想い出と君の狭間で

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第2章 久瀬玲華

彼女も完璧じゃなかった

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 ご飯を食べて少し休憩してから、課題を続けた。
 食後に国語の問題は眠気を誘って若干つらいものがあったが、時間もないのでぱっぱと読み進めて問題を解いていく。
 なに、間違っていても俺が怒られることはない。それが嫌なら自分でやればいい。

「あー、やっと終わった」

 ごろりと寝転がる。
 久々に頭をフルで使った気分だ。
 こんな問題やってるのか、海成高校は。同じ学年なのにやっていることの次元が違う。
 そりゃ東大合格者数全国1位だわな。と言っても、きっと俺もワセ高に通っていたらこんなことをやっていたのだと思う。
 あのままワセ高に通っていたら⋯⋯どんな人生だったんだろうか。まだ必死で勉強していたのだろうか。それとも、落ちこぼれていただろうか。
 そんな事を、つい考えてしまう。

「お疲れ」

 彼女もシャーペンを置いた。無事終わったようだ。
 ポストの回収時刻にもまだ余裕がある。
 ともあれ、無事に終わってよかった。
 帰ろうとすると、

「あ、ねえ。まだ時間あるでしょ?」

 呼び止められる。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「そんな嫌そうな顔しないでよ。ちょっと見比べてほしいだけだから」

 言って、玲華は開いて冊子を渡してきた。

「台本?」
「うん。ここ、この"優菜"のセリフを今から2パターンやるから、ちょっと見てて」
「いや、俺演技のことなんてわかんないんだけど」

 プロの何を見比べろというんだ。

「いいから。素人の直感的かつ忌憚のない意見が聞きたいの」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 よくわからないまま、俺は冊子に目を通す。玲華の手書きでたくさんのメモ書きがある。特徴や表情などは細かく記載されていた。
 そこから、玲華は同じシーンを2回繰り返した。それぞれで、身振りや言葉の強弱、表情がやや異なった。
 1つめは、玲華らしいふるまいだった。自然な玲華に近いけども、演じる優菜の性格に寄せているのだろうか。玲華であって玲華ではない。爽快な演技で、演技と感じさせないものがあった。
 対して、2つ目は、玲華らしくない。微妙に上品さが加わっており、勢いがなくなってしまった。女性らしいと言えば女性らしいのかもしれないが、どこか演じられたものになってしまっているので、魅力としては半減している。

「⋯⋯⋯⋯どうだった?」

 "優菜"から"玲華"に戻った。真剣なまなざしで聞いてくる。
 そんな素人に期待されても困るんだけどな。

「うーん、最初のほうが玲華らしくてよかったけどな。このキャラの感情をよく表現できてたと思う」
「2番目のは?」
「悪くないんだけど⋯⋯うーん、なんか嘘っぽいっていうか、合ってない。玲華じゃないみたい」
「⋯⋯だよね」

 玲華は溜め息を吐いた。

「でも、みんなは2番目のほうがいいんだってさ」

 みんな、とは監督だったり他のスタッフだったりするのだろうか。
 どういっていいか考えていると、彼女がペタンと床に座り込んだ。そのまま膝を抱えて、自分の額を膝に埋め込む。

「⋯⋯え?」

 どうしたんだ?
 ちょっと予想外の展開だった。
 そのまま黙っていると、玲華がいきなり独り言のように話し出した。
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