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第2章 久瀬玲華
嵐が過ぎ去るまで③
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「自慢するつもりで電話してきたわけじゃないのもわかってるんだけどさ⋯⋯それを自慢だって感じちゃう自分がいて」
彼女は困ったような笑みを向けて言った。
自慢ではないかもしれない。ただ、そこには凛を傷つけたいという悪意は感じる。もちろん、どういったノリの会話なのかはわからないのだけども。俺はこの2人の仲がよかった頃の関係性を知らない。
「映画撮影の話は嫌でも耳に入ってきてたし、知ってたけどさ、まさか玲華がいると思ってなくてさ。さすがに⋯参っちゃうよね」
私が辞めた原因の作品だしね、と付け加えた。
それでも学校では全然そんな素振りを見せていなかったのは、彼女が女優だからなのだろうか。
教室での彼女は普段通りに見えた。
「きっと私よりも玲華の方が上手く演じるんだろうな⋯⋯そしたら、きっと私は女優としても勝てないんだなって」
凛は柵に手をかけて、自分の腕に突っ伏した。大きく溜息を吐いた。
こうして苦しんでいる彼女に何ひとつ気付けなくて、自分だけが思い悩んでいた。 俺が一番だめだ。
「もうさ、ほっとこうよ」
俺は思わずそう言った。
「っていうかさ、関係ないだろ。映画の撮影なんてせいぜい数週間とかだろ。全然そういうのわからないけどさ。少なくとも、一ヶ月も二ヶ月もいないだろ。玲華だって学校あるんだし⋯⋯そうそう休んでなんていられない。そしたらさ、きっと今まで通りだよ」
俺は自分に言い聞かせるように続ける。
「映画の撮影があったことなんて、きっとその映画が公開されるまで忘れられる。だから、たったあと数週間だけ。あと数週間だけ、目をつぶっていれば、元の生活に戻るよ。たまにはネットとかテレビとかで玲華を見かけるかもしれないけど⋯⋯それだけだ。そしたら、もう関係ないだろ」
逃げ癖って、やっぱりつくんだろうなって。
自分で話しながら自覚してしまった。
こそこそと隠れて、嵐が過ぎ去るまで部屋の中にいよう。俺が言っているのはそういうことだった。
でも、そう考えるのが一番良い。
玲華が主演になったことは置いといて⋯⋯映画のロケ地が鳴那町だったことは、もうそれは神の悪戯としか思えない。玲華は、俺に連絡をとってきて、今朝あんなことをしてきたけど⋯⋯どういう意図があってあんなことをしてきたかわからなけいども⋯⋯それでも、偶然、鳴那町がロケ地だったからだ。
別の場所がロケ地だったとして、わざわざ俺のところになんてこない。
たまたまここだった。
たまたま俺と凛がいる鳴那町だった。
だから、この嵐みたいな特殊なイベントが過ぎ去れば、ここは普段と元どおりの何もない田舎町に戻る。
そしたら、きっと何もなかった生活に戻る。
純哉と愛梨がバカをやって、それで笑って、一緒に勉強して、たまに隣町までデートにって⋯⋯そんな、少し前まで当たり前にあった生活が戻ってくるに違いない。
「だからさ⋯⋯気にしないで、楽しもうよ。何の変哲もない、田舎の高校の学園祭をさ」
「うん⋯⋯」
凛は小さくうなづいた。
そして、互いに目が合って⋯⋯傷を舐め合うみたいに、優しい口づけをした。
きっと、この答えが正答でないことは彼女も知っている。
俺達にとって、一番楽な逃げ道。少し、家の中に閉じこもっていれば済むだけの話。
嵐が過ぎるまで、立てこもるだけ。
それで誰も傷つかないないなら⋯⋯少しの我慢で済むのなら⋯⋯それが一番良いと思う考えは、間違っているのだろうか。
そっと彼女を抱き締めながら、俺は夕日にそう問うのだった。
彼女は困ったような笑みを向けて言った。
自慢ではないかもしれない。ただ、そこには凛を傷つけたいという悪意は感じる。もちろん、どういったノリの会話なのかはわからないのだけども。俺はこの2人の仲がよかった頃の関係性を知らない。
「映画撮影の話は嫌でも耳に入ってきてたし、知ってたけどさ、まさか玲華がいると思ってなくてさ。さすがに⋯参っちゃうよね」
私が辞めた原因の作品だしね、と付け加えた。
それでも学校では全然そんな素振りを見せていなかったのは、彼女が女優だからなのだろうか。
教室での彼女は普段通りに見えた。
「きっと私よりも玲華の方が上手く演じるんだろうな⋯⋯そしたら、きっと私は女優としても勝てないんだなって」
凛は柵に手をかけて、自分の腕に突っ伏した。大きく溜息を吐いた。
こうして苦しんでいる彼女に何ひとつ気付けなくて、自分だけが思い悩んでいた。 俺が一番だめだ。
「もうさ、ほっとこうよ」
俺は思わずそう言った。
「っていうかさ、関係ないだろ。映画の撮影なんてせいぜい数週間とかだろ。全然そういうのわからないけどさ。少なくとも、一ヶ月も二ヶ月もいないだろ。玲華だって学校あるんだし⋯⋯そうそう休んでなんていられない。そしたらさ、きっと今まで通りだよ」
俺は自分に言い聞かせるように続ける。
「映画の撮影があったことなんて、きっとその映画が公開されるまで忘れられる。だから、たったあと数週間だけ。あと数週間だけ、目をつぶっていれば、元の生活に戻るよ。たまにはネットとかテレビとかで玲華を見かけるかもしれないけど⋯⋯それだけだ。そしたら、もう関係ないだろ」
逃げ癖って、やっぱりつくんだろうなって。
自分で話しながら自覚してしまった。
こそこそと隠れて、嵐が過ぎ去るまで部屋の中にいよう。俺が言っているのはそういうことだった。
でも、そう考えるのが一番良い。
玲華が主演になったことは置いといて⋯⋯映画のロケ地が鳴那町だったことは、もうそれは神の悪戯としか思えない。玲華は、俺に連絡をとってきて、今朝あんなことをしてきたけど⋯⋯どういう意図があってあんなことをしてきたかわからなけいども⋯⋯それでも、偶然、鳴那町がロケ地だったからだ。
別の場所がロケ地だったとして、わざわざ俺のところになんてこない。
たまたまここだった。
たまたま俺と凛がいる鳴那町だった。
だから、この嵐みたいな特殊なイベントが過ぎ去れば、ここは普段と元どおりの何もない田舎町に戻る。
そしたら、きっと何もなかった生活に戻る。
純哉と愛梨がバカをやって、それで笑って、一緒に勉強して、たまに隣町までデートにって⋯⋯そんな、少し前まで当たり前にあった生活が戻ってくるに違いない。
「だからさ⋯⋯気にしないで、楽しもうよ。何の変哲もない、田舎の高校の学園祭をさ」
「うん⋯⋯」
凛は小さくうなづいた。
そして、互いに目が合って⋯⋯傷を舐め合うみたいに、優しい口づけをした。
きっと、この答えが正答でないことは彼女も知っている。
俺達にとって、一番楽な逃げ道。少し、家の中に閉じこもっていれば済むだけの話。
嵐が過ぎるまで、立てこもるだけ。
それで誰も傷つかないないなら⋯⋯少しの我慢で済むのなら⋯⋯それが一番良いと思う考えは、間違っているのだろうか。
そっと彼女を抱き締めながら、俺は夕日にそう問うのだった。
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