ってから、どうして俺は咄嗟にあんな事を言ってしまったのだろうかと疑問に思った。
正直、自分でも意外だったのだ。彼女の言う通り、俺はあんまり好きだとかなんだとか言わない。
もしかすると、今日一日玲華と過ごしてしまったことへのうしろめたさだろうか。もちろんそれもあるのだろうけど、根本は違う。
なんだか⋯⋯あの瞬間、今言っておかないと、不安だったのだ。
ここで言っておかないと、もう言える機会がない気がして⋯⋯そんな謎めいた焦燥感に襲われたのだ。
多分、凛が変わろうとしているから。
凛が逃げるのをやめようとしているから⋯⋯俺は不安になったのだ。
自分だけ置いていかれるのではないかと。
凛が自分の届かないところに行ってしまうのではないかと、不安で仕方なかったのだ。
俺もいつまでも逃げていてはいけないのもわかっている。
でも、どうやって立ち向かえばいいのか⋯⋯立ちはだかっているものが漠然とし過ぎていて、どこに行けばいいのかすらわからない。
(俺は⋯⋯どうしたいんだ)
月夜の下で、ただ自分の無力さと矮小さを感じる事しか、俺にはできなかった。
訊いてから、後悔した。
俺はまた、自分の選択から逃げた。彼女の選択に従おうとしている。
『私は⋯⋯行くよ。行きたいかって言われたら行きたくないし、怖いんだけどね、ほんとは。犬飼監督もいるし、田中さんもいるし⋯⋯どんな顔して行けばいいのかわからないから』
彼女が裏切ってしまった人たち、そして、彼女が逃げた人達。玲華だけでなく、彼女の傷をえぐる人がたくさんいる場に、彼女は単身で乗り込もうという。
『でも、行かなきゃ⋯⋯』
これ以上逃げないためにも。
彼女が逃げないと誓ったのは、きっとこういう事なのだろう。
「うん。じゃあ、俺も行くよ」
それなら、俺も行かなきゃいけない。
凛にそう決断させてしまったのは、俺なのだから。
凛が立ち向かうことを選んだ理由の一端には、きっと俺もいる。それなら、俺もそこに一緒に行くべきだろう。それが、数少ないながら、彼女の為に俺ができる事なのだろうとも思うのだ。
『⋯⋯ありがとう』
俺は何もお礼を言われることなんてしていない。
むしろ、俺が全部悪い。
この2人を苦しめているのは俺の他ならない。
『ほんとはさ、ひとりでいくの恐かったんだ。あははっ』
少し冗談っぽく付け足して。
本当は不安で押しつぶされそうなのだろう。
俺がその撮影現場にいったところで、きっと何がどう変わるというわけではないだろう。それでも、彼女の恐怖心を少しでも緩和できるのであれば、俺にはいく義務がある。
『じゃあ、また明日ね。場所はあとでLIMEする』
「あ、待った」
凛が通話を切ろうとしたので、慌ててそれを遮る。なんだか、切ってほしくなかった。
『どうしたの?』
「⋯⋯いや、やっぱなんでもない」
『なに? 気になるから言って』
「いや、やっぱりいい」
『気になって寝れなくなるから。ほら、早く』
今から言うべき言葉に、少し緊張している。当たり前の言葉なのに。
それでも、今この言葉を伝えておきたかった。
「その⋯⋯好きだよって」
言ってから後悔した。バカみたいに恥ずかしい。
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
凛も黙り込んでしまった。
「えっと⋯⋯凛?」
不安になってしまって、彼女の名前を呼んだ。変に思われてしまっただろうか。
『ご、ごめん⋯⋯びっくりした。翔くんって、そういうこと言わない人だと思ってた。もしかして、電話だと強引になるタイプ?』
電話だと強引になれる⋯⋯のだろうか。確かに、目の前にいないだけ、少し恥ずかしい事も言えてしまうかもしれない。
「そういうわけではない⋯⋯と思うんだけど。なんか、ごめん」
『どうして謝るかなぁ。すごく嬉しいよ。電話かけてよかった』
その言葉にほっとした。笑われるんじゃないかと不安だったのだ。
「えっと、じゃあ、そういうことだから。また明日」
そう言って通話を切ろうとすると、
『待ってよ』
今度は俺が呼び止められる。
「なに?」
『私も⋯⋯翔くんが好き。大好き』
お返しをされてしまった。
「えっと⋯⋯その、ありがとう」
なんだかすごく恥ずかしいやりとりをしている気がする。顔が火照っているのがよくわかる。誰もいない屋外でよかった。
それからお互いにおやすみを言って、通話を切った。
通話を切ってから、どうして俺は咄嗟にあんな事を言ってしまったのだろうかと疑問に思った。
正直、自分でも意外だったのだ。彼女の言う通り、俺はあんまり好きだとかなんだとか言わない。
もしかすると、今日一日玲華と過ごしてしまったことへのうしろめたさだろうか。もちろんそれもあるのだろうけど、根本は違う。
なんだか⋯⋯あの瞬間、今言っておかないと、不安だったのだ。
ここで言っておかないと、もう言える機会がない気がして⋯⋯そんな謎めいた焦燥感に襲われたのだ。
多分、凛が変わろうとしているから。
凛が逃げるのをやめようとしているから⋯⋯俺は不安になったのだ。
自分だけ置いていかれるのではないかと。
凛が自分の届かないところに行ってしまうのではないかと、不安で仕方なかったのだ。
俺もいつまでも逃げていてはいけないのもわかっている。
でも、どうやって立ち向かえばいいのか⋯⋯立ちはだかっているものが漠然とし過ぎていて、どこに行けばいいのかすらわからない。
(俺は⋯⋯どうしたいんだ)
月夜の下で、ただ自分の無力さと矮小さを感じる事しか、俺にはできなかった。
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