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第2章 久瀬玲華

偶然と必然②

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 閉店の札を作って、それぞれが衣装から制服に着替えると、翌日のために買い出しに行く担当と、学校に残る組に分かれた。
 俺と凛は残る組で、特に凛は一番仕事量が多いというか、マスコット扱いで疲れているだろうということから、特に何も仕事を割り振られなかった。その流れで俺も仕事を与えられず、今日はそのまま終了時間までそのまま自由行動となったのだ。

「ねえ、翔くん」

 着替えを終えた凛が駆け寄ってきた。

「うん?」
「私、お店回りたい」
「いいよ」

 言うと、彼女はそのまま腕を絡めてくる。

「学園祭初めてなんだから、ちゃんとエスコートしてよね?」
「はいはい」

 言いながら、半分引っ張られるようにして教室を出る。もはや俺がエスコートされていた。

 彼女の周りたいところは全部周った。
 お化け屋敷に演劇に、軽音部の演奏に⋯屋台を回って買い食い。
 彼女はとても新鮮そうに全部を眺めて楽しんでいた。
 上手いか下手か、美味いか不味いかなんて、どうでもいいのだ。ただ、彼女は普通の学生として、普通の学生の学園祭を楽しみたかったのであろう。彼女の無邪気な表情を見ていると、それが伝わってくる。
 普通の人たちが見れない世界を見ている代わりに、普通の人たちが見ている世界を見れない。
 一体、どちらが幸福で、どちらが不幸なのだろう?
 凛と無邪気に遊んでいると、そんなことを考えさせられる。
 そして、玲華の昨日の言葉が脳裏に少し引っかかる。

『ショーと学祭、したかった』

 彼女は今もそんなことを考えながら、非日常の世界で生きているのだろうか。
 今、こうして凛と学祭を過ごしていることに、彼女はどう思うのだろうか。
 昨日の言葉を思い返して、罪悪感がわかないわけではない。
 でも、偶然だ。
 偶然ロケ地がここだったから、玲華はそう思っただけだ。
 全てを捨てて、この地を選んだ凛とは違う。
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