想い出と君の狭間で

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中

文字の大きさ
106 / 192
第2章 久瀬玲華

宣戦布告

しおりを挟む
 凛が模擬店の食べ物を何か食べたいと言ったので、中庭のほうに向かった。
 火やガスを扱うような飲食系の出店は中庭に固まって出店されている。例外は家庭科室だが、あそこは調理部の占領下で、調理部のみ使用が許可されている。
 中庭につくと、簡易ステージが見えてきた。
 この簡易ステージでは、学校OBがバンド演奏をしたり、地方出身の漫才師が漫才をやっている。もちろん、名前なんて全く知らない無名な人達だ。
 プログラムを見てみると、次はミスコンをやるらしい。

「そういえば凛ってミスコンでないの?」
「でないよ」

 何言ってるの、と驚いたように言う。

「いや、だってうちの高校ってそんなミスとかミスターとか決めるほどのやついないし」

 こんなの、ほぼ身内ノリのコンテストだ。友達に乗せられて出るような、お調子者が出る。ちなみにミスターの候補者の中には純哉がいた。見るからに乗せられやすいお調子者が身近にいたのをすっかり忘れていた。女子は誰が出るんだろうと思ってみていると、候補者なし⋯。

(まあ、そりゃそうか)

 本気でミスコンになりたくてこんなのに自推で出るやつも痛いし、かといって他人から乗せられてまで出たくないであろうもの。大学のミスコンであれば、アナウンサーであったりと就職に役立つ場合も多いらしいが、田舎の高校のミスコンに選ばれたところで、自己満足にしかならない。特に、女子は色々確執や対立なども起きやすいことから、変に出るといじめの対象にもなりそうだ。
 目立つ必要がない場合、無理に目立ちたいとは思わない。
 もう、立候補者がいないならやめておけばいいのに⋯⋯。
 そんなことを考えながらステージを見ていると、漫才師の漫才が終わった。
 そして、司会の人にマイクが渡ってミスコンへとつなごうとした時、何やらステージ周辺がざわつき始めた。
 そして、司会者も口を司会を中断して、口をパクパクさせている。確かあの司会者も在校生で、確か放送部の誰かだったように思うが⋯⋯どうしたのだとうか。
 さらにざわつきが大きくなる。

「⋯⋯何かあったのかな?」

 凛が目を細めてステージを見ている。
 俺もよく見えないが⋯⋯しばらく見守ってくると、司会者がどうぞどうぞ、と招き入れるような動作を取る。
 すると、1人の私服の女性がステージに上がってきた。司会者は仕事も忘れて、いきなり握手している。握手を終えてその女性が客席側を振り向く。

「⋯⋯⋯ッ!」

 俺と凛はその姿を見て、絶句した。信じたくなかった。ここにいちゃいけない奴がそこにいたのだ。

「鳴那高のみなさん、ハーイ♪ 本日のシークレットゲスト・REIKAです!」

 テレビのバラエティ番組で出るような〝本物〟の挨拶に、一斉に歓声に沸いた。その歓声を聞いた連中が何事かと校舎内から身を乗り出して中庭のステージを見る。
 ぞろぞろと一気に中庭に人が集まってきた。

「きょ、今日偶然撮影で近くまで来ていたREIKAさんが遊びにきてくれましたー!」

 司会が叫ぶように言う。もうプロレスの実況中継のようなテンションだ。
 まるで真夏のフェスのような大歓声が起きている。鳴那高始まって以来の盛り上がり具合ではないかというような状況。
 そりゃそうだ。今やテレビCMでも出ているような有名タレントがこんな田舎の学校まで来たのだ。盛り上がらないはずがない。

「REIKAさん、今日は一体どうしてこちらに!? シークレットと言っても、私共も何も聞いていないのですがッ」

 司会が興奮気味に訊く。この司会にしてもこんな展開は予想していなかっただろうが、おそらく全人類が誰も予期していない事が起こっている。玲華はそういう女だった。

「うん、ほんとはただ遊びに来ていただけ。たまたま学園祭やってるって聞いたから」

 その言葉を聞いて、悟った。
 昨日俺がうっかり喋ってしまったからだ。しかし、だからといってくるか? そしてステージに上がるか?
 と思ったが、玲華は面白いと思ったことはやるような女だ。一般常識の枠にとらわれてはいけなかった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

処理中です...